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年金

【年】副業で変わる社会保険制度

コロナ禍によって私たち労働者の生活は大きく変わりました。収入の減少を補うために副業を始めた知人が、私の周りにも大勢います。日本社会の特徴と言われてきた終身雇用や年功賃金も、今では、いつの話?と聞かれる始末です。労働者の置かれる社会のあり様が変われば、労働者をサポートする社会保険制度も変化を求められます。
実際、2020年9月に複業者(本業+副業というように複数の仕事に従事する人)に係る労災保険が、そして、2022年1月から雇用保険が変わっています。今回は、労災、雇用保険を含めた社会保険制度における複業者の取扱いについて、確認していきたいと思います。

まず、労災保険です。労災保険は、労働者が業務や通勤が原因で病気やケガになったり死亡した場合に、所定の給付金が支給されます。そして、その給付金の計算の基になる給料(給付基礎日額)は、これまで災害や事故が発生した会社の給料を基に計算していましたが、今回の改正で複業者については、各勤務先の会社の給料の合計額で給付基礎日額を算定することになりました。
これは考えてみれば当たり前のことです。例えば、A社(給料10万円)とB社(給料20万円)の2社で働いていた人がA社で勤務中、業務上のケガで1ヶ月間休業を余儀なくされた場合、今までは労災からA社10万円の給料に対応する休業補償給付しか支給されなかったわけです。しかしこの場合、A社休業中にB社に従来通り出勤できるはずはなく、B社も休業することになります。ですから、A社とB社を合算した給料を基に給付基礎日額を算出する今回の改正は当然の変更です。

もうひとつの労災保険の変更点です。従来は労災認定する際、ひとつひとつの会社の労働時間やストレスを別々に評価していましたが、今回、複数の会社の労働時間やストレスを合算して評価することに変更となりました。これまでなら、A社のみの労働時間では労災認定に届かなかった場合も、これからはA社とB社の労働時間を通算することで、労災認定されるケースが増えてくるものと思われます。

次は雇用保険(失業保険)です。雇用保険は加入する条件として、①1週間の所定労働時間が20時間以上、②31日以上継続して雇用する見込み、となっています。複業している人が2社の所定労働時間や雇用日数を合算することはできません。主たる勤務をしている会社(本業)でのみ、雇用保険に加入することができます。
でも今後、本業と副業のウェイトの差がなくなってくると、現行ルールでは弊害が生じると思います。それを見越してか、今回の改正では65歳以上の労働者に限定し、本人の申請があった場合には、副業先での労働時間を合算して雇用保険を適用する制度が、試験的に開始されています。

最後は、健康保険(介護保険)と厚生年金での複業者の取扱いを見ておきましょう。複数の会社で健康保険と厚生年金に加入することになった場合(※)も、健康保険証は一人につき一枚です。メインとなる会社を自分で選択し届け出ることで、選択した会社の健康保険から健康保険証が発行されます。
(※)健康保険と厚生年金の両方に加入しなければいけないという法律の規定はありませんが、実務上、健康保険と厚生年金の加入手続きは一体で行われるため、両制度の片方だけ加入し、他方には加入しないという選択はできません。

ここで、メインとなる会社を選択する際の注意点です。それは、給料を多くもらっている会社の健康保険組合を、単純にメインとなる健康保険組合として選択するのは間違いだということです。A社とB社の2社で働いている場合、A健保組合とB健保組合の保険料率(健康保険+介護保険)と付加給付(健保組合独自のプラスアルファ給付。高額療養費や傷病手当金等で上乗せ給付する制度)の内容を比較し、有利な方をメインの会社に選択しましょう。片方が組合健保、もう一方が協会健保の場合は、組合健保の会社を選択した方がベターな場合が多いと思います。また、A社B社とも協会健保に加入している場合は、協会健保間で保険料に差があるので保険料の安い方をメインに選択するといいでしょう。


厚生年金に関しては保険料は全国一律ですから、A社、B社どちらを選択しても有利不利はありません。また、厚生年金の年金額については、A社とB社両方の給料を合算した額(平均標準報酬額)が年金額に反映されますので、やはり、A社とB社のどちらをメインに選択しても違いはありません。



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ライフプラン

【ラ】介護・認知症プラン

人は誰でも最後はPPK(ピンピンコロリ)で逝きたいといいますが、今後は難しくなるかもしれません。2021年の厚生労働省の健康寿命調査では、男性は72.68歳、女性は75.38歳でした。医学の進歩で今後とも男女の平均寿命は伸びていくでしょうが、健康寿命の伸びは限定的と思われます。結果、介護・認知症ステージの期間が伸びることになります。その場合、人々はNNK(ネンネンコロリ)で最後を迎える可能性が高くなります。
介護・認知症はゆっくりやってくることもあれば、いきなりやってくることもあります。高齢者を抱える家族としては、早い段階から準備にはいっておいた方がいいです。私自身、認知症で要介護状態の親がいます。今回は、高齢者の介護・認知症への備えとして、何をどういう順番で進めていけばいいのか、皆さんと考えてみたいと思います。

親が認知症となり意思能力を失った場合、まっさきに困るのは親の預金口座が凍結されることです。子が親の介護費用を親の口座から支払おうにも、銀行は支払いに応じてくれません。そうならないために、介護・認知症プランの第1ステップとして、親が認知症になる前に、親の普通預金のキャッシュカードとパスワードを子と共有しておきたいです。また、親の定期預金は、できれば普通預金に振り替えておいた方が無難です。銀行の中には、予め親の代理人を登録できるところがありますので、確認のうえ可能であれば必ず登録しましょう。生命保険では指定代理請求人を登録できますので、登録しておきましょう。親が株式や投信をお持ちなら、証券会社の代理人登録サービスを利用してください。以上が、まずやっておきたいことです。

次に、親が要介護の状態となった場合のキーマン(司令塔、情報集約者)を、家族の中で決めておいてください。いざというときにリーダーとなってプランを推進していく役割です。そして、親の介護対応について本人の希望を聞き、その実現可能性につき人繰りと金繰りの観点から検討します。

【図1】は厚労省が全国の40歳以上の男女に、どこでどのような介護を受けたいかについてアンケートを行ったものです。男女とも約3/4が自宅での介護(①~③)を希望しています。住み慣れた環境で介護を受けたいとの思いは強いようです。皆さんの親御さんも、自宅での介護を希望する可能性が高いと想定しておきましょう。自宅介護の問題は、介護を行う「人繰り」をどう付けるかです。絶対避けなければいけないのは、家族が介護を丸抱えして介護離職に追い込まれたり、精神的肉体的に追い詰められて家族の方が病んでしまうことです。

そのためには、公的介護保険の制度を理解し、使い倒すことです。介護保険の居宅サービス(介護担当者が自宅を訪問し親のサポートをしてくれる)や、通所サービス(親が介護施設を訪問し、レクリエーションや食事、入浴を楽しむ)をフルに活用し、家族の負担を最低限に抑えます。そして、残った介護対応に家族の誰が当たるのか、その負担に耐えられるのか、を検討します。
家族が負担に耐えられない場合は、残念ですが親の希望に反して介護施設への入所を検討せざるを得ません。各地の包括支援センターが無料で色々な相談に乗ってくれるので、積極的に活用するといいです。

親が【図1】の④~⑥(特に④)を希望した場合は、「金繰り」が問題となります。介護に係る費用は、親の金銭で賄うことが大前提です。そのため、親の経済力、キャッシュフロー、ストックの資産について、親から情報を入手しておく必要があります。年金や株の配当といった正のキャッシュフローと、借入金の支払い等の負のキャッシュフローの金額。株式や不動産、保険といったストックの資産の金額です。
年金以外にも収入があるようなら、自己負担で介護サービスを追加することができますし、不動産や株式等の資産があれば、有料老人ホームの入居一時金に充当することができます。

介護施設も種類が分かれています。公的施設か民間施設か。長期入所者用か短期入所者用か。医療行為が必要な人向けか、不要な人向けかなど。事前に近隣の介護施設をチェックし、予算と目的にあった施設があるか確認しておきたいです。

親が認知症になったら資産が凍結されると言いました。預金や生命保険等、予め代理人を登録することが可能な資産は安心ですが、親御さんが不動産をお持ちの場合は、別途方策を検討しなければいけません。不動産は預金のように代理人を登録することはできませんが、信託契約を子と締結することで代理人と同様の効果を持たせることができます。具体的には、親を委託者兼受益者、子を受託者とする信託契約(家族信託)を締結する方法です。この場合、親名義の資産は子の名義に移るため、契約締結後に親が認知症となり意思能力を失っても、子が契約者として親の資産の管理・売却ができます。また、信託契約には、不動産以外にも預金や株式等の管理・運用を対象とすることも可能です。相談には、司法書士や行政書士等の法律専門職が乗ってくれます。(実際に契約書を作成する場合は手数料が必要になります。)

最後に。親の希望を可能な限り叶える形で介護・認知症プランを設定して、それで終わりではありません。大事なのは、介護・認知症プランが実際に走り出した後です。親が意思能力を失った後は、子が主人公です。子は、介護・認知症プランが問題なく回っているか、定期的にチェックしなければいけません。介護担当者や施設のスタッフにヒアリングし、親の介護における問題点の把握に努めます。そして、必要に応じ、家族だけでなくケアマネージャーを交えてミーティングを開き、対応を検討します。家族と介護関係者との良好なコミュニケーションが、親への上質な介護サービスの提供につながります。

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株式

【株】ヘタレの夢

若い頃に保険のおばちゃんに勧められるまま入った個人年金、それから企業年金と厚生年金、プラス株の配当で、我が家の老後生活は贅沢をしなければ何とか回りそうです。個人年金と企業年金の支給開始は60歳。私は60歳以降も嘱託として細々と働くつもりですが、その給料は家計に入れなくても良さそうです(嫁はんのOKはもらっていません)。

給料といってもシニアの給料ですから、多寡が知れています。年間100万~150万円くらいでしょうか。でもこのお金はただのお金じゃありません。最悪、なくなってもいいお金です。私が60歳にして初めて手にする超リスクマネーです。

超リスクマネーの使い道と言ったら、ハイリスクの株式運用しか思いつきません。今まで「カローラに乗って制限速度遵守」みたいな運用をしてきましたが、人生の終盤に「ちょっとだけポルシェに乗って」も、ばちは当たらないでしょう。

超リスクマネーを使って渡部師匠の「1O倍株の4つの条件」を60歳からの10年間で実践し、その過程と結果を再現性をもった内容にまとめ上げ、皆さんに還元する。これがヘタレの夢です。現在は当ブログにて、しょーもない記事をくどくどと書いておりますが、還暦を迎えた暁には、皆さまの収益につながる(かもしれない)真に有益な情報をお伝えできたらと思っております。

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保険

【保】生命保険の歩き方

今回は、「生命保険の歩き方」と題して、生命保険の3つの使い方についてお話します。

最初は予期せぬアクシデント(保険事故)に見舞われたときの出費に備える、保障ツールとしての使い方です。これは改めてご説明するまでもありませんが、死亡、病気・ケガ、就業不能等に備えて、定期/終身保険、医療/がん保険、就業不能保険等に加入することです。ただ、各種保険に入り過ぎて、保険料の支払いで保険貧乏になっては元も子もありません。保険に入る前に、しっかり社会保険(健康保険、厚生年金、雇用保険等)の給付内容をチェックし、足らないところに限って民間の保険を利用すべきです。保険料の目安は家計収入の5%~10%と言われますが、そんなには要らないと思います。3%程度で十分じゃないでしょうか。(月収30万円の家計で保険料1万円のイメージ)

ここで、簡単に国の保険(社会保険といいます)についてご説明します。死亡に関しては、厚生年金・国民年金から遺族年金が支給されます。病気・ケガの場合は、健康保険に加入していれば治療費の自己負担は3割で済みますし、手術や入院が必要で多額の治療費が生じた場合も、高額療養費制度で自己負担は月当たり10万円以下に抑えられます。また、就業不能時には、健康保険から傷病手当金として給料の2/3程度の金額が最長1年6ヶ月支給されます。さらに、障害が残った場合には、傷病手当金の期間を引き継いだ1年6ヶ月経過後から障害年金が支給されます。(役所の障害認定が必要です)

次は運用ツールとしての使い方です。以前、「保険アラカルト」でお話しましたが、保険は他の金融商品と比べて大変コストの高い商品です。そのため運用ツールとして使うには不向きで、預貯金や投資信託を優先すべきです。例外があるとすると、超長期国債の代替として使うケースです。長期金利が急騰(債券価格が急落)した後の金利低下局面を捉え大きなリターンを得ようと思ったら、できるだけ残存期間の長い固定利付債を買うことが有効です。しかし、今のところ日本で私たち個人投資家が購入できるのは、10年変動利付国債と5年&3年固定利付国債のみです。個人年金は残存期間が30年を超える超長期の社債と見えなくもないので、代替策として使おうという話です。ただし、国債であれば好きなときに売却できますが、個人年金は売却はできません。中途解約も元本を大幅に割り込むため、事実上不可能です。個人年金に流動性はないものとご理解ください。

最後は、相続ツールとしての使い方です。これもご存知の方が多いと思いますが、死亡保険金の受取人が法定相続人の場合、保険金のうち「500万円×法定相続人数」までは相続税が非課税になります。非課税メリットのほかに、争続予防メリットがあります。相続が発生したのち、死亡保険金は受取人固有の資産とされ、遺産分割の対象からはずれます。(共有財産とならない)つまり、被相続人が生前に渡したいと思った相手=受取人に、確実にお金を渡すことができるのです。遺産分割の対象にならないということは、他の相続人から遺留分侵害額請求をされる恐れも、基本的に(※)ないということです。これは遺言や家族信託にもない、非常に大きなメリットです。
(※)最高裁の判決では生命保険金について、「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、特別受益に準じて持戻しの対象となると解する」とされています。つまり、他の相続人との不公平が度を過ぎて大きい場合には、保険金受取人は遺留分侵害額請求を受ける可能性があると言うことです。

また、医療保険(がん保険)も相続ツールとして使うことができます。例えば、父=資金負担者=契約者、子=被保険者=受取人、とする医療保険に保険料全期前納払(一括払)で加入します。そして、父(契約者)に相続が発生した場合に、子に名義変更します。契約設定時は資金負担者=契約者=父であるので、子への贈与には当たらず贈与税は発生しません。父の相続発生時に契約者を父→子へ名義変更する際、子に相続税が課税されます。この場合の相続税課税評価額は、保険料払込期間終了後は解約返戻金相当額(入院給付金日額の10倍)となります。一括払保険料が300万円で入院給付金日額が1万円の場合、相続税課税評価額は1万円×10=10万円、となります。現金300万円の評価を10万円に圧縮できたことになります。死亡保険金の相続税非課税枠をすでに使用済で、さらに財産圧縮を図りたいという方には最適なツールです。

また、この全期前納払の医療保険は契約時に保険料の払込が完了し、以後の保険料負担はありません。つまり、子=被保険者=受取人は、生涯の医療保障を父からプレゼントされたことになります。これからの人生100年時代において、医療費の自己負担の増大は避けられず、民間の医療保険等で公的医療保険を補完する備えが必要です。受取人となった子が手にするメリットは、今後ますます大きくなるでしょう。
本スキームは親から子への医療費の贈与に等しい経済効果がありながら、法律的には贈与行為に該当しないため、贈与税が課税される余地はありません。今後、相続と贈与の一体化の議論において贈与税非課税措置の撤廃が懸念される中、本スキームの有効性は変わることはなく、一層クローズアップされていくものと見ています。


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不動産

【不】不動産投資のリスク管理②

次に、この出口における投資利回り上昇リスクへの対応について考えてみます。結論から先に言うと、出口のタイミングを分散するしかないと思います。例えば、「物件を9年間保有したら売却→新規物件購入」の1サイクルを、3年おきに3物件で入替えをしながら回していくイメージです。そうすれば、9年間で出口を3時点に分散することになり、投資利回りの上昇リスクを軽減することができます。


しかし、この戦略の難点は多額のキャッシュが必要なことです。普通のサラリーマンには難しい話です。でも、ここまでやらないと不動産のリスク管理はできないということです。株式であれば相場が回復するまで待てばいいのですが、不動産は現物であり経年劣化との時間の勝負です。たまたま出口で利回りが上昇していたとしても、売却の先送りは危険です。やはり健全なリスク管理という点では、複数物件による売却タイミング=出口の分散しかないと思います。

私は不動産投資は勝者の守りの投資だと思います。十分な資産を構築した投資家が、インフレで資産を減らさないための投資です。ハイレバレッジによる不動産投資で、少額の頭金から資産を構築しようとするような行為は、順番が逆です。
資産を築くなら、まずは本業で地道にステイタスアップを図り、そこで得たキャッシュを株式に投じる。株式投資をエンジンにして、目標の水準まで資産が成長したら、そこで初めて不動産投資の出番です。
レバレッジを利かせた不動産投資からスタートするのは、既に相当な年収を稼いでいるハイパフォーマーに限定されると思います。

最後に、レバレッジに関し注意すべき点について、触れさせていただきます。それは、不動産投資において売却を行う場合、銀行に抵当を外してもらう必要があることです。銀行は残債が売却価格を下回っている場合(残債<売却価格)に限り、抵当権解除に応じます。残債が売却価格を上回っている場合は、別途自己資金を投入して差額を補填しなければいけません。


物件の売却価格は売却時の投資利回りで、残債は頭金(とローン金利)で決まります。売却時の投資利回りを想定し、売却価格を下回る残債の金額から当初必要な頭金を逆算できます。【表1】では、賃料1000万円、投資利回り4%、価格2億5000万円の物件を、10年後に売却するケースを考えます。
現在4%の投資利回りが10年後にどこまで上昇すると見るのか。6%まで上昇すると見た場合、頭金5000万円では足りないことになります。(頭金5000万円では利回りが5.44%でほぼ残債=売却価格となり、それ以上に利回りが上昇すると残債>売却価格で、別途自己資金の補填が必要になる。)
頭金ゼロのフルローンでは利回りが4.35%を上回った場合、自己資金を投入しない限り売りたくても売れない状態になります。

出口を想定して物件を購入する場合、出口での投資利回りの想定値に頭金の金額が拘束されるという点にご注意いただきたいと思います。

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不動産

【不】不動産投資のリスク管理①

不動産投資の本にはメリットとして、ローンを借りやすい、他人が借金を払ってくれる、時間を買うことができる、などが上げられることが多いです。しかし、レバレッジをきかせやすいというのは、両刃の剣だと思います。
私は不動産投資のメリットは、インフレヘッジと賃料収入による安定的な運用が期待できることだと考えます。不動産投資は衣食住のうち住を供給するものであり、食料、衣料を供給する仕事とともに、人がいる限り需要がなくなることはありません。景気の波に大きな影響を受ける株式投資に比べ、安定した収益を得られる点が魅力です。

ただ、不動産投資には株式投資にはない固有のリスクがあります。それは、不動産が食品や衣料品と同様に、現物=生モノであることです。現物である以上、時間とともに品質が劣化することは避けられません。不動産投資は時間との勝負です。
株式投資が時間を味方にした長期投資であることと対照的です。不動産投資の本質は、運用の開示時点から出口を意識し、中期的な目線でアクティブに物件の入替えを行っていくもの、と私は理解しています。

私はメールで某業者さんから物件情報を送ってもらっています。メールには賃貸物件の損益シミュレーションが添付されており、参考にさせて頂きます。賃料の下落、空室の発生、出口戦略(10年後に売却)が保守的に織り込まれた上質なシミュレーションだと思います。ただ、1点気になる箇所があります。それは売却価格です。

このシミュレーションでは、収益還元法(=純収益NOI/投資利回り)で売却価格が算出されており、投資利回りは物件購入時(つまり今現在)のものが適用されています。足元の不動産投資利回りは、マイナス金利やデフレ経済の影響で史上最低水準にあります。その利回りが今後10年も続くと見るのは、いささか楽観的に過ぎる気がします。

不動産投資の本では物件の長期保有・持ち切りが前提となっているせいか、投資利回りについて言及されることは少ないです。しかし、中期での物件入替えを前提とした場合、対応が困難という点で最大のリスクは投資利回りの上昇ではないでしょうか。以下の例で、出口(売却)時における投資利回りの上昇インパクトを見ていきましょう。なお、以下では便宜上、投資利回りをネット等で簡単に検索できる表面利回りで代用しています。

東京23区の築浅RCマンションの表面利回りは概ね4%前後でしょうか。仮に純収益が1000万円の物件があるとすると、この物件の価格は1000万円÷4%=2億5000万円、となります。10年後も純収益は不変であったとして、利回りが①6%、②8%、③10%に上昇した場合、売却価格は次のようになります。①1億6700万円、②1億2500万円、③1億円。10年間で稼いだ純収益1億円は、一瞬で消失してしまいます。因みに、リーマンショック後の2009年当時、23区内の新築RCの表面利回りは7~9%の水準でした。10年後に利回りがそこまで上昇しない保証はありません。

不動産業者は知ってか知らずか出口に言及することは少なく、物件の持ち切りを前提とした生命保険の代替効果や年金の代替効果を強調します。しかし、築後数十年の築古マンションに、保険や年金の代わりになるキャッシュフローを期待するのは厳しいです。むしろ経年劣化による修繕費の増加、賃料の下落、空室の増加、賃借人の属性悪化による滞納・トラブルの増加と、手残りの減少・手出しの増加が予想されます。
そんな負動産を押し付けられる家族こそ、いい迷惑だと思いませんか。



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株式

【株】最高値

証券の世界では「最高値」と書いて、「さいたかね」と読みます。国語的には「さいこうち」が正しいのかもしれません。テレビ東京のモーサテで著名なエコノミストがいつも「さいこうね」と言うので、ひょっとしたら「さいこうね」もありなのかもしれません。

最高値を「さいこうね」と読むのが正しいとすると、その反対のケースは「最低値」「さいていね」となりますが、マーケット関係者は「最安値」を使い「さいやすね」と読みます。だとすると、やっぱり「さいたかね」が正しいのではないでしょうか。

この話題に触れるたび、昔、女友達に「あんたって、サイテーね!」と罵られたことを思い出します。

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株式

【株】B/Sを使って稼げ

いつだったが、誰からだったか。「本当の金持ちはバランスシートを使ってリッチになる」という話を聞いて、雷に打たれたようなショックを受けました。
私が「ほったらかし教」の信者になった瞬間です。

本当の金持ちは、売買を繰り返し収益を積み上げて資産を増やす(P/Lアプローチ)のではなく、一定の残高をキープしてマーケットの上昇による評価額の増加で資産を増やす(B/Sアプローチ)、という話です。

例えていうなら、ショベルカーで土砂を1m、2mと積み上げるのがP/Lアプローチ。地殻変動による大地の隆起で3,000m級の山脈を形成するのがB/Sアプローチ。

不器用で面倒くさがりな私は、今日もぼんやりと地殻変動を待っています。
(※)P/L:損益計算書、B/S:貸借対照表

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年金

【年】トンチン年金と国民年金基金

人生100年時代を前に終身年金のニーズが高まっています。今回は国内の生命保険会社から発売されている終身年金(トンチン年金)と厚生年金、及び国民年金基金を比較してみたいと思います。

トンチン年金とは、イタリアの銀行家ロレンツォ・トンティが考案した終身年金の一種です。日本では一般的な個人年金保険よりも解約時や年金受給前死亡時の返戻金の返戻率を低く設定した、低解約返戻金型の個人終身年金保険のことをいいます。
日本でも生命保険会社から販売されていますが、国内の超低金利を受けて、保険料対比での給付額(年金額)はかなり寂しいものになっています。【表1】に国内生保が発売しているトンチン年金の事例を載せてあります。

A生保は55歳から70歳までの15年間に月額54,000円の保険料を払い込み、70歳から終身、年額511,100円の年金を受け取ることができます。そして元が取れるのは19年後です。89歳より長生きすれば、その年数分だけ得になります。B生保の場合は、20.3年になります。なんだかなあ、て感じですか。ただ、100歳まで生きるかもしれない長寿リスクのヘッジにはなると思います。

次に厚生年金を使い、同じように終身年金の増額を図ったらどうなるでしょうか。
厚生年金の保険料は給料の9.15%(従業員負担分)であり、年金額は年収累計の約0.55%です。今、A生保のトンチン年金と同じ54,000円を厚生年金の保険料として払うとします。その場合の給料は、54,000円÷9.15%=590,164円です。この給料を55歳から70歳まで15年間受け取ると、その間の年収累計は、590,164円×12月×15年=106,229,520円となります。そして、15年間の労働に伴う厚生年金の増加分は、106,229,520円×0.55%=584,262円、となります。

これはA生保のトンチン年金511,100円よりも7万円以上多い額です。ただ、厚生年金には保証期間はありません。同様に、B生保のトンチン年金600,000円に対し、厚生年金は732,708円となり13万円以上多くなります。厚生年金は国の制度で融通が利きにくいというデメリットはありますが、60歳以降も会社勤めをすることが可能であれば、厚生年金を使って終身年金の増額を図った方が、民間の個人年金を使うよりも有利なことがお分かりいただけると思います。

個人事業主の方やフリーランスの方は厚生年金に加入することはできませんが、国民年金基金で終身年金の増額を図ることができます。【表1】では50歳1ヶ月の男性が60歳まで毎月保険料16,510円を払い、65歳から終身、年額118,940円の年金を受け取る事例を載せています。(保証期間はなし) この場合、元を取るのは16.5年後となり、トンチン年金より有利な結果になっています。

また、トンチン年金の保険料は生命保険料控除の対象となり、4万円まで所得控除が可能です。一方、国民年金基金の保険料は社会保険料控除の対象で、控除額に上限はなく税制面で大変優遇されています。なお、国民年金基金の保険料は月額68,000円が上限です。また、iDeCoをやっている方は、iDeCo掛金と合算して月額68,000円が上限となりますので、ご注意ください。

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株式

【株】インフレが春を呼ぶ

インフレとは何か。日本語に直訳しますと「通貨膨張」となります。お金が風船みたいに膨らむことです。今、大根が1本100円でスーパーの店頭で売られているとしましょう。ところが、その後天候不順で1本200円に値上がりしたとします。

大根1本=100円 ⇒ 大根1本=200円 ………①

①式は大根1本の価値をお金(円)で表現しており、大根の価値が上がった様子が分かります。ここで①式の両辺を100円・200円でそれぞれ割ってみます。そうすると、

1円=大根0.01本 ⇒ 1円=大根0.005本 ………②

となります。②式では、お金(円)の価値を大根の本数で表現しています。この式より、天候不順によってお金の価値が、大根0.01本から大根0.005本に低下した様子が分かります。
お金とモノの関係性において、モノの価値が上がり、お金の価値が下がる現象。それがインフレ(インフレーション)です。

インフレが発生するメカニズムは2つあります。中学校の公民の教科書に載っていた需要と供給のグラフを思い出してください。1つ目は、景気が良くなって需要曲線が右にシフトし、それに伴って価格が上昇する【グラフ1】のケースです。これは「良いインフレ」と言われます。2つ目は、モノの生産に係るコストが上昇し供給曲線が左にシフトし価格が上昇する【グラフ2】のケースです。これは「悪いインフレ」と言われます。

コロナ禍で凍り付いた人々の購買意欲がアフターコロナに溶け出し、消費が急拡大すれば「良いインフレ」となります。しかし今、足元で起こりつつあるのは、エネルギー価格や人件費、物流費といったコスト上昇型の「悪いインフレ」です。
では、「悪いインフレ」の何が悪いのでしょう。【グラフ2】をご覧ください。価格上昇(青矢印)に伴って生産量が減少(赤矢印)しています。生産量の減少は、景気悪化につながります。そして、価格上昇に歯止めがかからない場合、ハイパーインフレという恐ろしい状態になります。天文学的な水準までモノの値段が上がり、お金は価値がほとんどない、ただの紙切れになります。こうなると、人々は誰もお金を持ちたいと思わず、物々交換を始めます。21世紀から3000年前に逆戻りです。
通常はそこまでインフレが悪化する前に、中央銀行の金融引き締めで物価上昇にストップがかかるものですが、政治圧力で妨害されたりするとハイパーインフレになるリスクがあります。(最近のトルコの例をご参照ください)

また、インフレは私たち投資家にも影響を与えます。お金の価値が下がりモノの価値が上がるので、キャッシュに近い運用商品は価格が下落します。預貯金、国債、社債などが真っ先に影響を受けます。株式は「良いインフレ」の状態であれば、企業収益の増加とともに価格上昇しますが、「悪いインフレ」となり景気が悪化すると下落するリスクがあります。マンション等の不動産は「良いインフレ」「悪いインフレ」とも物価上昇に連動した賃料の上昇により、価格の上昇が期待できます。
また、穀物・原油等の商品ETFや、高級時計・美術品・骨董品等もインフレ下での投資対象として有効です。そして、お金が人々の信頼を失う中、インフレ下での究極の投資商品は金(ゴールド)となります。
これらの商品は株式や債券と異なり、キャッシュフローを生みません。インフレ下ではインカムゲインより稀少性が重視されます。

もっとも、モノの値段(物価)の上昇が、景気に悪影響を与えない程度のマイルドなインフレであれば、経済にとって好ましいと考えられています。実際、日銀は物価上昇率2%を政策目標に置いています。
私は個人的には、ポストコロナにおいてインフレが日本で進行した場合(石油以外にも食料品やティッシュペーパーなどで値上がりが生じています)、マイルドな水準に留まる可能性は高いと思います。
その場合マイルドとはいえ、お金の価値は下がるので、キャッシュ→モノのシフトが起こるはずです。それは、バブル以降、長くこの国を苦しめてきたデフレからの脱却を意味します。デフレの主因である人々の過剰なキャッシュ信仰が崩れ、積み上がった家計の預貯金や企業の内部留保が投資に向かうことが期待されます。
そのとき日本経済に、ようやく春がやってきます。