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【株】「年1時間で億になる投資の正解」を読んで

「年1時間で億になる投資の正解」(ニコラ・ベルベ著、新潮新書)を読みました。いやあ、実に示唆に富んだ良書ですね。株式投資初心者の方には、最初にこういう本を読んでほしいと切に思います。書店にいくと投資関係の本が山積みになっていますが、ほぼ全てがFIRE達成者の再現性も怪しい体験記か、書いてあることは間違ってないものの、それって投資じゃなくて投機でしょって感じの本ばかりです。何で日本人の書く投資本はこうなっちゃうんでしょうね? しかし、本書はそんなマガイモノではありません。本書を読めば、なぜ(個別株でなくインデックス投信による)長期のほったらかし投資が一番なのか、どなたも理解できるはずです。詳細は是非本書を手に取ってご確認いただくとして、以下では私が記憶に留めたいと思った箇所をピックアップしてご紹介したいと思います。

1.株式投資をする意味
本書のP138にこんな記載があります。「私たちの身の回りにあるものは、ほとんどが時間とともに価値を失ったり劣化したりする。数年前に買った最高性能のコンピューターの処理速度はだんだん遅くなっていく。風雨にさらされるマイホームは高いお金をかけてメンテナンスしなければならない。身体だって衰えてくる。」「だが、こと投資にかけてはその逆が起こる。時間が私たちに味方する数少ないケースが、投資の世界なのだ。」

(私たち自身を含め)私たちの身の回りのあらゆるものは、時間の経過による陳腐化から逃れることはできません。中高年になると若い頃のようにバリバリ働くことはできませんし、マンションの賃料は築年数がたつにつれ低下していきます。このように、ナマモノである現物資産のパフォーマンスは時間の経過とともに劣化する運命にあります。しかし、バーチャルな資産である株式等の金融資産は異なり、経年劣化とは無縁です。それどころか、複利の効果で時間の経過とともにパフォーマンスは加速度的にアップしていきます。したがって、株式等の金融資産を現物資産と併せ持てば、人生後半でパフォーマンスが落ち込む現物資産の欠点をカバーできます。
株式投資をする意味。それは人生の全期間におけるパフォーマンスの安定化です。(一部、私の個人的な解釈が入っています。)

2.長期株式投資が難しいわけ
P131に作家のサイモン・シネックのコメントが紹介されています。「長期的視点に立って行動することにはたくさんのメリットがあるが、実行するのは容易ではない。」「それには大変な努力が必要だ。人間には本能的に厄介な問題をその場で解決しよう、手っ取り早く勝利を収めて野心を実現しようとする。」
人間は目の前の課題を速やかに取り除き、さらなる前進を続けるように設計されています。人間の本能に従えば、株式投資の含み損は速やかに損切りし、次の投資先に資金を投入することが正解です。しかし、長期株式投資では異なります。本能に逆らって含み損は放置し、じっと相場の回復を待つことが正解となります。内なる自分と戦いながら本能に逆らって投資を行わなければならない点が、長期株式投資の難しさです。

3.株式という商品
P168には「暴落はありふれたこと、避けられないこと、そして必要なこと」とあります。本書ではS&P500の過去データを紹介していますが、1920年代以降、平均して年3回は5%の下落が起きています。過去100年では16ヶ月に1回のペースで10%の下落が起きており、また7年に1回のペースで20%以上の下落が起きています。そして、1950年以降では22年に1回のペースで50%の下落が起きています。まさに、暴落はありふれたことであり、株式という商品が本来持っているリズムだということです。私は株式が持つこのリズムを理解した人だけが、株式投資に取り組むべきだと思います。
しかし「下落によるダメージは、通常長続きしない。たとえば第二次世界大戦以降、20%以内の調整であれば回復して下落前の状態に戻るまでの期間は平均4ヶ月だ。」「そして1974年以降にS&P500が10%以上下落したケースを見ると、底を打った翌月には平均8%以上、1年後には平均24%以上上昇している。」「金融市場最悪の惨事であった1929年の大暴落の後でさえ、市場は10年も経ずに回復している。」 これもまた株式の持つリズムとなります。