自民党総裁選が行われた9月27日の金曜日、日経平均株価は東京時間15時に40,000円目前の39,829円と大幅に上昇して引けました。しかし、自民党総裁選に高市氏でなく石破氏が選ばれたことが伝わると、ナイトセッションでは28日の未明に37,290円の安値へ約2,500円も急落しました。何でも、石破氏の主張する金融所得課税や法人税増税などが嫌気されたとのことですが、ホンマかいな? 事前の予想でも、総裁選の一番手は石破氏であったはず。予想通りの結果なのに、なぜに相場は上へ下へと大騒ぎするのか。言うまでもありませんね。8月5日の令和のブラックマンデー、植田ショックと同じ構図です。高市氏が追い上げているとの報道を受け、円売り・日経平均買いを進めたCTA等の海外ファンド筋が、総裁選の結果を見てポジションを解消しただけの話。日経平均の急落を嘆く暇があれば、ここは落ち着いて、石破政権の経済運営の方向性を見定める方が有意義だと思います。
私は政治の素人ですので、あくまでも私見となりますが、私は石破政権のキーマンは菅副総裁ではないかと見ています。従前より派閥を持たず政治基盤の弱い石破総裁が、最後に頼るのは菅氏だと思うからです。(菅氏も派閥に属していませんが、勉強会を立ち上げ人脈の構築に注力していました。)菅氏はコロナ禍で志半ばで政権を追われた過去があり、そのとき実現できなかった幾つかの政策を、今度こそは実現しようと思っているはず。そのため、菅政権時に菅氏が目指していた経済政策=スガノミクスの内容を、改めておさらいしておくのもいいと思います。
スガノミクスはアベノミクスを継承しつつも、行政・規制改革の断行による成長戦略に重点を置いた政策です。アベノミクスの成果と言われることの多い「インバウンドによる観光振興」や「農産物の輸出拡大」、「携帯料金の値下げ」や「ふるさと納税」等は菅氏が主導し実現させた政策です。コロナ禍で世論の逆風の前に撤退したGoToも菅政権の政策でした。こう見てくると、ミクロ政策の積み上げで経済成長や生産性向上を図るのがスガノミクスの特徴で、マクロ政策の出番はないように思えます。しかし、菅氏は人事権をたてに官僚をコントロールすることに長けた政治家です。また、民間の経済人とも強いパイプを持っているので、経済現場の状況に応じた適切なマクロ政策を打ち出すことは可能でしょう。
石破政権が課税強化、円高・金利引き上げの道を進むというのは、いかにも短絡思考です。菅氏が副総裁として睨みをきかせる石破政権は、財務・日銀官僚の描く財政再建・金利正常化シナリオに容易に従うとは思えません。経済実態にフィットした地に足の着いた経済政策が実行されるものと期待しています。
私は普段名古屋で仕事をしていますが、3ヶ月に1度東京本社に会議のため上京します。新幹線が多摩川を超え東京都に入ると、私の体は緊張で強ばってきます。アドレナリンが分泌され、血圧が上昇して、心臓の鼓動が激しくなります。東京といえば、地方の人にとってショッピングや食事、観光等の娯楽を楽しむ夢のある街ですが、私にとってはできれば足を踏み入れたくない場所です。なぜなら、かつて私の東京勤務の日々が、絶望に満ちたものだったからです。たび重なる仕事上のトラブル、ミス。上司や同僚、大勢の関係者に迷惑をかけました。その全てが私の至らなさが原因です。今でも当時のことを思い出すと、胃液がこみ上げてきます。
10年間の東京勤務のあと、私は追い出されるように大阪転勤となりました。大阪でも私のポンコツぶりは変わらず、ミスが続きました。仕事が終わってもまっすぐ家に帰る気になれず、最寄り駅の近くの焼き鳥屋でぐだぐだ時間を潰しました。ほろ酔い気分で、このまま消えてなくなりたいと何度思ったことか。ポキッと心が折れる音を聞いたのも、この頃です。でも、不思議なんです。私は大阪にネガティブな印象を持っていません。最近もプライベートで大阪に行きましたが、東京のような緊張感を強いられることはありませんでした。
なぜでしょうか。大阪の街が持つ暖かさのせいでしょうか。大阪には私のような敗者も受け入れてくれる、懐の深さがあります。「大丈夫だから。今は黙って眠りな。」 そうささやいてくれる兄貴のような街です。
【年】遺族年金の見直しについて
2024年7月30日の社会保障審議会年金部会において、遺族厚生年金の見直しが議論されました。現在の厚生年金では、子のない世帯の遺族厚生年金において男女差が存在しており、今回これを見直そうというものです。複雑で非常に分かりづらい公的年金(厚生年金、国民年金)ですが、以下では細部を省きビジュアル的にお示しすることで、現在進行している遺族厚生年金見直しの議論を直感的にご理解いただこうと思います。
子(18歳到達年度の末日までの子。または1・2級の障害状態にある20歳未満の子)のない世帯の遺族厚生年金には、男女差が存在します。現在、妻は夫の死亡時に30歳未満であれば5年の有期給付(有期年金)、30歳以上であれば終身給付(終身年金)を受け取れるのに対し、夫は55歳以上で妻を亡くした場合のみ、60歳以降に終身給付(終身年金)を受け取れることとなっています。これは女性は稼得能力が低く男性は高いという、旧態依然としたイメージが前提にあります。しかし、今や社会情勢は変化しており、喫緊の格差見直しが求められています。
2024年7月30日の社会保障審議会年金部会では、20歳代から50歳代(60歳未満)で死別した子のない配偶者に対する遺族厚生年金の見直しの方向性として、以下の3点が打ち出されました。
①男女で条件を分けず、5年間の有期給付とする
②現行制度のおける生計維持要件のうち、収入要件(年収850万円未満)の撤廃
③現行制度の遺族厚生年金額よりも年間の金額を充実させるため、有期給付加算(仮称)を新設
今回の年金部会で有期化の対象として議論されたのは、今後発生する子のない現役世帯の遺族厚生年金です。受給権が既に発生している人、子のある世帯、高齢期の遺族厚生年金の給付については、現行制度維持の方針が示されました。また、今後発生する子のない妻への遺族厚生年金については、(20年以上の)十分な経過措置期間をもって段階的に有期年金化を進める方針が検討されています。
確かに30歳以上の子のない妻にとっては、今回の遺族厚生年金の有期年金化は明らかな制度改悪であり、十分な経過措置期間が必要となります。また、子のある世帯では激しい男女間格差(※)が引き続き存続することとなりますので(上図ご参照)、早期の是正が望まれます。また、新設が検討されている有期給付加算(仮称)は、現行の中高齢寡婦加算とのバーターである点に注意が必要です。尚、今回の内容は「三井住友信託銀行 年金コンサルティングニュース 2024Autumn」を参考にさせて頂きました。
(※)子のある夫が妻の死亡時に55歳未満であった場合、遺族厚生年金は支給されません。また、55歳以上であった場合も60歳までは支給が停止され(夫が遺族基礎年金の受給権を有する場合は支給停止されない)、60歳到達後に支給開始となります。一方、子のある妻は、夫死亡時の年齢に関係なく、その時点から遺族厚生年金が支給されます。
9月10日の火曜日、私は有休を取って日帰りで北アルプスの蝶ヶ岳へ行ってきました。標高2,677mと北アルプスの中では標高は控えめで、登山道もよく整備されているので、老若男女を問わず大変人気の山です。この日も平日にも関わらず、大勢の登山者で賑わっていました。蝶ヶ岳は山頂から眺める槍ヶ岳~大キレット~穂高岳の大迫力が魅力です。(当日は山頂がガスに覆われており、残念ながら目にすることはできませんでした。)また、山頂直下にある蝶ヶ岳ヒュッテ(収容150人)に泊まれば、美味しい食事をとりながら非日常的なひとときを過ごすことができます。ただ、北アルプス入門編の山といっても、そこは北アルプス。気軽に行ける場所ではなく、それなりの準備が必要になります。皆さんも軽いトレーニングをした上で、1度訪れてみることをお奨めします。きっと人生観が変わりますよ。
前置きが長くなりました。今回は私が蝶ヶ岳に登っている間に考えたこと、「何でオレは山に登るんだろう?」という点についてお話したいと思います。私が山を始めたきっかけは、他人から趣味を聞かれたときに「これです」と言えるものを一つ持っておきたかったからです。それから、健康上の理由(高血圧や高コレステロール)で運動をしなければいけなかったこと等もあり、山を続けてきました。そして、今回もう一つ、私が山に登る意味に思い到りました。それは「成長」です。
去年、私が蝶ヶ岳に挑戦していたら、途中でバテて日帰りは難しかったでしょう。でもこの1年、私は色んな山に登ってきました。その中で私の体力は少しずつ強化されてきたのだと思います。来年はもう少しタフな山にも挑戦する予定です。このように山を続けることで、(いつか限界は来ますが)年齢に関係なく登れる山のレベルは上がっていきます。還暦を過ぎたジジイでも可能です。これってすごくないですか? 人間のパフォーマンスは加齢とともに低下していくのが自然の摂理です。それなのに加齢に逆らってパフォーマンスがアップするなんて、アンビリーバブル! 私は「成長」を求め、これからも山に登ります。(もちろん、筋トレや他のスポーツを通してでも「成長」は可能です。)
と、ここまで考えて、私はさらにもう一つのことに気付きました。私が年金(企業年金と個人年金)のお世話になっても、株式投資を止められないわけ。それも「成長」なんじゃね? 確かに株式投資にはマイナスもありますが、長期的にはプラスの成長が期待できます。どれだけ投資家が高齢になっても、投資先の企業は関係なく成長していきます。私の足腰が衰え、いよいよ山登りができなくなっても、株式は成長を止めません。Going Concern。永遠の命です。私がくたばってあの世に行ったあとも株式は成長を続け、私の家族を見守ってくれることでしょう。(8月下旬に予定していた南アルプスの光岳は、台風10号の影響で断念しました。)
【株】長期投資と、この嫌な気持ち
最近、何をやっても面白くありません。仕事で大口の案件が成約できたり、ダイビングで潜った西伊豆の海のコンディションが最高だったりと、いつもなら大ハッピーなはずの出来事も、素直に喜ぶことができません。何でだろうと理由を考えると、運用が上手くいってないからだと気付きます。
株式相場の10%から20%の調整は想定内であったはずなのに、調子に乗って春から夏にかけて、日経平均で38,000円~40,000円の水準でかなりの銘柄を仕込んでしまいました。お陰様で、足下では相当な評価損を抱えています。(怖くて金額は計算していません。)
しかし、これも長期投資家=リスク屋の宿命です。こうやって人々がいやーな気持ちになっているときに、その気持ちを代わりに引き受けるのが、私たち長期投資家の仕事でありミッションです。嫌な気持ちを引き受けることで、私たちはリターンという報酬を頂いていることを忘れてはいけません。もし、この嫌な気持ちから逃れたいばかりに、安易に株式を売却するような輩にはリターンは巡ってきません。そして、永遠のゼロサム地獄に陥ることになるのです。
以上、ある長期投資家の負け惜しみでした。