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【不】再考、不動産投資

不動産投資というと、株式投資と似たようなものと考える人が多いかもしれません。が、実態は投資というよりも事業です。ですから、本当は他のビジネス、例えば飲食業などと比較すべきです。不動産投資家は、事業者=プロとして不動産事業に関わることが求められます。不動産投資で得られた賃料収入は、不動産所得として事業所得と同じ総合課税の対象となりますし、不動産投資家には株式投資家を守る投資者保護基金のようなセーフティネットは用意されていません。国も不動産投資家を事業者=プロと見ている証拠です。そもそも、銀行が積極的に融資してくれるのも、彼らが不動産投資家を事業者とみなしているからです。株式投資家からすると、ありえへん話です。

このように、プロとしての取り組みが必要な不動産投資ですが、書店には素人向けの解説本が山積みされており、気軽に始められる副業としてサラリーマンに人気があります。一部の解説本は、賃料という安定収入に借入れによるレバレッジをコーティングすることで、ローリスクでハイリターンを手にできるかのような幻想を読者に与えてきました。私は不動産の世界に不用意に足を踏み入れた投資初心者が、これからの金利上昇で損失を被ることを懸念しています。

ところで、従前私はレバレッジを効かせた不動産投資について、超ハイリスク運用との認識を持っていましたが、最近考えを改めました。不動産投資は、やり方によってはリスクを軽減できることを知ったからです。今ではハイレバレッジの不動産投資を、ローリスクは言い過ぎでもミドルリスクくらいなら言ってもいいのでは、と思っています。

不動産投資には6つのリスクがあるといいます。空室リスク、滞納リスク、災害リスク、価格下落リスク、修繕リスク、金利上昇リスクです。しかし、このうち予測不能で事前対応が困難なリスクは災害リスクだけ。他の5つは投資家の経験とスキル、そして外部業者のサポートが有れば、ある程度対応が可能です。例えば、空室が発生しても、迅速に空室を埋めるノウハウを投資家が持っていれば、空室のダメージを軽減できます。設備の老朽化で修繕が必要な場合も、低コストで対応してくれる親密な業者さんがいれば、修繕のダメージを軽減できます。また、複数の物件をタイミングを分散して入れ替えていけば、価格下落や金利上昇等のマーケットリスクにも対応できます。ベテラン投資家は各人が独自のスタイルでリスク対処法を確立し、本来はハイリスクなレバレッジ付き不動産投資をミドルリスク化しているのです。

不動産投資家は、下表のようなCF(キャッシュフロー)シミュレーションを用いて投資の是非を判断します。(下表はサンプルです) 空室リスク、滞納リスク、価格下落リスク、修繕リスク、金利上昇リスクをシミュレーションに織り込んだうえで、イメージするCFが獲得できる目途が立てば物件の購入に進みます。そして、最終的な投資の成否は、物件の運営でいかにリスクを抑え、シミュレーションと実績の乖離を圧縮できるかにかかっています。不動産投資は株式投資と異なり、投資家自らリスクの源にアクセスし、改善を図れる点がメリットであり、また、シミュレーションベースで投資を考えられることから、株式投資よりもリスクは低いと言えそうです。(株式投資で15年間の損益シミュレーションを立てても、毎年の損益のブレが大き過ぎて役に立ちません!) ただし、それは投資家に十分な経験とスキル、そして信頼できる外部業者との連携があっての話となります。


【おまけ1 最近の融資事情】
かぼちゃの馬車事件以降、銀行の不動産融資への態度は硬化しており、区分は別にして一棟物ではフルローンはほぼ不可能な状態です。某銀行では最近、頭金2割以上、年収1200万円以上、金融資産5000万円以上が融資実行のメルクマールになっているとの話もあります。

【おまけ2 素人が見た不動産投資の本質】
今回の論考の中で気付いたことがあります。私は不動産投資の経験がない素人ですが、素人なりに「これが不動産投資の本質では?」というものに思い至りました。実務にあたる不動産投資家の方々にとっては「何を今更」でしょうが、「灯台もと暗し」という言葉もあります。忘れないうち記録に留めておきたいと思います。
「不動産投資はシミュレーションに始まり、シミュレーションに終わる」 この一文から不動産投資の本質が見えてきます。
①シミュレーションが成立する物件を購入する
②リスク削減に注力しシミュレーションからの乖離を極小化する
この2点です。


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【不】株式投資家から見た不動産投資

株式投資と不動産投資の比較は当ブログにおいて、過去に何度か行ってきましたが(不動産と株式を比較してみた/不動産とJREIT、そして株式/不動産VS株式、通説と現実のギャップ)、改めて株式投資家から見た不動産投資の特性を考えてみたいと思います。中堅サラリーマンが億円単位の借入れを起こして一棟マンションをバンバン買いまくる時代は過去のものとなり、今や不動産は企業オーナーや地主、高給サラリーマン等の富裕層限定の投資商品となっています。現在、彼らは都心のRCマンションを十億円ロットで買いまくっています。一般ピープルにはとても手の届かない価格帯ですが、島国日本で希少価値の高い都心の物件はインフレの後押しもあり、今後まだまだ上がると見ているのでしょう。
これらの物件を買う人には賃料収入(インカムゲイン)という発想はなく、値上がり益(キャピタルゲイン)だけを考えているはずです。株式投資家から見ると、この投資手法はグロース株(成長株)投資に相当します。グロース株投資では配当は考慮せず(高配当のグロース株など聞いたことがありません)、株価の値上がりをひたすら追求することになります。

では、資金力に乏しい一般ピープルは不動産投資に手を出すことはできないのでしょうか。不動産市場が高値圏にあり、かつ銀行が不動産融資に慎重スタンスな今、私は一般ピープルが無理をして不動産投資を始めるタイミングではないと考えます。不動産アナリストの幸田昌則氏は近著「不動産バブル静かな崩壊」(日本経済新聞出版)の序文で次のように述べ、不動産市場の今後に警鐘を鳴らしています。「足下の実態を見ると、すでに22年の夏頃から大都市圏では流通市場だけでなく、不動産業界内にも住宅・投資物件・土地などの在庫(売れ残り)が、月を追うごとに増加している。業界内の在庫水準は、2008年のリーマンショック時の水準を15年ぶりに超えてしまった。」 幸田氏の言うとおりバブル崩壊とまでは行かなくても、不動産市場に調整が入れば不動産価格が下がって賃料利回りが上がり、一般ピープルにももう少し買いやすい状態となるでしょう。(※)

不動産投資は都心の駅近物件に限ると主張する関係者もいますが、何もそんなピカピカ物件に拘る必要はありません。将来的に賃貸ニーズが期待できる地方都市もあるはずです。そういった地方都市の中古木造一棟もので、コスト控除後キャッシュフロー(ATCF)で採算の合う高利回り物件を購入すれば、物件が値上がりしなくても投資は成り立ちます。中古木造なら価格、コストともRC造・鉄骨造より抑えられるので、一般ピープルにもアクセスしやすいです。株式投資家から見ると、この手の投資手法は配当狙いのバリュー株(割安株)投資に相当します。私は一般ピープルが目指すべき不動産投資は、このバリュー株投資タイプだと思います。ただ問題なのは、今の市場環境では採算が合う価格帯の物件が見つからないこと。銀行から融資を引きにくいこと。そして、中古なだけに物件の保全状況の目利きが問われることです。
株の世界では「休むも相場」という格言があります。今は無理をせず、物件購入に向けた頭金の準備と、目利きの「目」を養うときです。

(※)飯田グループHD<3291> は4月8日大引け後に業績修正を発表しました。24年3月期の連結最終利益を従来予想の700億円→310億円(前の期は755億円)に55.7%下方修正し、減益率が7.4%減→59.0%減に拡大する見通しです。これは、同社が余剰在庫処分のため、販売価格の調整により早期販売を行ったためです。

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【不】高配当資産としてのJREIT

高配当資産として人気のJREITですが、下表のとおり今年に入ってからのパフォーマンスは芳しくありません。コロナ後のインバウンドで盛り上がるホテル主体型や商業施設型を除き、どの用途のJREITも投資口価格は大きく下落しています。日経平均株価が+15.97%と絶好調なだけに、JREITの不調が余計に目立ちます。なぜここまで下がっているかですが、金利上昇を嫌気した海外ファンドや地銀が売りを出しているようです。

今のところ、JREITは分配金利回り5%の水準で、何とか踏みとどまっているように見えます。4月に入れば、海外ファンドの買い戻しも期待できるかもしれません。値頃感から買い推奨する市場関係者も増えてきました。しかし、今後、日銀のマイナス金利解除で我が国の長期金利に一段の上昇圧力が加わります。そうなると、さらなる下落の可能性を念頭に置かなければなりません。住居系リートはインフレに強いと聞いていましたが、アドバンス・レジデンス投資法人(3269)は、きっちりマイナスです。日本経済が脱デフレ、マイルドなインフレ下に置かれることを想定すると、私は高配当資産としてJREITを保有することに疑問を感じます。JREITの高配当の源泉は、利益の90%以上を分配することで法人税が非課税となる点にあります。でも、毎年毎年、利益の9割を分配していたら、利益⇒投資⇒利益⇒投資の循環による複利効果(=投資口価格の上昇)は期待できません。だったら、利益の内部留保が可能で複利効果が期待できる高配当株の方が、ずっと魅力的です。

複利効果はいらないので短期的な高配当がほしいという方には、インフラファンドをお薦めします。インフラファンドもJREIT同様に金利上昇の影響で騰落率はマイナスとなっていますが、7%前後の分配金利回りに対し下落率は▲2%程度と、十分おつりが来る水準です。確かにインフラファンドは、FIP制度、導管性、電力会社による出力制御等の懸念材料を抱えていますが(参照:インフラ投資高配当で人気殺到「インフラファンド市場」が危ない)、5年程度の期間限定で配当を狙う作戦であれば十分勝算ありです。

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【不】不遇男さんの本を読んで

「逆転の狼煙」の不遇男さんといえば、不動産系ユーチューバーとして有名な方です。今回は、不遇男さんが最近出された書籍「人生が逆転する不動産投資入門」(ビジネス社)を読んだ感想をお話したいと思います。

巷の不動産投資本の多くが、再現性の怪しいキラキラ大家さんの体験談や、不動産物件の購入や物件購入後の管理のノウハウを書いたものであるのに対し、本書は投資家が不動産物件を購入する前にやるべきことや心構えを中心に書かれています。背景には、業者に煽られて事前準備不十分なまま物件購入に突き進み、致命傷を負う投資初心者が後をたたない現実があります。

不動産投資は割高な物件を買わないことに尽きます。割高な物件を購入してしまうとリカバーが困難となり、詰む可能性が高まります。(空室が発生したり、修繕が必要になったりという事象なら、大家の汗かきで何とかリカバー可能です。)本書は不遇男さんが不動産投資家として身につけた実践的なノウハウが満載です。不動産投資家を志す人は、割高な物件をつかまないためにも本書を手にすべきです。最後に、本書に書かれた不遇男さんのノウハウの中で、私が一番すごいと思ったものを一つご紹介します。

不動産投資を始める前にでお話したように、私は不動産投資で成功する秘訣は人脈と情報だと思います。一見さんの投資家には有利な情報は回ってきません。そのためには、いったん不動産業界に身を置いて、人脈を構築する必要があると考えています。しかし、言うのは簡単ですが、実際に不動産業界に就職してから不動産投資を始めるなんて、余りに遠回りです。この問題点に対し、不遇男さんは解決策を提示してくれました。それは、事前に金融機関を回り、担当者に融資可能な物件の条件についてヒアリングすることです。そして、「こういう条件の物件なら銀行から融資を受けられそうなので、物件の紹介をお願いします」と、投資家の方から不動産業者に営業をかけるのです。不動産業者から降ってくる情報に美味しいものはありません。だったら、投資家の方から不動産業者に情報を取りに行けばいいのです。まさに「逆転」の発想です。もちろん、直ぐに条件通りの情報が提供されることはないでしょう。でも、何社かの営業マンと情報のキャッチボールを続けているうちに人脈ができ、やがて有利な情報が入るようになると思います。
私があと20歳若ければ、不遇男さんスキームで不動産投資に挑戦していたかもしれません。

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【不】不動産投資を始める前に

私は投資経験のない不動産についてブログを書くため、これまで不動産関連の本を読んだり、サラリーマン大家さんのブログやユーチューブを見たりと試行錯誤してきました。しかし、投資経験がないというのは致命的で、駄文をブログ上に垂れ流してきたと反省しています。経験不足をカバーできればとJREITに投資もしましたが、JREITと現物不動産は全くの別物です。JREITは不動産というより株式に近い投資商品です。
私がこの2年間の机上学習で知ったのは、不動産投資には株式投資をはるかに上回るスキル、ノウハウが要求されるということです。

不動産投資は投資金額が巨額になるため、失敗は許されません。一発目の案件から十分なキャッシュフローを生み出す必要があります。しかし、素人にそんなことが可能でしょうか。私の結論はNoです。不動産投資をやりたいと思ったら、遠回りでも一度不動産業界に身を置いて、不動産で利益を上げる仕組みを理解し、また業者間の人脈を作ってからにすべきだと思います。
株式投資なら失敗しながら経験値を高めていくこともできますが、不動産投資でそれをやったら自己破産です。業者の立場で他人のお金を使って不動産を経験したうえで、ローンを含む自分のお金で勝負に出ればいいのです。さもなくば、リーマンショックのような金融危機が来て不動産業者が物件を投げ売りするチャンスをひたすら待つことです。

くれぐれも、アベノミクス初期に運良く投資を開始したキラキラ大家さんの、今や再現不能なストーリーに乗っかることは避けたいものです。

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【不】再考、持家か賃貸か?

以前、持家と賃貸、どっちが得か議論しました。(持ち家と賃貸) そのときの結論は、同一グレードの物件での単純なコスト比較なら持家が得だけれども、定性面を含めた総合的な評価では持家が得か賃貸が得かは一概に言えない、というものでした。今回は、不動産投資家にとって持家と賃貸のどっちが得か、改めて考えてみたいと思います。一般の方の場合とはまた違った結論になるかもしれません。 

収益物件への投資を考える人が住宅ローンで持家を購入すると、その分アパートローンの与信枠を食われてしまい、以後の投資に支障が出ます。不動産投資家は自身の与信枠をアパートローンに集中する方が合理的です。たとえ、ハイパフォーマーであっても社宅等の借り住まいで我慢し、不動産投資による賃料収入の獲得に専念すべきです。また、リスクテイクに余力のある方には、併行して株式投資を行うことをお薦めします。不動産投資のレバレッジ効果と株式投資の複利効果の両輪で、資産は大きく成長することでしょう。知らんけど。

そこまでリスクを取りたくないという方には、ヤドカリ投資をお薦めします。これは、持家の住み替えを繰り返しながら、キャピタルゲインを積み上げていく投資手法です。ヤドカリ投資では、まず自己居住用の持家を住宅ローンで購入します。ここで大切なことは、将来高く売却できる可能性のある物件を選ぶことです。そして、値上がりのタイミングを捉えて物件を売却します。ヤドカリ投資の良い点は、意に反し物件が値下がりしても、そのまま住み続けていれば損失が顕在化しないことです。投資の失敗が致命傷となりにくいのです。
また、ヤドカリ投資で購入するのは自宅であるため、低利の住宅ローンを利用できます。さらには、持家を売却して利益が出た場合、所有していた期間に係わらず3,000万円までの特別控除を使えます。これは、収益物件にはない優遇措置で、ヤドカリ投資の大きなメリットです。なお、ヤドカリ投資では条件を満たせば住宅ローン控除も使えますが、3,000万円の特別控除との併用はできませんので注意が必要です。

不動産投資家にとって持家と賃貸のどっちが得か。アパートローンを利用して収益物件への投資を考えている方なら賃貸が得、ヤドカリ投資を考えている方なら持家が得、となります。

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【不】不動産投資そもそも論

不動産投資は最終目標(ゴール)をどこに置くかによって、大きく2つのタイプに分かれると思います。

一つ目は、保有する物件数の極大化を図るタイプです。30年~40年後、全ての借入れの返済を終えた時点でひとつでも多くの物件を保有し、豊富な賃料収入で悠々自適なシニアライフを目指す。そんな、ストック志向型のアプローチです。
このタイプでは、フルローン、オーバーローンを厭わず、可能な限りの借入れを行い、レバレッジをフルに効かせて物件を買い進めていきます。しかし、借入れの返済計画に狂いが生じた途端、自己破産に一直線となる危険性と隣り合わせであることを忘れてはいけません。

それだけのリスクを負って物件を買い進めた先にある到達点ですが、そこには厳しい現実が待っています。40年後、手元にある築古マンション達に、キャッシュフローを生み出す力がどれだけ残っているでしょうか。ほとんどが幽霊マンションと化し、空室が大量に発生したり、設備の老朽化で高額な修繕費が必要になったりと、毎年増加するキャッシュアウトに悩まされることでしょう。これらの負動産に年金の代わりは期待できません。「こんなはずじゃなかった」と嘆いてみても、あとの祭りです。
そもそも、大きくレバレッジを効かせたストック志向型のアプローチは、米国のようなインフレ傾向の国で、時間の経過とともに借入れの実質価値が減価していく環境でこそ有効な戦略です。デフレ傾向の我が国においては、借入れの実質価値が時間とともに増大するので、大きなレバレッジは不利です。(今後、日本でもインフレ傾向が定着すれば、ストック志向型アプローチが有効となるでしょう。)

二つ目は、各種リスクへ配慮しつつ物件の購入・売却を繰り返し、獲得するキャッシュの極大化を図るタイプで、フロー志向型のアプローチです。
このタイプは、十分な頭金と借入れで物件を購入し、物件の賃料で短期間での借入れ返済を目指します。完済したところで改めて借入れを行い、もう1物件を購入、以後2物件で借入れを返済していきます。当然、返済スピードは早くなります。その後も完済と同時に借入れを行い、物件を買い増していきます。そして、購入した物件は5年~10年単位で売却し、別の物件に入れ替えます。購入と売却のサイクルの中で、賃料利回りと借入れ金利のスプレッドを抜いていくイメージです。これはJREITや私募不動産ファンドが採用する戦略と同じで、日本のように低金利な環境で有効となります。
なお、このタイプは頭金の確保がネックとなりますが、ローンの破綻リスクは限定的です。また、継続的に物件の売却と購入を繰り返すので、流動性も確保できます。さらには、物件の購入と売却のタイミングを分散しており、金利や不動産市場等マクロ環境の変動リスクにも対応可能です。
不動産市場が低迷している場合、物件の売却には不利ですが、物件を購入するには最高の環境です。この戦略では売りと買いがセットとなるので、不動産市況の影響を中和することができます。

以上、不動産投資の2つのアプローチについてお話をしましたが、実際は両者の中間を行く投資家の方が多いと思います。また、今回は主に不動産投資のマクロ的な側面に触れましたが、優良物件の仕込み方や物件の管理手法等ミクロ的な側面も運用の成否を分ける重要なファクターとなります。

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【不】10年で資産を倍にするには

10年で資産を倍にする。言うのは簡単ですが、いざ実行しようとしたら大変です。今回は株式や不動産を使って、はたして10年で資産を倍にできるかどうか、頭の体操をしてみたいと思います。

まず、株式です。一般に株式投資では複利効果を活用して資産を増やします。ご存じの方も多いと思いますが、「72の法則」というものがあります。これは資産が倍になる年数と利回りをかけると72になるという法則です。例えば、利回りが6%なら、だいたい12年で資産が倍になります。(6×12=72) 今回は10年で資産を倍にしたいので、必要な利回りは7.2%となります。皆さん、どうお感じでしょうか。私には7.2%の運用を10年も続ける自信はありません。また、過去の相場から考えると、10年の間に20%程度の相場下落を1回、10%程度の下落を1回は想定しておく必要があると思います。その場合、残りの8年間で必要な利回りは13.6%まで跳ね上がります。(※)
(※) 1×(1-0.2)×(1-0.1)×(1+0.136)^8=1.997
やはり、10年で資産を倍にするのは相当に難易度の高い宿題です。 
また、10年後に資産をキャッシュ化する場合、株式の売却に伴い(NISA等の非課税枠が使えない場合)20%の所得税を覚悟しなければいけません。

次に、不動産です。一般に不動産投資では借り入れによるレバレッジ効果を活用して資産を増やします。今、手元に5,000万円あるとします。これを頭金に銀行から5,000万円を借入れ(金利:0.5%変動、借入れ期間:10年)、1億円の中古一棟賃貸マンションを購入するとします。この場合、毎年の返済額(元利均等返済)は515万円です。(ご参照:高精度計算サイト) したがって、515万円÷1億円=5.15%以上の(実質ベース)賃貸利回りがあれば、10年後にローンを完済し資産倍増を達成することができます。ただ、賃貸経営には固都税を始め、FR・AD等の客付け費用、修繕費・火災保険やリフォーム代等の運用経費等、諸々のコストがかかってきます。そのため、実質ベースで5%となると、都心でも表面利回りベースで8%は必要と思われます。しかし、今どき地方の築古物件やワケあり物件を除いて、そんな高利回り物件にお目にかかることはまずありません。また、賃料の下落や空室・滞納の発生、借入れ金利の上昇(変動金利ローンの場合)等のリスクも考慮する必要があります。やはり不動産の場合も、10年で資産を倍にするのは至難の技のようです。
なお、賃料収入には不動産所得として所得税がかかってきます。また、10年後にキャッシュ化のため投資物件を売却する場合、市場環境によっては売却損が発生する可能性もあります。

今回、株式投資と不動産投資に、「10年後の資産倍増」という同じ目標を掲げてみました。両者を同じ目標の下で比較すると、投資手法の違いや特徴が良く見えてきます。株式投資は、いかに資産を増やしていくかという、足し算的な方法論。一方、不動産投資は、いかに諸々のコストを抑えローンの返済計画を無難に回していくかという、ある意味引き算的な方法論と言えます。そして、両者に共通しているのが、出口のリスクです。株式投資も不動産投資も、投資対象のキャッシュ化が終わって初めて投資の総括と結果の判断が可能となります。


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【不】不動産VS株式、通説と現実のギャップ

不動産VS株式と書きましたが、不動産投資と株式投資は決して相反するものではなく、補完し合うものです。それぞれの長所を活かし上手に使い分けることで、全体の運用効率を高めることができます。しかし、世の中に流布する不動産投資と株式投資の通説には現実と乖離したものが多く、それらを鵜呑みにすると思わぬ怪我をする危険性があります。そこで、今回は①リスクとリターン、②投資の手間、③投資の期間、の3点について不動産投資と株式投資の通説と現実とのギャップについて確認したいと思います。

①リスクとリターン
不動産投資の解説本を読んでいると、「株式はリスクが高く損失を被る可能性がありますが、不動産は安定的に収益を上げることができるので安心です」といった説明を目にすることがあります。株式=ハイリスク、不動産=ローリスク、という位置づけです。ところで、運用を少しでもかじったことのある人にとって、リスクとリターンが比例することは常識です。(正確にはリスクとリターンは比例しませんが、リスクが高ければリターンも高い、リターンが低ければリスクも低い、ローリスク・ハイリターンはありえない、という運用の基本を言っています。) では、不動産のリスクとリターンの水準は如何ほどでしょうか。一般に不動産投資に際しては多額の借入れを行います。少し前までは自己資金ゼロのオーバーローンと言われる融資も、一部銀行を中心に盛んに行われていました。この場合のリターンを計算してみましょう。仮に物件価格1000万円で年間賃料40万円のワンルームマンションがあったとします。CCR(キャッシュ・オン・キャッシュ・リターン)は賃料÷自己資金=40万円÷0円=∞、となります。えっ?リターンは無限大? これは21世紀の錬金術でしょうか。リターンが無限大ということは、リスクも無限大ということです。
不動産投資は当初の計画通りにキャッシュが回っている間は安定的に収益を上げることができます。しかし、金利の上昇や空室の増加、多額の修繕費の発生等のハプニングにより計画に狂いが生じるとローンの返済が滞り、最悪の場合、自己破産・一家離散の危機に直面します。多額の借入れに依存した不動産投資は安定運用とはかけ離れた、超ハイリスク・超ハイリターンの世界です。不動産投資の(デフォルト)リスクを抑えるには、厚めの自己資金を投入しレバレッジ比率を下げるしか手はありません。そして、レバレッジ比率が下がればミドルリスク・ミドルリターンの運用が可能です。

②投資の手間
株式投資は相場の動きを24時間チェックする必要があり、気が休まる暇がない。それに比べ不動産投資はほったらかしでいいので、気が楽です。こんな説明も不動産投資の解説本で目にします。でも、「ほったらかし」は本来、長期の株式投資に相応しい言葉です。内外株式のインデックスファンドを定時定額で買い付けていけば、相場観も企業業績の分析も不要。ほったらかしで何の問題もありません。逆に不動産投資こそ手間をかける必要があります。投資といいますが、不動産投資は本来不動産賃貸業と呼ぶべきもの。不動産投資家は事業主として、自らの手で経営に参画する気概と覚悟が必要です。賃料の回収、物件のメンテ、空室の募集等事業主としての仕事は山ほどあります。賃貸管理を業者にアウトソースすることは可能ですが、それは収益の低下を意味します。また、賃料保証を謳ったサブリースの問題点はここでお話するまでもないでしょう。管理を業者に委託する場合も丸投げは避け、定期的に物件に足を運び自分の目で管理の状況をチェックする等、手間を惜しむべきではありません。

③投資の期間
不動産投資は将来の年金や生命保険の代わりになります。またローンを払い終わったあとは資産として残ります。こんなセールストークを不動産会社の営業マンから聞いた方は多いでしょう。でも、ローンを払い終わった35年後、貴方の目の前にあるマンションの姿を想像してみて下さい。現在新築の物件でも築35年の築古となります。築10年なら築45年もの。そんな超築古マンションに資産価値はありません。下手したら幽霊マンション化して負動産になっているかもしれません。何でこんなことになるのでしょうか? それは不動産が現物投資だからです。不動産は野菜や魚と同じで、時間の経過とともに腐っていく運命にあります。ですから不動産投資は時間との勝負です。中期目線での投資となります。営業マンの言う通り35年も物件を抱えていたら大変なことになります。不動産投資は投資開始の時点で、ちゃんと出口を意識しておくことが肝要です。出口のない不動産投資はありません。劣化する前に物件は売却し、別の物件を購入する。これの繰り返しです。5年~10年程度の中期での入れ替え売買(5年内に売却すると短期譲渡所得として税金が高くなります)が、不動産投資の基本的なリズムです。
一方、株式投資は長期目線での投資が好ましいです。不動産投資に比べ不確定要素の多い株式投資では、短期~中期目線では需給や市場参加者の思惑といったノイズの影響が大きく、収益が安定しません。長期目線で投資に取り組むことで、投資先企業の成長と安定した収益を得やすくなります。

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【不】リースバックとリバースモゲージ

住み慣れた自宅に住み続けながら自宅を使って資金調達する方法として、リースバックとリバースモゲージがあります。リースバックは自宅を不動産業者に売却すると同時に不動産業者と賃貸借契約を結ぶことで、売却後も賃借人として家賃を払いながら(元)自宅に住み続けるという商品です。自宅の所有者は自宅の売却により売却資金を一括して手にします。売却資金には使途の制限がありませんので、所有者は自由に使うことができます。また、契約によっては一旦売却した自宅を後に買い戻すことも可能です。
リバースモゲージは、自宅を担保に銀行や自治体(社会福祉法人)から融資を受ける商品です。ただ通常の住宅ローンとは逆に、年数の経過とともに借入残高が増えていきます。自宅の所有者は年金式に分割して借入れを行い、生活費や自宅のリフォーム・建て替え等に充当します。そして、所有者の死亡後に相続人が自宅を売却し借入金を一括返済します。
リースバックは不動産業者と定期借家契約を結ぶことが多く、短期間での利用が中心となります。定期借家契約では賃貸借契約は期間満了で終了となり、貸主が再契約を拒否した場合は退去しなければいけません。(普通借家契約が可能なケースもあり) 一方、リバースモゲージは所有者が死亡するまでの期間、中長期での利用が想定されています。リースバックとリバースモゲージの主な違いを【表1】にまとめましたので、ご確認下さい。

ここで注意したいのは、リースバックは不動産業者が組成する自宅の売買契約と賃貸借契約のセット商品だということです。売買契約も賃貸借契約も同一の不動産業者と行わざるをえないので、自宅の売却も(元)自宅の賃借もこの不動産業者の言い値に従うことになります。リバースモゲージの場合、貸付限度額は担保評価額の50~60%と低く設定され、また数年毎に評価額の見直しがされますが、自宅の売却は相続人主導で行うことが可能です。但し、リバースモゲージでは相続発生時に自宅を売却するので、相続人は自宅の相続はできません。また、リコース型の契約の場合、売却代金で借入れ金を完済できなければ、相続人が残債の返済義務を負います。従って後々のトラブル回避のため、契約時に推定相続人全員に契約内容を丁寧に説明し同意を得ておくことが肝要です。尚、最近では相続人に請求が及ばないノンリコース型が増えています。ただノンリコース型は、リコース型よりも金利が高く設定されるデメリットがあります。
リースバックとリバースモゲージでは自宅に居住可能な期間やスキームの利用目的が異なるので、同じ土俵でメリット・デメリットを比較することはできないかもしれません。敢えてザックリ言いますと、リースバックは一定期間経過後に新居や介護施設に入居を予定している人が、それまでのつなぎとして(元)自宅に住み続けるためのもの。リバースモゲージはシニアが年金だけでは不足する生活費を補填し、定年退職後も自宅に住み続るためのもの。そんな風にご理解頂けばよろしいかと思います。