2024年前半は、私にしては珍しく出入りの激しい?半年となりました。そこで、一度売買の状況を振り返っておきたいと思います。私は3月末で会社を定年退職するに伴い、前職のときから毎月積み立てていた企業型確定拠出年金(DC)を解約し、キャッシュ化した資産をNISAに移換して日本株を購入するつもりでした。DCではずっと日本株インデックス投信で運用していましたが、年明けから日経平均株価がまさかの急騰を演じたので、1月中旬に34,500円近辺でインデックス投信を売却しました。(①) 売却のタイミングについては、上記チャートでご覧のとおり最悪です。
日本株の購入原資は、DC資産と会社の退職金を合わせた600万円と、インフレ対策として預金から米国債に移すつもりだった500万円です。
DC資産を売却したまではよかったのですが、その後も日経平均は高値を更新し続け、下落の気配はありません。しかし、DC資産が私の口座に着金するまでの間に、さすがの日経平均も雲行きが怪しくなってきました。買いの準備が整った4月中旬以降、私は37,000円を当面の下値目途とし、38,000円割れの水準から買い下がることにしました。(②) このとき、ダイキン工業、小松製作所、メイテックの3銘柄を購入しました。そして、日経平均がさらに37,000円を割り込めば、追加の買いを入れようと思っていました。
GWには神田暴威の為替介入があり、円安もいよいよ終りかと思いましたが、僅かに円高に振れたのも束の間、気が付けばもとの円安に逆戻りです。私は、1ドル145円で4%クーポンの米国債を買う当初の計画を撤回し、高配当の国内株の購入に方針転換しました。でも、日経平均は大きく下落することもなく、私を嘲笑うかのように38,000円と39,000円の間を行ったり来たり。ここで私の悪い癖が出てしまいます。押し目を待つことができず、5月中旬にAGCとヤクルト本社(③)、6月中旬にホシザキと三菱HCキャピタル(④)を購入してしまいました。
結局、2024年前半に購入したのは、インカム狙いの高配当株として小松製作所、メイテック、AGC、三菱HCキャピタル。地元企業応援としてホシザキ。そして、キャピタル狙いの逆張りで買ったダイキン工業、ヤクルト本社です。売買タイミングはチャートでご覧のとおり、褒められたものではありません。ただ、これから10年、20年と長いお付き合いをお願いする相手としては、文句のない布陣が揃ったものと自負しています。(本当はMS&ADも買いたかったのですが……。上がってしまい買えませんでした。)
2024年前半の投資結果だけ見ると、私は今の相場にガンガンに強気だと思われるかもしれません。しかし、それは”我慢”の二文字を知らないお馬鹿の手許に、たまたまキャッシュがあったからに過ぎません。私は長期的には日本株はデフレ脱却期待を背景に上昇すると見ていますが、短期的には10%~20%程度の下落はいつあってもおかしくないと思います。
【株】祝! TOPIX最高値更新
2024年7月4日、東証株価指数(TOPIX)はバブル期の1989年12月18日につけた最高値(引値ベース)2884.80を34年ぶりに更新しました。市場関係者からは、東証の資本効率化改革への期待感の高まりとか、企業の第1四半期決算の結果先取りとか、トランプさんの再選を意識とか、色々な声が上がっていますが、いつものことですが本当のところは分かりません。ただ、日本株の上昇トレンドの底流に、デフレ脱却への期待があることは間違いありません。
日本企業の低生産性、経営者のアニマルスピリットのなさ、設備投資への消極的スタンス。家計の貯蓄性向の高さ。日本経済低迷の原因とされてきたこれらは全てデフレと繋がっています。海外から見れば、日本企業や家計のこういった行動は、特殊で非合理的なものに映ることでしょう。しかし、デフレを前提とすると、実は合理的であることが分かります。物価が下がり続ける世界、そして金利のない世界は、凍り付いた静の世界です。それがバブル崩壊後の日本経済の姿でした。そんな環境で生き残るためには、無駄なエネルギーは使わず、ひたすらじっとしていることが合理的な選択となります。
皆さんは、以前お話した世界最長寿の動物:ニシオンデンザメを覚えておいででしょうか。北極海の深海に生息するニシオンデンザメというサメの仲間は、何と500年以上も生きることができるそうです。ニシオンデンザメは、なぜこれほど長生きなのか。それは、ほとんどエネルギーを使わずに生活しているからです。
バブル崩壊後の日本は、まさに北極海の深海のような状況であったと言えます。縮み続ける凍えた市場を前に、投資を拡大する企業経営者はいません。海外に進出するか、さもなくば内部留保を積み上げた方が賢明です。家計も資産をキャッシュか預貯金で保有する方が得策であったといえます。
しかし、デフレ脱却とともに、日本経済は長年の呪縛を解かれることになります。物価が緩やかに上昇する世界、金利のある世界。そこは、動の世界です。企業経営者はアニマルスピリットを発揮し、積極的に設備投資を行って生産性の向上を図ります。家計も物価の上昇に負けないよう、預貯金を取り崩してリスク資産への投資を拡大するでしょう。
日本経済、復活。
【保】保険から投資へ
第一生命経済研究所は6月27日付けのEconomic Indicators資金循環統計(2024年1-3月期)の中で、「1-3月期の家計からの投資信託受益証券へのフローは3.5兆円のプラス。……現預金のフローは▲9.2兆円であり、一見すると現預金から投資信託へ資金がシフトしたようにみえるが、これは12月のボーナスが年始以降に支出されるなどの季節性によるところが大きい。むしろ目立つのは投資信託への流入拡大に対応して生命保険フローのマイナスが拡大している点。……家計は、「貯蓄から投資へ」というよりは「保険から投資へ」資金を動かしている。」と分析しています。
(チャート出所:第一生命経済研究所6月27日付けEconomic Indicators)
新聞や雑誌、ネット等は新NISA、オルカン一色であり、私は政府の意向どおり「貯蓄から投資へ」の流れが進行しているものと思い込んでいました。実際は「保険から投資へ」であったと知り、保険屋のオヤジとして大ショックです。ただ一方で、前職・前々職で銀行や証券会社を経験してきた身としては、「さもありなん」の思いもあります。
当ブログでもたびたびお話してきましたが、保険は万一のリスクに備え、低コストで資金を確保できる非常に優れた商品です。ただ、保険における低コストとは、保険事故の発生確率が低いタイプの保険商品に関する、高いレバレッジ効果(※)のことをいいます。そのため、発生確率の高い病気やケガ、介護、長寿といった事象を保険事故とする保険商品(医療保険、介護保険、年金保険等)は該当しません。
(※)「万一の場合に支払われる保険金÷払い込まれた保険料」のこと。保険料に比べ保険金が大きいほど高レバレッジ、低コストとなります。掛け捨て型の定期(死亡)保険や自動車保険、火災保険等の損害保険が該当します。
また、一般的なコストとして保険会社に支払う報酬についても考慮する必要があります。保険商品には医療専門職による被保険者の健康状態のチェック等、他の金融商品にはない業務領域が存在するため、保険商品の報酬は他の金融商品に比べ割高となります。終身保険や養老保険、学資保険等の貯蓄型といわれる(資産運用を兼ねた)保険商品は、(純粋な運用商品である)預貯金や投資信託よりも高い報酬を負担しなければなりません。
このあたりの事情は従来から専門家には認識されていましたが、今ではSNS等での情報発信により一般の方々も知るところとなりました。充実した公的な健康保険制度があるので、民間の医療保険やがん保険には無理に入らなくてもいいとか。運用と保障を兼ねた貯蓄型の保険はやめて、運用は投信、保障は掛け捨て型の保険と分けて入ろうとか。若い世代を中心に、スマートな保険商品との付き合い方が広まっているように感じます。「保険から投資へ」。保険屋のオヤジとしては憂慮すべき事態ですが、一国民としては歓迎すべきところなのかもしれません。
【不】もし10億円あったら
最近あるFIRE系ブログを見ていたら、「もし10億円あったらどんな運用をするか?」という興味深い記事を目にしました。私が10億円なんて大金を手にする可能性は未来永劫0%ですが、たまにはそんな妄想の世界に心を遊ばせてみるのも悪くありません。
FIRE界隈でよく語られるのが、1億円の資産を4%で運用できれば年間400万円の収益を稼げるので、働かなくても生活ができるという話です。その場合、4%の運用は、高配当の株式や投資信託で実現するという設定が多いようです。今なら、為替リスクの分散と高金利が得られる米国債に投資する手もありかと思います。これが、10億円となると、年間の収益は4000万円となります。都心一等地のタワマンに住んで、真っ赤なフェラーリに乗って、週末はクルーザーで東京湾パーティー……。そんな夢のような生活が現実のものとなります。トレビアーン! すいません。ちょっと興奮し過ぎました。
妄想の世界から現実に戻ります。さて、この10億円。はたして、使い切っていいものでしょうか? もし子供がいたならば、子供に資産を残したいという人もいるでしょう。資産を次世代に承継するかしないかで、運用の方向性は大きく変わってきます。次世代への承継を考えた場合、資産運用は資産を増やすという単純なゲームから、資産を増やしつつ同時にインフレや相続のダメージから資産を守るという複雑なゲームへと変貌します。そして、資産規模が大きくなるにつれ、後者の色彩が濃くなります。
野村総研のリポート「日本の富裕層の特殊性」(野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部 2023年)によると、日本の保有資産上位1%の総資産平均は約4億円だそうですが、このうち77%が不動産とのことです。資産規模がある程度以上になると、資産運用の目的はインフレ対策と相続対策が主となり、結果、お金が不動産に流れます。富裕層は運用収益(賃料収入)を狙って不動産投資を行うのではなく、インフレに負けない不動産価格の上昇、あるいは、相続税評価額の圧縮を目的に不動産に投資します。
冒頭のブログ主殿は、10億円の投資対象として不動産を候補に上げていましたが、私は今は一般ピープルが資産増額ゲームとして不動産に手を出すタイミングではないと考えています。なぜなら、不動産価格の上昇によって、足下の利回り水準が低すぎるからです。現在、首都圏の築浅収益物件の表面利回りは、せいぜい4%程度だと思います。ここから、客付けコストや運用経費、管理費、固都税等を差っ引くと、実質利回りは3%程度でしょう。全額キャッシュを投入し、手間暇かけてこの利回りなら、JREITや高配当株の方がよほどましです。
従来は借入れによるレバレッジで利回りを膨張させ、キャッシュ・オン・キャッシュ(CCR)ベースで高利回りを実現するスキームが可能でした。しかし、昨今、金融機関の不動産投資案件への融資スタンスは硬化しています。新築/築浅区分を除き、一般ピープルが借り入れによる不動産投資を行うのは、事実上不可能な状況です。
もし10億円あって単純な資産増額ゲームを行うのなら、日本株と米国株の分散投資が流動性の面からも一番いいように思います。
神田暴威の為替介入により一旦は円高に向かったドル円相場ですが、足下では再度160円台に突入、37年ぶりの円安水準となっています。円安は日本経済にとってプラスなのか、マイナスなのか、意見が分かれるところですが、最近は円安がインフレを助長するとの理由から、円安悪玉論が優勢な勢いです。私は為替の素人ですので、いずれが正しいのか判断する資格も能力もありません。ただ、長年、株式と債券を通じて為替を見てきた者として、今後のドル円の望ましい方向性について考えをまとめたいと思います。
上に1971年以降のドル円のチャートを掲げましたが、2012年のアベノミクス開始までの期間、固定相場制当時の1ドル=360円からの円安修正・円高進行の流れであったことが分かります。途中で円安に転じる場面もありますが、(1985年のプラザ合意を除き)経済ショックや地政学リスクの高まりによって、ことごとく円高に引き戻されています。
変動相場制の世界では、通常、経済ショックに陥った国は、自国通貨安による輸出拡大によって経済の回復を図ります。しかし、我が国の場合、チャートでご覧のとおり、平成バブル崩壊から、アジア通貨危機(※)、リーマンショックと、経済ショックのたびに急激な円高に見舞われてきました。円高に振れた理由はいくつか考えられます。日本企業や投資家が海外資産を国内に引き揚げたためとか、円キャリー取引の巻き戻しとか、欧米通貨への不安心理の高まりによる円買いとか。でも、正直、理由はどうでもいいです。円安であるべきときに円高であったこと。そして、それが日本経済にとって致命傷となったこと。ここが問題なのです。2008年のリーマンショック以降、超円高で日本の製造業が急速に国際競争力を失う一方、韓国のサムスンや台湾のTSMC等が自国通貨安を武器に急速に力を付けていきました。経済ショックに加えての円高。この二重苦が、今日の日本経済の停滞を招いた元凶です。
(※)このとき、日本は山一証券、拓銀、長銀、日債銀と続く金融機関破綻による金融危機により、亡国の一歩手前まで追い込まれました。韓国は財政破綻し、IMFの管理下に置かれました。
しかし、ドル円のトレンドは変わりました。足下では米国の利下げ時期が取り沙汰されていますが、いまだに円安トレンドに転換の兆しはありません。私は、日本企業はこの千載一遇のチャンスを逃すべきではないと考えます。円高に対応するため大手企業の多くが海外展開を進めた結果、いまさら円安と言われてもメリットは薄いとの意見もあります。でも、中小企業を含めたオールジャパンで見れば、まだまだ円安メリットは大きいはず。今こそ、韓国や台湾企業に奪われた、半導体を初めとする工業製品のシェアを挽回するチャンスです。
結局のところ、介入によって円安を止めようとしても、基礎的な経済条件に変化がなければ効果は長続きしません。円安悪玉論をヒステリックに叫ぶのではなく、円安による輸出競争力の強化を通じて日本経済の潜在成長力を高め、結果として円高を呼び込むという中長期目線での取り組みが必要なのではないでしょうか。
【年】厚生年金のパフォーマンス
以前、投資家目線で考える公的年金で厚生年金と国民年金の投資利回りについて考えましたが、2024年の年金改正を見据え、改めて厚生年金(※1)のパフォーマンスについて考えてみたいと思います。2024年改正では国民年金(基礎年金)の加入期間が40年から45年に延長される見込みであり、また先々、国民年金の第3号被保険者や厚生年金の配偶者加給年金は廃止される可能性が高いです。そこで、今回はこのあたりの事情も織り込んでいきます。
(※1)以下では老齢厚生年金に限定しています。障害/遺族厚生年金には言及しません。
まず、厚生年金の給付額(年額)ですが、ザックリ、「年収累計×0.55%」で計算できます。正確には「平均標準報酬額×5.481/1000×被保険者期間の月数」となりますが、興味のある方はご自身でネット等でご確認下さい。今、20歳から65歳までの45年間会社に勤務し、入社から退職までの平均年収が400万円(税金・社会保険料の控除前ベース)のA氏を想定します。そこで、A氏の厚生年金の額を計算してみると、400万円×45年×0.55%=99万円、となります。これとは別にA氏には国民年金(基礎年金)が支給されます。
基礎年金は、「81万円×加入年数/40年」で計算できます。国民年金の加入期間が45年に延長となると、81万円×45年/40年=91万円、の基礎年金を受け取れる計算です。したがって、A氏は厚生年金と基礎年金を合わせて年間190万円(=99万円+91万円)を、65歳から終身にわたって受取ることになります。ポイントは、厚生年金の金額を計算する際の年収累計が、税金・社会保険料控除前の金額である点です。憶えておいて下さい。
次に、厚生年金の保険料についてです。厚生年金の保険料率は18.3%ですが、これを社員と会社が折半して負担します。ですので、年収400万円のA氏が負担する保険料の金額は、400万円×18.3%÷2=36.6万円(年額)となります。尚、この金額は、全額社会保険料控除の対象です。そのため、税金の戻りを考慮した実質的な保険料負担は、36.6万円×(1-0.15)=31万円(※2)、となります。
(※2)A氏の所得税を5%、住民税を10%と仮定。
では、毎年31万円ずつ資金を拠出して45年間運用し、その後、仮に65歳から85歳までの20年間にわたって毎年190万円(計3,800万円)を取り崩す場合、45年間の運用(複利)利回りは如何ほどか? 減債基金係数という数字を使って計算すると、約4%となります。当然、85歳より長生きすれば、利回りは上がっていきます。どうですか。4%という数字、私はかなりいけてると思います。なにせ、ほぼノーリスクですから。日本株の期待リターンが5%程度であることと比較しても、結構魅力的です。これだけのパフォーマンスが可能なのは、厚生年金の保険料の半分を会社が負担しているからです。
労働者にとって厚生年金に加入することの意味は、国家権力を援用して資本家に保険料の半額を強制的に負担させることにあります。会社員は是非この権利を行使したいもの。厚生年金は人生100年時代を乗り切るうえで、必須の資産形成ツールです。(平均年収や勤務年数によって厚生年金の利回りは変動します。平均年収400万円、45年勤務以外のケースでの利回りを知りたい方は、お手数ですが管理人までお問い合せ下さい。) 尚、投資家目線で考える公的年金では国民年金の加入期間を40年、扶養配偶者有り、運用利回りは単利、の前提で利回り計算しているため、今回の結果とは相違があることをお断りします。
私は毎朝、ある女性行政書士のブログを訪問するのが日課となっています。それは、私がいつか行政書士の試験にチャレンジしたいと思っていることもありますが、彼女のちょっと斜に構えた、そしてちょっと皮肉めいたドライな語り口が無性に好きだからです。昨日の朝もブログを訪問し、いつものように最新の記事を読み始めたのですが、何ともいえない違和感を感じました。記事はこんな書き出しで始ります。「そういえば、お札を新しいものに替えていなかった。外出したついでに神社に寄って、お札を新しいものに替えよう。」 私はてっきり、お札(さつ)を新札に交換する話かと思いました。テレビで諭吉から栄一さんにチェンジするというニュースをやってましたから。(※) でも、それなら行き先は銀行のはず。なんで神社なの? 確かに神社ならお賽銭のお札はいっぱいありそうだけど、旧札を新札に両替してくれるなんて聞いたことないし……。これが私の感じた違和感の正体です。そして、私の鈍い脳みそが、お札=おふだ、であると認識するまで10分かかりました。
(※)新札の発行は7月3日です。
でも、言い訳するわけじゃありませんが、お札(さつ)とお札(ふだ)、この二つをフリガナなしで並べられたら、正直、区別つきませんて。悔しいのでググってみたら、私と同じようなコメントがいっぱい出てきました。中には、最中(もなか)と最中(さいちゅう)も区別できないぞ、との意見もありましたが、こちらは前後の文脈から判断できそうです。
お札(さつ)とお札(ふだ)の話に戻ります。この二つが同じ文字なのは、もともとの由来が同じだからだそうです。(ネット記事の受け売りですが。) 現代社会では、モノやサービスの代金はお札(さつ)で「支払い」ますが、これは「お祓い」に由来する言葉とのこと。その昔、神社では人の罪やケガレのお祓いをヌサという紙(または麻・木綿)を使って行ったあとで、領収書兼お守りとして依頼人にお札(ふだ)を渡していました。そして、このヌサが現在のお札(さつ)に発展したと考えられています。このように、お札(さつ)もお札(ふだ)も、人の罪やケガレを祓うことに関係したものであり、言ってみれば双子のような関係だったのです。今ではお札(おさつ)は、人間の「金銭欲」や「支配欲」といったケガレの支払いに充てられています。お金持ちはおのれのケガレを落とすため、必死で稼いだお金を必死で使っているわけです。そう思うと、意外にお金持ちも辛いかもしれませんね。
【株】あかん、買ってもうた
わたくし、いつぞやは「為替が145円になったら米国債を買いたい」などと戯言を申しておりましたが、いつまでたっても一向に円高になる気配はございません。そうこうしているうち、ソフトバンクグループ(SBG)がクーポン3%の円建て社債を発行したのを見て、わたくし、為替リスクを取ってクーポン4%の米国債を買うのがバカバカしくなってきちゃいました。でも、SBG債は完売御礼のようですので、今からでは入手不可能です。そこで、仕方ないから高配当株を買うことにしたんです。そりゃ、わたくしにも、足元の株価水準が高いことくらい分かります。なので、相場が深押しするタイミングを待って、買い出動するつもりでございました。昨日までは……。
「三つ子の魂百まで」とはよく言ったものでございます。我慢ができないという子供の頃からのわたくしの性格は変わりません。結局、相場の下げを待ちきれず、今日、買っちゃいました。8593三菱HCキャピタル。日経平均39,000円どこで。あーあ、やっちまった。
明日はメジャーSQに、日銀金融政策決定会合の結果発表。大ケガにならないことを祈るのみでございます。
【株】メジャーSQの前に
6月10日に日経平均株価は前日比+354円の39,038円と、久しぶりに39,000円台で引けました。株価上昇の特段の材料がないにも関わらずです。日経新聞は本日(6月11日)朝刊で、157円台への円安を見て海外短期筋が株価指数先物へ買いを入れたと解説していますが、何故に今買う?との疑問は解けません。さらに海外時間に日経平均先物は39,200円まで上昇しています。
この不可解な上げについて、やはり今週末のメジャーSQを抜きには語れません。これまでもメジャーSQの前後でオプション・先物の売り方と買い方の思惑が交錯し、相場が乱高下する場面がたびたびありました。
長期個人投資家としては、ここで変に強気になって相場に付いていくことは慎み、むしろ相場の急落に備え下値で買い指しを入れるくらいで丁度いいと思います。
【年】2024年、公的年金はどう変わる?
2024年は5年に1度の財政検証(※1)の年であり、公的年金(厚生年金と国民年金)にとって重要な一年となります。2004年のマクロ経済スライド(※2)の導入以降、公的年金の保険料は一定の水準(厚生年金:18.3%、国民年金:16,900円)に固定されていますが、一方、年金額は調整(減額)が続く結果、特に国民年金(基礎年金)が将来的に大きく落ち込む見込みとなっています。そこで、今回の財政検証では、国民年金(基礎年金)の大幅な減少を抑えるための方策を、国民の納得を得られる形で打ち出せるかがポイントとなります。厚生労働省は財政検証において、次の5項目のオプション試算(※3)を行う予定です。
①被用者保険の適用拡大
②国民年金の45年化
③国民年金と厚生年金の調整期間の一致
④在職老齢年金の廃止
⑤標準報酬月額の上限引き上げ
では以下、①~⑤について順に見ていきましょう。
(※1)公的年金の長期にわたる財政の健全性をチェックするために行う検証のことで、社会・経済の変化を踏まえながら原則5年ごとに実施される。
(※2)少子高齢化が進行しても財源の範囲内で給付を賄えるよう、財源に合わせて給付の水準を自動調整(減額)する仕組み。
(※3)財政検証に加えて行われる、年金制度の課題の検討に役立てるための検証作業。オプション試算の内容に沿って、公的年金の見直しが行われる。
①被用者保険の適用拡大
被用者保険とは会社員や公務員が加入する年金のことで、つまりは厚生年金のことです。2020年の年金制度改正法により、短時間労働者に係る被用者保険の適用(人数)要件が、2022年10月から101人以上へ、2024年からは51人以上へと拡大されてきました。また、個人事業所の適用業種についても、2022年10月から弁護士・税理士等の士業にも拡大されています。今回、これら人数要件の拡大を一層進めようというものです。場合によっては、人数規模を問わず全事業所が加入対象となったり、短時間労働者の勤務時間週20時間以上、標準報酬月額88,000円以上という加入要件が撤廃される可能性もあります。要件の緩和・撤廃によって、被保険者数の増加⇒保険料収入の増大により、年金財政の健全化促進を図る狙いがあります。
②国民年金の45年化
現在、自営業者やフリーランス等は国民年金に20歳から60歳まで加入し、保険料を40年間払うことになっています。これを20歳から65歳まで加入し保険料を45年間払うことに変更し、年金額の増額を図るものです。国民年金の保険料(月額)は令和6年価格で16,980円なので、支払い期間が5年延長すると保険料は累計で、16,980円×12ヶ月×5年=1,018,800円、と約100万円増えることになります。(ただし、国民年金保険料は社会保険料控除の対象なので、所得税+住民税の税率が30%の人で実質負担増は70万円ほどです。) 他方、受け取れる国民年金(基礎年金)額は令和6年価格で816,000円ですが、保険料納付期間の延長により12.5%(45年/40年=1.125)増の918,000円となります。約10万円の増額です。メディア等では保険料負担の100万円増ばかりクローズアップされていますが、年金の受取り額が増える点にも注目すべきです。5年分の保険料の実質増加額を70万円、1年分の国民年金の実質増加額(税・社会保険料控除後)を9万円とすると、70万円÷9万円=約8年で元が取れる計算です。決して損な話ではないと思います。
③国民年金と厚生年金の給付調整期間の一致
マクロ経済スライドによる給付水準の調整は、国民年金と厚生年金がそれぞれの勘定で財政均衡するまで続きます。国民年金は厚生年金に比べ財政状況が悪いため調整期間が長期化(20年以上)し、結果、国民年金(基礎年金)の将来の給付水準は厚生年金に比べ相当低いものとなります。2019年財政検証において、厚生年金の給付水準は2047年に向け実質ベースで約2割の減少見込みでしたが、国民年金(基礎年金)では約3割の減少見込みとなっています。そこで今回、国民年金と厚生年金で別々に財政の均衡を目指すことを止め、国民年金と厚生年金を一体で財政の均衡を目指す形に改めようというものです。これにより、国民年金(基礎年金)の調整期間は10年以上短縮され、現状の見通しよりも高い水準で給付が均衡します。一方、厚生年金の調整期間は長期化し、現状の見通しよりも低い水準で給付が均衡することとなります。
④在職老齢年金の廃止
在職老齢年金(在老)とは、働きながら厚生年金を受給している人が、厚生年金の月額(基本月額)とボーナスを含む年収の月額相当額(総報酬月額相当額)との合計で50万円を超えた場合、超えた額の1/2に相当する厚生年金を支給停止する仕組みのことです。(※4) (国民年金は支給停止の対象となりません。)この仕組みは、高齢者の就労意欲を削ぐと以前から批判されており、見直しが求められていました。また、政府は受給期間を遅らせることで年金額を増額する「繰り下げ受給」を推奨していますが、在老で支給停止された部分は繰り下げの対象外です。これは「繰り下げ受給」の増額効果を減退させるものであり、政府の方針に逆行しています。私は在老は今回、全面的に撤廃されるべきと考えます。
(※4)支給停止額=(基本月額+総報酬月額相当額ー50万円)×1/2
⑤標準報酬月額の上限引き上げ
標準報酬月額とは、厚生年金保険料の額を計算する際の元となる給料(保険料額=標準報酬月額×保険料率)のことで、被保険者(会社員や公務員)の4月~6月の給料の平均額から決定されます。標準報酬月額の決定にあたっては、厚生年金の全被保険者の標準報酬月額の平均の2倍を上限(現行65万円)とするルールがあります。今回、この上限を引き上げようというものです。政府は、上限に抵触している高収入の会社員に現行の上限を超える高額な保険料を負担させれば、年金の財源を増やすことができます。高収入の会社員も年金額が増えるので、ウィン・ウィンとなります。ただし、保険料の半分を負担する企業側の反発が予想されます。
以上、2024年の財政検証において見直しが予想される5項目について見てきましたが、今後①~③を中心に具体化に向けた検討が進められると思います。