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【株】相場予想が当たらない訳

お正月の日経新聞では、大手企業の経営者が向こう1年間の株式相場の予想を行うことが恒例となっています。また、毎週月曜日には証券各社のホームページに、アナリストの「今週の相場予想」がアップされます。このように、いたるところで様々な立場の人たちが、日々相場の予想を行っています。しかし、私は30年以上マーケットの近くで仕事をしていますが、高確率で予想をヒットさせる人にはお目にかかったことがありません。

でもちょっと考えれば、超能力の存在でも前提にしない限り、相場の予想などできるわけないことが分かります。月曜日の朝、A証券会社のアナリストB氏が自社のホームページに今週の相場予想をアップするとします。時刻は、ただいま7:00AM。B氏は新聞各社の報道、情報端末やインターネットの記事等、7:00AM時点で入手可能なあらゆる情報をもとに完璧な相場予想を目指します。しかし、この予想はあくまで7:00AM時点の情報がベースです。7:05AMに新たなニュースが飛び込んできたら、7:00AM時点の相場予想の完璧性は崩れます。これが、1日後、1ヶ月後……と、時間が経過するにつれ当初は想定していなかった情報があふれ、相場予想は占いと化します。明日のことならいざ知らず、アナリストに将来の相場予想を期待することは、最初から無理な相談なのです。今や世界は24時間繋がっています。世界中のどこかで起きた事件、現象を相場は即座に織り込みにいきます。相場は自ら意思を持つ生き物の如く、時宜刻々と行き先を変えます。

プロの短期投資家は、相場の方向性にベットすることはありません。相場の方向性を予想することが無意味であることを知っているからです。彼らの判断軸は統計データです。拠って立つのは、あくまでサイエンスです。過去の何十万、何百万というデータと照らし合わせ、今現在の相場の値動きに統計的に有意な異常性(アノマリー)を見い出したら瞬時にポジションを取り、異常性が消えた次の瞬間にポジションを解消する。この瞬時の僅かなサヤ取りを、アルゴリズム取引による超高速売買で繰り返し繰り返し行い、収益を積み上げるのです。
私たち個人投資家に、プロの短期投資家の真似はできません。私たちにできるのは、信頼のおけるアナリストの相場予想に、時間の経過によって新たに加わった情報を自身の手で織り込み、エコノミストの相場予想をアップデートすることです。そして、アップデートした相場予想をもとに投資戦略を考えることです。しかし、アップデートした相場予想も数分後には一部が陳腐化し、時間とのいたちごっこが始ります。

結局、個人投資家も相場にベットすることはあきらめ、相場観を入れないドルコスト平均法によって、機械的に定時定額投資を続けることが賢明なように思います。