私事で恐縮ですが、私はジビエ料理が好きです。といっても高級なフランス料理などではなく、山間の宿で食べる猪鍋や鹿刺しのことです。豚肉とはまた違った猪肉の脂身の旨みや、マグロの赤身のようにさっぱりとした鹿の刺身は、最高の山の幸です。
昔話の「かちかち山」におじいさんが狸汁を作る場面が出てきますが、実際は狸の肉は臭みが強く食用には向かないようです。狸に似た「あなぐま」という動物がいますが、あなぐまはジビエ肉の中でも最高に美味しいそうで、昔の人はあなぐまを狸と間違えて狸汁といっていたようです。
ジビエ肉の中でもとりわけ高価なのが熊肉です。そもそも流通量が少ないですし、猟師さんも命がけですから、価格が高いのも頷けます。肝心のお味の方ですが、美味しいという人もいますが、固いうえに独特の獣臭がして食べづらいという人もいます。残念ながら、私はまだ食したことがありません。
山へ行くとわりと頻繁にカモシカに出会います。カモシカは特別天然記念物に指定されており、獲って食べたりしたらお巡りさんに捕まります。が、カモシカは実は鹿ではなく牛の仲間です。きっと、牛肉のような美味しいお肉なんでしょうね。ちょっと食べてみたい気もします。
以前、西伊豆をドライブしたとき、とある干物屋さんに入りました。店先で魚の干物に混じって、真っ黒なビーフジャーキーのようなものが売られていました。お店の方に「それは何?」と聞いたところ、イルカの干物とのことでした。伊豆半島にシーシエパードの活動家たちが押しかけないか、危惧したことをおぼえています。
30年くらい前、某山岳県で山登りをするため、タクシーで登山口まで送ってもらったときの話しです。経緯は忘れましたが、タクシーの運転手さんに今まで食べた肉の中で何が一番美味しかったか聞いたのです。彼の答えは、「猿」でした。「えっ! お猿さん食べたの?」 私はたいへん驚きました。そして、「まさか、人間は食べてないですよね?」、と聞こうとして止めました。
美食の国日本には、実に様々な食材があります。