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株式

【株】先物の誤解

よく新聞やテレビで「先物は将来の価格を予測して売買する」という解説を目にしますが、いつも違和感を感じます。先物を売買する投資家も、現物を売買する投資家も、視線の先は同じはずだからです。どうも、先物の「先」の字の印象が強すぎて、先物=将来の価格、現物=現在の価格と、妙な理解をしている人が多いようです。今回は、このあたりの誤解を解きほぐしたいと思います。

まず現物と先物の違いですが、ここのところが分からないから、冒頭のようなトンチンカンな解説になるのだと思います。現物と先物の違い。それは、決済日の違いです。これだけです! 現物取引は、約定(株式の銘柄、価格、数量、売り買いの別、を決定すること)と、決済(株式とお金を交換すること)を同じタイミングで行います。(実際には約定日の2営業日後が決済日) 一方、先物取引は、約定と決済を異なるタイミングで行います。先物では限月(3月、6月、9月、12月)ごとに決済日が決められており、その日までに未決済の建玉を一斉に決済します。(SQと言われる集中決済日は3、6、9、12月の第二金曜日)


この現物と先物の決済日のズレが、現物と先物の価格差になります。現物を持っていれば配当金を受け取ることができますが、先物には配当はありません。そのため、配当金の差(厳密には配当と短期金利の差:キャリーとかベーシスと言います)だけ、現物に対し先物が安くなります。そして、決済日に理論上は先物と現物の価格は等しくなります。尚、投資家は集中決済日(SQ)まで待たずとも反対売買をすることで、好きなタイミングで決済することができます。


日経平均先物の理論価格=日経平均(現物)の価格×{1+(短期金利-配当利回り)×SQまでの日数÷365}

このように現物取引と先物取引の違いは、約定日と決算日が同じか違うかだけのことです。投資家が現物を売買するときと先物を売買するときの判断材料は、全く同じです。現物取引では今日明日の相場動向を予測し、先物取引では将来の相場動向を予測するといった解説がいかにおかしいか、お分かりいただけたでしょうか。前場で先物を買って後場で売ることも可能です。このとき、投資家は1日の相場に賭けて先物を売買しているわけです。

次に、先物の意義について考えてみましょう。先物取引を導入することは鉄道に例えると、単線を複線化することに似ています。現物取引のみの場合、買いだけ、売りだけのようにどちらか一方しか行えませんが、先物取引があれば「現物の買い」と「先物の売り」のように、買いと売りを同時並行で行えます。これが先物の存在意義です。

株主優待が魅力的であなたがずっと保有したいと考えている銘柄があるとします。そこへ思わぬ好材料が出て株式相場が爆騰しました。あなたなら、どうしますか。株主優待は諦め、この株を売却するか。株の保有を優先し、売却のチャンスをやり過ごすか。現物取引のみの場合は、この2択しかありません。でも先物取引があれば、現物の保有を継続しながら、先物を売り建てることができます。株主優待とキャピタルゲインの両方を手にできるのです。

また、あなたが買いたいと思ってる銘柄があるとします。しかし、ボーナス支給日まで購入資金がありません。今、相場はちょうどいい感じに安値圏にあり、ボーナスまで待っていたら相場が上がってしまうかもしれません。こんな時も先物取引があれば、便利です。先に先物を買い建てておき、ボーナスが出たら先物を売って現物株に乗り換えるのです。(先物取引では少額の証拠金を証券取引所に差し入れれば売買が可能です。)
このように先物を使うことで、現物だけでは叶わない様々な投資家のニーズに対応することができます。

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年金

【年】お得な年金、損な年金

年金の世界は複雑で苦手意識のある方も多いと思います。今回は投資家の端くれとして、得か損かの目線で年金ネタをいくつかご紹介したいと思います。
(○:得な年金、×:損な年金)

1.タダで医療保険に入る方法(学生納付特例) ○
日本国内に住む全ての日本人は20歳になったら国民年金の被保険者となり、保険料の納付が義務付けられます。ただ、学生については在学中の保険料の納付が猶予される「学生納付特例」制度があります。本人の所得が128万円以下であれば対象になります。また、親御さんの所得水準は問われません。

国民年金の保険料は約17,00円(月額)とかなり高額です。そのため、保険料を滞納する学生さんも多いかもしれませんが、私は「学生納付特例」の申請は絶対にするべきだと思います。なぜなら、学生納付特例の対象期間は、65歳から受け取る老齢基礎年金(老基)の額には反映されませんが、障害基礎年金(障基)の額には反映されるからです。大学に在学中の病気(含むメンタル)やケガがもとで障害状態になった場合、年間80~100万円程度の障基が支給されます。申請をするだけ保険料ゼロ円で医療保険に加入するようなものです。申請しない手はありません。

また、学生納付特例を使った場合、20歳~就職時(22歳就職なら2年間)までの期間は老基の額に反映されず、その分だけ年金額が小さくなります。具体的には、満額78万円×2年/40年=3.9万円だけ年金額が減ります。しかし、会社で62歳まで働けば、厚生年金の方で「経過的加算」として2年分の老基相当額が支給されるので、結果的に満額の老基を受け取ることになります。ですから、60歳以降も継続雇用で働くつもりの人は、保険料の追納は不要だと思います。

2.退職後の雇用保険と年金のお得なもらい方(厚生年金の支給停止を避け、雇用保険を満額受け取る方法)○
通常、雇用保険の基本手当(失業給付)を受け取る間、老齢厚生年金(老厚)は100%支給停止されます。しかし、65歳以降に基本手当を受け取る場合は、老厚は支給停止されません。基本手当と老厚のダブル受給が可能となります。
具体的には64歳11ヶ月で退職し、基本手当の受給を申請します。実際の受取り開始が65歳以降となっても構いません。

ここでは、65歳になる前に退職することがミソです。65歳になってから退職すると、基本手当でなく高齢者求職者給付金といって別の給付を受け取ることになります。基本手当は最大で基本手当日額の150日分(勤続20年以上の場合)を受給できますが、高齢者求職者給付金は、最大で基本手当日額の50日分(勤続1年以上の場合)しか受給できません。
老厚は65歳になれば支給開始されます、65歳以降は雇用保険との調整はありませんので、ダブル受給が可能となるわけです。

3.年金を繰り下げるときの注意点 ×
Q 私は65歳以降も会社で勤務する予定のため、厚生年金を受け取ると在職老齢年金(在老)として減額されてしまいます。そのため、厚生年金を70歳まで繰り下げようと考えていますが、注意点はありますか。
A まず、在職中に老齢厚生年金(老厚)を繰り下げても、70歳から受け取る老厚から在老で支給停止されるはずだった額は減額されてしまいます。支給停止後の老厚に繰下げ加算が付くだけです。老厚を繰り下げても、在老から逃げることはできません。
また、万一、繰下げ期間中にあなたが死亡した場合、遺族の方が受け取る遺族厚生年金(遺厚)には繰下げ加算は考慮されません。それから、65歳から老厚を受給した場合に加給年金が付いてくるときは、老厚を繰り下げると加給年金は支給停止されてしまうので注意が必要です。その場合は。老齢基礎年金のみ繰り下げる方がいいかもしれません。

4.障害年金をもらいながら働くと? ○
Q 私は障害年金を受給中ですが、生活が苦しいので来月から働く予定です。この場合、障害年金は調整されてしまいますか。
A いいえ調整はされませんので安心してください。障害基礎年金(障基)、障害厚生年金(障厚)の支給停止事由は次の通りです。①労働基準法の障害補償を受け取ったとき、6年間支給停止となる。②障害等級に該当しなくなったとき。
したがって、会社勤めをして給料をもらっても、障害年金の支給停止事由には該当しません。ただ、会社勤めをすることで障害が改善したと医者が判断し、障害認定を取り下げた場合は年金がストップします。ですので、事前に担当のドクターによく相談しておいた方が無難です。
また例外として、20歳前傷病による障害基礎年金を受給中の方は、取得制限がありますから注意してください。

5.事実婚カップルの離婚分割 ×
事実婚の場合、離婚分割の対象となる期間は、国民年金の3号被保険者であった期間に限られます。事実婚であった期間が無条件で離婚分割の対象になるわけではないので注意してください。また、離婚から2年を経過すると分割の請求はできません。

6.男はつらいよ(年金に見る男性差別)×
年金の世界は旧態依然としており、前時代的な男性差別が今も残っています。主なものをご紹介します。
①寡婦年金
国民年金の1号被保険者である世帯主が老基等を受け取ることなく死亡した場合、一定の条件下で配偶者に寡婦年金が支給されますが、「寡婦」とあるように支給対象は女性に限られます。
②中高齢寡婦加算
厚生年金の被保険者であった世帯主が死亡した場合、配偶者が40歳以上65歳未満等の場合、配偶者の遺族厚生年金(遺厚)に中高齢寡婦加算が加算されますが、これも「寡婦」とありますので女性限定です。
③遺族厚生年金
遺族である配偶者が女性の場合は無条件で支給されますが、男性の場合は55歳未満の方は支給対象になりません。55歳以上でも60歳までは支給停止されます。

7.私、変わります(性転換時の手続き)×
男性が女性に性転換したら、どういう手続きをしたらいいのでしょう。
まず、家庭裁判所から戸籍の性別変更の取扱いの審判を受け、戸籍上の性別変更を行います。戸籍の性別変更の審判に際しては、次の6要件が必要です。
①2人以上の医師により性同一障害であると診断されていること。
②20歳以上であること。
③現に婚姻していないこと。
④現に未成年の子がいないこと。
⑤生殖腺がないこと。または生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
⑥その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。

戸籍の変更手続きが済んだら、年金事務所に申し出て性別・氏名の記録を変更します。
以上のように、単に男がつらいからといった理由で性転換手術を受けても、①の要件を満たさないと戸籍上性別変更は認められないようです。


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不動産

【不】インフラ投資(太陽光発電ファンド)

2012年の再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)開始以降、全国で太陽光発電所が急増し、2015年には東証にインフラファンド市場が創設されました。翌2016年6月には太陽光発電設備を対象とする第1号ファンドが上場されています。今回は、安定的な収益が期待できる投資対象として、個人投資家に人気のある太陽光発電ファンドの特性について考えてみたいと思います。

まず、FIT制度についててです。地球規模の温暖化抑制のため脱炭素社会の実現を目指し、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT:Feed in Tariff)が開始されたのが、2012年7月です。FIT制度は、太陽光、風力、地熱、中小水力、及びバイオマス発電による電力を長期間(※)、定額で電力会社が買取る制度です。太陽光発電事業は、開発コストや期間等から相対的に参入が容易であり、高い収益性も期待できる投資対象として数多くの企業が参入しました。
(※)10kW以上の太陽光発電設備については供給開始日から20年間


太陽光発電の電力買取価格は、FIT開始時の40円(10kW以上、kWh当たり)から2021年度は11円~19円(250kW以上は入札)まで毎年引き下げられています。尚、2022年4月以降、市場価格にプレミアムを上乗せするFIP(Feed in Premium)制度が導入されます。これにより、太陽光発電の電力価格は市場の需給で決まるようになります。

太陽光発電ファンドは、ファンドで取得した発電設備を発電事業者に貸与し、その賃貸料を収入とします。発電事業者は発電した電力を電力会社にFIT制度による定額で買い取ってもらえるので、ファンドも発電事業者から安定した賃料を受け取ることができるのです。

次に導管性についてお話します。導管性とは、一定の要件を満たした投資法人は、配当等の損金算入が可能となり、実質的に法人税が非課税となる仕組みのことです。具体的には、配当等の額が配当可能利益の額の90%超であること等の要件をクリアすると、最初に取得した設備の貸付開始から20年間、法人税が非課税となります。(JREITにはこの有効期限は設定されていません)

他にも、太陽光発電の場合、資産総額に占める償却資産(発電設備)の割合が高いため、一般的なJREITに比べ高い減価償却費が計上できるという特性があります。減価償却費は会計上は費用科目ですがキャッシュの支払いを伴わないので、各太陽光ファンドは利益超過分配金として、キャッシュの一部を投資家に返還する取扱いを行っています。返還された分だけ資産総額や純資産は減少します。
注意しなければいけないのは、利益超過分配金は元本の返還であり、収益ではないことです。また、収益でないので税金は基本的にかかりません。

以上のように、太陽光発電ファンドは、FIT制度、導管性、高い減価償却費率という3つの特性により、魅力的なインカム(一部は元本償還)を提供します。しかし、これらはいずれも時限性がある点に注意が必要です。

太陽光発電ファンドのリスクに関しては、日射量等の天候の状況により発電量、つまりキャッシュフローに大きな影響が生じることが上げられます。しかし、日射量については、過去の日照実績等に基づき想定値を算定することが可能で、長期的には想定に基づいた安定収入が得られると考えられます。

想定すべきリスクは出力制御です。太陽光発電所で需要を大きく上回る発電が行われたとき、電力会社は発電事業者に太陽光発電の出力制御を要請できます。出力要請が実施された場合、天候が快晴で発電実績が好調でも、売電収入はゼロになってしまいます。実際、2018年10月12日九州電力は気温低下による発電需要の減少を理由に、太陽光電力事業者に出力制御を要請しました。(この報によりファンド価格は急落しました。)

しかし、この種のリスクはコントロールが困難であり、私たち個人投資家にとっては、発電所の主な所在地域が異なるファンドを分散して投資するくらいしか対策はありません。地域分散により発電設備が台風や地震等の天災により被災するリスクも減殺できます。

今のところ国内上場インフラファンドの時価総額は、7銘柄で1,700億円程度です。機関投資家が投資するにはサイズが小さく、個人投資家限定の市場となっています。しかし、脱炭素が叫ばれる中、インフラファンドがESG投資の本命であることに違いはありません。実際、2021年9月には大和証券グループが私募で太陽光ファンド700億円を組成し、年金基金や生保等の機関投資家が購入したとの報道がありました。今後、投資対象が洋上風力等にも拡大し、資産規模が数千億円規模に到達すれば、上場インフラファンドに機関投資家が参入する日も近いでしょう。

JREITと比べた場合、インフラファンドは6%の分配利回りや株式との低相関、そして価格変動率の低さでその優位性は際立っており、将来的なマーケット拡大への期待も含め個人投資家にとって投資妙味は大変高いと思います。

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閑話休題

【閑】資格試験の謎

私はプロフィールにあるように幾つかの資格を保有しています。今まで資格に挑戦する中で、特徴のある資格、変な資格にも出会いました。今回は、そんな資格試験に関しての感想と、特に印象的だったある資格の謎についてお話したいと思います。

個人投資家さんの中には資格に挑戦される方も多いと思います。私はプロフィールに書いた資格以外に、挑戦したもののあえなく撤退した資格もあります。例えば、中小企業診断士。結構難易度の高い資格とされています。7科目(経済学、財務会計、企業経営論、運営管理、経営法務、経営情報システム、中小企業経営政策)の択一式1次試験に3年以内に合格し、さらに記述式2次試験4科目に2年以内に合格する必要があり、相当にハードルが高いです。ただ、会社員の経験がある方は時間をかければ、合格可能な試験だと思います。

私が撤退した理由は、2次試験合格後に待っている実務補修にあります。3年以内に15日の補修を受けなければ中小企業診断士として登録できません。この補修は、中小企業診断協会(なぜか診断協会ではない)が実施するもので、5~6名でグループを作り企業を訪問、最終日にグループ別にコンサル結果をプレゼンします。企業訪問でヒアリングし分析した内容を、メンバーが協力して資料にまとめます。その作業はPCを駆使して行いますが、PCスキルが貧弱なジジイが足手まといになることは明らか。怖気づいた私は、1次試験を受ける前にしっぽを巻いて逃げ出したのです。
負け惜しみになりますが、この試験は暗記試験ではないため、私は楽しみながら試験勉強を続けることができました。現役の社会人の方(特に若い方)には、是非チャレンジしてほしいです。社会や経済の仕組みを理解することができ、これからのキャリアアップに大きなアドバンテージになると思います。

他に私が挑戦した資格に、マンション管理士があります。全50問で4択の択一式試験です。合格率は8%程度。この試験では、不動産の管理業務主任者試験(通称、管業)の合格者に、問46~問50の5問免除の特典が与えられます。同一業界の他試験の合格者に免除が与えられることはよくありますが、この試験に特徴的なのは、50問中8問ある個数当て問題(※)のうち4問が、免除対象の問46~問50に集中していることです。個数当て問題は通常の択一式問題よりも正答率が低いので、管理業務主任者の合格者でない一般の受験生は5問免除で差を付けられた上に、4問の難問を押し付けられるという2重のハンディを課されることになります。これは、管理業務主任者試験合格者の優遇措置です。
国交省が進めているマンション管理計画認定制度の導入に向け、マンション管理業界内での管理士育成を急いでいるための政策的判断でしょうか。
(※)5つの選択肢から正しい選択肢の個数を当てさせる問題

私が最も苦労した資格が、社会保険労務士です。5択の択一式と選択式の組み合わせ試験で、合格率は6%程度です。灼熱の8月に5時間にわたる長丁場を戦う、色々な意味で難易度の高い試験です。冒頭「資格試験の謎」といったのは、この資格のことです。
通常、試験は得点の上位者から順に合格になります。足切り点が設定されることはありますが、受験生の努力は概ね報われる仕組みになっています。ところが、そうじゃない試験があります。社労士試験です。社労士試験の選択式の科目の一つに「労働に関する一般常識」(通称、労一/ローイチ)があります。これが受験生の悩みの種で、一般常識どころか誰も知らない、聞いたこともない初見問題が5問出題されます。
労一5問中3問以上を正解できないと、他科目が全問正解でも足切りです。総得点で悠々合格圏に達しながら労一で不合格となった受験生は、「運ゲー」「ロシアンルーレット」と呪いを込めて労一を呼びます。受験生の1年1000時間の努力を一瞬で水泡に帰す、恐るべき試験です。

社労士試験は、得点順に合格者を決める1次試験(択一式と労一以外の選択式)と、クジ引きで合格者を決める2次試験(労一の選択式)の2部構成で実施される。これが実態です。
社労士試験実施者は、なぜこのような真似をするのか。なぜ、素直に得点順に合格者を決めないのか、いや決められないのか。大きな謎です。

このように謎の社労士試験ですが、最近私はある仮説に至りました。試験実施者は、最初から得点上位者を合格させる気がないのではないか。試験実施者が合格させたいのは、得点上位者と異なるゾーンにいる受験生なのではないか。
そのためには、合格者の選定を自由競争(得点上位者が合格する)に委ねてはダメで、何らかの方法で競争に介入する必要があります。
その介入手段が、労一だとしたら……。

では、試験実施者が合格させたい受験生とは誰なのか。これも憶測に過ぎませんが、開業を目指している受験生ではないか。彼らは退路を断ち、命がけで試験に臨んでいます。組織に属し、自己啓発や趣味が目的でヌクヌクと試験に臨んでいる人たち(私がそうです)とは状況が違います。試験実施者が開業を目指す受験生に配慮したとしても、社会正義的に許されると思います。しかし、そのあたりの事情を受験生に事前に告知することが条件でしょうが。

まあ、いずれにしろ、本当のところは分かりません。謎です。資格試験は大学受験とは違い、大人の世界だってことにしておきましょうか。
最後に。今年も大勢の受験生が労一に敗れ散っていきました。心よりお悔やみ申し上げます。

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不動産

【不】JREITに学ぶ

不動産投資では株式投資とは異なり、個人投資家はプロ投資家と同じ時価軸での勝負となります。なぜなら、不動産(建物)は現物=生モノなので、運用期間が長くなると経年劣化によりパフォーマンスが低下するため、プロ投資家と同じ中短期の時間軸を選択せざるを得ないからです。不動産投資では個人投資家は「時間」を武器とすることができないため、株式投資よりも難易度が高いといえます。

不動産関連の書籍にはマンションの持ち切りを推奨するものもありますが、築古マンションは修繕コストの増加、賃料の下落、空室率の上昇、賃借人の属性悪化による滞納の増加等、負動産化する可能性が高くお勧めできません。私は出口を意識し物件の入れ替えを前提としたアクティブな運用こそが、不動産投資の本質だと思います。

今回はプロ投資家であるJREITの決算書をテキストに、個人投資家に参考となる部分を探ってみたいと思います。国内住居系ファンドのビッグ3「アドバンス・レジデンス投資法人(3269)」、「日本アコモデーションファンド投資法人(3226)」、「コンフォリア・レジデンシャル投資法人(3282)」が先生です。

上図に3ファンドの直近決算説明資料に掲載されているデータをまとめました。まず、目につくのがポートフォリオ全体の利回りですが、いずれもNOI利回りで5%台となっています。NOI利回りですから、表面利回りから空室損、管理費、固都税等コストを控除した手取り利回りです。JREITの場合、資金力や大手系列企業のパワーを活かし優良物件を仕込むことは可能だろうとは思います(徒歩分数10分圏内の物件が95%)。優良物件ゆえに稼働率の高さ(96%)も納得できます。

しかし、優良物件であればあるほど、本来は利回り水準は低下するはずです。それなのに、3ファンドではNOI利回りが5%と高水準を維持しています。私はこの部分にプロ投資家の技量を感じます。では、3ファンドはいかにして高利回りを維持しているのでしょうか?この私の疑問にも決算説明資料は丁寧に回答してくれます。


アドバンス・レジデンスは、「経年に伴う競争力の下落抑制に向けた取り組み」として、建物維持管理と計画的な設備投資の実施により競争力を維持するとしています。
日本アコモデーションファンドは、ポートフォリオの構築においてコロナ禍でも賃料の安定している「ファミリー」を重視し、また専有部分のリノベーション等を行っています。
コンフォリア・レジデンシャルは、パフォーマンス維持・向上に向けた取り組みとして、資産入れ替えや専有部分のバリューアップ工事を行っています。
実際、3ファンドはいずれも入替時の賃料変動率においてプラス成長を実現しています。

このように方法論は3ファンド様々ですが、優良物件であることと経年劣化による利回り低下圧力を、①物件入替による築浅平均年数の維持②ポートフォリオ戦略、③プロパティマネジメント、を駆使し打ち返している構図が見えます。JREIT並みの優良物件は私たち個人投資家には縁遠いかもしれませんが、この利回り低下回避策は参考になるのではと思います。
決算説明資料は容易にインターネットで入手できますので、皆さんも参考にしてみてはいかがでしょう。
(ご参考)不動産投信情報ポータル

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保険

【保】保険商品アラカルト

保険はアクシデントに見舞われたときに発生する費用・損失に備え、予め資金の準備を行うものです。将来の支出に備え資金を積み立てる商品には、預貯金や投資信託もありますが、保険は以下の点でそれらの商品と異なります。
①アクシデント(保険事故)が発生しないと保険金は支給されない。
②責任開始後に保険事故が発生すれば、資金の積み立てができていない段階でも100%の保険金が支給される。(いわゆる、預金は三角、保険は四角)
③コストが高い

「お得」な保険といいますが、コストが高いため保険は本来利殖には向かない商品です。特に低金利な昨今、その傾向が強いです。資産を増やす目的なら預金や投信等の低コストの商品を使った方がベターです。
ただ、保険料に対し支払われる保険金が大きいという意味で「お得」という考え方はありです。保険金/保険料の比率をレバレッジと言いますが、レバレッジが大きい保険を選ぶことはスマートなことです。

下図をご覧ください。縦軸は上へ行くほど支払われる保険金の大きい保険、横軸は左に行くほど発生確率の低い保険がマッピングされています。発生確率が低いほど保険料は安くなりますので、グラフの左上に位置する保険ほどレバレッジが高く入る価値の高い、あるいは入っておくべき保険、ということになります。
具体的には、自動車保険、火災保険、生命保険(死亡定期保険)などが該当します。自動車で人をはねて死亡させた場合、損害賠償として4億円を請求されるケースもあります。火災で自宅が全焼したような場合も、数千万円の損害が発生します。また、世帯主が死亡した場合、残された子供の養育費・教育費も一人当たり1千万円単位で必要になります。いずれの保険事故も発生確率は低いですが、万一発生した場合、保険に入っていないと家計破綻・一家離散につながるものです。

グラフの右下に行くほど保険事故の発生確率が高くなり、レバレッジは低下します。お得な保険イコール元が取れる保険だと思っている人がいますが、これは誤解です。元が取れるということは、それだけ保険事故の発生確率が高いということですから、保険料が割高になります。
元が取りやすい代表が医療保険です。医療保険は病気やケガで入院・手術した場合等に費用の保障を行うものですが、保険料は割高になります。それに対し入院給付金日額は3,000円とか5,000円程度です。私は、医療保障に関しては高コストのため保険スキームは使わず、預金や投信等で資金を積み立てる自己保険をお勧めしています。
本来、医療保険は預金等の積み立てが不十分で、治療費の負担が難しい方向けの商品です。でも、実際は優雅な年金生活を送るご高齢の皆さんが、お守り代わりに買っていかれます。

両者の中間に位置するのが、がん保険や所得補償保険(GLTD)です。若い方ががんにかかる可能性は低いですが、がんに罹患した場合は高額の治療費と、療養・休業期間中の所得補償が長期にわたり必要になります。がん保険は治療費だけでなく所得補償を行う商品で、中位のレバレッジ商品として加入する価値があります。
また、近年精神疾患に悩む会社員の方は多いですが、メンタルを含む疾病・ケガ等による休業時の所得を補償するものが所得補償保険です。特に会社が契約者となる長期の所得補償保険をGLTDと言いますが、保険料が格安で充実した補償を受けられるので、お勤め先でGLTDに加入できる方は絶対加入すべきです。

以上、レバレッジに着目して保険商品を見てきましたが、私が入っておいた方がいいと思う保険は、お子さんのいる方なら死亡定期保険(団体定期がお勧め)+GLTD/がん保険、お子さんのいない方なら医療保険(生協の共済がお勧め)+GLTD、です。いずれも、月額5,000円程度の保険料で済むと思います。

他に、発生確率が高く、保険事故発生時のコストが大きいリスクに長寿(長生き)があります。このリスクに対して保険、預貯金、投信等総動員で当たる必要があります。
人生100年時代においては誰もが高い確率で「超高齢者」になります。
本来、おめでたいはずの長寿がなぜリスクなのでしょうか。それは、莫大な費用負担を伴うからです。生活費に加え、医療費、介護費。生活費については、昨今、公的年金だけでは足らないので、国はさかんにiDeCoやNISAを使った自助努力を奨励しています。また、医療、介護についても、今後は公的制度の財政逼迫により自己負担の増大は避けられません。
資金力のある方は、民間の医療保険・介護保険を使って、早めに自助努力を開始することが賢明かと思います。

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不動産

【不】不動産と株式を比較してみた

私は不動産投資の経験はありません。最初に白状しておきます。なぜ不動産投資をしないのかといいますと、【表1】のように不動産投資は株式投資と比較して、とても難易度が高いと考えるからです。生半可な覚悟で参入したら大怪我します。私はチキンなんです。ですから、本来、私に不動産投資の話をする資格はないのですが、そこのところは大目に見ていただくとして、以下では株式投資を補助線にして、素人の目に映る不動産投資の特徴を語ってみたいと思います。
それでは、不動産投資と株式投資のメリット・デメリット比較から参りましょう。

不動産を売買するときは、不動産会社に物件の売りや買いを依頼します。不動産取引は、1対1、相対で行われます。取引は密室で行われ、通常、外部のものが伺い知ることはできません。
一方、株式を売買するときは一応証券会社を通しますが、実際は証券取引所で多数の買い注文と売り注文を一斉にぶつけます。売買の状況は、インターネット等を通じて確認することができます。この売買形態の違いが、【表1】の流動性、コスト、情報の対称性の違いとなって現れます。流動性については不動産の場合、個別に不動産会社が取引の相手方を探してくることなりますから、相応の時間がかかります。株式の場合は、証券取引所に売買注文を出せば即日約定が可能です。このように、流動性に関しては、株式が圧倒的に有利です。
取引コストも不動産の場合は、どうしても高くなります。(例:売買金額×3%+6万円)
また、不動産は現物投資特有の管理費や固定資産税等の税金、火災保険料等の固定費がかかります。株式の場合は、ネット証券を通じて注文を出せば、売買手数料0円のケースもあります。
投資家と業者の情報の対称性に関しても、不動産の場合、情報は業者(不動産会社)に集中し、投資家は業者から提供される情報に頼るしかないのに対し、株式の場合は、投資家はインターネット等を通じて容易に情報を収集できるため、業者(証券会社)と投資家の情報格差は少ないと言えます。

また、証券会社の社員は、金融商品取引法によって株式の売買は原則禁止されているのに対し、不動産会社の社員はそのような法規制はなく自由に取引ができます。ここのところは重要です。本当においしい案件は、投資家に情報が流れる前に不動産会社の内部や業者間で消化されます。そして、不動産会社が食べなかった案件が富裕層等のお得意様の投資家に流れ、さらにあぶれた案件が私たち一見さんの投資家のもとに流れてくるわけです。

セーフティネットについては証券会社が破綻した場合、投資者保護基金が認めたものは1顧客あたり1000万円まで補償されますが、不動産会社が破綻しても個人投資家を守ってくれる制度はありません。この点も重要なポイントです。
なぜ、国は株式投資家を保護するのに、不動産投資家は保護しないのか。それは、国が株式投資家はアマチュアだから保護する必要があるけど、不動産投資家はプロだから助け船を出す必要はないよね、と考えているからです。株式投資はBtoCだけど、不動産投資はBtoBだということでしょう。不動産投資に覚悟がいるというのは、そういうことです。

でも、ちょっと待ってください。確かに不動産市場は株式市場と比べ非効率的です。しかし、その非効率性(流動性、コスト、取引金額、情報の非対称性)を逆手に取れば、収益チャンスに変えることが可能かもしれません。不動産は株で言えば新興市場株、いや未公開株(PE:プライベートエクイティ)に近いです。未公開株は流動性、取引コストとも上場株に劣りますが、未公開情報を上手く入手できた場合には大きなチャンスが訪れます。
不動産も同じだと思います。安くない授業料を払う必要はありますが、不動産会社からお得意様とみなされた投資家は、不動産会社が持っているホットな情報を手にすることができます。陳腐化していないホットな情報に、誰よりも早くアクセスすること。それが不動産投資での成功の鍵ではないでしょうか。

不動産マーケットの特徴を語るにあたって、地主の存在は無視できません。サラリーマンが不動産投資する際は、建物だけでなく土地の購入資金を用意しなければいけません。しかし、地主は土地を無料で用意することができます。不動産投資に関し両者の損益分岐点には、決定的な差があります。普通に戦ったら、サラリーマン大家に勝ち目はありません。何とか勝負に持ち込むには、物件の仕込み価格を抑えるしかないと思います。そのためにも優良な情報が必要です。
これから2035年に向け、我が国は大相続時代に突入します。2035年には団塊の世代が皆85歳以上になります。地主大家が保有している優良物件が、相続を経て不動産市場に大量に供給される可能性があります。これらの物件は相続税の納税の関係で売却期限があり、ある意味買い手優位の案件です。相続物件の情報に早期にアクセスできれば、お宝案件との出会いがあるかもしれません。

不動産ならではのメリットもあります。不動産賃料の安定性は株式にはない魅力的なものですし、ローンの借りやすさも株式とは比較にはなりません。しかし、だからといって頭金なしのフルローンはお勧めできません。ローンの割合は一定限度内に抑える必要があります。また、不動産投資は「投資」の名前が付いていますが、実態は限りなく不動産事業に近いものです。不動産投資をする場合は管理会社に任せきりにせず、不動産賃貸会社の社長になったつもりで経営に積極的に関与すべきです。それだけに、成功した場合の達成感も、株式投資にはないものと推察します。

最後に、不動産投資と株式投資で決定的に違うと思われる点をお話します、それはゲームのルールです。株式投資は時間を味方につけて長期で戦うゲームです。短期では上がり下がりする株価も、長期では上昇トレンドを描くことが期待できます。勝つまで待つことができます。一方、不動産は現物であり生ものです。時間の経過とともに劣化していきます。物件が腐り切る前に、勝負のケリを付けなければいけません。つまり、不動産投資は中期の勝負(長期譲渡所得の対象となる5年程度は保有する)であり、投資開始時からしっかりと出口をイメージしておくことが肝要だと思います。

因みに、運用資産230億円を誇る個人株式投資家のカリスマcisさんですが、不動産にも投資をしているそうです。リーマンショックで不動産価格が暴落したタイミングで購入したとのことで、不動産投資の腕も一流ということでしょう。そのcisさんいわく、「罰ゲームを受けているような気持ちになる」そうです。詳細は、「一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学cis」(角川書店)をご覧下さい。

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閑話休題

【閑】深読み名古屋めし

私は愛知県の出身です。愛知県といえば、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の三英傑を生んだ土地ですが、今でも色々なところで戦国時代の名残を感じることができます。


愛知県は、お寺の多さで日本一です。愛知4,600、大阪3,400、京都3,100、東京2,900。だいたいこんな感じです。愛知県にこれだけたくさんのお寺があるのは、戦国時代に戦勝祈願をしたり亡くなった武将を弔ったりと、お寺がよく使われたからだと言われています。
また、愛知県人はバカ、アホの意味で「たわけ」をよく使います。時代劇で殿様が「たわけもの!」と部下を叱るあれです。ほかにも、年配の方は「お先に失礼します」の意味で、「ご無礼します」と言ったりします。

食にも戦国時代の名残を感じます。例えば、「味噌煮込みうどん」です。太い生煮えの粉っぽい麺が、赤みその濃厚なだし汁の中でぐつぐつ煮えているやつです。赤みそは八丁味噌とも言われますが、家康の生誕の地、三河の岡崎が発祥です。
では、あの特徴的な麺はどこで生まれたと思いますか?答えは、山梨県です。味噌煮込みの麺のルーツは「ほうとう」です(他説もあり)。山梨の名物ですが、ほうとうはその昔、戦国武将の携帯食でした。
となれば、武田信玄が徳川を攻めたときも、ほうとうを持参したに違いありません。残念ながら、武田氏は長篠の合戦のあとで滅んでしまいますが、戦国最強の武田軍の兵士の多くは、三河藩に転職したといわれています。(その後三河藩は最強と言われた) ここで三河の八丁味噌と甲斐のほうとうが運命的な出会いをします。そして生まれた愛の結晶が「味噌煮込みうどん」だったのです。

次にご紹介したいのが、あんかけスパです。「あん」といっても、あんかけうどんや天津飯とは違ってスパイシーなデミグラスソースのようなものです。
炒めた太麺パスタにソーセージやベーコン、玉ねぎ等をトッピングし、その上に黒褐色のあんをかけます。希望によってカツやハンバーグ、目玉焼きなんかを乗っけることもできます。見るからにB級グルメ。初めて食べた人は間違いなく「何だこれ?」と感じることでしょう。はっきりいって美味しくはありません。二度と口にしようと思わない人が大半です。でも何かの間違いで3回口にすると、不思議なことに虜になってしまいます。実際、あんかけスパのお店はどこも大人気です。

ところであんかけスパのルーツはどこでしょうか?これは私の勝手な推測です。
あんかけスパ発祥とされる名古屋市の某店は、もともと洋食屋さんでした。通常、洋食における主役は、カツやハンバーグ、ステーキです。そして、少量のパスタやサラダが脇役として申し訳程度に添えられます。
ここからは私の推測ですが、ある日某店のシェフはふと思いました。洋食の主役と脇役を逆にしたら、どんな料理になるだろうと。そんなシェフの偶然の思い付きから生まれた料理が、あんかけスパではないでしょうか。
ここではパスタが主役に躍り出て、カツやハンバーグは脇役に格下げされます。これぞまさに洋食界の下剋上。農民から天下人に成り上がった秀吉を彷彿とさせます。

愛知県人は今日も名古屋めしを食べながら、戦国の武将たちに思いを馳せるのです。

 

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閑話休題

【閑】ぞうさん

皆さんは、童謡「ぞうさん」を聞いて違和感を感じたことはありませんか。
私は子供の頃から「そうよ母さんも長いのよ」の部分に強い違和感を感じ、たびたび悪夢にうなされました。

私の夢の中では、仲の良い親子(ママと坊や)が動物園で柵の外から像を見ており、坊やはママの背中におんぶされています。そして、坊やがママに問いかけます。「ぞーさん、ぞーさん、お鼻が長いのね?」

ママはその問いかけに、「そうよ、母さんも長いのよ」と答え、肩越しに坊やを振り返ります。さっきまで普通だったママの鼻が、恐ろしいことに蛇のように長く伸びているではありませんか。

恐怖に震える坊やの青ざめた顔。甲高い声で笑い続けるママ。
これほどシュールな童謡が他にあるでしょうか。


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株式

【株】長期投資への思い

これまで私は一貫して長期投資をお勧めしてきましたが、投資手法は十人十色、人それぞれでいいと思います。長期投資が正しいというエビデンスもありません。
ただ、私は個人投資家が気楽に取り組むには、ほったらかし投資が向いているんじゃないかなと思っています。

私は金融機関で30年間、年金基金や機関投資家のお客様に、内外の債券や株式、不動産等のオルタナティブ商品を販売してきました。私が勤務していた会社は一応大手といわれる運用会社です。その運用会社が運用する商品や、海外の一流ファンドの運用商品を購入いただいたお客様に、3ヶ月ごとに運用結果の報告を行っていました。私が30年の経験で知ったことは、一流といわれる運用会社や最先端のヘッジファンドでも相場を当てることは至難の業で、良好な運用実績を何年も続けることはできないという厳しい現実です。優れた過去実績を掲げた商品が、お客様にご採用いただいたとたん運用が悪化しクレームとなることが何度もありました。
内外の一流プロでさえ勝つことが難しい運用の世界で、個人投資家がガチでぶつかって勝ち残る可能性がどれだけあるでしょうか。短期運用で巨額の利益を上げている個人投資家が存在することは知っていますが、正直、私には彼らが幸運なサバイバーにしか見えません。

私は、株式投資を個人がもっと手軽に取り組めるものになればいいと思います。しかし、株式は銀行預金とは異なります。価格下落、元本割れのリスクを受け入れることができない方は、株式に近寄るべきではありません。しかし、リスクを正しく理解し受け入れることのできる方には、もっと気軽に株式投資にアクセスしてほしいです。専門的な知識や継続的な相場のモニタリングなどなくても株式投資は可能です。そして、そのための方法のひとつが、買値にこだわったほったらかし投資です。
プロ投資家とは異なる土俵で戦い、長期の時間軸でゆっくりと投資先企業の成長を見守り、成果を享受する。私がお勧めするのは、そんな運用です。

私が長期投資をお勧めする際によくいただくお叱りは、バブル崩壊後30年たつのに、いまだ日経平均はバブル高値を回復していないではないか、というものです。おっしゃる通りで反論できません。ただ、私は今後日本でバブルが崩壊しても、平成バブルのようにはならないだろうとの希望的観測を持っています。なぜなら、平成バブルは特殊なケースであり、今やその特殊性は大幅に改善していると考えるからです。具体的には、①当時は企業間や銀行と株式持合いが盛んに行われていたこと、②東京市場での外国人シェアが極端に低く内外の価格裁定が働かなかったこと、③バブル崩壊後の政府日銀の政策対応が誤っていたこと、等です。

今後も資本主義の宿命として、5年から10年のサイクルでバブルの形成と崩壊が繰り返されるでしょう。そして、バブル崩壊の時期は誰にも分りません。ただ、今後はバブルが崩壊したら当局の適切な政策対応によって、他国と同様に5年程度で相場は回復するものと期待しています。