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閑話休題

【閑】魚に学ぶ

私はダイビングの関係でよく海に行きますが、魚から多くのことを学んできました。今回は、人間にとっても教訓になる魚の話をしたいと思います。

1.ヤマメとサクラマス
ヤマメという魚をご存知でしょうか。渓流の女王といわれる20cm~30cmほどのサケ科の魚です。ヤマメは一生を川で過ごしますが、例外的に海へ下るものがいます。彼らは個体が小さいなどの理由で、他のヤマメの子供とのエサ取り合戦に敗れた子たちです。
海へ下ったヤマメの子は、川とは比較にならない厳しい環境に置かれます。捕食者に絶えず命を狙われます。しかし、栄養豊富な海で生存競争を勝ち残ったものは、サクラマスと名を変え体長70cmの高級魚に成長します。やがて彼らは生殖のため、生まれ故郷の川を遡上します。まさに「故郷に錦を飾る」です。
私たち人間も現状に行き詰ったときは、思い切って環境を変えてみるのも手です。リスクを取り広い世界へ打って出ることで、道が開けることもあります。

2.ヒラメとカレイ
ヒラメは白身の高級魚で、お刺身は上品な甘みがあり絶品です。一方、カレイの刺身は寿司ネタのエンガワ以外お目にかかりません。ヒラメとカレイは目が体の左側にあるか右側にあるかだけの違いで(左ヒラメに右カレイと言います)、ど根性ガエルみたいなぺっちゃんこの体付きはそっくりです。しかし、見た目のそっくりさと違い、その生態は大きく異なるようです。(ただマヌガレイのように目が左側にあるカレイも一部あり、余計にややこしくなります。)
ヒラメは獰猛な魚で、獲物となる小魚をときには中層まで追いかけて食べます。アスリートのように体は固い筋肉で覆われています。一方、カレイは海底でほとんど動かず、じっとしています。そして、貝やゴカイのような生物が向こうから近付いてくるのを待って食べます。そのため、カレイの体は柔らかい肉でできています。この生態の違いからくる肉質の違いが、ヒラメとカレイの調理法の違いとなります。
コリコリしたヒラメの肉は刺身によく合い、柔らかいカレイの肉は火を通した煮付けや唐揚げに適します。いずれも、それぞれの特性を生かした絶品の料理です。
人間も例え外見は似ていても、その内面は性別を含め思想、信条等違っている方が普通です。お互い内面は違うということを前提に、お互いを理解しようと努力すれば、世知辛い世の中もちょっとは住みやすくなるのではないでしょうか。

3.ニシオンデンザメ
皆さんは地上で最も長生きな動物は何かご存知ですか。植物であれば屋久杉のように数千年も生きるものがありますが、動物はそんなに長くは生きられません。しかし、北極海の深海に生息するニシオンデンザメというサメの仲間は、何と500年以上も生きるようです。500年前といいますと、関ケ原の戦いのさらに100年も前。織田信長も豊臣秀吉も生まれていません。
ニシオンデンザメがなぜこれほど長生きなのか。それは、ほとんどエネルギーを使わず生活しているからだそうです。世界で一番のろい魚という説もあります。
深海で低エネルギーでゆっくり成長し長生きする。世界一のろまでも、脱炭素、脱成長、SDGsと、時代の最先端を行く偉大な魚です。