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株式

【株】順張りVS逆張り、リスク対応の違い

8月5日に「令和のブラックマンデー」といわれる大暴落を演じた日経平均株価ですが、月末近くになってようやく落ち着きを取り戻しつつあるようです。今回の急落は先物の売りが主導したとされる一方、下値では値ごろ感から現物の買いがしっかり入っていました。先物と現物の、この対照的な動きはどう説明したらいいのでしょうか? まず、投資主体の違いが上げられます。(ファンド系VS年金基金等の機関投資家) それから、投資の時間軸も違います。(短期VS長期) さらに、リスク対応の手法の違いもあると思います。(順張りVS逆張り)

初めに、年金基金等が伝統的に採用してきたリスク対応の手法について、簡単にご説明します。彼らは、基本ポートフォリオ(または政策アセットミックス)という運用計画に基づいて、内外の債券・株式の現物4資産に投資を行います。下図はGPIFの基本ポートフォリオですが(出所:GPIF基本ポートフォリオの考え方)、事業法人等の年金基金も、ほぼ同様の手法をとっています。(尚、資産構成割合は各社で異なります。)

GPIFは、最初に資産を内外債券・株式に25%ずつ配分します。次に、例えば国内株式が下落して、資産構成割合が25%から15%に低下したとします。逆に国内債券は上昇し、割合が25%から35%に上昇したとします。このとき、国内株式は許容乖離幅の下限である17%(=25%-8%)を下回っているので、国内株式を購入して割合を17%まで引き上げる必要があります。一方、国内債券は許容乖離幅の上限である32%(=25%+7%)を上回っているので、一部を売却して割合を32%まで引き下げる必要があります。これら資産構成割合の調整をリバランスといいますが、ここで注目いただきたいのは、GPIFのリバランスが、相場が上がったら売り、下がったら買い、という逆張りで行われている点です。このように、逆張り戦略を取るGPIFや年金基金等機関投資家の対応は、マーケットの急変に対しブレーキをかける役割を果たしています。

次にファンドのリスク対応の手法ですが、詳細は不明です。分かるわけがありません。分かってしまったら、ファンドの優位性がなくなりますから。ファンドのリスク対応手法は、企業秘密です。(ただ、ファンドは流動性やコストの観点から先物を多用することが分かっています。) ですので、以下ではファンドや先端の機関投資家が採用していると思われる手法のひとつについて、推測を交えてお話させていただきます。それは、マーケットのリスク量に応じて投資額を機動的に変更するというものです。マーケットのリスク量なんて、どうやって計るんだと思われるかも知れません。色々な手法があるでしょうが、VIX指数(米国株)や日経VI(日本株)なども使われていると思われます。VIX指数が上昇したらリスク量が増加したと判断し、米国株の割合を引き下げる。逆に、VIX指数が低下したらリスク量が減少したと判断し、米国株の割合を引き上げる、こんな具合です。基本的に、VIX指数が上昇するのは相場が下落するとき、VIX指数が低下するのは相場が上昇するときです。そのため、この手法を採用するファンド等の運用は、相場が下がったら売り、上がったら買い、という順張りになります。結果、ファンド等はマーケットが変動したとき、変動幅を拡大するアクセルのような役割を果たすことになります。

植田日銀総裁の会見を機に為替が急速に円高に振れて、キャリートレードの巻き戻しを誘発。日経平均が下げ基調となる中、ファンド等がリスク量の増大から大量の先物を売ったことで、日経平均は加速し猛スピードで下落。その後、年金基金等機関投資家が現物にリバランスの買いを入れたところで、上昇に転じることとなった。8月5日以降の相場展開は、ザックリ、こんな感じの図式になるのではないでしょうか。
今や日本株(特に先物)市場のメインプレイヤーは、逆張り系の機関投資家ではなく、順張り系のファンド等になっています。このことが、昨今の日本株市場のボラ上昇の一因となっている可能性は高いと見ています。

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ライフプラン

【ラ】改めて考える、老後2000万円問題への対応

皆さん、覚えてらっしゃいますか? 少し前に、高齢者の家計が2000万円の資産がないと破綻するというので、大騒ぎになりましたよね。いわゆる”老後2000万円問題”ってやつです。報告書を作成した金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」の趣旨はそういうことではなかったようですが、2000万円の数字が一人歩きしちゃったんですね。老後資金は2000万円あれば足りるのか足りないのか。人によって言うことは違いますが、当たり前だと思います。なぜなら、想定する老後生活の水準次第で、必要な金額は変わってくるからです。また、人生100年時代において、増加が見込まれる医療費や介護費をどう織り込むかによっても、結果は違ったものになります。

私は老後に必要となるお金について、ライフプランを立ててあれこれ悩んでも意味がないと思います。そもそも、自分が何歳まで生きるか分かりませんし、医療費や介護費がどれだけ増加するかも想像がつきません。それにインフレによる物価高が加わります。(※1) もう、なるようにしかなりません。ただ、できるだけのことはやっておきたいもの。まず、なるべく長く働き、年金の受給を繰り下げ、企業年金や公的年金の極大化を図る。そして、終身での受け取りが可能であれば、終身年金を選択する。(※2) これらの対応により、”想定外の長寿リスク”はある程度ヘッジすることが可能です。
(※1)①想定外の長寿、②医療費・介護費の高騰、③物価高。これが私が考える老後の3大リスクです。
(※2)公的年金の繰り上げを薦める論者もいますが、長寿リスクへの対応に鑑みれば、もってのほかです。また、株式の運用をしている方は、株式配当も終身年金の原資となります。

悩ましいのが、”医療費や介護費の高騰”への対応です。将来的に医療費や介護費がどれだけ値上がりするかは予測困難であり、ヘッジのしようがありません。できることは、生活費を年金の枠内に収まるよう工夫し、資産の取崩しをできるだけ避けて、資産寿命を自分の寿命いっぱいまで長期化することくらいです。これにより複利効果を最大限活用し、資産の極大化を図ることができます。(もちろん資産が大幅に減少するリスクもありますが……。) 資産を極大化し、医療費・介護費の高騰への耐性を高めておくことが、できる限りの対応だと考えます。

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株式

【株】低ボラティリティのパラドックス

今回の株式暴落の背景にオプションの売りが絡んでいたらしい件については、”日経平均下落のわけ”で触れましたが、以下では「ボラティリティの低さはリスクの高さを表す」という、一見矛盾したお話をします。

まず、簡単にボラティリティの説明をしましょう。ボラティリティは株式等の証券の価格変動性のことで標準偏差で表すことが多く、ボラティリティが高いことは価格変動性(=リスク)が大きいことを意味します。と、ここまでが一般的な説明です。ここからは、少しマニアックなお話です。最近は個人投資家もボラティリティ(略してボラ)という言葉を普通に使いますが、ボラティリティに2つの種類があることを意識している人は少ないと思います。一つ目は、1年とか3ヶ月とか過去の証券の実際の値動きから算出するもので、ヒストリカル・ボラティリティ(HV)といいます。二つ目は、オプション価格に織り込まれているボラをブラック・ショールズ・モデル等のプライシングモデルを使って逆算するもので、インプライド・ボラティリティ(IV)といいます。

VIX指数(Volatility Index)は、米シカゴ・オプション取引所(CBOE)が、S&P500種株価指数を対象とするオプションのインプライド・ボラティリティを元に算出し、公表している指数です。VIX指数が20を超えると市場がやや不安な状態と判断され、40以上の数値は危険水域とされます。下のチャート(出所:TradingView)でも8月5日の下落局面で、VIX指数は40手前まで上昇していることが分かります。

ところで、VIX指数やインプライド・ボラティリティ(IV)は、どういうときに低下するのでしょうか? まず考えられるのが、実際の証券の値動きが小さくなり(HVの低下)、その影響でIVが低下するケースです。「低ボラティリティ=低リスク」の一般的な理解が妥当なケースです。もう一つは、オプションの需給でIVが低下するケースです。つまり、オプションの売りに押されてオプション価格(プレミアム)が低下し、IVも低下するケースです。これは、8月5日の日経平均暴落前に起きていた現象です。機関投資家やファンド等がプレミアムの享受を狙って大量のプットオプションを売っていました。オプションを売ればオプション価格(プレミアム)は低下しますが、低下したらさらに量を増やしてオプションを売ることになります。オプションという商品は、買い手のリスクは限定されますが、売り手は無限大のリスクにさらされます。オプションの大量の売りが蓄積していた8月初の東京株式市場は、まさに発火性ガスの充満した倉庫のような状態でした。そこに火を付けた人がいたわけです。株価の下落を見たプットオプションの売り手は、慌てて株式先物に売りを出します。売りが売りを呼び、それがやがてパニックとなり、8月5日の日経平均大暴落へと繋がりました。

需給の歪みから極端にIVが低下したときは、市場がリスクの存在に目をつぶり弛緩しきっているとき。「低ボラティリティ=高リスク」な瞬間です。そんなとき、普段ならちょっとした相場の調整が、想定外の下落に繋がったりします。今回の日経平均暴落の教訓を、私たち個人投資家は胸に刻んでおきたいものです。

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閑話休題

【閑】昭和男とスギちゃん

最近は年(60歳)のせいか、食事はさっぱりした日本食、お酒はすっきり辛口の冷酒、音楽はすかすかのブルースがお気に入りです。身の回りのグッズも、無駄な飾りのない機能的なものに惹かれます。ハサミとか包丁とか。そうそう、バイクなんか、とてもセクシーだと思います。

生活や趣味でもシンプルさを追求するようになりました。家族や友人、会社の仲間やお客様の笑顔、それから投資している株式の塩梅。生活面で気を配っているのはこれくらいです。趣味は登山とダイビングの2つだけ。その分、体の動く限りは徹底して楽しみたいです。また、趣味ではシンプルさだけでなく、ワイルドさも追求しています。私は無事に山から下りてきたとき、海から上がってきたとき、こう心の中でつぶやきます。「ワイルドだろうぉ。」(スギちゃんか!) いい年してタフガイを気取る、哀れな昭和男だと笑ってやって下さい。

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保険

【保】法人保険の節税効果はウソか

一部のユーチューバーやブロガーが、法人保険の節税は全くのウソであると発信しています。2019年のバレンタインショック以降、節税効果を売りにした法人保険のセールスが御法度となっているのは事実ですが、だからといって法人保険の節税=ウソ、とはなりません。そこで、今回は法人保険の節税効果の真偽のほどを確かめてみたいと思います。

まずは、簡単な事例で考えます。ある会社が毎期1000の利益を上げているとしましょう。法人税(実効)税率は30%とします。そうすると、この会社は毎期1000×0.3=300の法人税を納めることになります。次に、第1期において、この会社は(今では存在しませんが)100%損金算入が可能な保険(かつ、解約時に支払済の保険料と同額の保険金が給付されると仮定)に、保険料200で加入したとします。そうすると、保険料の200は損金算入されるので、会社の利益は1000-200=800に圧縮され、法人税は800×0.3=240となります。つまり、第1期では300-240=60の節税効果があったわけです。同様の保険を第4期まで継続し、第5期に解約するものとします。保険を解約すると、会社は支払済の保険料200×4=800の保険金を受取り、利益に計上します。したがって、第5期のこの会社の利益は1000+800=1800です。そして、法人税は1800×0.3=540となります。

ここで、会社が第1期から第5期までに納付する法人税について見てみましょう。この会社が保険に入らなかった場合、法人税は300×5=1500です。(下図上段) 一方、保険に入った場合は、240×4+540=1500となります。(下図下段) 何と、保険に入っても入らなくても、納付した法人税の総額は同じじゃあーりませんか! これが冒頭のユーチューバーたちの主張の根拠です。つまり、「法人保険に入っても法人税は減らず、支払うタイミングを将来に先送りしただけ」と。

確かにゼロ金利の世界では、その通りかもしれません。しかし、これからの金利ある世界では事情が異なります。金利ある世界では、「法人税を支払うタイミングの先送り」は重要な意味を持ちます。もう一度、上図下段をご覧下さい。金利ある世界では、納税を先送ることで手許に残ったキャッシュを、預金等の運用に回すことができます。仮に年利2%の預金で毎期の節税額を第5期まで複利運用したとすると、合計で約12の利息を得ることができます。これが法人税の納税先送りによる利息効果です。そして、利息効果は企業にとって大きなメリットとなります。(キャッシュを借入れ金の返済や運転資金に充てたとしても、同じことが言えます。)

昔から保険以外にも節税商品といわれるものは数多ありました。不動産しかり、レバレッジドリースしかり。古いところでは、適格退職年金などもそうでしたね。なぜ、こんなにも様々な節税商品が利用されてきたのか、考えてみて下さい。それこそ納税の先送りが、企業にとって大きなメリットである何よりの証拠だと思います。もう一度言います。節税商品の本質は納税の先送りです。税金の総額が変わらないことなど、多くの社長さんは先刻承知のうえ。それでも、「利息効果ハ、節税効果デハナイ」と冒頭のユーチューバー氏が言い張るのなら、「おっしゃる通り」と申し上げるほかありません。

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閑話休題

【閑】寄生虫人生

人間は「幸せ」を糧に生きている動物です。そして人間には2つのタイプがあります。自分で「幸せ」を創れるタイプと、自分では「幸せ」を創ることができないタイプ。ちょうど光合成で炭水化物を作れる植物と、葉緑体を持たず自分では炭水化物を作れない植物がいるのと同じです。では、自分で「幸せ」を創れない人間は、どうやって生きていくのでしょうか? 彼らは他人に寄生し、「幸せ」を分けてもらうことで生を繋いでいきます。

どうやら私は、自分で「幸せ」を創れないタイプのようです。もうすぐお盆ですが、私の勤めていた会社にはお盆休みがありませんでした。しかし、私はお盆休みに故郷へ帰省したり、観光地に向かう人たちを見るのが好きでした。なぜか私もハッピーな気分になれたからです。今にして思えば、帰省や旅行に行く人たちから「幸せ」を分けてもらっていたのだと思います。そして、今では嫁さんや娘から「幸せ」を分けてもらっています。嫁さんや娘が毎日を楽しく、思い通りに過ごせる環境を整えるのが、ダンナでありオヤジである私の役目です。

これからも私は寄生虫として生きていくことになりますが、寄生虫の人生にもいい面があります。人は加齢とともに自分で「幸せ」を創り出すことが難しくなっていきますが、寄生虫は高齢者になっても若年者の宿主に寄生すれば、いつまでも上質で瑞々しい「幸せ」を感じることが可能です。こんなことを言うと、若い人から「気持ち悪りぃジジィ」と嫌われそうですが……。

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株式

【株】日経平均下落のわけ

日銀の利上げ? 米景気のハードランディング? 中東情勢の緊迫化? 結局のところ、この方の見立てが一番当たってる気がします。(村越誠の投資資本主義「ボラ売りリバースで令和のVIXショックが発生する)

このブログ記事は米株の下落について書かれていますが、日本株も同様の事象と考えていいでしょう。8月6日の日経新聞がマーケット総合に掲載していましたが、最近の傾向として機関投資家がオプション料稼ぎを目的としたプット売りを出していたとのこと。機関投資家がオプションを売るなんて、以前には考えられなかったことです。また、証券会社も大量のオプションのショートポジションを抱えていた模様。今回、日銀の追加利上げとFRBの9月50bp利下げ観測が海外ファンドの円キャリートレード(円売り日本株買い)の巻き戻しを呼び、それが機関投資家や証券会社の日本株投げ売り、そして個人投資家の信用買いの投げ売りと伝染、これらの投げ売りの連鎖が8月5日の大暴落の原因ではないか、と私は見ています。

暴落前、東京マーケットでは、機関投資家、個人投資家、ファンド、業者ともに先物・オプションのレバレッジでお腹一杯の状態にありました。そのレバレッジが弾け、ミニバルブ崩壊が起こったわけです。しかし、そうだとするとレバレッジの調整がつけば、マーケットは落ち着きを取り戻すと思われます。もちろん、当面はボラタイルな展開が続くでしょう。大地震の後に余震が続くようなものです。そして、円キャリートレーダーが去った後の日本株は、円安による業績のお化粧に頼らない素顔の実力が問われることになります。

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株式

【株】一休さん

まさかの展開です。若干の調整はあって然るべきと思っていましたが……。それにしても驚くのは、日経平均の下げのスピードです。金融ショックでもなく、コロナのような未知の恐怖でもなく、単に米国の景気が予想以上に悪そうという話でしょう? 2022年以降大幅な利上げを行ってきたFRBには、いざとなれば潤沢な利下げ余地があるわけで。また、円高といっても、今年1月1日のドル円は140円台です。もとに戻っただけでしょ。みんな、何をそんなにびびってるのかな。

まあ、裏でイタズラ小僧たちがパニックを煽っていることは想像が付きますが、こいつらの行動をセオリーで理解しようとしても無駄です。理不尽な輩からは距離を置くことが一番。そして、自分が短期投資家でなかったことに感謝しつつ、あとは一休さんになることです。「あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。」