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【株】デュポン・システム~労働者のための収益獲得力増強策~

デュポン・システム(デュポン分析)をご存じでしょうか。デュポン・システムは企業のROE(自己資本利益率)を3つの要素に分解することで、ROEの増減要因を特定したり、同業他社との比較分析や経営戦略の改善策を立案することに使われます。具体的には、以下の式のようにROEを3要素に分解するところから始ります。

ここで、①は売上高純利益率で、企業の売上げに占める利幅の厚さ=収益性を表します。この数値が高いほど高収益企業となります。②は総資産回転率で、企業が保有する資産をどれだけ有効活用しているか=効率性を表します。③は財務レバレッジで、総資産が自己資本の何倍あるか、他人資本をいかに上手く活用しているかを表します。ただ、この数値が高ければいいというものではなく、財務の健全性を失わない程度であることが求められます。

このようにデュポン・システムはもともと企業の財務状況を分析するためのツールですが、①~③の要素の改善を図ることで、逆に企業のROEの向上を図る方策を探ることにも使えます。ならば、このデュポン・システムを労働者という一人の人間に当てはめたら、労働者の収益獲得力を増強するための方策が見えてくるのではないか。今回はそんな視点でデュポン・システムを見つめ直してみたいと思います。

まず、①の売上高純利益率の改善です。これを労働者に当てはめると、収益力アップ=単位時間当たり賃金の引き上げに相当します。そのためには、ノウハウやスキルを習得し、経験を積むことが必要です。そのうえで、社内での昇格や高待遇の他社への転職を目指すことになります。
次に②の総資産回転率の改善です。これを労働者に当てはめると、どうなるか。労働者の体は一つしかありません。日中、労働者は会社へ行って働いていますが、もしその時間帯に他人にも働いてもらうことができれば、2倍、3倍の収益が獲得できるかも知れません。でも、そんなことができるのでしょうか? 資産運用という手法を使えば可能となります。例えば株式投資をすれば、労働者が会社で働いている間、投資先企業の経営者や従業員は株主である労働者に代わって働いてくれます。労働者は株式投資(不動産投資でも構いません)を通じ、資産効率=資産回転率のアップを図ることができます。
最後は③の財務レバレッジの改善です。これは銀行から借り入れをして総資産を膨らませることで実現できますが、労働者が銀行から多額のお金を借りるのは不動産ローンを除くと困難です。なので、労働者が財務レバレッジを高めるには、アパートローンを借りて不動産に投資することが近道です。もっとも、収益力のある物件に投資し、かつ好条件でローンを借りられることが前提となります。

以上のように、自身のスキル・経験に磨きをかけて高い賃金を獲得し、賃金の一部を株式等に投資するとともに、ローンを借りてレバレッジを利かせ不動産に投資する。これがデュポン・システムが示唆する、労働者の収益獲得力を増強するための最強の方策となります。

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【株】ある投稿に関する考察

最近、Xに次のような投稿がありました。「インデックス投資家も高配当株投資家も自己投資した自分を信じられなくなった末路やからね」「どっちもおじさんとおばさんの世界やで」「若者は自分に投資して自分と心中した方がええよ」

今回はこの投稿に対し、ひとりのおじさん(おじいさんか?)の意見を聞いてほしいと思います。まず、最初にビジネスの世界は株式市場と同じく、極めて予測不能で理不尽である点を強調しておきたいです。頑張った者は報われるというナイーブな世界ではないのです。あるときはズル賢く悪知恵の働く者が勝つ世界。あるときは政治力に秀でた者が勝つ世界。そんな混沌とした世界で、私たちはどのようにして生き残っていけばいいのか。まずできることは、リスクの分散です。具体的には、収入を労働にのみ依存せず、投資からも得られるようにしておくこと。しかし、人間に与えられた時間は24時間しかありません。その時間内に労働と投資の両方をこなし続けるのはしんどいです。そこで出てくるのが、投資について外部にアウトソースする考え方。できればコストも抑えたい。そんなわがままなニーズをかなえてくれるのが、インデックス投資となります。また、外部委託せず自分で株式の銘柄を選びたいという方には、高配当株投資という手もあります。ここで注意頂きたいのは、インデックス投資も高配当株投資も、自己投資した結果を発揮すべく労働に十分な時間を割くために行っているという点です。何も、自己投資した自分を信じられなくなったからではありません。

さて、ここでもう一度言わせて下さい。ビジネスの世界は予測不能で理不尽です。頑張ったものが報われる保証はありません。成功するには実力以上に運が必要となります。そんなビジネスの世界で「自分に投資して自分と心中する」行為は、投資でいうところの集中投資に似て、非常にハイリスクです。当たれば大金持ち、外れたら自己破産。丁半博打と同じです。「若者は自分に投資して自分と心中した方がええ」とこの投稿者はいいますが、本当に心中するはめになっても責任は取ってくれません。
自分の身は自分で守るもの。そのときの武器がリスク分散です。若者は自分に投資し、自分を信じてビジネスに注力するのはいいでしょう。しかし、ビジネス以外に収入の道を設け、ビジネスで失敗しても路頭に迷うことのないよう、事前に手を打っておくことが賢明です。インデックス投資や高配当株投資は、そのための有効なツールとなります。

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【株】逆ドルコスト平均法

ドル・コスト平均法とは、株式などの価格が変動する商品に対して「常に一定金額を定期的に」購入する方法のことをいいます。投資金額を一定にすることで、価格が低いときには購入量(口数)を多く、価格が高いときには購入量(口数)を少なくすることとなり、商品の購入を機械的かつ効率的に行うことができます。今、定期購入する株式の価格をp、購入量をqとすると、ドルコスト平均法での株式の購入は、pq=k(一定)と表現できます。例えば、毎月の定期購入額をk=20,000円と設定した場合、p=100円の月はq=200単位、p=400円の月はq=50単位購入することになります。価格が低い月は購入量を多く、価格が高い月には購入量を少なくする調整機能が発揮されています。と、ここまではどの投資本にも書かれている内容ですが、当ブログではもう一歩踏み込みたいところです。

株式等を機械的かつ効率的に売却するにはどうすればいいのか。うまくドル・コスト平均法を応用できないものか、考えてみましょう。具体的には、ドル・コスト平均法とは逆に、価格pが低い月には売却量qを少なく、価格が高い月には売却量を多くできればいいわけです。これは、例えばq/p=k(一定)を満たすように、p、qを決めれば実現できます。仮にk=10と設定したとします。p=100円の月はq=1000単位を売却、p=400円の月はq=4000単位を売却するイメージです。これなら、価格が低い月は売却量を少なく、価格が高い月には売却量を多くすることができます。ただ、注意しなければいけない点があります。購入のときと違い、売却では価格pがどんどん上昇していくと、売却量qも青天井で多くなっていきます。結果、予定以上の株式を売却してしまう危険性があるのです。このリスクを回避するためには、予め1回あたりの売却量に上限を決めておく必要があります。例えば、q/p=10(q≦5000)みたいな感じです。

目下、政府はシニア層の資産取崩しニーズに応えようと、「プレミアムNISA」の創設に動いていますが、今回検討した逆ドル・コスト平均法を使えば特別な商品や仕組みがなくても、機械的かつ効率的に資産の取崩しができると思います。

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【株】たまにはチャートでも~最近の相場の傾向と対策~

たまにはチャートでも見ながら相場の話をしましょうか。といっても、私はチャーチストではないので、テクニカル分析をしての相場予測などは致しません。あくまで、事実としての相場の軌跡をチャートで確認するだけです。

これは2022年1月から直近までの日経平均株価の日足です。①は2024年8月5日の大暴落、②は2025年4月7日のトランプショックです。このチャートから確認できるのは、(ア)2024年7月31日の日銀利上げ以降、毎年20%前後の急落が起こっているが、(イ)二番底を付けることなく、(ウ)急速に値を戻していることです。

(ア)~(ウ)から言えることですが、
(A)相場が底を打ってから買おうと思っても手遅れ。買いたいと思ったら落ちるナイフを掴む覚悟がいる。
(B)暴落だとパニックになって損切りすると、そこが底値だったりする。
(C)相場が下がって安易にショートを振ると、手痛く踏まされる。

確かにVIX指数は10%台に落ち着いてきましたが、まだまだ物騒な相場が続いています。こんなときは、超長期のほったらかし投資に徹するのが一番です。さもなくば、超短期のトレードにとどめ、ポジションは日計りで決済すること。オーバーナイトは危険です。

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【株】米国格下げとな?

大手格付け会社ムーディーズは16日、米国の発行体格付けの引き下げを公表しました。過去の格下げ時の経験から、今回も市場では通貨安、債券安、株安のトリプル安を警戒する声が出ています。歴史は繰り返すといいますが、さて、今回はどうでしょうか?

ひとつ、頭を冷やして考えましょう。まず、米国格下げですが、これは何も今に始ったことではありません。2011年のS&P、2023年のフィッチが既にAAAからの格下げを実施済です。それから、格下げによる米国の信用低下ですが、これもトランプさんのチャランポランな関税政策のせいで海外投資家の信用はとっくに失っています。また、格下げで米国債券が売られれば、トランプさんが最も気にしている長期金利が上がってしまいます。そうなれば例のトランププットが発動され、株価の下支えが期待できます。

このように考えてくると、一瞬トリプル安があったとしても長続きはしないのではないかと思えてきます。実際、現在の為替の水準は1ドル=145円程度とやや円高に振れていますが、パニック的な動きにはなっていません。

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【株】プラチナNISA

4月26日の新聞各紙は、金融庁が高齢者向けのNISAを創設する方向で検討に入ったと朝刊の第一面で報じました。2026年度の税制改正要望に織り込む方向とのことで、運用益等を分配金として毎月払い出す「毎月分配型」の投資信託を「プラチナNISA」と銘打ち、65歳以上の高齢者に限り利用できるようにするそうです。これは年金に頼る高齢者の「NISA内の投信を毎月の生活費に充てたい」というニーズに応えるもので、NISA口座の資産を売却せずに分配型に移行できる「スイッチング」も1回だけ認められる予定です。

関係者の中にはプラチナNISAの創設を、「長期の資産形成と逆行する」と指摘する向きがあるようですが、私は違うと思います。老い先の限られた年金生活者を前に、「投資は長期目線でやるべき」と説教することがおかしいことに気が付かないのでしょうか。私はプラチナNISAは資産運用のための商品ではなく、資産管理のための商品だと思います。つまり、若年期から中年期で積み上げてきた資産を高齢期において効率的に回収するためのものです。従来はNISA内の投信の出口は、投資家が自分の判断でタイミングを見て売却するしかなかったわけですが、今後はプラチナNISAにスイッチングすることで機械的にキャッシュを回収することができるようになります。投資家の選択肢が増えるという意味で大変有意義だと思います。

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【株】トラの首に鈴を付ける

昨日も日経平均は大幅安。トランプ関税のダメージ、留まるところを知らずです。この先、世界経済はどうなるのか。日本株はどこまで下がるのか。誰もが知りたいところだと思いますが、今みたいにVIX指数が50を超えるようなカオス状態で、あーだこーだ言っても始まりません。理屈が通じる相場じゃないんです。ヘッジファンドのマージンコール精算が一段落するまで混乱は収まりません。理屈を語るのは、VIX指数が30を割り込んでからでいいでしょう。

最近の相場暴落というと、記憶に新しいところではコロナショックがあります。パンデミックの感染拡大により、2020年3月に日本株は約31%下落しています。また、リーマンショックでは2008年9月のリーマンブラザーズ破綻をきっかけとした金融システム不安から、世界株は約45%、日本株も約32%下落しました。この2つのショックでは当局が打ち出した対策が奏功し、市場の混乱は比較的短期間で収束に向かいました。コロナショックではロックダウンや非常事態宣言の発令に平行し、無料でワクチン摂取を進めました。リーマンショックでは、経営不振に陥った金融機関に公的資金を注入するとともに、金融市場へ大量のマネーを供給して市場の安定を図りました。

しかし、今回のトランプショックの悩ましいところは、危機の元凶が米国大統領その人である点です。今回ばかりは米国政府もFRBも、有効な対策の打ち出しようがありません。とにかく、このアフォな関税を一刻も早くトラさんに引っ込めてもらうしかないのです。関税はインフレというチャネルを通じて、米国民の首をじわじわ締め上げていきます。そうでなくてもコロナ以降インフレに辟易している米国民が、さらなるインフレに我慢できるはずがありません。あとは、米国民にトラさんの首に鈴をつけてもらう。私たちはそこに期待しましょう。

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【株】逆億り人

昨日も日経平均は派手に下げましたね。どこまで下がることやら。運用資産を億単位で減らした人のことを逆億り人というそうですが、1億も資産のない私には最初から縁のない話です。でも、今回の下げによる損失率でみれば、逆億り人も私も痛いことに変わりはありません。ただ、1990年代から株式投資を行ってきた者としては「ああ、またか」と思いつつ、「ジタバタしても仕方ない、そのうち戻るさ」と楽観もしています。

今まで威勢のよかったユーチューバーやブロガーの中には、今回の下げのダメージで急に口を閉ざしてしまう人もいますが、一方で相変わらず情報発信を続ける人もいます。皆さんにはこの機会に、本物のユーチューバー・ブロガーを見極めて頂ければと思います。

皆さんの中には「なんでお前は平気でいられるんだ」と思われる方がいらっしゃるかも知れません。その理由ですが、ひとつには、株式市場において直近高値から10%程度の下げは1年から1年半おきに普通に起きることで、驚くには当たらないからです。そして、もうひとつ。私が日本そして米国の経済成長のポテンシャルに信頼を置いており、日米の株式市場の長期的な成長を楽観しているからです。
このような株式市場のストーリーが信じられないという方は、残念ですが早々に株式投資から撤退されることをお勧めします。(ご参考:金融経済教育の前にすべきこと「年1時間で億になる投資の正解」を読んで


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【株】シニア向けNISA二段重ね活用術

現在61歳の私は某社で嘱託として働いていますが、多くの会社員の方が定年退職後も嘱託として継続勤務されていることと思います。今や65歳まで働くのは当たり前。70歳まで働くという元気なシニアの方も多いです。ただ、問題はシニアが手にする給料が、現役当時に比べ大幅に減らされてしまうことです。そのため、生活費に充てるキャッシュが不足する場合、年金や資産運用でカバーする必要が生じます。今回はそんなシニアの事情に合わせたNISA活用術を考えてみたいと思います。

シニアにとって資産運用の目的は将来の資産形成ではなく、足下での生活費の原資となるキャッシュフローの獲得です。私はそんなシニアの方に、まずはNISAの成長投資枠での高配当株投資を提案します。株価はしばしば企業の業績とは無関係に、市場参加者の気分(PER)によって激しく変動します。一方、株式の配当は企業の業績(EPS)に応じて変動し、株価の影響は直接には受けません。高配当株に投資すれば、(企業の業績に大きな変動がないかぎり)株価が上がろうと下がろうと、安定したインカムゲインを手にすることができます。

しかし、高配当株も企業業績が悪化すれば減配、最悪、無配に転落します。そのため、企業業績の悪化時への対応も考えておきたいものです。そこで、もうひとつの提案です。それは、NISAのつみたて投資枠で株式インデックス(TOPIX)投信に投資するのです。そして、TOPIXの予想PERが例えば17倍とか18倍(※)を超えるような過熱したマーケットになったら、投信の一部を売却しキャッシュでプールしておきます。先々、企業業績が悪化して配当が減少した場合は、キャッシュを取崩しインカムゲインの減少分を補うようにします。このように、成長投資枠の高配当株でベースとなるインカムゲインを確保しつつ、配当減少時にはつみたて投資枠のキャッシュを注入することで、より安定したキャッシュフローの獲得が期待できるという仕組みです。
(※)一般的にPERの適正水準は15倍前後とされます。

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【株】落ちるナイフはつかむな

日経平均が38,000円の大台を割り、為替も1ドル=149円台に突入と、にわかに日本株の行方に暗雲が立ちこめてきました。ひょっとしたら、もう一段の下げがあるかもしれません。こんな場面でよく使われる格言に、「落ちるナイフはつかむな」があります。その意味をネットで検索すると、A証券のホームページでは「落ちてくるナイフをつかむと、上手く柄をつかめないで、刃をつかんでケガをしてしまいます。ナイフが床に落ちてからつかめば全く無傷です。」「株価が急落している時に買ってしまうと、どんどん下がって大損してしまうので、株価が目先の底について、そこから下がらない事を確認してから買った方がいいということです。」とあります。また、B証券のホームページでは「賢明な投資家は落ちてくるナイフなんてつかまずに、株価が底を打つのを見届けてから買う。底に落ちて刺さったナイフなら、安心して抜いていいからね。急落中の株に”安い!”と飛びつく前に、この格言を思い出そう。」とあります。

さて、このA証券やB証券のホームページの解説を見て、皆さんはどう思いましたか。「なるほど」と思った方。ちょっと人が良すぎます。「本当にこれがプロの解説か?信じられない。」と思った方。正しいです。
ここで、A証券さん、B証券さんに伺いたい。だいたい、株価の目先の底を確認するだの、株価が底を打つのを見届けるだの言ってますが、あなた方はそんなこと本当にできるとお考えですか?それとも、株価が底を打った瞬間にコツンと音でもすると仰るのですか?

プロの方にこんなこと言ったら釈迦に説法ですが、短期的な株価動向は予測不能(ランダムウォーク)です。株価の底値だと思ったら、実は二番底の入口だったなんて話はザラにあります。なので、落ちるナイフをつかむことが悪手かどうか事前には分かりません。上がるナイフをつかんだら、そこが戻り高値だったなんてこともありますし。つまり、言えるのは、売買タイミングに下手に相場観を入れるのはやめた方がいいこと。そして、ドルコスト平均法のように機械的に売買する方が、リスク抑制の観点からは好ましいということです。機械的な買いでたまたま”落ちるナイフをつかむ”ことになっても、それはそれで粛々とオペレーションを継続すべきです。