オプションと聞くと何か難しいと感じる方が多いと思います。確かに、ブラックショールズモデルとかデルタ、ガンマと怖そうな専門用語がいっぱいです。でも、そんな言葉や理屈なんか知らなくても、遊び感覚でオプションを気軽に楽しむ方法があります。では、早速ご紹介しましょう。
オプションの組み合わせ戦略でストラドルというものがあります。満期と行使価格が同一のコールオプション(買う権利)とプットオプション(売る権利)を同数組み合わせて売買する戦略ですが、そんなことは忘れてもらって構いません。このゲームは、日経平均株価の翌日の寄値のレンジを当てるものです。例えば、翌朝の日経平均が30,000±X円のレンジ内で寄り付いたらストラドルの売り手の勝ちで、売り手が買い手からX円をもらいます。逆に、30,000±X円のレンジを外れ、30,000+Y円か30,000ーY円(Y>X)で寄り付いたら買い手の勝ちとなり、買い手が売り手からY-X円をもらうというゲームです。
具体例で説明しますと、翌朝の寄値が30,000±200円、つまり29,800円~30,200円のレンジ内で寄り付くとの内容で売り手と買い手が合意したとします。このとき、X=200円です。そして想定通り、レンジ内の29,900円で寄り付いた場合は売り手の勝ちとなり、売り手が買い手から200円をもらいます。しかし想定が外れ、30,500円(つまりY=500円)で寄り付いた場合は、買い手の勝ちとなり買い手は売り手から300円(Y-X=500-200=300)をもらう、こんな感じです。
この一連の取引をオプション風に言うと、権利行使価格:30,000円、期間:オーバーナイト、プレミアム:200円、のストラドルの売り(買い)、となります。
このゲームのユニークなところは、株や為替の普通の売買のように相場の上げ下げに賭けるのではなく、一定のレンジ内に収まるか収まらないかに賭ける点にあります。つまり、この例では日経平均株価の値動きの幅、つまりボラティリティに賭けるわけです。オプション取引がボラティリティトレードと言われる所以です。
通常の日経平均株価のオプションは東証に上場していますが、オーバーナイト(O/N)という超短期のオプションは上場していません。先程の例のように翌日の寄値あてクイズをやりたい方は、あなたの隣に座っている同僚に取引の相手になってもらいましょう、こんなふうに……。
日経平均が30,000円で引けた午後3時。あなたは同期の山田君に、おもむろにこう声をかけます。「なあ山田。O/Nの日経平均のストラドルを買いたいんだけど、いくらで売ってくれるかな?」すると、山田君は「何だよ急に。O/Nのストラドルを買いたいだと。そうだな、今夜は雇用統計の発表があるからNYは荒れるぞ。週明けの東京も波乱含みだよな。うーん。よし、800円だ。800円なら売ってやってもいいぞ。」あなたは「800円だと!いくらなんでも高すぎるよ。雇用統計は大方織り込み済み、波乱にはならない。せいぜい300円がいいとこさ。」 山田君は「ありえへん。 同期のよしみで頑張って500円だ。これ以上はまけられないからな。」 あなたは「分かったよ。500円で決めだ。」
果たして、週明けの東京の寄り付きや如何に。29,500~30,500円のレンジ内で寄り付いて山田君の勝ちとなるか、レンジを外れあなたの勝ちとなるか。
このように、ストラドルの売り手は日経平均がレンジを外れると負けになるので、できるだけXを大きくしたい。一方、ストラドルの買い手は、Xを小さくした方が勝つ確率が高くなります。Xを巡って売り手と買い手が交渉を繰り返します。そして、Xの水準は、売り手と買い手が日経平均の値動きの幅(ボラティリティ)をどう予測しているかに依存します。ボラティリティが大きいと予測すれば、Xの値も大きくなります。
さあ、あなたも手作りのオプションでボラティリティトレードを楽しんでみませんか。