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【不】インフラ投資(太陽光発電ファンド)

2012年の再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)開始以降、全国で太陽光発電所が急増し、2015年には東証にインフラファンド市場が創設されました。翌2016年6月には太陽光発電設備を対象とする第1号ファンドが上場されています。今回は、安定的な収益が期待できる投資対象として、個人投資家に人気のある太陽光発電ファンドの特性について考えてみたいと思います。

まず、FIT制度についててです。地球規模の温暖化抑制のため脱炭素社会の実現を目指し、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT:Feed in Tariff)が開始されたのが、2012年7月です。FIT制度は、太陽光、風力、地熱、中小水力、及びバイオマス発電による電力を長期間(※)、定額で電力会社が買取る制度です。太陽光発電事業は、開発コストや期間等から相対的に参入が容易であり、高い収益性も期待できる投資対象として数多くの企業が参入しました。
(※)10kW以上の太陽光発電設備については供給開始日から20年間


太陽光発電の電力買取価格は、FIT開始時の40円(10kW以上、kWh当たり)から2021年度は11円~19円(250kW以上は入札)まで毎年引き下げられています。尚、2022年4月以降、市場価格にプレミアムを上乗せするFIP(Feed in Premium)制度が導入されます。これにより、太陽光発電の電力価格は市場の需給で決まるようになります。

太陽光発電ファンドは、ファンドで取得した発電設備を発電事業者に貸与し、その賃貸料を収入とします。発電事業者は発電した電力を電力会社にFIT制度による定額で買い取ってもらえるので、ファンドも発電事業者から安定した賃料を受け取ることができるのです。

次に導管性についてお話します。導管性とは、一定の要件を満たした投資法人は、配当等の損金算入が可能となり、実質的に法人税が非課税となる仕組みのことです。具体的には、配当等の額が配当可能利益の額の90%超であること等の要件をクリアすると、最初に取得した設備の貸付開始から20年間、法人税が非課税となります。(JREITにはこの有効期限は設定されていません)

他にも、太陽光発電の場合、資産総額に占める償却資産(発電設備)の割合が高いため、一般的なJREITに比べ高い減価償却費が計上できるという特性があります。減価償却費は会計上は費用科目ですがキャッシュの支払いを伴わないので、各太陽光ファンドは利益超過分配金として、キャッシュの一部を投資家に返還する取扱いを行っています。返還された分だけ資産総額や純資産は減少します。
注意しなければいけないのは、利益超過分配金は元本の返還であり、収益ではないことです。また、収益でないので税金は基本的にかかりません。

以上のように、太陽光発電ファンドは、FIT制度、導管性、高い減価償却費率という3つの特性により、魅力的なインカム(一部は元本償還)を提供します。しかし、これらはいずれも時限性がある点に注意が必要です。

太陽光発電ファンドのリスクに関しては、日射量等の天候の状況により発電量、つまりキャッシュフローに大きな影響が生じることが上げられます。しかし、日射量については、過去の日照実績等に基づき想定値を算定することが可能で、長期的には想定に基づいた安定収入が得られると考えられます。

想定すべきリスクは出力制御です。太陽光発電所で需要を大きく上回る発電が行われたとき、電力会社は発電事業者に太陽光発電の出力制御を要請できます。出力要請が実施された場合、天候が快晴で発電実績が好調でも、売電収入はゼロになってしまいます。実際、2018年10月12日九州電力は気温低下による発電需要の減少を理由に、太陽光電力事業者に出力制御を要請しました。(この報によりファンド価格は急落しました。)

しかし、この種のリスクはコントロールが困難であり、私たち個人投資家にとっては、発電所の主な所在地域が異なるファンドを分散して投資するくらいしか対策はありません。地域分散により発電設備が台風や地震等の天災により被災するリスクも減殺できます。

今のところ国内上場インフラファンドの時価総額は、7銘柄で1,700億円程度です。機関投資家が投資するにはサイズが小さく、個人投資家限定の市場となっています。しかし、脱炭素が叫ばれる中、インフラファンドがESG投資の本命であることに違いはありません。実際、2021年9月には大和証券グループが私募で太陽光ファンド700億円を組成し、年金基金や生保等の機関投資家が購入したとの報道がありました。今後、投資対象が洋上風力等にも拡大し、資産規模が数千億円規模に到達すれば、上場インフラファンドに機関投資家が参入する日も近いでしょう。

JREITと比べた場合、インフラファンドは6%の分配利回りや株式との低相関、そして価格変動率の低さでその優位性は際立っており、将来的なマーケット拡大への期待も含め個人投資家にとって投資妙味は大変高いと思います。