今回は久しぶりに不動産ネタでいきたいと思います。最近、ちょっと前の本ですが、鈴木宏史さんの書かれた「不動産投資」(東洋経済)を読みました。私は不動産投資の実務経験はありませんが、不動産投資関連の書籍は100冊近く読んでいます。その中で、不動産投資の初心者がまず読むべき本として、本書はNo.1だと思いました。不動産投資の入口から出口まで、著者の経験も踏まえながら平易な言葉で丁寧に解説されています。また、著者自身が不動産鑑定士であり不動産のプロである点も、本書の客観性や信頼度を高めています。キラキラ大家さんの一人よがりでない地に足のついた入門書として、大勢の方に目を通してほしいと思います。では、本書の中で私の記憶に残った印象的な箇所を、ピックアップしてご紹介します。
著者は「おわりに」でこう書いています。「私は従業員数万人という大企業を最後に、サラリーマン人生に終止符を打ちました。この大手企業のトップ(社長)はたった一人。」「役員や管理職というポストを得るにも競争は熾烈を極め、能力だけでなく運にも左右されます。運よくそういったポストにつけたとしても、定年退職前の数年間だけでしょう。『こんな出世レースに人生を捧げるのは割に合わない』と、私はいつも感じていました。」「勤務していた大手企業の社長や役員の報酬は有価証券報告書などから推測できますが、現在私が不動産から得ているキャッシュフローと売却益の合計額は、彼らの報酬を大きく上回ります。」「大学卒業から30年以上かけてようやくこれらのポストについた彼らの年収を、わずか数年で抜くことができるビジネスが、不動産投資のほかにあるでしょうか。」
この本が出版されたのは、2018年10月です。かぼちゃの馬車事件が発覚したのが2017年ですから、著者が不動産投資を開始した当時は、まだ銀行の融資が緩かった時期だと思われます。また、著者が本書の中で例示している収益物件の利回りも、現在の水準からすると相当に高いものです。したがって、著者は恵まれた環境のもとで不動産投資を開始し、順調に収益を積み上げていったのでしょう。今から不動産投資を始める人が、この通りにやれると思ってはいけません。しかし、著者が本書で説明している不動産投資の本質は、不動産を取り巻く環境が変わっても不変です。著者は「物件購入自体は難しいことではありません。儲かる物件を買うことが難しいのです。」と言っていますが、「儲かる物件=キャッシュフロー・シミュレーションが成立する物件」が手に入らなければ、市況が崩れるタイミングまで待つことです。
著者はメンター(指導者)について、こう言います。「不動産投資は、見よう見まねの我流でやるより、メンターに師事したほうが成功の確率が上がり、成功までのスピードも格段に高まります。」と、メンターへの師事を薦めます。不動産投資は株式投資と比べ投資額が巨額なので、1回の失敗が命取りとなります。メンターに師事することで、不動産投資のリスクを軽減することができます。私はコストを払ってでも成功への近道として、メンターへの師事を検討すべきだと考えます。
私は不動産投資と株式投資の大きな違いは、”勝利のセオリー”が存在するかどうかだと考えています。株式投資には不確定要素が多く、(特に長期投資には)”勝利のセオリー”などありません。当ブログが薦める”ほったらかし投資”は、30年~40年といった超長期の時間を犠牲にすれば、過去の実績から見て高い確率で勝てるはず、ということを言っているに過ぎません。短期の株式投資では、cisさんやBNFさん、テスタさんのように勝ち続けている人はいます。ですので、”勝利のセオリー”が存在するのかもしれません。しかし、彼らの手法は第三者がまねできるような定式化が可能なものではなく、おそらく極めて感覚的なものだと推察します。
一方、不動産投資には中期的な時間軸で結果を実現できる”勝利のセオリー”が存在するように思います。もちろん、誰もが容易に到達できる領域だとは考えていません。しかし、然るべきメンターの指導を受け、汗をかきながら経験値を高めていけば、いずれあなたや私も到達できる領域ではないかと。例えると、(短期の)株式投資の場合は100mを9秒台で走るようなもので、一握りの天才にのみ到達可能な領域。それに対し不動産投資の場合は42.195kmをサブスリーで走るようなもので、努力次第でひょっとしたら一般人にも到達可能な領域。そんな気がします。適正なレートで融資を引き、割安な水準で物件を購入、集客力のアップと物件管理の効率化を図り、さらには出口での売却益の獲得を狙う。決して簡単な話ではありません。でも、不動産投資で成功を収めた何人ものサラリーマン大家さんが、”勝利のセオリー”の存在を証明しているように思います。(ベテラン不動産投資家の皆さん、間違っていたらごめんなさい!)
【不】不動産投資というもの
