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株式

【株】2024年の振り返りと2025年の課題

8月5日の令和のブラックマンデーから、はや3ヶ月。相場は落ち付きを取り戻したように見えます。しかし、米株が最高値を更新する一方で日本株は上値の重さが目立ち、長期個人投資家にとっては我慢の日々が続きます。私は8月5日の当ブログ記事で「ひとやすみ、ひとやすみ」と申し上げましたが、気が付けば”三休み”くらいした感じです。このまま年内は38,000円~40,000円をコアとしたレンジ相場が続くとして、年明けに(今年と同じように)レンジの上放れを期待したいところです。

さて、今年もあと1ヶ月余りとなったところで、2024年の振り返りをやっておこうと思います。本当は、もう少し相場が戻ったところでやりたかったのですが、思いのほか40,000円の壁が厚そうなので、ここでやることにします。
今年は401kで運用していた資金と退職金が手許にあったので、久々にまとまった額の投資を行いました。私は基本的に相場のタイミングは取らない主義なので、キャッシュが私の口座に着金した順にマーケットに投入しました。時期的には、5月初から7月初にかけて、だいたい日経平均で39,000円~40,000円の水準です。今思えば、あと1ヶ月待てば良かったのですが、後の祭りです。購入銘柄は、高配当株を中心に、グロース系の国際優良企業や地元応援企業の株となっています。(下表ご参照)
まあ、全体で評価損になっているのは仕方ないとして、思ったよりも損の額は小さくて済んだかな、との印象です。

来年にかけては、いくつか課題があります。まず、NISAの成長投資枠の全額をニューマネーで埋めるのは難しいので、特定口座の株を一部売却する必要があります。しかし、どの株にもそれぞれ思い入れがあり、売るのは中々悩ましいです。また、つみたて投資枠で投信を買うべきか、決めなければいけません。それから、今年やるつもりだった為替の分散の問題があります。(結局、米国債は買えませんでした。やっぱり私に債券は無理っぽいので、次回いくなら米株でしょうね。)さらに、さすがに売られ過ぎの感があるJREITをどうするか。買うとしたら、どの水準で買うか。インフラファンドも安くなっているけど、こちらはちょっと買えないかな。まあ、悩みは尽きませんが、2025年も基本強気、買いの目で臨みたいと思っています。

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保険

【保】医師が考えるがん保険の必要性

2024年11月8日にSBI損害保険株式会社は、がん治療やがん保険について、がん治療に携わる一般外科医110名に対しアンケートを実施し、調査結果をプレスリリースしました。調査の結果、①患者の経済的事情に鑑み、がんの治療計画を見直した経験がある医師は83.6%、②患者が自由診療をカバーする保険に加入していた場合、最善の治療を行うことができると考える医師は80%、となったとのことです。

この数字だけ見るとがん保険は必須である、との印象を受けます。しかし、本来、がん保険の必要性を考える場合、対象となるがん患者の総数と、その中で医師が患者の経済的事情から治療計画を見直したケースが何件あったかが判断基準となるはずです。今回のように医師の数で見てしまうと、A医師が担当したがん患者総数1000人中1人に治療計画の見直しがあったケースも、B医師が担当したがん患者総数10人中1人に治療計画の見直しがあったケースも、同様に医師1名とカウントされミスリーディングです。さらに、今回の調査は対象期間を特定せず、2024年10月11日断面での調査となっているので、医師が①、②の経験や認識を持ったのがいつの時点なのかも不明です。10年前に経験したことも、直近で経験したことも、同様に扱われてしまいます。

このように突っ込みどころ満載のSBI損保のプレスリリースですが、是非、追加調査をお願いしたいものです。その際は、例えば、調査対象期間:2025年1月1日から2025年12月31日、調査対象がん患者数:○○○名、うち経済的事情により治療計画を見直した患者数:○○名、といった感じで調査してもらえると有意義なものとなると思います。

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株式

【株】私が個別株投資にこだわる理由

私は株式投資を始めて以来、投資信託にはほとんど投資をしたことがありません。ただ、誤解のないように申し上げておきますが、私は決して投信否定派ではありません。個別株にも投信にも、それぞれ良い点と良くない点があると考えています。不動産に例えて言うなら、個別株は戸建て住宅、投信は区分マンションのようなものです。戸建てなら間取りや内装を自由にリクエストできますが、マンションだとそうもいきません。しかし、マンションであれば共用部分や外構の管理を管理会社に任せることができますが、戸建てではオーナー自ら庭の掃除や設備の補修を手配しなければいけません。株式投資も同じで、個別株であれば自分の思い通りに好きな銘柄に投資できますが、銘柄選択に際しては会社の業績等の入念な下調べが必要です。また、金利や為替等の外部環境にも目を配らなければいけません。しかし、投信であれば銘柄の選択や投資タイミングは専門家に丸投げできます。しかし、自分の好みを運用に反映することは困難です。

実際に、ネットで個別株と投信のメリデメを検索してみました。個別株へ投資する理由としては、株主優待が得られるから、ピンポイントで投資したい企業があるから、投信は運用手数料がかかるから、株主総会への参加等を通じて株主として活動したいから、自分で銘柄を選ぶのが楽しいから、といった意見が出ていました。一方、投信へ投資する理由としては、専門家に運用してもらえるから、自分で銘柄を選ぶことが難しいから、分散投資を実現しやすいから、少額から投資できるから、投資方針を基準にして選択できるから、といった意見が出ていました。ほぼ、予想通りの内容かと思います……。と、ここで今回の記事を終わりにしてもいいのですが、それでは本テーマを当ブログで取り上げた意味がありません。そこで、以下では、あまり語られることのない投信の特徴を、ひとつ指摘したいと思います。それは、私が個別株にこだわる理由でもあります。

実は以前、投資信託を考えるで一度触れています。一般に投資信託には、ベンチマークと言われるものが設定されます。投資におけるベンチマークとは、投信等の運用実績を評価する際に用いられる基準となる指標のことです。具体的には、日本株であれば東証株価指数(TOPIX)や日経平均株価を指します。そして、多くのアクティブ型日本株式投信はTOPIXをベンチマークとして、TOPIXに勝つことを目標に運用されています。ここ、ものすごく大事なところですので、覚えておいて下さい。もう一度言います。TOPIXに勝つこと、が目標です。日本株式投信は+5%とか+10%といった絶対水準の利回りを実現することは目標じゃない、と言っています。あくまでTOPIXという指標に勝てば良い。相対利回りが運用の目標だということです。ですから、TOPIXが▲10%のときに投信が▲8%なら、+2%の勝ちで目標達成という妙な話になります。そんなこと、私たち個人投資家は頼んでいません。

このような運営は、TOPIXをベンチマークに設定している投信だけでなく、TOPIXを参考指数に指定している投信でも広く一般に行われています。ところで、そもそもTOPIXって、何者でしょうか? TOPIXは東京証券取引所に上場する銘柄を対象として算出・公表されている株価指数のことです。(2022年4月4日の新市場区分施行を契機に、流通株式時価総額100億円未満の銘柄については、段階的にウェイトが低減される見込み。)東京証券取引所に上場する銘柄を対象として算出するということは乱暴にいうと、「TOPIXに投資する」イコール「日本経済に投資する」と言っていいと思います。ご承知の通り、日本経済は少子高齢化の影響で今後も減速が見込まれます。そんな日本経済にTOPIXは、そしてTOPIXをベンチマークとした日本株投信は引っ張られます。パフォーマンスの劣化が分かっていながら日本株投信に投資するのも、何だかなあ~って感じです。しかし、日本企業の中には、成長が見込まれる海外市場を舞台に活躍しているところもたくさんあります。そういった海外志向の企業の株式を個別に選んで投資していけば、日本経済が低迷しても堅調なパフォーマンスを期待できます。これが私が投信ではなく、個別株にこだわる理由です。
もっとも、国内でも敢えてベンチマークを設定せず、30程度に厳選した銘柄に集中投資するコモンズ投信のようなファンドも出てきています。今後、さらにノンベンチマークの投信が増えてくれば、早晩、私も投信への投資を開始するかも知れません。

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年金 閑話休題

【年】公的医療・介護、今そこにある危機

以前、年金改革の背後で蠢く国の悪企みで公的医療(健康保険)や介護(介護保険)の危機的状況について触れました。でも、医療・介護がそれほど危機的状況だっていうなら、なんで世間が騒がないんだ?、と疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。確かに年金の場合、消えた年金問題とか、年金の破綻とか、メディアやSNS等でヒステリックに叫ぶ人が絶えません。それに比べ、医療・介護の危機を叫ぶ声は、ほとんど聞こえてきません。今回は、そのあたりの謎について考えてみたいと思います。

まず、確認しておきたいのが、年金と医療・介護の仕組みの違いです。年金の場合、国民は国民年金なら20歳から60歳まで、厚生年金なら会社に入社してから退職するまで、毎月保険料を払います。そして、保険料の支払いが終わったあと、国民年金、厚生年金とも65歳から年金の受取りが始ります。ここでは、保険料の負担(支払い)が先、年金の給付(受取り)が後の形です。また、年金の場合、受取る年金額は加入期間の月数と、その間の給料(平均標準報酬額)で予め決まります。
一方、健康保険や介護保険の場合、国民は毎月保険料を払う点(1回目の負担)では年金と同じですが、実際にサービスを受ける段階で、病院や介護施設の窓口で改めて支払い(2回目の負担)が必要となる点で異なります。ここでは、1回目の負担は給付より先、2回目の負担は給付と同時の形となります。また、医療や介護の場合、サービスの金額とサービスを受取る時期は、受取るサービスの内容によって変わってきます。

上表から、年金と医療・介護に対する国のスタンスの違いを推測できます。年金の場合、国は国民が保険料を払い終わったら、あとは金額の確定した年金を払うことしかできません。(年金の裁定を受けると国民に財産権が生じます。)払う段になって、「予定より年金の額が減っちゃいました。ご免なさい。」なんてことは法的に許されません。ですから、国は年金の財政状況が厳しくなってきたら、前広にメディア等を通じて「ヤバイヨ!ヤバイヨ!」と国民にアピールします。そして、国民が保険料を払い終わる前に保険料を値上げしたり、マクロ経済スライドで年金額を(名目ベースは維持しながら)インフレ控除後の実質ベースで減額したりするわけです。また、年金を減額するだけでは国民から不満が出るので、NISAやiDeCoといった税制優遇措置を設けて、国民の自助努力を後押しするわけです。

医療・介護では、2回目の負担(病院や介護施設の窓口での自己負担)と医療・介護サービスの給付は同じタイミングで行われます。また、医療・介護のサービスの金額も受取り時期も、事前には決まっていません。つまり、医療・介護の場合、年金と違い国のフリーハンドが大きいと言えます。(そもそも医療・介護には年金のような財産権という概念もありません。)医療・介護の財政が厳しければ、いざとなったら患者や利用者の窓口負担を増やすとか、医療・介護の保険給付を削減することも、理屈の上では可能です。2回目の負担と給付は同時履行の関係にあるので、窓口負担の値上げを拒否する患者や利用者は、サービスの提供をストップされます。また、治療薬や介護サービスの保険適用が削減されたと病院や介護施設からと言われれば、黙って従うほかありません。

このように、医療・介護の場合は、年金に比べ制度運営における国の裁量が大きいため、(後からでも何とかなるだろうと)財政悪化に対する国の危機感が弱いのではないかと推察されます。あるいは、医療・介護財政が厳しいことを下手に国民に知られて騒がれては、今後、自己負担の増加や保険給付の削減がやりにくくなるので、今は敢えてメディア等への露出を控えているのかもしれません。

財政の危機的状況という点では、既にマクロ経済スライド等の対策が打たれ、今後も5年毎の財政検証で改善が図られていく年金に比べ、(保険料の引上げは後追いで行われていますが)未だ手付かずの医療・介護の方がはるかに深刻です。また、今回は敢えて言及しませんでしたが、医療制度は医師会とモロに利害がバッティングする領域です。そのため、医療制度改革は、医師会を初めとした強力な政治パワーとの調整が不可避であり、政治家、官僚とも手を付けたくないというのが本音かと思います。私たち国民としては、国が医療・介護の危機をアピールしてこない事に安心するのではなく、リスクシナリオを念頭に、前広に自助努力を進めることが賢明と考えます。

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株式

【株】「カオスの帝王」を読んで

「カオスの帝王」(スコット・パタースン著、東洋経済)を読みました。帯には、「早くパニックを起こせ!」「新型コロナで”4000%超”ものリターンを叩き出せたのはなぜか」「市場を混乱に陥れるブラック・スワンにいち早く気づき、行動を起こしたものだけが巨万の富を手に入れることができる」と刺激的なコメントが並びます。私が本書を手に取ったのも、経済ショック(ブラック・スワン)の発生を事前に察知し、回りの市場参加者をパニックに巻き込みながら驚異的なパフォーマンスを実現する、そんなアウトローたちのドラマチックなストーリーを期待したからです。しかし、本書の内容は私の予想とは少々違うものでした。(帯の表現はミスマッチです。)

本書は、ウォールストリート・ジャーナルの名物記者である著者が、マーケットの混乱によって利益を上げるというユニークな戦略を取るヘッジファンド:ユニバーサ・インベストメンツ(以下、ユニバーサ)、及び創業者であるスピッツナーゲルとその仲間たちの活躍を描いたノンフィクションです。仲間たちの中には、有名な「ブラック・スワン」の著者:ナシム・タレブも含まれます。
本書には、私が期待した市場参加者を喰いものにするような話は一切出てきません。ユニバーサの投資戦略は、ファー・アウト・オブ・ザマネー(OTMの中でもATMから5つ超、権利行使価格が外側に離れたOTMのこと)のプットオプションを安価に購入し、後はひたすら市場の急落を待つという、極めてオーソドックスなものです。(もちろん、細部には他社が真似できないユニバーサ固有の精錬された高度なノウハウがあります。)そして、株式市場が上昇している間、ユニバーサは損失を出し続けます。ですから、ユニバーサは帯にある「……ブラック・スワンにいち早く気づき、行動を起こした者」には当たりません。まあ、冷静に考えれば、ブラック・スワンにいち早く気付くなんて、神でもない限りできっこないですよね。

ユニバーサの運用報酬がバカ高いのは事実ですが、投資家はユニバーサを採用することで、結果的に割安にポートフォリオのリスク軽減を図ることができます。ユニバーサのテールリスクヘッジ戦略は、S&P500が年率15%以上も下落したときに1500%以上の利益を上げました。これこそが、この戦略のミソです。投資家は保有資産のごく一部(2~3%)を充当するだけで、十分なヘッジ効果を得られます。(1500%×2%=30%>15%) 金や国債、スイスフランといった他のテールリスクヘッジ商品と比べ、ユニバーサのケースでは株式等のリスク資産により多くのキャッシュを充当できます。そのため、ユニバーサの投資家は、上げ相場において大きな利益を上げることが可能です。つまり、上げ相場でも下げ相場でも勝てる(負けない)という、万能なポートフォリオを作ることができるわけです。

本当にそんな夢のような話があるんでしょうか。ちょっと信じがたい気がします。でも、投資においてリスクの低減とリターンの向上は両立する。これがユニバーサの、そしてスピッツナーゲルの主張です。まさに、リスクとリターンはトレードオフの関係にあるとする伝統的なMPTの基本教義を否定する主張です。そして、彼らの主張が正しかった場合は大変なことになります。日本でも多くの機関投資家が、リスクヘッジのためポートフォリオのかなりの部分を国債に充当し、アップサイドを犠牲にしています。それがポートフォリオの2~3%の資産でテールリスクをヘッジできるのであれば、機関投資家はユニバーサのファンドに殺到するでしょう。そして、国内機関投資家の投資戦略は抜本的に見直されることになります。もし、年金基金や生保等の機関投資家が国債を買わなくなったら、と思うとぞっとします。日本の長期金利は暴騰し、円高・株安を通じ実態経済は大きなダメージを受けることになります。
MPTへの挑戦。これが本書の隠れたテーマだと感じました。そして、カオスはブラック・スワンによってではなく、ユニバーサ自身によってもたらされるのかもしれません。

最後に本書のテーマからは外れますが、ウォーレン・バフェットが2017年にバークシャー・ハサウェイの株主に宛てた手紙の内容が本書に掲載されているのでご紹介します。
「秀でた知性も、経済学の学位も、ウォール街の隠語に通じていることも必要ありません」「かわりに投資家に必要なのは、群衆心理による恐怖や熱狂に惑わされず、一握りの単純な基本原則から目を離さない能力です」
さすが、バフェットさん。いいこと言いますね。私たち長期個人投資家も、見習いたいものです。

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閑話休題

【閑】ご当地ソング

10月20日は「新聞広告の日」だそうで、日本新聞協会は「新聞週間」の期間中、47都道府県の「ご当地ソング」を全国76紙に掲載しました。広告「新聞からご当地ソングが聴こえてくる。」の地図に併記されたQRコードにスマホをかざすことで、ご当地ソングの動画を楽しめるようになっています。

さて、肝心のご当地ソングですが、岩手県=北国の春、新潟県=佐渡おけさ、東京都=東京ブギウギ、神奈川県=ブルーライト横浜、静岡県=天城越え、大阪府=やっぱ好きやねん……、てな具合になっています。ただ、このご当地ソング、誰が選んだか知りませんが、一部には首を傾げたくなるのもあります。例えば、我が愛知県=燃えよドラゴンズ、とか鳥取県=ゲゲゲの鬼太郎。これって、ご当地ソング違うんちゃいますの? まあ、愛知県なんて全国区のネタはトヨタくらいで、文化不毛の地ですから致し方ないのかも知れませんが。ちょっと寂しい気がします。だったら、いっそ鳥取県みたく、愛知県出身のアニメ界の巨匠:鳥山明先生のドラゴンボールの主題歌でも良かったんじゃないかと思います。

そして、もし、私にご当地ソングを選ぶ権利があったなら、私はきっとこの曲を選ぶでしょう。つぼイノリオ:金太の大冒険

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年金

【年】年金改革の背後で蠢く国の悪企み

日経新聞は、10月3日の朝刊で「大企業健保1300億円赤字、11年ぶり 高齢者医療が重荷」と題し、「主に大企業の従業員と家族らが入る健康保険組合の2023年度収支が約1300億円の赤字になったことが分かった。高齢者医療への拠出金の増加が響き、赤字幅は12年度依頼、11年ぶりの大きさとなった。」と報じました。高齢者医療への拠出金とは、”後期高齢者支援金”といって、75歳以上の高齢者を対象とした後期高齢者医療制度の財源のうち、健保が負担する部分のことを指します。患者の窓口での自己負担を除く財源の内訳は、公費(税金)5割、後期高齢者支援金4割、後期高齢者の保険料1割、となっていますが、高齢化の進展によって健保の後期高齢者支援金の負担が、危機的状況に膨れ上がっているという話です。

今や健保(健康保険)の財政は限界まで逼迫しており、財政の健全化が喫緊の課題となっています。健保の赤字を削減するには、通常、3通りの方法が考えられます。まず、後期高齢者の病院窓口での自己負担割合を引上げることです。現在、原則1割の自己負担ですが、一般所得者等のうち一定以上の所得がある人は2割、現役並み所得者は3割と、既に自己負担の引上げは一部で実施済です。これを更に一般所得者全体に拡大するのは相当な困難が伴います。次に、健康保険の保険料を引上げることです。これも、実は過去から実施してきた経緯があり(協会健保では、2003年:8.2%→2010年:9.34%→2011年:9.50%→2012年:10.00%)、これ以上の引上げは困難な状況です。そして、最後は給付の削減。つまり、保険適用の対象となる医療行為や治療薬の範囲を縮小することです。しかし、これも「金のために人の命を削るのか?」といった国民の批判が予想され、実現に向けた政治的ハードルは極めて高いです。このように、健保財政の健全化は八方塞がりな状況です。

前置きが長くなりましたが、国は年金改革の背後で密かに(=国民に知られないように)健保財政の健全化を図ろうとしているようです。2024年10月1日より、社会保険(厚生年金と健康保険)の適用が拡大されました。従来、従業員数101人以上の企業では、正社員だけでなく、一定の要件を満たす短時間労働者(パートやアルバイト)についても、社会保険の加入が義務となっていました。それが今回、従業員数51人~100人の企業についても、一定の短時間労働者の社会保険の加入が義務化されたわけです。これにより、配偶者の扶養の範囲内で働いていた短時間労働者も年金が2階建てとなり、年金が増額されて生涯受取れるようになりました。(厚生労働省「社会保険適用拡大ガイドブック」) めでたし、めでたし。しかし、話はこれで終わりではありません。

私は上記ガイドブックについて、国は本来書くべき内容を意図的に隠しているのではないか、との疑念を持っています。ガイドブックでは、新たに社会保険の適用となる方について、年金の保険料(=コスト)が増える点については軽く触れるだけで、年金額(=リターン)が増える点をしきりに強調しています。でも、まあこれは良しとしましょう。問題は、今回の年金改革で、健康保険の保険料も増える点です。この点について、なぜかガイドブックはほとんど言及していません。(ガイドブックP2にわざとらしく小さな文字で短い説明がありますが。)代わりにガイドブックでは、傷病手当金や出産手当金といった給付(リターン)の充実を強調しています。でも、これらは年金と違って、誰もが受取れるものではありません。傷病手当金は病気やケガで、出産手当金は出産で一定期間働けないことが条件です。これらの条件に該当しない場合は受取ることはできず、保険料は完全な払い損です。また、保険料の3分の1は後期高齢者医療へ仕送りされ、消えてなくなります。このように、掛け捨ての保険料が増える話ですから、本来(掛け捨てでない)年金の保険料以上に丁寧な説明があってしかるべきです。しかし、国は説明責任を放棄しています。だから、私は国はやましいところがあって、わざと説明を避けているのでは、と疑っているのです。

それからもうひとつ、問題点があります。現在、被扶養者として配偶者の健保に加入している短時間労働者が、新たに自身のパート先の健保に転入することで、給付内容が悪化する恐れがあることです。配偶者の健保に付加給付の制度がある場合で、パート先健保にはないケースが該当します。(協会けんぽには付加給付はありません。)付加給付は大手企業の健保等が実施する、高額療養費の上乗せ制度です。3割の自己負担部分の一部を高額療養費で払戻しを受け、さらに2万円を超える自己負担部分の払戻しを受けることができます。パート先健保に転入することで、この給付を受けられなくなる可能性があります。保険料が上がって給付内容が悪化したのでは話になりません。こんな重要な情報が、ガイドブックに記載がないのは大問題です。(下記は某企業健保HPの付加給付に関する説明です)

このような健康保険の現状を、国民の多くは認識していません。政治家や厚労省のお役人が、国民に向けて説明することもありません。今回新たに社会保険の適用対象となった短時間労働者は、知らないうちに健康保険の保険料を負担させられ、知らないところで健保財政の健全化に協力させられるわけです。私はこういったやり方は、ほんとに良くないと思います。国民の理解が不十分なまま、社会保険料を打ち出の小槌のように使うのは、もういい加減やめてほしい。そして、年金や医療の政策は国会の場できちんと議論し、国民周知のうえで進めてもらいたい。

年金はマクロ経済スライドの導入により、(まがいなりにも)破綻の可能性はなくなりました。今、本当に危機的なのは、医療(健康保険)と介護です。年金についてはiDeCoやNISAといった自助努力の制度を国が用意してくれていますが、医療・介護の分野ではそういった取り組みもありません。最終的には、医療・介護版マクロ経済スライド(自動的な給付切り下げ制度)が導入されるかもしれません。そして、そうなった先には、米国のような自力救済の世界が待っています。
まだ遅くありません。国をあてにするのはやめにして、民間の医療・介護保険等も利用しながら、前広に自助努力を進められることを強くお薦めします。

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株式

【株】GDP世界1位は幸せか?

世界各国の経済力を比較するときに、一人当たりGDPという指標がよく使われます。これは、その国のGDPを人口で割った数字で、その国に住む人々の平均的な豊かさを表す指標となります。IMF(国際通貨基金)の推計による2023年の一人当たりGDP(※1)のランキングでは、日本は世界34位となっています。しかし、1993年~1994年には日本の一人当たりGDPは世界1位でした。当時、日本は世界で最も豊かな国だったことになります。私は1987年に社会人となり、1993年は若手社員としてバリバリ仕事をしていた時期です。今回はそんな当時の記憶も呼び覚ましながら、一人当たりGDP世界1位の日本とはどんな様相であったのか、振り返ってみたいと思います。  (※1)ドル建て名目ベースです。

最初に白状してしまうと、私の1993年~1994年頃の日本の印象は芳しいものではありません。日本経済は1989年のバブル崩壊の傷が癒えないまま、ズルズルと悪化の一途を辿っていました。銀行の不良債権がヤバそうと言われ始めたのも、この頃かと思います。1995年には阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件とバッドニュースが続き、時代は世紀末の様相を呈していきます。株価、地価とも下落が止まらず、1997年、4大証券の一角であった山一証券が自主廃業し、都銀の北海道拓殖銀行が倒産。翌1998年には長期金融界の雄、長銀と日債銀が経営破綻します。こうして、我が国は戦後最大の金融危機に陥りました。
1993年~1994年当時の為替は概ね1ドル=100円~110円程度で、現在より大幅に円高の水準でした。日本経済は不況であったにも関わらず、円高に阻まれて輸出をドライバーとした景気回復を図ることができませんでした。政府が打つ総合経済対策も空振りに終わり、後に「失われた30年」といわれるデフレスパイラルに突入することになります。

当時の私は顧客企業の退職年金の資産を運用する仕事をしていましたが、株式市場の不調でマイナスの運用が続き、顧客企業から怒られてばかりいました。詐欺師!と罵られたことも、一度や二度ではありません。就職氷河期で街にあふれた学生たちは、皆うつろな表情で空を見上げていました。この頃の日本が世界で最も豊かだと言われても、私にはブラックジョークにしか聞こえません。唯一、海外旅行をした人だけが、日本の豊かさを実感したことでしょう。

当時を知らない今の若者にはピンとこないかもしれませんが、これから日本でインフレ(※2)が常態化すれば、たとえ一人当たりGDPが世界34位であっても、総合的に見て現在の日本の方がずっと幸せだと私は思います。デフレで人々の心が凍り付いた状態で一人当たりGDPが世界1位だと言っても、そんなものは偽りの世界一です。逆に、インフレで人々が冬眠から覚めてアクティブになれば、一人当たりGDPが世界34位であったとしても、私はそんな日本の方が幸せであり、豊かだと思います。インフレに関しては、モノやサービスの価格が上がるといったミクロ(家計や企業)のマイナス効果に焦点が当たりがちですが、中長期的には経済活動の活発化によるマクロのプラス効果を実感できるようになります。一人当たりGDPのランキングも、徐々に改善していくはずです。私はこれからの日本に希望しか持っていません。  (※2)インフレ、デフレは物価の程度とともに、経済の活性度合いを表します。マイルドなインフレ経済は「高圧経済」とも呼ばれ、経済が適度に活性化した状態とされます。

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ライフプラン

【ラ】ストレスのない暮らし

私は今年60歳となり、正社員から契約社員になりました。年収は従前の半分以下に下がりましたが、職務上の責任も軽くなり、ほとんど好き勝手に仕事をさせてもらっています。年収は下がったものの、個人年金と企業年金の支給が60歳から始まるので、株の配当と合わせれば従来の年収なみの水準は確保できます。贅沢さえ言わなければ、毎日の生活に苦労することはないと思います。
今の私は仕事上のストレスはほぼゼロ。生活費は年金と株の配当、そして僅かな給料で何とかギリ賄える。「これってFIREじゃね?」と、ふと思いました。もちろん、私は既に還暦ですし、仕事も辞めていないので、厳密な意味でFIREを名乗る資格はありません。しかし、契約社員=副業と考えれば、かなりFIREに近い状態(※)になっているのではないでしょうか。
(※)バリスタFIREというやつです。ただの年金生活者という説もありますが……。

疑似FIRE状態となった4月以降、私の心にある変化が生じました。仕事のストレスがなくなり、お金の心配もほぼなくなったため、私の心は一気に軽くなりました。いや、軽くなりすぎました。そのため、逆に私の心は緊張を求めるようになったのです。人が緊張を感じるには、リスクが必要です。私は心の命じるまま、以前にも増してリスクを取りにいくようになりました。日経平均が40,000円の高値圏にあるとき、私は無謀にも複数の銘柄を買いました。お陰で今は評価損の拡大に怯える緊張の日々です。また、この夏、私は沖に流される可能性のある伊豆の海で、何度も潜りました。そして、今週末、滑落の危険がある中央アルプス宝剣岳に登る予定です。やめときゃいいのにと思われるでしょうが、緊張を求める私の心がそれを許しません。

大昔、ヒトがまだお猿さんだった頃、ジャングルで常に捕食者に狙われていたご先祖様は、大変なストレスを感じていたことでしょう。現代人はコンクリートジャングルで、別のストレスを感じながら生活しています。ストレスは決して体にいいものではありませんが、人間が生きていくうえで欠かすことのできないものかもしれません。だから、今日も私はリスクを求めて彷徨うのでしょう。

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株式

【株】蘇るガースー

自民党総裁選が行われた9月27日の金曜日、日経平均株価は東京時間15時に40,000円目前の39,829円と大幅に上昇して引けました。しかし、自民党総裁選に高市氏でなく石破氏が選ばれたことが伝わると、ナイトセッションでは28日の未明に37,290円の安値へ約2,500円も急落しました。何でも、石破氏の主張する金融所得課税や法人税増税などが嫌気されたとのことですが、ホンマかいな? 事前の予想でも、総裁選の一番手は石破氏であったはず。予想通りの結果なのに、なぜに相場は上へ下へと大騒ぎするのか。言うまでもありませんね。8月5日の令和のブラックマンデー、植田ショックと同じ構図です。高市氏が追い上げているとの報道を受け、円売り・日経平均買いを進めたCTA等の海外ファンド筋が、総裁選の結果を見てポジションを解消しただけの話。日経平均の急落を嘆く暇があれば、ここは落ち着いて、石破政権の経済運営の方向性を見定める方が有意義だと思います。

私は政治の素人ですので、あくまでも私見となりますが、私は石破政権のキーマンは菅副総裁ではないかと見ています。従前より派閥を持たず政治基盤の弱い石破総裁が、最後に頼るのは菅氏だと思うからです。(菅氏も派閥に属していませんが、勉強会を立ち上げ人脈の構築に注力していました。)菅氏はコロナ禍で志半ばで政権を追われた過去があり、そのとき実現できなかった幾つかの政策を、今度こそは実現しようと思っているはず。そのため、菅政権時に菅氏が目指していた経済政策=スガノミクスの内容を、改めておさらいしておくのもいいと思います。

スガノミクスはアベノミクスを継承しつつも、行政・規制改革の断行による成長戦略に重点を置いた政策です。アベノミクスの成果と言われることの多い「インバウンドによる観光振興」や「農産物の輸出拡大」、「携帯料金の値下げ」や「ふるさと納税」等は菅氏が主導し実現させた政策です。コロナ禍で世論の逆風の前に撤退したGoToも菅政権の政策でした。こう見てくると、ミクロ政策の積み上げで経済成長や生産性向上を図るのがスガノミクスの特徴で、マクロ政策の出番はないように思えます。しかし、菅氏は人事権をたてに官僚をコントロールすることに長けた政治家です。また、民間の経済人とも強いパイプを持っているので、経済現場の状況に応じた適切なマクロ政策を打ち出すことは可能でしょう。

石破政権が課税強化、円高・金利引き上げの道を進むというのは、いかにも短絡思考です。菅氏が副総裁として睨みをきかせる石破政権は、財務・日銀官僚の描く財政再建・金利正常化シナリオに容易に従うとは思えません。経済実態にフィットした地に足の着いた経済政策が実行されるものと期待しています。