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【株】長期投資と、この嫌な気持ち

最近、何をやっても面白くありません。仕事で大口の案件が成約できたり、ダイビングで潜った西伊豆の海のコンディションが最高だったりと、いつもなら大ハッピーなはずの出来事も、素直に喜ぶことができません。何でだろうと理由を考えると、運用が上手くいってないからだと気付きます。
株式相場の10%から20%の調整は想定内であったはずなのに、調子に乗って春から夏にかけて、日経平均で38,000円~40,000円の水準でかなりの銘柄を仕込んでしまいました。お陰様で、足下では相当な評価損を抱えています。(怖くて金額は計算していません。)

しかし、これも長期投資家=リスク屋の宿命です。こうやって人々がいやーな気持ちになっているときに、その気持ちを代わりに引き受けるのが、私たち長期投資家の仕事でありミッションです。嫌な気持ちを引き受けることで、私たちはリターンという報酬を頂いていることを忘れてはいけません。もし、この嫌な気持ちから逃れたいばかりに、安易に株式を売却するような輩にはリターンは巡ってきません。そして、永遠のゼロサム地獄に陥ることになるのです。

以上、ある長期投資家の負け惜しみでした。

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【株】順張りVS逆張り、リスク対応の違い

8月5日に「令和のブラックマンデー」といわれる大暴落を演じた日経平均株価ですが、月末近くになってようやく落ち着きを取り戻しつつあるようです。今回の急落は先物の売りが主導したとされる一方、下値では値ごろ感から現物の買いがしっかり入っていました。先物と現物の、この対照的な動きはどう説明したらいいのでしょうか? まず、投資主体の違いが上げられます。(ファンド系VS年金基金等の機関投資家) それから、投資の時間軸も違います。(短期VS長期) さらに、リスク対応の手法の違いもあると思います。(順張りVS逆張り)

初めに、年金基金等が伝統的に採用してきたリスク対応の手法について、簡単にご説明します。彼らは、基本ポートフォリオ(または政策アセットミックス)という運用計画に基づいて、内外の債券・株式の現物4資産に投資を行います。下図はGPIFの基本ポートフォリオですが(出所:GPIF基本ポートフォリオの考え方)、事業法人等の年金基金も、ほぼ同様の手法をとっています。(尚、資産構成割合は各社で異なります。)

GPIFは、最初に資産を内外債券・株式に25%ずつ配分します。次に、例えば国内株式が下落して、資産構成割合が25%から15%に低下したとします。逆に国内債券は上昇し、割合が25%から35%に上昇したとします。このとき、国内株式は許容乖離幅の下限である17%(=25%-8%)を下回っているので、国内株式を購入して割合を17%まで引き上げる必要があります。一方、国内債券は許容乖離幅の上限である32%(=25%+7%)を上回っているので、一部を売却して割合を32%まで引き下げる必要があります。これら資産構成割合の調整をリバランスといいますが、ここで注目いただきたいのは、GPIFのリバランスが、相場が上がったら売り、下がったら買い、という逆張りで行われている点です。このように、逆張り戦略を取るGPIFや年金基金等機関投資家の対応は、マーケットの急変に対しブレーキをかける役割を果たしています。

次にファンドのリスク対応の手法ですが、詳細は不明です。分かるわけがありません。分かってしまったら、ファンドの優位性がなくなりますから。ファンドのリスク対応手法は、企業秘密です。(ただ、ファンドは流動性やコストの観点から先物を多用することが分かっています。) ですので、以下ではファンドや先端の機関投資家が採用していると思われる手法のひとつについて、推測を交えてお話させていただきます。それは、マーケットのリスク量に応じて投資額を機動的に変更するというものです。マーケットのリスク量なんて、どうやって計るんだと思われるかも知れません。色々な手法があるでしょうが、VIX指数(米国株)や日経VI(日本株)なども使われていると思われます。VIX指数が上昇したらリスク量が増加したと判断し、米国株の割合を引き下げる。逆に、VIX指数が低下したらリスク量が減少したと判断し、米国株の割合を引き上げる、こんな具合です。基本的に、VIX指数が上昇するのは相場が下落するとき、VIX指数が低下するのは相場が上昇するときです。そのため、この手法を採用するファンド等の運用は、相場が下がったら売り、上がったら買い、という順張りになります。結果、ファンド等はマーケットが変動したとき、変動幅を拡大するアクセルのような役割を果たすことになります。

植田日銀総裁の会見を機に為替が急速に円高に振れて、キャリートレードの巻き戻しを誘発。日経平均が下げ基調となる中、ファンド等がリスク量の増大から大量の先物を売ったことで、日経平均は加速し猛スピードで下落。その後、年金基金等機関投資家が現物にリバランスの買いを入れたところで、上昇に転じることとなった。8月5日以降の相場展開は、ザックリ、こんな感じの図式になるのではないでしょうか。
今や日本株(特に先物)市場のメインプレイヤーは、逆張り系の機関投資家ではなく、順張り系のファンド等になっています。このことが、昨今の日本株市場のボラ上昇の一因となっている可能性は高いと見ています。

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【株】低ボラティリティのパラドックス

今回の株式暴落の背景にオプションの売りが絡んでいたらしい件については、”日経平均下落のわけ”で触れましたが、以下では「ボラティリティの低さはリスクの高さを表す」という、一見矛盾したお話をします。

まず、簡単にボラティリティの説明をしましょう。ボラティリティは株式等の証券の価格変動性のことで標準偏差で表すことが多く、ボラティリティが高いことは価格変動性(=リスク)が大きいことを意味します。と、ここまでが一般的な説明です。ここからは、少しマニアックなお話です。最近は個人投資家もボラティリティ(略してボラ)という言葉を普通に使いますが、ボラティリティに2つの種類があることを意識している人は少ないと思います。一つ目は、1年とか3ヶ月とか過去の証券の実際の値動きから算出するもので、ヒストリカル・ボラティリティ(HV)といいます。二つ目は、オプション価格に織り込まれているボラをブラック・ショールズ・モデル等のプライシングモデルを使って逆算するもので、インプライド・ボラティリティ(IV)といいます。

VIX指数(Volatility Index)は、米シカゴ・オプション取引所(CBOE)が、S&P500種株価指数を対象とするオプションのインプライド・ボラティリティを元に算出し、公表している指数です。VIX指数が20を超えると市場がやや不安な状態と判断され、40以上の数値は危険水域とされます。下のチャート(出所:TradingView)でも8月5日の下落局面で、VIX指数は40手前まで上昇していることが分かります。

ところで、VIX指数やインプライド・ボラティリティ(IV)は、どういうときに低下するのでしょうか? まず考えられるのが、実際の証券の値動きが小さくなり(HVの低下)、その影響でIVが低下するケースです。「低ボラティリティ=低リスク」の一般的な理解が妥当なケースです。もう一つは、オプションの需給でIVが低下するケースです。つまり、オプションの売りに押されてオプション価格(プレミアム)が低下し、IVも低下するケースです。これは、8月5日の日経平均暴落前に起きていた現象です。機関投資家やファンド等がプレミアムの享受を狙って大量のプットオプションを売っていました。オプションを売ればオプション価格(プレミアム)は低下しますが、低下したらさらに量を増やしてオプションを売ることになります。オプションという商品は、買い手のリスクは限定されますが、売り手は無限大のリスクにさらされます。オプションの大量の売りが蓄積していた8月初の東京株式市場は、まさに発火性ガスの充満した倉庫のような状態でした。そこに火を付けた人がいたわけです。株価の下落を見たプットオプションの売り手は、慌てて株式先物に売りを出します。売りが売りを呼び、それがやがてパニックとなり、8月5日の日経平均大暴落へと繋がりました。

需給の歪みから極端にIVが低下したときは、市場がリスクの存在に目をつぶり弛緩しきっているとき。「低ボラティリティ=高リスク」な瞬間です。そんなとき、普段ならちょっとした相場の調整が、想定外の下落に繋がったりします。今回の日経平均暴落の教訓を、私たち個人投資家は胸に刻んでおきたいものです。

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【株】日経平均下落のわけ

日銀の利上げ? 米景気のハードランディング? 中東情勢の緊迫化? 結局のところ、この方の見立てが一番当たってる気がします。(村越誠の投資資本主義「ボラ売りリバースで令和のVIXショックが発生する)

このブログ記事は米株の下落について書かれていますが、日本株も同様の事象と考えていいでしょう。8月6日の日経新聞がマーケット総合に掲載していましたが、最近の傾向として機関投資家がオプション料稼ぎを目的としたプット売りを出していたとのこと。機関投資家がオプションを売るなんて、以前には考えられなかったことです。また、証券会社も大量のオプションのショートポジションを抱えていた模様。今回、日銀の追加利上げとFRBの9月50bp利下げ観測が海外ファンドの円キャリートレード(円売り日本株買い)の巻き戻しを呼び、それが機関投資家や証券会社の日本株投げ売り、そして個人投資家の信用買いの投げ売りと伝染、これらの投げ売りの連鎖が8月5日の大暴落の原因ではないか、と私は見ています。

暴落前、東京マーケットでは、機関投資家、個人投資家、ファンド、業者ともに先物・オプションのレバレッジでお腹一杯の状態にありました。そのレバレッジが弾け、ミニバルブ崩壊が起こったわけです。しかし、そうだとするとレバレッジの調整がつけば、マーケットは落ち着きを取り戻すと思われます。もちろん、当面はボラタイルな展開が続くでしょう。大地震の後に余震が続くようなものです。そして、円キャリートレーダーが去った後の日本株は、円安による業績のお化粧に頼らない素顔の実力が問われることになります。

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【株】一休さん

まさかの展開です。若干の調整はあって然るべきと思っていましたが……。それにしても驚くのは、日経平均の下げのスピードです。金融ショックでもなく、コロナのような未知の恐怖でもなく、単に米国の景気が予想以上に悪そうという話でしょう? 2022年以降大幅な利上げを行ってきたFRBには、いざとなれば潤沢な利下げ余地があるわけで。また、円高といっても、今年1月1日のドル円は140円台です。もとに戻っただけでしょ。みんな、何をそんなにびびってるのかな。

まあ、裏でイタズラ小僧たちがパニックを煽っていることは想像が付きますが、こいつらの行動をセオリーで理解しようとしても無駄です。理不尽な輩からは距離を置くことが一番。そして、自分が短期投資家でなかったことに感謝しつつ、あとは一休さんになることです。「あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。」

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【株】低成長の日本株投資は儲からない?

山崎元さんの過去のブログ記事:勘違いだらけの「長期投資」(トウシル/楽天証券)を読んでいたら、次のような気になる文章に出くわしました。「投資では、対象となる企業や経済の成長に賭けているのではない。対象が成長しなければ儲からないと考えている投資家が少なくないが、投資のリスクを負担することに対するリターンの源泉は、資産の価格形成にある。」「株式であれば、同じ予想利益に対し、高成長が予想されれば株価が高く形成されるし、成長率が低く予想されれば株価は低く形成されているはずだ。どちらに投資しても、”リスクフリー金利+リスクプレミアム”のリターンが期待できる。」「投資家が論理的に期待すべきなのは、投資対象の成長率ではなく、資産価格形成に含まれるリスクプレミアムなのである。」

これだけでは分かりにくいので、山崎さんの他のブログ記事も参考にしながら、数値例を使ってもう少し分かりやすく説明したいと思います。まず、証券分析の教科書の最初に出てくる、株価の算出式を考えます。ここで、株価(P)を将来の純利益の割引現在価値の合計と考え、割引率(r)、純利益の成長率(g)、予想される1期目の一株利益(E)として、理論株価(P)を求めると、P=E/(rーg)~①、となります。(これは割引配当モデルと言われるものです。算出過程は教科書等でご確認下さい。)尚、割引率(r)はリスクフリー金利(i)と、投資家が求めるリターンであるリスクプレミアム(p)の合計です。r=i+p~② ①式を変形すると、r=E/P+g 。 ②式を代入して、p=E/P+g-i~③、となります。E/PはPERの逆数で益利回りです。それに純利益の成長率(g)を加え、リスクフリー金利(i)を控除したものがリスクプレミアム(p)です。

具体的な数値を当てはめてみましょう。日経平均株価の平均PERは足下で、15倍程度ですので、E/Pは6.7%(1/15×100=6.7)です。利益成長率を仮に5%、リスクフリー金利を0.5%と仮定すると、リスクプレミアムは11.2%となります。次に米国S&P500について、平均PERを20倍とすると、E/Pは5%、利益成長率を10%として、リスクフリー金利を5.5%とすると、リスクプレミアムは9.5%となります。

どうでしょうか。米国株の利益成長率を日本株の倍と仮定しても、米国株のPERとリスクフリー金利の高さから、リスクプレミアムでは日本株の方が優位との計算結果となりました。ただ、これはあくまで理論上の話です。実際にこの通りになるとは限りません。なぜなら、実際の株式市場には資産価格形成のメカニズムを歪める様々なノイズが存在するからです。ただ、山崎さんの「投資家が論理的に期待すべきなのは、投資対象の成長率ではなく、資産価格形成に含まれるリスクプレミアムなのである。」というメッセージは、(利益成長率で米国株に劣る)日本株を愛する多くの日本人投資家にとって、心強い一言になることは間違いありません。

今回のポイントは、利益成長率の高い銘柄は人気が高くPERも高いので、逆に益利回り(PERの逆数)は低くなる。つまり、利益成長率(g)と益利回り(E/P)は、トレードオフの関係にあるということです。gはグロース株的リターン、E/Pはバリュー株的リターンと見れば、ごもっともな話ではあります。尚、今回、為替は出てきませんでした。為替は2国間の通貨の交換比率に過ぎず、長期的な期待収益率はゼロと考えられるからです。

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【株】日経平均 VS NYダウ

このチャートは平成バブル前の1983年から2023年までの日経平均とNYダウの推移を重ねたものです。(日経平均は円、NYダウはドル) ご覧の通り、左側半分では両者は大きく乖離した動きとなっており、平成バブルが異常な値動きであったことが分かります。当時、日経平均のPERは、何と60倍を超える水準にありました。また、東京都の山手線内側の土地の価格でアメリカ全土が買えると言われるほど、地価も異常な値上がりをしました。しかし、リーマンショック後の2009年頃から、日経平均とNYダウは歩調を合わせた動きになっています。このことは、平成バブル崩壊後の「失われた20年」で、平成バブルで形成された日本株の異常なバリュエーションが国際標準に収斂していったことを意味しています。(国際標準のPERを15倍とすると、日経平均は60÷15=4、つまり4分の1に下落する必要があったことになります。)

一方、NYダウは2000年以降、たびたび経済ショックに見舞われていますが、平成バブルのような極端な下落とはならず、堅調な上昇を続けています。これが国際標準の株価の動きだとすれば、割高感を払拭した日経平均も今後は極端な下落は避けながら、長期的な上昇カーブを描くことが期待されます。もうひとつ、NYダウのチャートから見えてくるものがあります。それは、1983年当時から1995年頃にかけての株価の上昇です。チャートでは目盛りの関係で確認しにくいですが、この間に株価は約5倍に上昇しています。一般にはIT革命(1995年頃)以降のNYダウ(やナスダック)の好パフォーマンスを喧伝する向きが多いですが、それ以前の期間(※)においてもNYダウはキッチリ上昇しています。 国際標準のポテンシャルからすると、株式は10年~20年の時間があれば、特段の技術革新がなくても5倍程度には上昇するものなのかもしれません。
(※)IT革命前、1980年代から1990年代にかけての米国経済は、決して順調なものではありませんでした。

もちろん、1929年の世界大恐慌クラスの経済ショックが起きたら、多くの企業は倒産し株価はゼロになります。その場合、銀行も連鎖倒産を免れないので、銀行預金も紙屑となる可能性大です。国債や現金通貨の価値も暴落します。安心なのは金(ゴールド)や宝石の類いですが、50年や100年に1度の大恐慌に備えて、全財産を金に投資することが果たして正しい選択でしょうか? 大恐慌が気になる方は、想定される恐慌の発生確率に応じ、資産の一部を金に投資しておけば十分です。そして、当面必要な流動性を確保したら、あとは株式等に投資するのがスマートな個人投資家の姿だと思います。

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【株】2024年前半を振り返る

2024年前半は、私にしては珍しく出入りの激しい?半年となりました。そこで、一度売買の状況を振り返っておきたいと思います。私は3月末で会社を定年退職するに伴い、前職のときから毎月積み立てていた企業型確定拠出年金(DC)を解約し、キャッシュ化した資産をNISAに移換して日本株を購入するつもりでした。DCではずっと日本株インデックス投信で運用していましたが、年明けから日経平均株価がまさかの急騰を演じたので、1月中旬に34,500円近辺でインデックス投信を売却しました。(①) 売却のタイミングについては、上記チャートでご覧のとおり最悪です。
日本株の購入原資は、DC資産と会社の退職金を合わせた600万円と、インフレ対策として預金から米国債に移すつもりだった500万円です。

DC資産を売却したまではよかったのですが、その後も日経平均は高値を更新し続け、下落の気配はありません。しかし、DC資産が私の口座に着金するまでの間に、さすがの日経平均も雲行きが怪しくなってきました。買いの準備が整った4月中旬以降、私は37,000円を当面の下値目途とし、38,000円割れの水準から買い下がることにしました。(②) このとき、ダイキン工業小松製作所メイテックの3銘柄を購入しました。そして、日経平均がさらに37,000円を割り込めば、追加の買いを入れようと思っていました。

GWには神田暴威の為替介入があり、円安もいよいよ終りかと思いましたが、僅かに円高に振れたのも束の間、気が付けばもとの円安に逆戻りです。私は、1ドル145円で4%クーポンの米国債を買う当初の計画を撤回し、高配当の国内株の購入に方針転換しました。でも、日経平均は大きく下落することもなく、私を嘲笑うかのように38,000円と39,000円の間を行ったり来たり。ここで私の悪い癖が出てしまいます。押し目を待つことができず、5月中旬にAGCヤクルト本社(③)、6月中旬にホシザキ三菱HCキャピタル(④)を購入してしまいました。

結局、2024年前半に購入したのは、インカム狙いの高配当株として小松製作所、メイテック、AGC、三菱HCキャピタル。地元企業応援としてホシザキ。そして、キャピタル狙いの逆張りで買ったダイキン工業、ヤクルト本社です。売買タイミングはチャートでご覧のとおり、褒められたものではありません。ただ、これから10年、20年と長いお付き合いをお願いする相手としては、文句のない布陣が揃ったものと自負しています。(本当はMS&ADも買いたかったのですが……。上がってしまい買えませんでした。)

2024年前半の投資結果だけ見ると、私は今の相場にガンガンに強気だと思われるかもしれません。しかし、それは”我慢”の二文字を知らないお馬鹿の手許に、たまたまキャッシュがあったからに過ぎません。私は長期的には日本株はデフレ脱却期待を背景に上昇すると見ていますが、短期的には10%~20%程度の下落はいつあってもおかしくないと思います。

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【株】祝! TOPIX最高値更新

2024年7月4日、東証株価指数(TOPIX)はバブル期の1989年12月18日につけた最高値(引値ベース)2884.80を34年ぶりに更新しました。市場関係者からは、東証の資本効率化改革への期待感の高まりとか、企業の第1四半期決算の結果先取りとか、トランプさんの再選を意識とか、色々な声が上がっていますが、いつものことですが本当のところは分かりません。ただ、日本株の上昇トレンドの底流に、デフレ脱却への期待があることは間違いありません。

日本企業の低生産性、経営者のアニマルスピリットのなさ、設備投資への消極的スタンス。家計の貯蓄性向の高さ。日本経済低迷の原因とされてきたこれらは全てデフレと繋がっています。海外から見れば、日本企業や家計のこういった行動は、特殊で非合理的なものに映ることでしょう。しかし、デフレを前提とすると、実は合理的であることが分かります。物価が下がり続ける世界、そして金利のない世界は、凍り付いた静の世界です。それがバブル崩壊後の日本経済の姿でした。そんな環境で生き残るためには、無駄なエネルギーは使わず、ひたすらじっとしていることが合理的な選択となります。

皆さんは、以前お話した世界最長寿の動物:ニシオンデンザメを覚えておいででしょうか。北極海の深海に生息するニシオンデンザメというサメの仲間は、何と500年以上も生きることができるそうです。ニシオンデンザメは、なぜこれほど長生きなのか。それは、ほとんどエネルギーを使わずに生活しているからです。
バブル崩壊後の日本は、まさに北極海の深海のような状況であったと言えます。縮み続ける凍えた市場を前に、投資を拡大する企業経営者はいません。海外に進出するか、さもなくば内部留保を積み上げた方が賢明です。家計も資産をキャッシュか預貯金で保有する方が得策であったといえます。

しかし、デフレ脱却とともに、日本経済は長年の呪縛を解かれることになります。物価が緩やかに上昇する世界、金利のある世界。そこは、動の世界です。企業経営者はアニマルスピリットを発揮し、積極的に設備投資を行って生産性の向上を図ります。家計も物価の上昇に負けないよう、預貯金を取り崩してリスク資産への投資を拡大するでしょう。

日本経済、復活。





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【株】円安悪玉論

神田暴威の為替介入により一旦は円高に向かったドル円相場ですが、足下では再度160円台に突入、37年ぶりの円安水準となっています。円安は日本経済にとってプラスなのか、マイナスなのか、意見が分かれるところですが、最近は円安がインフレを助長するとの理由から、円安悪玉論が優勢な勢いです。私は為替の素人ですので、いずれが正しいのか判断する資格も能力もありません。ただ、長年、株式と債券を通じて為替を見てきた者として、今後のドル円の望ましい方向性について考えをまとめたいと思います。

上に1971年以降のドル円のチャートを掲げましたが、2012年のアベノミクス開始までの期間、固定相場制当時の1ドル=360円からの円安修正・円高進行の流れであったことが分かります。途中で円安に転じる場面もありますが、(1985年のプラザ合意を除き)経済ショックや地政学リスクの高まりによって、ことごとく円高に引き戻されています。

変動相場制の世界では、通常、経済ショックに陥った国は、自国通貨安による輸出拡大によって経済の回復を図ります。しかし、我が国の場合、チャートでご覧のとおり、平成バブル崩壊から、アジア通貨危機(※)、リーマンショックと、経済ショックのたびに急激な円高に見舞われてきました。円高に振れた理由はいくつか考えられます。日本企業や投資家が海外資産を国内に引き揚げたためとか、円キャリー取引の巻き戻しとか、欧米通貨への不安心理の高まりによる円買いとか。でも、正直、理由はどうでもいいです。円安であるべきときに円高であったこと。そして、それが日本経済にとって致命傷となったこと。ここが問題なのです。2008年のリーマンショック以降、超円高で日本の製造業が急速に国際競争力を失う一方、韓国のサムスンや台湾のTSMC等が自国通貨安を武器に急速に力を付けていきました。経済ショックに加えての円高。この二重苦が、今日の日本経済の停滞を招いた元凶です。
(※)このとき、日本は山一証券、拓銀、長銀、日債銀と続く金融機関破綻による金融危機により、亡国の一歩手前まで追い込まれました。韓国は財政破綻し、IMFの管理下に置かれました。

しかし、ドル円のトレンドは変わりました。足下では米国の利下げ時期が取り沙汰されていますが、いまだに円安トレンドに転換の兆しはありません。私は、日本企業はこの千載一遇のチャンスを逃すべきではないと考えます。円高に対応するため大手企業の多くが海外展開を進めた結果、いまさら円安と言われてもメリットは薄いとの意見もあります。でも、中小企業を含めたオールジャパンで見れば、まだまだ円安メリットは大きいはず。今こそ、韓国や台湾企業に奪われた、半導体を初めとする工業製品のシェアを挽回するチャンスです。

結局のところ、介入によって円安を止めようとしても、基礎的な経済条件に変化がなければ効果は長続きしません。円安悪玉論をヒステリックに叫ぶのではなく、円安による輸出競争力の強化を通じて日本経済の潜在成長力を高め、結果として円高を呼び込むという中長期目線での取り組みが必要なのではないでしょうか。