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年金

【年】お得な年金、損な年金

年金の世界は複雑で苦手意識のある方も多いと思います。今回は投資家の端くれとして、得か損かの目線で年金ネタをいくつかご紹介したいと思います。
(○:得な年金、×:損な年金)

1.タダで医療保険に入る方法(学生納付特例) ○
日本国内に住む全ての日本人は20歳になったら国民年金の被保険者となり、保険料の納付が義務付けられます。ただ、学生については在学中の保険料の納付が猶予される「学生納付特例」制度があります。本人の所得が128万円以下であれば対象になります。また、親御さんの所得水準は問われません。

国民年金の保険料は約17,00円(月額)とかなり高額です。そのため、保険料を滞納する学生さんも多いかもしれませんが、私は「学生納付特例」の申請は絶対にするべきだと思います。なぜなら、学生納付特例の対象期間は、65歳から受け取る老齢基礎年金(老基)の額には反映されませんが、障害基礎年金(障基)の額には反映されるからです。大学に在学中の病気(含むメンタル)やケガがもとで障害状態になった場合、年間80~100万円程度の障基が支給されます。申請をするだけ保険料ゼロ円で医療保険に加入するようなものです。申請しない手はありません。

また、学生納付特例を使った場合、20歳~就職時(22歳就職なら2年間)までの期間は老基の額に反映されず、その分だけ年金額が小さくなります。具体的には、満額78万円×2年/40年=3.9万円だけ年金額が減ります。しかし、会社で62歳まで働けば、厚生年金の方で「経過的加算」として2年分の老基相当額が支給されるので、結果的に満額の老基を受け取ることになります。ですから、60歳以降も継続雇用で働くつもりの人は、保険料の追納は不要だと思います。

2.退職後の雇用保険と年金のお得なもらい方(厚生年金の支給停止を避け、雇用保険を満額受け取る方法)○
通常、雇用保険の基本手当(失業給付)を受け取る間、老齢厚生年金(老厚)は100%支給停止されます。しかし、65歳以降に基本手当を受け取る場合は、老厚は支給停止されません。基本手当と老厚のダブル受給が可能となります。
具体的には64歳11ヶ月で退職し、基本手当の受給を申請します。実際の受取り開始が65歳以降となっても構いません。

ここでは、65歳になる前に退職することがミソです。65歳になってから退職すると、基本手当でなく高齢者求職者給付金といって別の給付を受け取ることになります。基本手当は最大で基本手当日額の150日分(勤続20年以上の場合)を受給できますが、高齢者求職者給付金は、最大で基本手当日額の50日分(勤続1年以上の場合)しか受給できません。
老厚は65歳になれば支給開始されます、65歳以降は雇用保険との調整はありませんので、ダブル受給が可能となるわけです。

3.年金を繰り下げるときの注意点 ×
Q 私は65歳以降も会社で勤務する予定のため、厚生年金を受け取ると在職老齢年金(在老)として減額されてしまいます。そのため、厚生年金を70歳まで繰り下げようと考えていますが、注意点はありますか。
A まず、在職中に老齢厚生年金(老厚)を繰り下げても、70歳から受け取る老厚から在老で支給停止されるはずだった額は減額されてしまいます。支給停止後の老厚に繰下げ加算が付くだけです。老厚を繰り下げても、在老から逃げることはできません。
また、万一、繰下げ期間中にあなたが死亡した場合、遺族の方が受け取る遺族厚生年金(遺厚)には繰下げ加算は考慮されません。それから、65歳から老厚を受給した場合に加給年金が付いてくるときは、老厚を繰り下げると加給年金は支給停止されてしまうので注意が必要です。その場合は。老齢基礎年金のみ繰り下げる方がいいかもしれません。

4.障害年金をもらいながら働くと? ○
Q 私は障害年金を受給中ですが、生活が苦しいので来月から働く予定です。この場合、障害年金は調整されてしまいますか。
A いいえ調整はされませんので安心してください。障害基礎年金(障基)、障害厚生年金(障厚)の支給停止事由は次の通りです。①労働基準法の障害補償を受け取ったとき、6年間支給停止となる。②障害等級に該当しなくなったとき。
したがって、会社勤めをして給料をもらっても、障害年金の支給停止事由には該当しません。ただ、会社勤めをすることで障害が改善したと医者が判断し、障害認定を取り下げた場合は年金がストップします。ですので、事前に担当のドクターによく相談しておいた方が無難です。
また例外として、20歳前傷病による障害基礎年金を受給中の方は、取得制限がありますから注意してください。

5.事実婚カップルの離婚分割 ×
事実婚の場合、離婚分割の対象となる期間は、国民年金の3号被保険者であった期間に限られます。事実婚であった期間が無条件で離婚分割の対象になるわけではないので注意してください。また、離婚から2年を経過すると分割の請求はできません。

6.男はつらいよ(年金に見る男性差別)×
年金の世界は旧態依然としており、前時代的な男性差別が今も残っています。主なものをご紹介します。
①寡婦年金
国民年金の1号被保険者である世帯主が老基等を受け取ることなく死亡した場合、一定の条件下で配偶者に寡婦年金が支給されますが、「寡婦」とあるように支給対象は女性に限られます。
②中高齢寡婦加算
厚生年金の被保険者であった世帯主が死亡した場合、配偶者が40歳以上65歳未満等の場合、配偶者の遺族厚生年金(遺厚)に中高齢寡婦加算が加算されますが、これも「寡婦」とありますので女性限定です。
③遺族厚生年金
遺族である配偶者が女性の場合は無条件で支給されますが、男性の場合は55歳未満の方は支給対象になりません。55歳以上でも60歳までは支給停止されます。

7.私、変わります(性転換時の手続き)×
男性が女性に性転換したら、どういう手続きをしたらいいのでしょう。
まず、家庭裁判所から戸籍の性別変更の取扱いの審判を受け、戸籍上の性別変更を行います。戸籍の性別変更の審判に際しては、次の6要件が必要です。
①2人以上の医師により性同一障害であると診断されていること。
②20歳以上であること。
③現に婚姻していないこと。
④現に未成年の子がいないこと。
⑤生殖腺がないこと。または生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
⑥その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。

戸籍の変更手続きが済んだら、年金事務所に申し出て性別・氏名の記録を変更します。
以上のように、単に男がつらいからといった理由で性転換手術を受けても、①の要件を満たさないと戸籍上性別変更は認められないようです。