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【株】日経平均 VS NYダウ

このチャートは平成バブル前の1983年から2023年までの日経平均とNYダウの推移を重ねたものです。(日経平均は円、NYダウはドル) ご覧の通り、左側半分では両者は大きく乖離した動きとなっており、平成バブルが異常な値動きであったことが分かります。当時、日経平均のPERは、何と60倍を超える水準にありました。また、東京都の山手線内側の土地の価格でアメリカ全土が買えると言われるほど、地価も異常な値上がりをしました。しかし、リーマンショック後の2009年頃から、日経平均とNYダウは歩調を合わせた動きになっています。このことは、平成バブル崩壊後の「失われた20年」で、平成バブルで形成された日本株の異常なバリュエーションが国際標準に収斂していったことを意味しています。(国際標準のPERを15倍とすると、日経平均は60÷15=4、つまり4分の1に下落する必要があったことになります。)

一方、NYダウは2000年以降、たびたび経済ショックに見舞われていますが、平成バブルのような極端な下落とはならず、堅調な上昇を続けています。これが国際標準の株価の動きだとすれば、割高感を払拭した日経平均も今後は極端な下落は避けながら、長期的な上昇カーブを描くことが期待されます。もうひとつ、NYダウのチャートから見えてくるものがあります。それは、1983年当時から1995年頃にかけての株価の上昇です。チャートでは目盛りの関係で確認しにくいですが、この間に株価は約5倍に上昇しています。一般にはIT革命(1995年頃)以降のNYダウ(やナスダック)の好パフォーマンスを喧伝する向きが多いですが、それ以前の期間(※)においてもNYダウはキッチリ上昇しています。 国際標準のポテンシャルからすると、株式は10年~20年の時間があれば、特段の技術革新がなくても5倍程度には上昇するものなのかもしれません。
(※)IT革命前、1980年代から1990年代にかけての米国経済は、決して順調なものではありませんでした。

もちろん、1929年の世界大恐慌クラスの経済ショックが起きたら、多くの企業は倒産し株価はゼロになります。その場合、銀行も連鎖倒産を免れないので、銀行預金も紙屑となる可能性大です。国債や現金通貨の価値も暴落します。安心なのは金(ゴールド)や宝石の類いですが、50年や100年に1度の大恐慌に備えて、全財産を金に投資することが果たして正しい選択でしょうか? 大恐慌が気になる方は、想定される恐慌の発生確率に応じ、資産の一部を金に投資しておけば十分です。そして、当面必要な流動性を確保したら、あとは株式等に投資するのがスマートな個人投資家の姿だと思います。

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【株】2024年前半を振り返る

2024年前半は、私にしては珍しく出入りの激しい?半年となりました。そこで、一度売買の状況を振り返っておきたいと思います。私は3月末で会社を定年退職するに伴い、前職のときから毎月積み立てていた企業型確定拠出年金(DC)を解約し、キャッシュ化した資産をNISAに移換して日本株を購入するつもりでした。DCではずっと日本株インデックス投信で運用していましたが、年明けから日経平均株価がまさかの急騰を演じたので、1月中旬に34,500円近辺でインデックス投信を売却しました。(①) 売却のタイミングについては、上記チャートでご覧のとおり最悪です。
日本株の購入原資は、DC資産と会社の退職金を合わせた600万円と、インフレ対策として預金から米国債に移すつもりだった500万円です。

DC資産を売却したまではよかったのですが、その後も日経平均は高値を更新し続け、下落の気配はありません。しかし、DC資産が私の口座に着金するまでの間に、さすがの日経平均も雲行きが怪しくなってきました。買いの準備が整った4月中旬以降、私は37,000円を当面の下値目途とし、38,000円割れの水準から買い下がることにしました。(②) このとき、ダイキン工業小松製作所メイテックの3銘柄を購入しました。そして、日経平均がさらに37,000円を割り込めば、追加の買いを入れようと思っていました。

GWには神田暴威の為替介入があり、円安もいよいよ終りかと思いましたが、僅かに円高に振れたのも束の間、気が付けばもとの円安に逆戻りです。私は、1ドル145円で4%クーポンの米国債を買う当初の計画を撤回し、高配当の国内株の購入に方針転換しました。でも、日経平均は大きく下落することもなく、私を嘲笑うかのように38,000円と39,000円の間を行ったり来たり。ここで私の悪い癖が出てしまいます。押し目を待つことができず、5月中旬にAGCヤクルト本社(③)、6月中旬にホシザキ三菱HCキャピタル(④)を購入してしまいました。

結局、2024年前半に購入したのは、インカム狙いの高配当株として小松製作所、メイテック、AGC、三菱HCキャピタル。地元企業応援としてホシザキ。そして、キャピタル狙いの逆張りで買ったダイキン工業、ヤクルト本社です。売買タイミングはチャートでご覧のとおり、褒められたものではありません。ただ、これから10年、20年と長いお付き合いをお願いする相手としては、文句のない布陣が揃ったものと自負しています。(本当はMS&ADも買いたかったのですが……。上がってしまい買えませんでした。)

2024年前半の投資結果だけ見ると、私は今の相場にガンガンに強気だと思われるかもしれません。しかし、それは”我慢”の二文字を知らないお馬鹿の手許に、たまたまキャッシュがあったからに過ぎません。私は長期的には日本株はデフレ脱却期待を背景に上昇すると見ていますが、短期的には10%~20%程度の下落はいつあってもおかしくないと思います。

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【株】祝! TOPIX最高値更新

2024年7月4日、東証株価指数(TOPIX)はバブル期の1989年12月18日につけた最高値(引値ベース)2884.80を34年ぶりに更新しました。市場関係者からは、東証の資本効率化改革への期待感の高まりとか、企業の第1四半期決算の結果先取りとか、トランプさんの再選を意識とか、色々な声が上がっていますが、いつものことですが本当のところは分かりません。ただ、日本株の上昇トレンドの底流に、デフレ脱却への期待があることは間違いありません。

日本企業の低生産性、経営者のアニマルスピリットのなさ、設備投資への消極的スタンス。家計の貯蓄性向の高さ。日本経済低迷の原因とされてきたこれらは全てデフレと繋がっています。海外から見れば、日本企業や家計のこういった行動は、特殊で非合理的なものに映ることでしょう。しかし、デフレを前提とすると、実は合理的であることが分かります。物価が下がり続ける世界、そして金利のない世界は、凍り付いた静の世界です。それがバブル崩壊後の日本経済の姿でした。そんな環境で生き残るためには、無駄なエネルギーは使わず、ひたすらじっとしていることが合理的な選択となります。

皆さんは、以前お話した世界最長寿の動物:ニシオンデンザメを覚えておいででしょうか。北極海の深海に生息するニシオンデンザメというサメの仲間は、何と500年以上も生きることができるそうです。ニシオンデンザメは、なぜこれほど長生きなのか。それは、ほとんどエネルギーを使わずに生活しているからです。
バブル崩壊後の日本は、まさに北極海の深海のような状況であったと言えます。縮み続ける凍えた市場を前に、投資を拡大する企業経営者はいません。海外に進出するか、さもなくば内部留保を積み上げた方が賢明です。家計も資産をキャッシュか預貯金で保有する方が得策であったといえます。

しかし、デフレ脱却とともに、日本経済は長年の呪縛を解かれることになります。物価が緩やかに上昇する世界、金利のある世界。そこは、動の世界です。企業経営者はアニマルスピリットを発揮し、積極的に設備投資を行って生産性の向上を図ります。家計も物価の上昇に負けないよう、預貯金を取り崩してリスク資産への投資を拡大するでしょう。

日本経済、復活。





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【株】円安悪玉論

神田暴威の為替介入により一旦は円高に向かったドル円相場ですが、足下では再度160円台に突入、37年ぶりの円安水準となっています。円安は日本経済にとってプラスなのか、マイナスなのか、意見が分かれるところですが、最近は円安がインフレを助長するとの理由から、円安悪玉論が優勢な勢いです。私は為替の素人ですので、いずれが正しいのか判断する資格も能力もありません。ただ、長年、株式と債券を通じて為替を見てきた者として、今後のドル円の望ましい方向性について考えをまとめたいと思います。

上に1971年以降のドル円のチャートを掲げましたが、2012年のアベノミクス開始までの期間、固定相場制当時の1ドル=360円からの円安修正・円高進行の流れであったことが分かります。途中で円安に転じる場面もありますが、(1985年のプラザ合意を除き)経済ショックや地政学リスクの高まりによって、ことごとく円高に引き戻されています。

変動相場制の世界では、通常、経済ショックに陥った国は、自国通貨安による輸出拡大によって経済の回復を図ります。しかし、我が国の場合、チャートでご覧のとおり、平成バブル崩壊から、アジア通貨危機(※)、リーマンショックと、経済ショックのたびに急激な円高に見舞われてきました。円高に振れた理由はいくつか考えられます。日本企業や投資家が海外資産を国内に引き揚げたためとか、円キャリー取引の巻き戻しとか、欧米通貨への不安心理の高まりによる円買いとか。でも、正直、理由はどうでもいいです。円安であるべきときに円高であったこと。そして、それが日本経済にとって致命傷となったこと。ここが問題なのです。2008年のリーマンショック以降、超円高で日本の製造業が急速に国際競争力を失う一方、韓国のサムスンや台湾のTSMC等が自国通貨安を武器に急速に力を付けていきました。経済ショックに加えての円高。この二重苦が、今日の日本経済の停滞を招いた元凶です。
(※)このとき、日本は山一証券、拓銀、長銀、日債銀と続く金融機関破綻による金融危機により、亡国の一歩手前まで追い込まれました。韓国は財政破綻し、IMFの管理下に置かれました。

しかし、ドル円のトレンドは変わりました。足下では米国の利下げ時期が取り沙汰されていますが、いまだに円安トレンドに転換の兆しはありません。私は、日本企業はこの千載一遇のチャンスを逃すべきではないと考えます。円高に対応するため大手企業の多くが海外展開を進めた結果、いまさら円安と言われてもメリットは薄いとの意見もあります。でも、中小企業を含めたオールジャパンで見れば、まだまだ円安メリットは大きいはず。今こそ、韓国や台湾企業に奪われた、半導体を初めとする工業製品のシェアを挽回するチャンスです。

結局のところ、介入によって円安を止めようとしても、基礎的な経済条件に変化がなければ効果は長続きしません。円安悪玉論をヒステリックに叫ぶのではなく、円安による輸出競争力の強化を通じて日本経済の潜在成長力を高め、結果として円高を呼び込むという中長期目線での取り組みが必要なのではないでしょうか。


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【株】あかん、買ってもうた

わたくし、いつぞやは「為替が145円になったら米国債を買いたい」などと戯言を申しておりましたが、いつまでたっても一向に円高になる気配はございません。そうこうしているうち、ソフトバンクグループ(SBG)がクーポン3%の円建て社債を発行したのを見て、わたくし、為替リスクを取ってクーポン4%の米国債を買うのがバカバカしくなってきちゃいました。でも、SBG債は完売御礼のようですので、今からでは入手不可能です。そこで、仕方ないから高配当株を買うことにしたんです。そりゃ、わたくしにも、足元の株価水準が高いことくらい分かります。なので、相場が深押しするタイミングを待って、買い出動するつもりでございました。昨日までは……。

「三つ子の魂百まで」とはよく言ったものでございます。我慢ができないという子供の頃からのわたくしの性格は変わりません。結局、相場の下げを待ちきれず、今日、買っちゃいました。8593三菱HCキャピタル。日経平均39,000円どこで。あーあ、やっちまった。
明日はメジャーSQに、日銀金融政策決定会合の結果発表。大ケガにならないことを祈るのみでございます。

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【株】メジャーSQの前に

6月10日に日経平均株価は前日比+354円の39,038円と、久しぶりに39,000円台で引けました。株価上昇の特段の材料がないにも関わらずです。日経新聞は本日(6月11日)朝刊で、157円台への円安を見て海外短期筋が株価指数先物へ買いを入れたと解説していますが、何故に今買う?との疑問は解けません。さらに海外時間に日経平均先物は39,200円まで上昇しています。
この不可解な上げについて、やはり今週末のメジャーSQを抜きには語れません。これまでもメジャーSQの前後でオプション・先物の売り方と買い方の思惑が交錯し、相場が乱高下する場面がたびたびありました。

長期個人投資家としては、ここで変に強気になって相場に付いていくことは慎み、むしろ相場の急落に備え下値で買い指しを入れるくらいで丁度いいと思います。

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【株】ソフトバンクグループ社債について

5月31日、ソフトバンクグループ(SBG)は個人を対象に、利率3.03%の7年債(2031/6/13償還)5,500億円の発行を決定しました。引受け証券の各社とも、売れ行きは好調のようです。当債券は日本格付研究所(JCR)からシングルAの格付けを取得しました。また先頃、米国格付け会社のS&Pグローバルは、SBGの長期発行体格付けをダブルBプラスに1ノッチ引き上げています。今回はSBG第63回無担保社債の発行条件が適正か否か、簡単な方法で確認してみたいと思います。具体的には、①SBG既発債の流通利回りと比較する、②同じ格付けの他社債券の利回りと比較する、の方法でチェックします。

まず①ですが、日本証券業協会の「公社債店頭売買参考統計値表」を使います。これは、日本証券業協会が会員の証券各社からの報告に基づき、公社債の気配値を日次で公表しているものです。この表で5月31日のSBGの既発債の流通利回りを確認すると、2031/4/25償還の第62回債の(平均)利回りは2.995%、2031/3/14償還の第59回債の(平均)利回りは2.982%となっています。したがって、第63回債の利回り3.03%はほぼ妥当であるといえます。

次に②ですが、ここでは国内格付けJCRのAではなく、海外格付けS&PのBB+を基準に見ていきます。米国ハイ・イールド債指数のBB格債インデックスを見ると、5月31日時点のスプレッド(米国国債への上乗せ金利)は2.22%となっています。(出所:野村アセットマネジメント/週間市場情報米国~米国ハイ・イールド債市場~) 5月31日の2031/6/20償還の日本国債(超長期国債第128回債、129回債)の利回りを「公社債店頭売買参考統計値表」で確認すると、0.755%と0.759%となっています。これに、BB格債スプレッドの2.22%を加算すると2.975%と2.979%となります。やはり第63回債の利回り3.03%は妥当といえそうです。当債券を購入された個人投資家の皆さんの眼力に感服です。

ここで、SBG社債のリスクについて考えてみます。通常、債券のリスクというと、金利が頭に浮かびます。しかし、今回、個人投資家の皆さんは、償還まで持切りを前提に購入されていると思います。そのため、金利リスクよりも、大量の社債を発行しているSBGの信用リスクの方が気になるのではないでしょうか。実際、SBGの信用リスクが顕在化するような場面では、SBG社債を市場で売却することはほぼ不可能と思われます。(売れたとしても価格の大幅なディスカウントを求められるでしょう。)そのときは、SBGと心中する覚悟が必要です。

現在、ソフトバンク株の配当利回りは4.4%程度ですが、ボラティリティの高い株式は怖いけど、社債なら投資してもいいという個人投資家の方は多いと推察します。かねて私は、リスクレベルが株式と国債の中間をいく資産があればいいと思っていました。一見、JREITが当てはまりそうですが、当ブログで指摘してきたようにJREITは株式なみにリスクの高い資産です。そういう意味では、今回のSBG社債のようなハイ・イールド債こそ、適役だと思います。政府の資産運用立国の方針のもと、ブラックストーン等の海外運用会社と連携した国内証券会社が、プライベート・エクイティや私募不動産、私募インフラ投資といったプライベートアセットを販売する動きが強まっています。しかし、私はこれらの資産よりも、透明性の高いハイ・イールド債市場の育成を急ぐべきだと考えます。

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【株】個人投資家向けTAA

TAA(Tactical Asset Allocation)とは、株式・債券・キャッシュの資産配分を戦術的かつ機動的に変更することで、収益の獲得を狙う投資戦略です。通常の投資戦略が株式や債券の銘柄選択によって収益を狙うことに比べ、ユニークな戦略といえます。かつては先端の大手年金基金等で採用されていましたが、パフォーマンスの有効性に疑問ありとのことで、最近では限定的な採用に留まっているようです。そんなTAAですが、今回は個人投資家が採用してはどうですか、という提案です。

個人投資家の最大の悩みといえば、「相場暴落の恐怖」でしょう。そして、ほったらかし投資においては、「相場暴落の恐怖」をいかに克服するかが大きな課題となります。「相場暴落の恐怖」に耐えきれず、底値で損切りした苦い経験のある個人投資家は多いと思います。かくいう私もその一人です。そんな「相場暴落の恐怖」をどうやったら克服できるのか。長年の私の課題でしたが、ここもとの日本株の下落局面において、あるアイデアを思いつきました。今回の下げ相場での投資行動でお話したように、私は確定拠出年金(DC)で積み立てていた資産を3月にキャッシュ化し、4月、日経平均株価が下落するのに合わせて幾つかの日本株を買い下がりました。その間、私はひたすらお目当ての銘柄を安く買うことだけを考えていました。日経平均が下落すれば、私が保有している他の銘柄の評価額も悪化するにも関わらずです。この経験から、私はひとつの仮説を立てました。「投資家はある銘柄を買おうと思った瞬間から、その銘柄を安く買える相場の下落を歓迎し、自身が保有する他の銘柄の評価額の下落は気にならなくなる。」 どうでしょう? あなたにも当てはまるのではないですか。もし、この仮説が正しければ、追加投資するためのキャッシュを持っていれば、「相場暴落の恐怖」を克服できるはずだ。私はそう考えました。

問題は、富裕層でもない限り、追加投資の原資を常に手許にプールしておくのは難しいことです。では、一般の個人投資家はどうすればいいのか。そのためには、保有資産の一部を事前にキャッシュ化し、相場暴落に備えればいいのです。例えば、保有資産の10%を目途にキャッシュ化をします。具体的には相場の上昇局面で、①含み益の大きい銘柄から順に売却する、あるいは反対に②含み損の大きい銘柄/含み益の小さい銘柄から順に売却する(実現損は配当と相殺)、といった方法が考えられます。いずれの方法も、株価の上げ下げに応じ、株式⇒キャッシュ⇒株式と、資産配分の変更を繰り返すことになります。私はこの手法を本来の意味合いとは異なりますが、「個人型TAA」と呼ぶことにしました。「個人型TAA」は、当ブログのモットーである「ほったらかし投資」の趣旨に鑑みると邪道です。長期的なパフォーマンスにも、恐らく悪影響を与えるでしょう。ただ「相場暴落の恐怖」に怯え、底値で損切りするといった愚行を繰り返すよりは、多少のコストを払ってでも「個人型TAA」で武装し、「相場暴落の恐怖」に泰然と立ち向かう方が生産的だと思いますが、いかがでしょう?

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【株】今回の下げ相場での投資行動

401K(確定拠出年金)で運用していた日経平均インデックス投信の解約資金が、4月になってようやく私の口座に入金されました。支払い請求の書類を提出したのが3月初ですから、1ヶ月以上かかった計算です。正直、この対応の鈍さにはあきれました。ただ、入金を待っている間に内外株式の雲行きが怪しくなり、相場が下げ基調となったのはラッキーでした。私は押し目を拾うべく、早速買いの手を入れました。上表がその途中経過です。私は今回の下げの目途を日経平均の高値41,000円から▲10%と置き(毎度のように根拠はありません、単なる希望的観測です)、そこに至るまで38,000円割れから買い下がるイメージでした。今回の下げでは、新NISAの成長投資枠を高配当株で埋めたかったので、メイテックHD(9744)とコマツ(6301)を購入しました。また、最近日本株投資を始めたアジアや中東のお金持ちが好みそうな(?)大型優良株のダイキン工業(6367)を、特定口座で購入しました。あと若干購入資金が残っているので、この先日経平均が36,000円に近付けば、さらに買い下がりたいと思います。

もう一つ宿題があります。我が家の円資産のリスク分散のため、米国債を購入する件です。米国ではにわかに金利引き下げ観測が後退し、長期金利が上昇しています。私が目を付けている米国債(利率4.375%、償還2028/8/31)もアンダーパーになっており、買いたい気分が増しています。しかし、一方で残念なのが円安の進行です。4月26日の日銀金融政策決定会合での結果を受け、足下、ドル円は158円台に突っ込みました。米国長期金利が上昇したことで、米国債の購入を煽るユーチューバーも多いですが、外債を購入する際に注意しなければいけないのが為替です。外債投資はほとんど為替投資といっても良いくらいです。

ご参考に、先程の私が目を付けている米国債の利回りが為替によってどれだけ変化するか、下表にて試算してみました。例えば、米国債の購入時の為替が1ドル=155円であった場合、利金と償還金の支払い時の為替が145円だと年間利回りは2.65%に低下します。これが135円まで円高になると、年間利回りは僅か0.97%です。利率(クーポン)が4.375%だと思って購入した米国債が、ちょっと円高になっただけで利回りが大幅に低下することがお分かり頂けると思います。
2つめの表は、ドル円が145円の水準で米国債を購入した場合です。ここでも、為替が135円に円高になると年間利回りは2.53%まで低下します。実際はここから20%税金が引かれるので、手取りベースでは2%です。
米国債の利金と償還金をドルで受取りドルで消費する人はいいのですが、円で受取る必要がある場合、米国債のパフォーマンスは為替に大きく依存することをご認識下さい。外国債券は安全資産ではありません。外債投資はハイリスクな為替への投資です。
で、私はと言いますと、日銀の為替介入でドル円が145円を割れるようなタイミングがあれば、行こうかなと考えています。ですが、4年後に勝てる気は全くしません。

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【株】オルカン一択の世相に物申す

春本番。桜の花は散ってしまいましたが、引き続き、世間はNISA一色、オルカン一色です。初めてもらう給料からオルカンでつみたてNISAスタート、という新入社員の方も多いと思います。そんな大人気のオルカンですが、今回は投資に当たり注意しておきたい点についてお話したいと思います。

MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス投信(通称オルカン)。この投信1本で全世界の株式に分散投資できることが売りとなっています。しかし、オルカンの投資先の6割以上はアメリカで、構成銘柄の上位にも米国企業が多く含まれており、実際オルカンとS&P500は似た動きをします。ですから、全世界の株式へ分散投資したつもりが、開けてみたら米国株への集中投資と変わらない、ということになりかねません。そして1番の問題点は、オルカンは外国株投信であり為替リスクがあるにも関わらず、オルカンを推奨する業者やメディアがあまり言及していない点です。

一部の証券会社は、オルカンと日経平均株価のチャートを並べてオルカンの優位性を訴求していますが、これは近年のオルカンのパフォーマンスが、円安の為替差益で嵩上げされているからです。外国株式の場合、株のリターン・リスクに為替のリターン・リスクが乗っかります。したがって、日本株よりも外国株の方がリターン、リスクとも高くなります。そして、為替の期待リターン、リスクは株式のそれとは性格が異なることに注意すべきです。株式の期待リターンはプラスです。それは株式のリターンの源泉が企業の成長力にあるからです。一方で為替の期待リターンはゼロです。それは、為替は2国間の通貨の交換比率に過ぎず、そこから付加価値は生まれないからです。

では、為替のオルカンへの影響はいかほどでしょうか。簡単な試算で確認してみます。今、為替が1ドル=150円として、150万円でオルカンを10,000ドル購入したとします。20年後、オルカンは買値の10倍、100,000ドルになりました。ここでオルカンを売却し円転するとしたら、収益はいくらになるか。
20年後の為替を、①1ドル=200円、②1ドル=170円、③1ドル=150円、④1ドル=120円、⑤1ドル=100円、⑥1ドル=70円、とします。各ケースの収益は、①100,000ドル×200円-150万円=1850万円、②100,000×170-150万円=1550万円、③100,000×150-150万円=1350万円、④100,000×120-150万円=1050万円、⑤100,000×100-150万円=850万円、⑥100,000×70-150万円=550万円。このように、売却時点の為替の水準で、円ベースのオルカンのパフォーマンスが大きくブレることが分かります。購入時と売却時で為替の水準が不変(③)であれば1350万円であった収益が、売却時に1ドル=100円の円高(⑤)であれば850万円まで減少してしまいます。逆にオルカン売却時に大きく円安に振れていれば、投資家は日本株を大きく上回るリターンを手にすることができます。

下図にオルカンへの株式と為替の影響をまとめました。縦軸が株式のリターン、横軸が為替のリターン。○はリターンがプラスのとき、×はリターンがマイナスのときです。ケース1は株式・為替ともプラスのときです。ケース4は株式・為替ともマイナス。ケース2とケース3は株と為替の片方がプラスでもう片方がマイナスのときです。具体的な市場環境を想定すると、ケース1は株高・円安でオルカンとしてはベストな環境です。逆にケース4は株安・円高で最悪の環境です。ケース2は株高・円高、ケース3は株安・円高となります。株と為替は別々の理屈で動くので、このようにマトリクスで考える必要があります。ちなみに昨今はケース1に該当し、リーマンショック~アベノミクス以前の時期(2008年~2012年)はケース4に該当します。4つある市場環境のうち、たまたま今がベストなケース1であるからこそオルカンの好調があると言え、市場環境が変われば保証の限りではありません。

投資初心者のオルカン購入者が、このような外国株式の特性を理解した上で購入しているか。証券会社や銀行といった業者が、株だけでなく為替のリスクを、分かりやすい言葉で丁寧に説明しているかどうか。そこが問題です。
誤解のないように申し上げておきますが、私はインデックス運用を否定しているわけではありません。運用はオルカン1本で事足りるという、最近の風潮に物申しているのです。すでに保有している円資産とのリスク分散で外貨資産を持ちたいからと、オルカンに集中投資するのであれば問題ありません。しかし、退職後の生活費に充てるためのお金であったり、住宅の購入費であったりと、円資産としての出口が予定されるお金をオルカンに集中投資するのは考えものです。国内株式とのミックスで運用されてはいかがですか?

識者の中には円安は国策なので、この先も円安傾向は続くと主張する向きもありますが、円安が国策などということは決してありません。確かに円安は、輸出企業やインバウンドの恩恵を受けられる国内企業にとってプラスです。が、それは日本企業が外需を取り込んでいるからであり、外国から見れば内需を横取りされたことになります。そのため、行き過ぎた円安は海外とのあつれきを呼び、ときに外交問題に発展します。(円安政策が近隣窮乏化策と呼ばれる所以です。) 古い話ですが、1985年9月22日、G5(日・米ほか先進5ヶ国)は米国の強力な圧力のもと、米国の貿易赤字削減のため円高ドル安誘導を発表しました。有名なプラザ合意です。このとき、発表からわずか1日で為替は1ドル=235円から20円も円高になり、翌1986年7月には150円台まで円高は進行しました。こんな昔話を持ち出したのは、為替市場は極めて政治色の強いマーケットであり、しばしば市場原理で説明の付かない理不尽な動きをするからです。為替に関しては株式以上に思い込み・決め打ちは危険であり、慎むべきです。

最後に、今後、為替が円高に動く可能性について考えてみたいと思います。まずありそうなのは、ナスダックやNYダウ等の米国株の暴落に伴うドル安・円高です。バリュエーション面から見た米国株の割高は、多くの市場関係者が指摘するところです。それから、11月の大統領選でトランプさんが選ばれ、彼が米国の輸出産業保護のため円安を声高に批判するケースです。また、日本発のケースとしては、日銀の金融引締めが時期尚早であり、本邦経済がデフレに後戻りしてしまう場合が考えられます。繰り返しますが、為替は株式以上に予測困難なマーケットです。株式のリスクをとったうえに為替のリスクまでとる必要が本当にあるのか、今一度考えてみて下さい。