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閑話休題

【閑】バリューのあるジジイを目指して

私事で恐縮ですが、私は先日61歳となりました。気はまだまだ若いつもりですが、立派なジジイの出来上がりです。焼きたてのパンは甘く香ばしい香りがしますが、出来上がったばかりのジジイは甘酸っぱい加齢臭がします。ところで、今回はジジイとなった私が今後どういう方向を目指して生きていこうと考えているのか、お話したいと思います。ジジイの問わず語りなど興味ないという方は、どうぞスルーして下さい。

以前、我が家の昭和的エコシステムでご紹介しましたが、我が家の夫婦、親子関係はちょっとよその家庭とは違っています。我が家は健康で自由な毎日を送ることを目標に、各人がそれぞれ割り当てられたミッションを実践するパートナーシップのような関係性で繋がっています。語弊があるかもしれませんが、愛情よりも経済的な依存関係といってもいいかもしれません。そんな我が家において、私のミッションはキャッシュフローを獲得すること。しかし、当然のことながら年齢を重ねるほど私の体力は低下し、労働によるキャッシュフロー獲得力は低下していきます。このままではパートナーシップは機能不全に陥ります。そのため、私が今考えていることは2つです。ひとつは投資力のアップ。つまり、株式配当の受取り額の増強です。そして、もうひとつは年金力のアップ。これはなるべく長く、なるべく高い報酬で働き、そのうえで年金の受給を繰り下げることで実現できます。

高齢になるにしたがい保有資産のリスクを抑え流動性を高めていくのが金融論のセオリーですが、私は敢えて逆のことをやります。自分がくたばるその日まで、株のフルインベストメントでいくつもりです。株式の相続はちょっと面倒かもしれませんが、私の死後も私が投資した株たちが私の家族の生活をサポートしてくれることでしょう。
年金についても、受給を繰上げて前倒しで受取る方が多いですが、私は逆を行きます。私は年金の繰上げを批判するつもりはありません。でも、キャッシュフローの獲得力を強化するためには、受給の繰り下げがとても効果的です。自分が不用意に長生きしてしまったとき、迷惑を被るのは家族です。受給を繰り下げ年金額を増額しておけば、自分が重度の介護状態で寝たきりになっても、家族に介護費用の負担が及ぶことも少ないでしょう。

人は誰しもジジイになると、付加価値を生産せず、ただモノ・サービスを消費するだけの存在として、社会のお荷物に見られがちです。でも、そんなジジイも投資力や年金力を発揮して家族や社会に貢献できれば、利用価値(バリュー)のあるジジイとして存在意義を認められるのではないでしょうか。

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不動産

【不】不動産投資というもの

今回は久しぶりに不動産ネタでいきたいと思います。最近、ちょっと前の本ですが、鈴木宏史さんの書かれた「不動産投資」(東洋経済)を読みました。私は不動産投資の実務経験はありませんが、不動産投資関連の書籍は100冊近く読んでいます。その中で、不動産投資の初心者がまず読むべき本として、本書はNo.1だと思いました。不動産投資の入口から出口まで、著者の経験も踏まえながら平易な言葉で丁寧に解説されています。また、著者自身が不動産鑑定士であり不動産のプロである点も、本書の客観性や信頼度を高めています。キラキラ大家さんの一人よがりでない地に足のついた入門書として、大勢の方に目を通してほしいと思います。では、本書の中で私の記憶に残った印象的な箇所を、ピックアップしてご紹介します。

著者は「おわりに」でこう書いています。「私は従業員数万人という大企業を最後に、サラリーマン人生に終止符を打ちました。この大手企業のトップ(社長)はたった一人。」「役員や管理職というポストを得るにも競争は熾烈を極め、能力だけでなく運にも左右されます。運よくそういったポストにつけたとしても、定年退職前の数年間だけでしょう。『こんな出世レースに人生を捧げるのは割に合わない』と、私はいつも感じていました。」「勤務していた大手企業の社長や役員の報酬は有価証券報告書などから推測できますが、現在私が不動産から得ているキャッシュフローと売却益の合計額は、彼らの報酬を大きく上回ります。」「大学卒業から30年以上かけてようやくこれらのポストについた彼らの年収を、わずか数年で抜くことができるビジネスが、不動産投資のほかにあるでしょうか。」

この本が出版されたのは、2018年10月です。かぼちゃの馬車事件が発覚したのが2017年ですから、著者が不動産投資を開始した当時は、まだ銀行の融資が緩かった時期だと思われます。また、著者が本書の中で例示している収益物件の利回りも、現在の水準からすると相当に高いものです。したがって、著者は恵まれた環境のもとで不動産投資を開始し、順調に収益を積み上げていったのでしょう。今から不動産投資を始める人が、この通りにやれると思ってはいけません。しかし、著者が本書で説明している不動産投資の本質は、不動産を取り巻く環境が変わっても不変です。著者は「物件購入自体は難しいことではありません。儲かる物件を買うことが難しいのです。」と言っていますが、「儲かる物件=キャッシュフロー・シミュレーションが成立する物件」が手に入らなければ、市況が崩れるタイミングまで待つことです。

著者はメンター(指導者)について、こう言います。「不動産投資は、見よう見まねの我流でやるより、メンターに師事したほうが成功の確率が上がり、成功までのスピードも格段に高まります。」と、メンターへの師事を薦めます。不動産投資は株式投資と比べ投資額が巨額なので、1回の失敗が命取りとなります。メンターに師事することで、不動産投資のリスクを軽減することができます。私はコストを払ってでも成功への近道として、メンターへの師事を検討すべきだと考えます。

私は不動産投資と株式投資の大きな違いは、”勝利のセオリー”が存在するかどうかだと考えています。株式投資には不確定要素が多く、(特に長期投資には)”勝利のセオリー”などありません。当ブログが薦める”ほったらかし投資”は、30年~40年といった超長期の時間を犠牲にすれば、過去の実績から見て高い確率で勝てるはず、ということを言っているに過ぎません。短期の株式投資では、cisさんやBNFさん、テスタさんのように勝ち続けている人はいます。ですので、”勝利のセオリー”が存在するのかもしれません。しかし、彼らの手法は第三者がまねできるような定式化が可能なものではなく、おそらく極めて感覚的なものだと推察します。

一方、不動産投資には中期的な時間軸で結果を実現できる”勝利のセオリー”が存在するように思います。もちろん、誰もが容易に到達できる領域だとは考えていません。しかし、然るべきメンターの指導を受け、汗をかきながら経験値を高めていけば、いずれあなたや私も到達できる領域ではないかと。例えると、(短期の)株式投資の場合は100mを9秒台で走るようなもので、一握りの天才にのみ到達可能な領域。それに対し不動産投資の場合は42.195kmをサブスリーで走るようなもので、努力次第でひょっとしたら一般人にも到達可能な領域。そんな気がします。適正なレートで融資を引き、割安な水準で物件を購入、集客力のアップと物件管理の効率化を図り、さらには出口での売却益の獲得を狙う。決して簡単な話ではありません。でも、不動産投資で成功を収めた何人ものサラリーマン大家さんが、”勝利のセオリー”の存在を証明しているように思います。(ベテラン不動産投資家の皆さん、間違っていたらごめんなさい!)

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閑話休題

【閑】冬山に行かない山ヤの冬の過ごし方

私の趣味の一つが山登りであることは当ブログで前からお話してきましたが、私が2,000m以上の高い山へ出かけるのは、ゴールデンウィークから秋までです。つまり、積雪期の山には登りません。それは、雪山を登る体力と技術に自信がないからです。(若い頃はピッケルとアイゼンを持って南アルプスや南八ヶ岳を登ったものですが、今は無理です。)

問題は山へ行かないこの時期、どうやって山への想いをやり過ごすかです。実は私の部屋には暖房がありません。別に電気代をけちっている訳ではありませんが、とにかく昔からないのです。なので、寒さから身を守るため、冬の間はシュラフ(寝袋)に入ってテレビを見たり、本を読んだり、寝たりしています。シュラフはもともと寒い山の上で寝るための道具ですから、平地の寒さなどへっちゃらです。また、布団を敷いたり畳んだりする手間も省け、自宅にいながらアウトドア感覚を味わうことができて最高です。是非、皆さんも試してみて下さい。

それから、私は休みの日の食事にもアウトドア感覚を取り入れています。直火にかけるアルミ鍋タイプのうどんを買ってきて、山で使う携帯用の小型ガスバーナー(EPIやプリムス)でぐつぐつ煮込み、ふーふー言いながら食べるのです。そして、残ったスープには買ってきたおにぎりをぶち込みます。おにぎりを煮込むと数分でスープを吸って、いい感じでおじやが完成します。このおじやがまた旨い。ちょっと塩っ気が強いですが、ビールの当てにはちょうどいいです。ただ、火の取り扱いには注意して下さい。

冬の間、こんな感じで食っちゃ寝を繰り返していたら、体がなまってしまいます。そのため、ダイエットとトレーニングを兼ねて自宅から車で30分ほどの低山(猿投山629m)に週末通っています。ただ登るのでは負荷が少ないので、ザックにダイビングで使うウェイトとテント、水を詰め込み、総量26kgほどにして歩荷訓練のまね事をしています。冬の間に体力をつけて、この夏こそ光岳に挑戦したいと考えているからです。

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年金

【年】灰色の憂鬱な近未来

橘玲さん著「DD論」(集英社)を読みました。今回は、当ブログでも度々取り上げている超高齢化社会の近未来について、本書の記述をご紹介します。

「人類史上未曾有の超高齢化社会を迎えた日本の最大の課題は、高齢者が多すぎることだ。政府の人口推計では、2040年には年金受給年齢である65歳以上が全人口の35%と3人に1人を超えている。それに伴って年金、医療、介護などを合わせた社会保障給付の総額は190兆円に達すると見込まれている。」
「20年後の人口を1億人、現役世代を5000万人とすれば、単純計算で現役世代1人あたりの負担は年400万円弱になる。このような社会が持続可能かは、少し考えれば誰だって分かるだろう。」

「1950年には65歳以上1人に対して15歳~64歳人口が12.1人だったが、いまから約40年後の2065年にはそれが1.3人になると見込まれている。1人の現役世代が、子育てと親の介護をしながら、さらに高齢者1人を支えなければならない。」
「いまの若者はこのことをよく知っており、将来の経済的な不安が少子化の最大の原因になっている。」

本書によれば、2020年1月に自民党の政治家がSNSで「あなたのために政治に何ができます?」と訊いたところ、「早く死にたい」「苦しまずに自殺する権利を法制化してほしい」という要望が殺到したとのことです。「正直、将来に対する不安が多様で大きすぎて早く死にたいと毎日考えています。(略)安楽死の制度化ばかりを望んでいます。」「自分の子に迷惑をかけ、何も生産できず、死ぬのを待つだけなら、条件付きの安楽死を合法化してほしいです。」などと、20代の若者が政治家に訴えるのが日本という国なのです。
若者たちの大きな不安の背景には何があるのでしょうか。彼ら/彼女たちが繰り返し訴えているのは、「このままでは高齢者に押しつぶされてしまう」という言い知れぬ恐怖です。いったい誰がこんな日本にしたのか? 私を含めシニア層の人々は、これら若者の魂の叫びを真摯に受け止めなければいけません。

1月18日の日経新聞朝刊は、政府が24日召集の通常国会に提出を予定する年金改革法案の概要を伝えています。その中で基礎年金の底上げについて、厚生年金の減額が先行すること等を理由に自民党内で慎重な意見が出ており、実施を29年以降に先送りすることとなったとのこと。マクロ経済スライドの影響で今後大幅な減額が見込まれる基礎年金(国民年金)を、厚生年金の資産を流用して減額幅を圧縮しようという内容の法律改正ですが、厚生年金受給者の反対を自民党の政治家が恐れ先送りしたわけです。これでは本来シニア層が引き受けるべき負担を、またしても次世代がかぶる形となります。
同じシニア層の私ですが、敢えて次世代を代弁して言いたい。あんたたち、ホントいい加減にしなよ!

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株式

【株】株式投資のキモをザックリ理解する

株式投資の解説書を読むと、期待リターンだの標準偏差だの、アルファだのベータだのと、小難しい用語が次々に出てきます。でも私たちは投資期間や許容リスクを制限されたプロの投資家ではないので、そんな細かい話は無視しましょう。もっとザックリと大きな流れをつかむことの方が大事です。そこで、今回は「年1時間で億になる投資の正解」を読んででご紹介した内容を引きながら、株式投資のキモをザックリ理解してみたいと思います。

ここで一つだけ専門用語を使うことをお許し下さい。JPモルガンの超長期市場予測(2024年版)によれば、日本大型株の期待リターンは6.7%、日本小型株の期待リターンは7.2%となっています。そこで、取り敢えず間を取って、日本株の期待リターンを7%とします。期待リターンというと何かすごいことのように聞こえますが、何のことはありません。ただの利回りのことです。日本株に投資したら、年7%の利回りが期待できるということです。期待というのは、株式はリスク資産なので、預金のように利回りが確定したものでなく、あくまで期待=予想ベースの数字だよ、という意味です。

ところで、皆さんは「72の法則」をご存じでしょうか?「72の法則」とは、お金が倍になるために必要な期間が簡単に分かる算式のことです。72÷金利(%)=お金が倍になる期間、となります。(※) ここに日本株の期待リターンの7%を入れると、72÷7=10となります。10年で資産が倍に、20年で資産が4倍になる計算です。
(※)あくまで概算、目安です。

株式投資はいいことばかりじゃありません。リスクも考えなければいけません。しかし、私たちは素人の長期個人投資家ですから、標準偏差のような細かい理屈は要りません。ザックリ、何年で何%くらい下落するといった情報があれば十分です。そこで、「年1時間で億になる投資の正解」の出番です。この本の中でS&P500の過去データとして、1年に3回▲5%の下落、16ヶ月に1回▲10%の下落、7年に1回▲20%の下落、そして22年に1回▲50%の下落が紹介されています。米株と日本株の違いはありますが、日本株を米株よりやや厳しめに見ておけば大丈夫。日本株は、1年に1回▲10%の下落、5年に1回▲20%の下落、20年に1回▲50%の下落をするものとしましょう。

5年に1回▲20%の下落なんて、とんでもない! 20年に1回▲50%の下落って、資産が半分になるって話? ふざけるな!
お怒りはごもっともです。ですが、ちょっと待って。日本株の期待リターンに目をやって下さい。10年で資産は倍、つまり利回りは100%です。20年で300%。確かにこれらは計算上の話、机上の空論です。実際はそんなに上手くはいきません。でも、20年、30年……といった長期の時間軸においては、机上の空論が現実となる可能性が高まります。5年で▲20%、20年で▲50%相場が下落しても、それまでの相場上昇で十分なお釣りが来るはず、という仕掛けです。

長期の株式投資の成功の秘訣は、短期的に含み損を抱えても安易に損切りせず、複利の効果で資産が積み上がるまで我慢することです。一旦資産が積み上がれば、含み益がクッションとなって短期的な相場下落も気にならなくなります。長期の時間軸では「相場下落による損失」よりも、「相場上昇による利益」の方が圧倒的に大きいのです。そして、相場の下落は、次なる相場上昇のために欠かすことのできないものです。あなたは高くジャンプしようと思ったとき、どうしますか? 一度大きく屈み込みますよね。それと同じです。

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株式

【株】今年最初のトレード

ご挨拶が遅れて申し訳ありません。今更ですが、明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。

さて、元日の日経新聞には恒例の企業経営者の相場予想が出ていましたが、皆様一様に強気でしたね。こんな年も珍しいのではないでしょうか。ひねくれ者の私は、かえって弱気を吐きたくなります。とはいうものの、投入資金があれば直ぐに買いたくなる”ダボハゼ”の私。NISAの成長投資枠を埋めるべく、新年早々買い指し値を入れ、早速約定しました。購入した銘柄は、わが地元企業のセイノーホールディングス(9076)。配当利回りが4%を超える高配当株です。成長投資枠というくらいですから、本来はグロース株を買うべきかも知れませんが、自分の年齢を考えると値上がりを待つ時間は余りありません。ですので、どうしても高配当株に目が行きます。今回は枠の半分程度を埋めましたが、3月末までに残りの半分を埋めたいと思います。今のところ、INPEX(1605)あたりが候補です。

日本株式市場の先行きは分かりませんが、本邦経済はインフレの定着による名目ベースの経済成長が当面続くと見ているので、今年も引き続き強気で臨んでいいのではと考えています。

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株式

【株】「年1時間で億になる投資の正解」を読んで

「年1時間で億になる投資の正解」(ニコラ・ベルベ著、新潮新書)を読みました。いやあ、実に示唆に富んだ良書ですね。株式投資初心者の方には、最初にこういう本を読んでほしいと切に思います。書店にいくと投資関係の本が山積みになっていますが、ほとんどがFIRE達成者の再現性も怪しいひとりよがりの体験記か、書いてあることは間違ってないものの、それって投資じゃなくて投機でしょって感じの本ばかりです。何で日本人の書く投資本はこうなっちゃうんでしょうね? しかし、本書はそんなマガイモノではありません。本書を読めば、なぜ(個別株でなくインデックス投信による)長期のほったらかし投資が一番なのか、どなたも理解できるはずです。詳細は是非本書を手に取ってご確認いただくとして、以下では私が記憶に留めたいと思った箇所をピックアップしてご紹介します。

1.株式投資をする目的
本書のP138にこんな記載があります。「私たちの身の回りにあるものは、ほとんどが時間とともに価値を失ったり劣化したりする。数年前に買った最高性能のコンピューターの処理速度はだんだん遅くなっていく。風雨にさらされるマイホームは高いお金をかけてメンテナンスしなければならない。身体だって衰えてくる。」「だが、こと投資にかけてはその逆が起こる。時間が私たちに味方する数少ないケースが、投資の世界なのだ。」

(私たち自身を含め)私たちの身の回りのあらゆるものは、時間の経過による陳腐化から逃れることはできません。中高年になると若い頃のようにバリバリ働くことはできませんし、マンションの賃料は築年数がたつにつれ低下していきます。このように、ナマモノである現物資産のパフォーマンスは時間の経過とともに劣化する運命にあります。しかし、バーチャルな資産である株式等の金融資産は異なり、経年劣化とは無縁です。それどころか、複利の効果で時間の経過とともにパフォーマンスは加速度的にアップしていきます。したがって、株式等の金融資産を現物資産と併せ持てば、人生の後半でパフォーマンスが落ち込む現物資産の欠点をカバーできます。
株式投資をする目的。それは人生の全期間におけるパフォーマンスの安定です。(一部、私の個人的な解釈が入っています。)

2.長期株式投資が難しいわけ
P131に作家のサイモン・シネックのコメントが紹介されています。「長期的視点に立って行動することにはたくさんのメリットがあるが、実行するのは容易ではない。」「それには大変な努力が必要だ。人間には本能的に厄介な問題をその場で解決しよう、手っ取り早く勝利を収めて野心を実現しようとする。」
人間は目の前の障害を速やかに取り除き、さらなる前進を続けるように設計されています。人間の本能に従えば、株式投資の含み損は速やかに損切りし、次の投資先に資金を投入することが正解です。しかし、長期株式投資は異なります。本能に逆らって含み損を放置し、じっと相場の回復を待つことが正解となります。内なる自分と戦い投資を継続しなければならないところが、長期株式投資の難しい点です。

3.株式という商品
P168には「暴落はありふれたこと、避けられないこと、そして必要なこと」とあります。本書ではS&P500の過去データを紹介していますが、1920年代以降、平均して年3回は5%の下落が起きています。過去100年では16ヶ月に1回のペースで10%の下落が起きており、また7年に1回のペースで20%以上の下落が起きています。そして、1950年以降では22年に1回のペースで50%の下落が起きています。まさに、暴落はありふれたことであり、株式という商品が本来持っているリズムだといえます。
しかし「下落によるダメージは、通常長続きしない。たとえば第二次世界大戦以降、20%以内の調整であれば回復して下落前の状態に戻るまでの期間は平均4ヶ月だ。」「そして1974年以降にS&P500が10%以上下落したケースを見ると、底を打った翌月には平均8%以上、1年後には平均24%以上上昇している。」「金融市場最悪の惨事であった1929年の大暴落の後でさえ、市場は10年も経ずに回復している。」これもまた株式の持つリズムです。
皆さんには株式のこのリズムを理解したうえで、株式投資に取り組んでほしいと思います。

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保険

【保】公的医療保険と民間医療保険

コンサルティングファームのマーサーが、各国の公的医療保険と民間医療保険の状況を比較する興味深いレポートを出しているので、概要をご紹介したいと思います。

日本は国民皆保険制度を採用しているので、国民は誰もが健康保険など何らかの公的医療保険に加入しています。そして、公的医療保険の保障だけでは不十分と考える一部の企業が、従業員福利厚生の一環で民間の医療保険を従業員に提供しています。これらの企業は全体の2割もありませんが、先進医療費用や差額ベット代など公的医療保険では保障されない部分を提供し、他社との差別化や従業員満足度の向上を図っています。日本では人口の100%が公的医療保険に加入し、企業の20%未満が従業員に民間医療保険を提供する形となっています。しかし、これは海外と比べると特異な状況といえます。では、次に諸外国(米国と英国、シンガポール)の状況を見てみましょう。

まず、米国です。米国では1966年から一部の国民を対象に公的医療保険制度がありましたが、2010年に国民全員が医療にアクセスできるようにと医療保険制度改革(オバマケア)が起こり、従業員数50名以上の企業に従業員とその扶養家族に民間の医療保険等の医療保障を提供することが義務付けられました。その結果、95~99%の事業主が従業員と扶養家族に医療保障を提供しています。米国では人口の約18%が65歳以上の高齢者等を対象としたメディケア(公的医療保険)に、人口の約20%が低所得者を対象としたメディケイド(公的医療保険)に加入、そして企業の95~99%が従業員と扶養家族に民間医療保険を提供する形となっています。

次に英国です。英国では公的医療保険制度として、1948年から国民保健サービス(NHS:英国国民及び長期移住者の全員が対象)が運営されています。しかし、この制度は専門医の予約が取りにくい等の問題があるため、約50%の企業が福利厚生の一環として従業員に対し民間医療保険の提供を行っています。そして、約28%の企業が従業員家族に対し民間医療保険の提供を行っています。

また、シンガポールでは医療費は基本的に全額国民の自己負担となりますが、備えとして医療費を積み立てさせる公的なメディセーブ制度(シンガポール市民または永住者全員)が存在します。しかし、これらの積立金は高額医療や透析のみに適用されるなど十分な備えとはならないため、約97%の企業が福利厚生として民間医療保険を提供しています。

どうでしょうか。諸外国と比べて日本の公的医療制度がいかに充実しているか、お分かりになったと思います。しかし、この日本の公的医療制度の充実も今や風前のともしび。今後は制度の縮小が避けられません。諸外国では、公的医療保険の不足を企業が提供する民間医療保険でカバーしています。しかし、日本企業は今でも高額の社会保険料(医療+介護+年金)を負担しており、このうえ民間医療保険の保険料の負担を期待するのは無理な相談です。そうなると、国民は自らの負担で民間の医療保険に加入し、公的医療保険の不足を補っていくほか手はありません。

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【株】お米とお金

投資することの意味は、お金をお米に置き換えて考えるとよく理解できます。早速ですが、いま手許に100のお米があるとしましょう。このお米の使い方と結果をケース別に考えてみます。まず今年、2024年の状況からです。

(ケース1)
今年とれたお米100を全部食べてしまいました。さあ大変、来年食べるお米がありません。
(ケース2)
今年とれたお米100のうち50だけを食べて、残り50は来年のために蔵に備えておくことにしました。蔵は頑丈なので台風がきても安心です。
(ケース3)
今年とれたお米100のうち50だけを食べて、残り50は田んぼに播いて稲を育てることにしました。ただ、夏に台風が来ないか心配です。

次は時計の針を1年進めて、2025年の状況です。
(ケース1)
去年お米を食べ尽くしてしまったので、今年は家族全員で出稼ぎに行かなければなりません。
(ケース2)
お米を食べようと蔵を開けてビックリ。50あったはずのお米がネズミにかじられて30に減ってしまいました。
(ケース3)
幸いにも台風が来なかったので稲は豊作となり、200のお米を収穫することができました。でも、もし台風が来ていたら、20のお米しか収穫できなかったでしょう。

いずれのケースも一長一短であり、どれがベストか事前には分かりません。でも、私たちの祖先は果敢にリスクと向き合い、弥生の昔から(ケース3)を選択してきました。彼らはひと粒のお米が稲穂となり、何十粒ものお米が実ることを知っていたからです。そして、この稲作の複利効果が、今日の私たち日本人の繁栄の基礎となっています。

さて、ここでもう一度お話をお米からお金に戻して、上記ケースを眺めてみましょう。そうすると(ケース1)は賃金収入で生活費を100%賄うケース、(ケース2)はリスクを嫌ってお金を銀行に預けたもののインフレで目減りしてしまうケース、(ケース3)はリスクを受け入れてお金を投資に回すケース、に相当することが分かります。お金の場合も、どのケースがベストか事前には分かりません。ただ、私はお米に関する先輩たちの取り組みが参考になると考えています。

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株式

【株】ダボハゼ

2024年の振り返りと2025年の課題で私は、「……基本的に相場のタイミングは取らない主義なので……」などと格好の良いことを申しましたが、あれはウソです。ごめんなさい。本当のところを白状します。私は我慢するということができない、ダボハゼのような男です。手許にキャッシュがあれば相場展開や企業業績にお構いなく、条件反射で目に付いた銘柄に片っ端から食らい付いてしまいます。これは、ひょっとしたら病気かもしれません。

そんな私が最も恐れること。それは買った銘柄が奈落の底へ下落すること? いえ、違います。買おうと思っていた銘柄が買えないまま、超高値圏へ一直線に上昇してしまうことです。想像しただけで、怖くて夜も眠れなくなります。
こんな私って変ですか?