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【株】インフレと株高

9月12日の日経新聞朝刊の2面に、著名個人投資家cisさんのコメントが掲載されていました。cisさんはメディアに出ることがほとんどないので、びっくりされた方も多かったのではと思います。cisさんは、日本株の最高値更新は日本株の実力が評価されたわけではなくインフレで世界の株価が上昇したためと見ていて、現在の株高を「いわゆるバブルだとは思っていない」とのことです。
ところで、そもそもインフレになるとどうして株価が上昇するのでしょうか。今回はその素朴な疑問について考えてみたいと思います。

ちょっと前になりますが、私の手元に2023年12月6日の日経新聞があります。ここに岩井克人東大名誉教授の「インフレ、新たな価値創造」というインタビュー記事が掲載されています。この記事がインフレが経済成長を促し、株高につながるメカニズムを分かりやすく説明しているので、簡単にご紹介しましょう。

冒頭、岩井教授は日本経済が30年にわたって停滞した理由をデフレだと断定。資本主義においてデフレは(経済を)長期衰退に導く最も確実な道だと指摘します。そして、資本主義は利潤の追求で動き、その源泉は(シュンペーターが言うところの)イノベーションだとします。イノベーションによって生み出された新しい商品や技術、市場開拓等が利潤につながるわけです。しかし、イノベーションを現実化するにはお金が必要です。そして、アイデアのある人の多くはお金がありません。でも、インフレ下では借金は時間の経過とともに目減りしていくので、アイデアはあるがお金のない人は借金をしてアイデアを現実化しやすくなります。その結果、イノベーションが促され、経済成長を通じて株高が実現します。歴史的にも、資本主義はインフレによって始まったといえます。英国では、16世紀後半から17世紀にかけて緩やかなインフレが続きました。貿易や毛織物の製造など、投資に必要なお金が借りやすくなり、資本主義的な発展を始めることができたのです。

こう見てくると、インフレ下の日本において株価が上昇しているのは、cisさんの言うようにバブルなどではなく必然であることが分かります。しかし、株高を喜んでばかりもいられません。なぜなら、現下の日本では株式以上に身の回りのあらゆるもの、お米、お肉、野菜、バター、家電、自動車、電気、ガス、美容院の料金、マンション……の値段が上がっているからです。株高不況といわれるものです。インフレによって名目ベースで株価が上昇しても、実質ベースでは値下がり?といったことになります。
また、安定志向の強い方々にお伝えしたいのは、インフレ下において最もパフォーマンスが悪い資産は預金・キャッシュだということです。いま株価が上昇する裏側で、預金・キャッシュの価値が猛烈な勢いで下落しています。預金・キャッシュは今やハイリスク・マイナスリターンの資産なのです。株式や不動産・コモディティ等への資産分散が急務となっています。