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【株】投資信託を考える

これまで当ブログをご訪問いただいた方は、私が投資信託に言及しないことに疑問を持たれたかもしれません。そこで、今回は私が(国内)株式投信について思うところをお話したいと思います。
一般に株式投信のメリットは、①小口の資金でも投資できる、②(アクティブ投信の場合)専門家の運用力に期待できる、③NISAやiDeCoといった税制優遇制度を利用できる、などです。

以下では、特に②について堀り下げたいと思います。投信を購入する個人投資家は、専門家の卓越した運用力に基づく良好な運用結果を期待します。当然、投信を運用する専門家もその期待に応えようと努力するわけですが、彼らの目指している努力の方向性を確認しておく必要があります。個人投資家は、専門家にプラスの収益を上げてほしいと思っています。しかし、専門家の目指す方向は、個人投資家の思いとは必ずしも同じではありません。彼らが目指しているのは、東証株価指数(トピックス:TPX)や日経平均株価といったベンチマーク(※)に勝つことです。TPXがー10%のときに投信がー8%であれば、彼らの世界では勝ちとなります。つまり、投信が目指すのはベンチマークに対する相対的な勝ちであって、プラス収益を上げる絶対的な勝ちではないということです。
(※)ベンチマーク:運用実績を比較するための指標

そして、もう1点注意が必要なのは。投信が対ベンチマークでの勝ちを狙う以上、ベンチマーク自体の収益率が低下すると、投信の運用実績(絶対値としての運用実績)も引きづられて低下してしまうことです。
現在、TPXは2000社を超す東証1部上場の全企業を対象としていますが、TPXに投資することは日本経済全体に投資することにほぼ等しいです。平成バブル以降、日本の経済成長率はずっと1%近辺で低迷しており、TPXの期待収益率に下方バイアスがかかるため、投信の運用実績も悪影響を受けます。TPXをベンチマークとした日本株投信を買う場合、泥舟の日本丸と心中する覚悟が要ります。

では、これら問題含みの日本株投信に対し、個人投資家が取れる行動は何があるのでしょうか。私が今思いつくものは、以下の通りです。
1.低成長の日本経済の影響を受けない、成長力のある外国株投信を買うことです。最近、日本をパスして米国株式に若い方たちの投資マネーが流れているようですが、理にかなった賢明な行動です。
2.日本株投信でも、TPXのような包括的な指標でなく、対象を限定した指標をベンチマークに設定した投信を買うことです。例えば、成長株に限定した投信や、小型株に限定した投信、あるいは業種を限定した投信等です。尚、成長株投信の看板を掲げたものでも、ベンチマークがTPXとなっているものはNGです。ETFと言われる上場投信であれば、規模別や業種別等の豊富な指標のバリエーションから、投信を選択することができます。
3.絶対収益を追求する投信を買うことです。対ベンチマークでの相対的な勝ちではなく、絶対値としてのプラス収益を目指す投信です。ただ、絶対収益追求ファンドの中には、先物や空売り等の投資手法を使ったり、不動産や未公開株、バンクローン等に投資したりと、純粋な株式投信と言えないものが多いです。また、信託報酬率が3%を超えるものもあり、要注意です。
優秀なアナリストによって厳選された優良企業への投資で絶対収益を狙っていく、ノンベンチマーク型の株式投信があれば買ってみたいのですが、私が勉強不足なのか、未だお目にかかったことがありません。そのため、私は業種別代表企業の個別株を、押し目を待って泥臭く拾うことにしています。

先程お話した国内株式投信の抱える問題点は東証も自覚しており、TPXを成長力ある企業を対象とした指標に見直す予定です。2022年4月4日に東証は市場の再編(プライム、スタンダード、グロース)を実施します。これまで、TPXの構成銘柄は、東証1部に上場する全企業が対象でした。しかし、市場再編後は市場区分に関係なく、基準を満たした企業のみが選出される形に変更されます。TPXが選抜型になることで優良企業のみが算出の対象となり、指標の質の向上が期待されます。
今後、TPXが成長性の期待できる指標=インデックスとして生まれ変わったなら、私も個別株派から投信派へ宗旨替えするかもしれません。