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株式

【株】初夏の大花火大会

なぜ、相場は上がるのか? 投資経験のない人に聞いたら、「買う人がいるから」という答えが返ってくるでしょう。でも、私たち投資家は知っています。相場が上がるのは、「売る人がいるから」ということを。

確かに、上げ相場は買う人がいなければ始りません。でも、買い方が中心の上げ相場は、上げ幅が限られ長続きしません。想定外の急激な上げ相場の裏には、必ず売り方の踏み上げ(損失覚悟の買い戻し)があります。相場が上がる⇒売り方が踏む&新たに売建てる⇒相場が上がる⇒売り方が踏む&新たに売建てる⇒……⇒……。この売り回転が効いている限り、上げ相場は続きます。因みに、足下の日経平均の売り方の状況(空売り比率)は下表の通りです。

(出所:日経平均リアルタイムチャート

日経平均が27,000円台に留まっていた3月下旬から空売り比率は40%台のまま、変わっていません。今回の上げ相場で売り回転が効いている証拠です。しかし、売り方は相場の上昇で損失を被りながら、なぜ性懲りも無く再び売りを入れるのでしょうか。それは、彼らが近い将来、相場が下げに転じると確信しているからです。
米国の債務上限問題や金融機関の破綻、日本でも物価上昇や日銀金融政策の変更観測等、売り材料を上げたらきりがありません。明日、相場が急落したとしても何の不思議もないです。でも、市場に弱気なムードが漂っているときほど、意外と上げ相場は続くものです。

では、この上昇相場はいつ終わるのでしょうか? 正確なところは、神様に聞いてみないと分かりませんが、予兆を探る手立てならあります。それは、空売り比率の変化に注目することです。売り方が相場の下落に賭けることを諦め、売りポジションをたたんで空売比率が低下したら要注意です。上げ相場継続の条件である売り回転が効かなくなるからです。
売り方の買い戻しは、最初は少しずつですが徐々にヒートアップし、最終局面ではパニック的な様相を呈します。もはや株価を意識する冷静さは失われ、われ先にと日経平均を買いまくります。そして、初夏の夜を彩る打ち上げ花火のように、株価は天空を目指します。
恐らくこの瞬間、日経平均株価は、当面の高値を付けることになるでしょう。

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不動産

【不】不動産投資そもそも論

不動産投資は最終目標(ゴール)をどこに置くかによって、大きく2つのタイプに分かれると思います。

一つ目は、保有する物件数の極大化を図るタイプです。30年~40年後、全ての借入れの返済を終えた時点でひとつでも多くの物件を保有し、豊富な賃料収入で悠々自適なシニアライフを目指す。そんな、ストック志向型のアプローチです。
このタイプでは、フルローン、オーバーローンを厭わず、可能な限りの借入れを行い、レバレッジをフルに効かせて物件を買い進めていきます。しかし、借入れの返済計画に狂いが生じた途端、自己破産に一直線となる危険性と隣り合わせであることを忘れてはいけません。

それだけのリスクを負って物件を買い進めた先にある到達点ですが、そこには厳しい現実が待っています。40年後、手元にある築古マンション達に、キャッシュフローを生み出す力がどれだけ残っているでしょうか。ほとんどが幽霊マンションと化し、空室が大量に発生したり、設備の老朽化で高額な修繕費が必要になったりと、毎年増加するキャッシュアウトに悩まされることでしょう。これらの負動産に年金の代わりは期待できません。「こんなはずじゃなかった」と嘆いてみても、あとの祭りです。
そもそも、大きくレバレッジを効かせたストック志向型のアプローチは、米国のようなインフレ傾向の国で、時間の経過とともに借入れの実質価値が減価していく環境でこそ有効な戦略です。デフレ傾向の我が国においては、借入れの実質価値が時間とともに増大するので、大きなレバレッジは不利です。(今後、日本でもインフレ傾向が定着すれば、ストック志向型アプローチが有効となるでしょう。)

二つ目は、各種リスクへ配慮しつつ物件の購入・売却を繰り返し、獲得するキャッシュの極大化を図るタイプで、フロー志向型のアプローチです。
このタイプは、十分な頭金と借入れで物件を購入し、物件の賃料で短期間での借入れ返済を目指します。完済したところで改めて借入れを行い、もう1物件を購入、以後2物件で借入れを返済していきます。当然、返済スピードは早くなります。その後も完済と同時に借入れを行い、物件を買い増していきます。そして、購入した物件は5年~10年単位で売却し、別の物件に入れ替えます。購入と売却のサイクルの中で、賃料利回りと借入れ金利のスプレッドを抜いていくイメージです。これはJREITや私募不動産ファンドが採用する戦略と同じで、日本のように低金利な環境で有効となります。
なお、このタイプは頭金の確保がネックとなりますが、ローンの破綻リスクは限定的です。また、継続的に物件の売却と購入を繰り返すので、流動性も確保できます。さらには、物件の購入と売却のタイミングを分散しており、金利や不動産市場等マクロ環境の変動リスクにも対応可能です。
不動産市場が低迷している場合、物件の売却には不利ですが、物件を購入するには最高の環境です。この戦略では売りと買いがセットとなるので、不動産市況の影響を中和することができます。

以上、不動産投資の2つのアプローチについてお話をしましたが、実際は両者の中間を行く投資家の方が多いと思います。また、今回は主に不動産投資のマクロ的な側面に触れましたが、優良物件の仕込み方や物件の管理手法等ミクロ的な側面も運用の成否を分ける重要なファクターとなります。

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株式

【株】相場予想が当たらない訳

お正月の日経新聞では、大手企業の経営者が向こう1年間の株式相場の予想を行うことが恒例となっています。また、毎週月曜日には証券各社のホームページに、アナリストの「今週の相場予想」がアップされます。このように、いたるところで様々な立場の人たちが、日々相場の予想を行っています。しかし、私は30年以上マーケットの近くで仕事をしていますが、高確率で予想をヒットさせる人にはお目にかかったことがありません。

でもちょっと考えれば、超能力の存在でも前提にしない限り、相場の予想などできるわけないことが分かります。月曜日の朝、A証券会社のアナリストB氏が自社のホームページに今週の相場予想をアップするとします。時刻は、ただいま7:00AM。B氏は新聞各社の報道、情報端末やインターネットの記事等、7:00AM時点で入手可能なあらゆる情報をもとに完璧な相場予想を目指します。しかし、この予想はあくまで7:00AM時点の情報がベースです。7:05AMに新たなニュースが飛び込んできたら、7:00AM時点の相場予想の完璧性は崩れます。これが、1日後、1ヶ月後……と、時間が経過するにつれ当初は想定していなかった情報があふれ、相場予想は占いと化します。明日のことならいざ知らず、アナリストに将来の相場予想を期待することは、最初から無理な相談なのです。今や世界は24時間繋がっています。世界中のどこかで起きた事件、現象を相場は即座に織り込みにいきます。相場は自ら意思を持つ生き物の如く、時宜刻々と行き先を変えます。

プロの短期投資家は、相場の方向性にベットすることはありません。相場の方向性を予想することが無意味であることを知っているからです。彼らの判断軸は統計データです。拠って立つのは、あくまでサイエンスです。過去の何十万、何百万というデータと照らし合わせ、今現在の相場の値動きに統計的に有意な異常性(アノマリー)を見い出したら瞬時にポジションを取り、異常性が消えた次の瞬間にポジションを解消する。この瞬時の僅かなサヤ取りを、アルゴリズム取引による超高速売買で繰り返し繰り返し行い、収益を積み上げるのです。
私たち個人投資家に、プロの短期投資家の真似はできません。私たちにできるのは、信頼のおけるアナリストの相場予想に、時間の経過によって新たに加わった情報を自身の手で織り込み、エコノミストの相場予想をアップデートすることです。そして、アップデートした相場予想をもとに投資戦略を考えることです。しかし、アップデートした相場予想も数分後には一部が陳腐化し、時間とのいたちごっこが始ります。

結局、個人投資家も相場にベットすることはあきらめ、相場観を入れないドルコスト平均法によって、機械的に定時定額投資を続けることが賢明なように思います。

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保険

【保】保障最新化の罠

医学の進歩に伴い、医療の現場は日々変化しています。10年前は常識であったことが現在においては非常識、といったことが頻繁に起きます。例えば、がんの治療は、10数年前であったら手術の後、入院した状態で放射線や抗がん剤の治療を行っていました。自ずと入院は長期化します。しかし、今では余程大きな手術の後でも2週間程で退院し、通院しながら外来で放射線や抗がん剤治療を受けることが一般的です。
医療保険やがん保険の保障は、その時々の医療の実態に合わせ最適な状態に設計されます。したがって、保険の保障も医学の進歩に伴い時間の経過とともに陳腐化し、使いものにならなくなります。2週間で病院を追い出されるのに、がん保険に長期の入院保障は不要です。

保険会社や代理店は、実態に合わなくなった古い医療保険やがん保険の保障見直し(保障最新化)を盛んに契約者に訴えます。役に立たなくなった保障内容を放置したら、いざというときに契約者からクレームが出ることは避けられません。保険会社や代理店は契約者(被保険者)の利益を守り、さらには契約者(被保険者)の命を守るため、必死になって古い保険契約の最新化を訴えているのです。でも……、それだけでしょうか?

保険は若いときに加入した方がお得と、昔からいいます。確かに、終身払いの保険の場合、20歳で加入した方が40歳で加入するよりも保険料の月額は安くなります。なぜ安くなるか。その理由ですが、若いときに加入した方が保険料を払う期間が長くなるからというだけではありません。病気になって保険金が支払われる可能性が高いのは、当然高齢者です。若年者は病気になる可能性は低く、保険金が支払われることもほとんどありません。つまり、保険会社にとって、高齢者はリスクが高く、若年者はリスクが低いということです。そのため、若いときに加入するほど保険料は安く設定されます。そして、若年者が払った保険料は自身の保険金として還元されることはなく、そのほとんどが掛け捨てとなり高齢者の保険金に充当されます。

ただ、これは不当ということではありません。安い保険料で加入した若年者も、やがては高齢者となります。病気がちとなり、通院だの入院だの手術だのと、頻繁に保険金の支払いを受けるようになります。つまり、若年期に掛けた保険料は、高齢期に元を取る仕組みになっているわけです。しかし、これは当初の契約を終身で継続した場合の話であって、途中で見直しを行った場合には該当しないことに注意が必要です。保険の見直しとは旧契約を解約し新しい契約に入り直すことですが、保険料も見直し時点の年齢で再計算されます。つまり、保険契約を見直すとは、若いときから掛けてきた保険料を高齢期に取り戻す権利を放棄し、年齢に見合った高いリスクを織り込んで再計算された割高な保険料に乗り換えることを意味します。
保険会社にしてみれば、若年者が高齢期に差し掛かった後は割安な保険料で保険金を支払わなければならず、逆ザヤとなります。そして、この逆ザヤは解消すべき経営課題となりましょう。

保障の陳腐化を避け、いざというときに役に立つ保険の質を維持するためには、定期的な保障の見直し、保障の最新化が欠かせません。保険会社や代理店のこの言葉に偽りはありません。しかし、保障の最新化によって失われる契約者の利益があることも憶えておいてほしいと思います。