資産運用をする手段としては、株式の他にも債券や不動産、FXや暗号資産、商品(コモディティ)等があります。ただ、ギャンブルの才能や高度な数学の知識がある一部の方を除き、一般の個人投資家にとって取り組みやすく、且つ高収益を上げやすいのは株式であると私は考えます。そこで、これから3回にわたり、私が個人投資家の皆さんに、まずは株式投資をお薦めする理由をお話したいと思います。
そこで突然ですが、【図1】をご覧ください。これは、私たちの生活する社会をモデル化したものです。ここではT自動車工場で働くAさんに登場してもらいます。ただ、Aさんは自動車工場の労働者でなくても構いません。農場で働くAさん、レストランで働くAさん、学校の先生Aさん。労働者として働き、給料をもらって生活している人なら、職業は何でもOKです。
Aさんは毎日工場で車を作っています。そして、オーナーである資本家Tから給料をもらっています。ここで、最初の質問です。Aさんが受け取る給料は、Aさんが作った車の価値と同じ金額でしょうか? 答えは、Noです。なぜなら、Aさんが受け取る給料は、Aさんが作った車の価値から原材料等のコストや資本家Tの利益を差し引いた後の金額だからです。つまり、給料=車の価値ー資本家の利益等、です。
次に、消費者のBさんに登場してもらいましょう。Bさんは毎日会社へ車で通勤しています。ところが最近車の調子が悪いので、買い換えようと思っています。そこでT工場で作っている車を購入することにしました。さて、ここで二番目の質問です。BさんがT自動車会社に払う車の代金は、車の価値と同じ金額でしょうか? 答えは、またしてもNoです。なぜなら、Bさんが払う車の代金は、車の価値に資本家Tの利益等を上乗せした金額だからです。つまり、代金=車の価値+資本家の利益等、です。
さて、三番目の質問です。ところで、労働者Aさんって誰のことでしょう? そして、消費者Bさんって? 答えは、どちらも私たち自身のことです。つまり、労働者Aさん=消費者Bさん=私たち、です。つまり、労働者は自分が作った自動車を、消費者として買い戻していることになります。そうなると、【図1】は【図2】のようなサークルに書き換えることができます。ここでは、お金と車が、「資本家」と「労働者=消費者」の間をグルグル逆方向に回転しています。そして、労働者が給料を受け取るタイミングと、消費者が代金を支払うタイミングで、資本家に利益が落ちる仕掛けになっています。一粒で二度おいしい、資本家の「搾取のシステム」です。
私たち労働者は、会社に入ってからハムスターさながらに延々とこのサークルの中を走り続けます。そして、疲れ果て、もう走る元気がなくなったところで定年退職です。あなたはこんな人生、納得できますか。それでもいいという人もいるでしょう。サークルの中にいる限り最低限の給料は確保できるので、安定した生活が保障されます。しかし、資本家の下僕として家畜として、一生をサークルの中で終えるのはご免という人もいると思います。では、そういう人はどうしたらいいのでしょうか?3つの方法が考えられます。
1つ目は、労働者が団結して資本家を追い出し、労働者の管理のもとでサークルを運営することです。つまり、社会主義革命です。でも、この方法が上手くいかないことは、歴史が証明しています。
2つ目は、労働者自ら資本家になることです。しかし、これも問題があります。資本家として成功するには、努力と才能、そして何より運が必要です。資本家は誰でもなれるわけでなく、また失敗したときのリスクがとても大きいのです。
そこで、3つ目の方法ですが、それは労働者が資本家のスポンサーになって、資本家が獲得した利益の配分を受けることです。つまり株主になることです。株式投資を通して資本家に資金を出資すれば、出資比率に応じて資本家から配当を受け取ることができます。株主となった労働者は間接的に資本家となることで、サークルを運営する側に回ることができます。そして「搾取のシステム」からの上がりを資本家とシェアすることになるのです。
今後、ますます資本家への富の集中は進行し、私たち労働者の処遇は悪化するでしょう。自分の身は自分で守るしかありません。株主となって「取られた分は取り返す」。これが私が株式投資をお薦めする第1の理由です。