私は2024年3月末をもって会社を定年退職し、引き続き4月1日から嘱託社員として勤務しています。年収は税金・社会保険料込みで280万円となります。したがって、月収は280万円÷12=23万3千円。ひと月に20日働くとして、日給は23.3万円÷20=11,700円。1日に8時間働くとして、11,700円÷8=1462円。私の時給は1460円となります。大学生の娘のバイト代と変わりませんが、手取りベースでは負けます。そして、私は何事もなかったかのように、今までと同じ職場で同じ仕事を粛々とやっています。
退職の日、嘱託となる私に上司が温かい言葉をかけて下さいました。「今までと変わることなく、志を高く持って職務に当たるように!」「それはあなたではなく私が言うせりふでは?」と思いましたが、黙っていました。
こう見えて、私も社労士の端くれです。長澤運輸事件や名古屋自動車学校事件に関する判例についての認識はあります。でも、ここは大人の対応をすべき場面なのでしょう。あと5年、お世話になるのですから。
【不】株式投資家から見た不動産投資
株式投資と不動産投資の比較は当ブログにおいて、過去に何度か行ってきましたが(不動産と株式を比較してみた/不動産とJREIT、そして株式/不動産VS株式、通説と現実のギャップ)、改めて株式投資家から見た不動産投資の特性を考えてみたいと思います。中堅サラリーマンが億円単位の借入れを起こして一棟マンションをバンバン買いまくる時代は過去のものとなり、今や不動産は企業オーナーや地主、高給サラリーマン等の富裕層限定の投資商品となっています。現在、彼らは都心のRCマンションを十億円ロットで買いまくっています。一般ピープルにはとても手の届かない価格帯ですが、島国日本で希少価値の高い都心の物件はインフレの後押しもあり、今後まだまだ上がると見ているのでしょう。
これらの物件を買う人には賃料収入(インカムゲイン)という発想はなく、値上がり益(キャピタルゲイン)だけを考えているはずです。株式投資家から見ると、この投資手法はグロース株(成長株)投資に相当します。グロース株投資では配当は考慮せず(高配当のグロース株など聞いたことがありません)、株価の値上がりをひたすら追求することになります。
では、資金力に乏しい一般ピープルは不動産投資に手を出すことはできないのでしょうか。不動産市場が高値圏にあり、かつ銀行が不動産融資に慎重スタンスな今、私は一般ピープルが無理をして不動産投資を始めるタイミングではないと考えます。不動産アナリストの幸田昌則氏は近著「不動産バブル静かな崩壊」(日本経済新聞出版)の序文で次のように述べ、不動産市場の今後に警鐘を鳴らしています。「足下の実態を見ると、すでに22年の夏頃から大都市圏では流通市場だけでなく、不動産業界内にも住宅・投資物件・土地などの在庫(売れ残り)が、月を追うごとに増加している。業界内の在庫水準は、2008年のリーマンショック時の水準を15年ぶりに超えてしまった。」 幸田氏の言うとおりバブル崩壊とまでは行かなくても、不動産市場に調整が入れば不動産価格が下がって賃料利回りが上がり、一般ピープルにももう少し買いやすい状態となるでしょう。(※)
不動産投資は都心の駅近物件に限ると主張する関係者もいますが、何もそんなピカピカ物件に拘る必要はありません。将来的に賃貸ニーズが期待できる地方都市もあるはずです。そういった地方都市の中古木造一棟もので、コスト控除後キャッシュフロー(ATCF)で採算の合う高利回り物件を購入すれば、物件が値上がりしなくても投資は成り立ちます。中古木造なら価格、コストともRC造・鉄骨造より抑えられるので、一般ピープルにもアクセスしやすいです。株式投資家から見ると、この手の投資手法は配当狙いのバリュー株(割安株)投資に相当します。私は一般ピープルが目指すべき不動産投資は、このバリュー株投資タイプだと思います。ただ問題なのは、今の市場環境では採算が合う価格帯の物件が見つからないこと。銀行から融資を引きにくいこと。そして、中古なだけに物件の保全状況の目利きが問われることです。
株の世界では「休むも相場」という格言があります。今は無理をせず、物件購入に向けた頭金の準備と、目利きの「目」を養うときです。
(※)飯田グループHD<3291> は4月8日大引け後に業績修正を発表しました。24年3月期の連結最終利益を従来予想の700億円→310億円(前の期は755億円)に55.7%下方修正し、減益率が7.4%減→59.0%減に拡大する見通しです。これは、同社が余剰在庫処分のため、販売価格の調整により早期販売を行ったためです。
【株】債券という商品
債券という商品は、私たち個人投資家には普段あまり馴染みがありません。しかし、確定拠出年金(DC)で利用するバランス型投信や、会社で加入する確定給付企業年金(DB)では必須の投資対象となります。そこで、今回は債券について、まとめてみたいと思います。債券の特性は預金や株式と比較するとはっきり分かるので、まずは預金と比較してみましょう。
両者に共通しているのは、どちらも元本保証の安全資産だという点です。満期まで持っていれば、ちゃんと元本が返ってきます。(ただし、債券の発行体が倒産したら元本は返ってきません。) それから、固定型と変動型の金利(クーポン)がある点も共通しています。(以下では固定型の債券を前提とします。) 一方、異なるのは、預金は売買できないのに債券は売買できる点です。債券は小切手や手形と同じ有価証券であり、主に証券会社の店頭で売買が可能です。また、預金は満期までの期間が最長でも10年となりますが、債券は償還まで40年の超長期債もあります。(永久債といって満期のない債券もありますが、ここまでくると債券というより株式に近い商品となります。)
次に、株式と比較してみます。どちらも売買できるという点では共通していますが、株式に元本保証はなく満期もありません。債券の金利(クーポン)は固定ですが、株式の配当は企業の業績によって変動します。また、債券と株式では逆の値動きをするという特徴があります。例えば、景気が悪化すると債券価格は上昇するケースが多い反面、株式価格は下落するケースが多いです。(両者は常に逆の動きをするわけではありません。)
世の機関投資家は、株式と逆の動きをする債券の特性を利用するため、債券に投資をします。(※) 債券を持っていれば株式が下落しても、損失の一部を債券の上昇で相殺できるからです。そういう意味で、債券は機関投資家にとって株価下落に備えた保険といえます。(反面、株価が上昇すれば債券価格は下落し損失が発生します。この損失が保険料=コストになります。) ここで、毎年5%以上のリターンを目指している年金基金があったとします。この基金が株式に100%投資した場合(ポート①)、期待リターンが7%、リスクは15%とします。そして、株式と債券に分散投資した場合(ポート②)は、期待リターンが5%、リスクは10%とします。はたして年金基金はどちらのポートフォリオを選ぶでしょうか? もし、この基金が5%以上のリターンを安定的に上げたいと考えるのであれば、きっとポート②を選択するでしょう。
(※)債券は金利商品としての性格もありますが、現状では金利が低すぎて金利商品としては魅力がありません。
このように、機関投資家にとってリスク抑制ツールとして有益な債券ですが、私たち長期個人投資家にとっても同じように有益と言えるのでしょうか。結論から言いますと、私は個人投資家にとって債券は無用の長物だと思います。なぜなら、個人投資家は、債券よりもはるかに強力で低コストのリスク抑制ツールを持っているからです。それは時間です。個人投資家は他人の資産を預かって運用しているわけではないので、1年毎にリターンを確定する必要はありません。また、コストを払って年度リターンのブレを抑える必要もありません。リターンが大きく落ち込む年があっても、それは評価上の損失に過ぎません。長期の時間軸の中でやがて株価は上昇トレンドに回帰し、評価損は解消され累積リターンはプラスに転じることでしょう。極論すれば、私は長期個人投資家はリターンだけを見て投資すれば十分と考えます。それでもリスクが気になるという方は、資産の一部を債券でなくキャッシュ(預金)で保有すべきです。
【おまけ】債権という商品
債券と間違えやすい商品に債権があります。日本語ではどちらも「サイケン」と発音し区別がつきませんが、英語では債券はBond、債権はLoanとなり、金利系商品という以外は別ものです。債券は「発行体(国や地公体、企業など)が資金調達するために発行する有価証券」であるのに対し、債権は「個人や法人が契約や法律に基づいて他者に対し債務の履行(例えば金銭の支払い)を請求できる権利」を言います。何となく商品性も似てますが、法的性格は全く別の商品です。投資家を自負する方は混同しないようにしましょう。
【株】インフレと株高の関係
3月19日に日銀は賃金の上昇を伴う2%の物価安定目標の実現が見通せる状況になったとして、マイナス金利政策を解除しました。事前にはマイナス金利解除により為替が円高に転じるとの観測もありましたが、3月27日には一時1ドル=152円近辺まで円安が進行しました。慌てた財務省は日銀・金融庁と3者会合を開いて介入をちらつかせながら、必死で市場を牽制しました。一方、円安を見た株式市場は、再度41,000円トライの様相です。ここもとの株高の根底には、日本経済のデフレ脱却→インフレ転換期待があると言われています。でも、インフレになればモノの値段が上がって国民の生活は苦しくなるはずなのに、なぜ株は上がるのでしょう? 今回は、この点について考えてみたいと思います。
今、黒字企業A社と赤字企業B社があるとします。直近決算ではA社が売上100・売上原価80で粗利が20、B社は売上60・売上原価80で粗利が▲20とします。A社、B社とも、今期は原材料費が10%上がったので、製品価格を10%値上げしました。(尚、両社とも製品価格の値上げに伴う売上数量の減少はないものとします。) この場合、A社、B社の今期決算はどうなるでしょうか。
A社の売上は100×1.1=110、売上原価は80×1.1=88、で粗利は110-88=22となり前期比+2の増益です。B社の売上は60×1.1=66、売上原価は80×1.1=88、で粗利は66ー88=▲22で前期比▲2の減益です。このように同じ10%の原材料費の上昇でも、黒字企業には増益要因として、赤字企業には減益要因として効いてくることが分かります。また、原材料費の上昇を製品価格に転嫁できない黒字企業や、製品価格に転嫁できても売上数量の減少を招いてしまう黒字企業にとっても、原材料費の上昇は減益要因となります。
このように、インフレは競争力のある黒字企業にとっては利益を伸ばすチャンスとなる反面、競争力のない企業、赤字企業にとっては業績が悪化するきっかけとなります。マクロ的な視点で見ると、インフレは企業の優勝劣敗を明確化し、ゾンビ企業を淘汰することで、経済の効率性・生産性をアップします。
海外投資家は、東証が主導する企業経営改革に加え、インフレによる日本企業のパフォーマンス向上に期待し、日本株を買っているものと思われます。
逆に、デフレはぬるま湯の中で競争力のない企業や赤字企業を温存し、経済のパフォーマンスを低下させます。デフレ下の日本で、海外投資家が日本株を売り続けたのは当然のことです。
【株】私の個別株投資遍歴
今日は私の個別株の投資遍歴についてお話します。はたして、私の運用力はいかほどか。日経平均株価に勝っているのか。ちょっと恥ずかしいですが、全部見ていただきましょう。
私が初めて株式を購入したのは、1997年10月のJR東海株の第一次売り出しのとき。売り出し価格は忘れてしまいましたが、今でも保有しています。その後、1990年代は短期の売り買いを繰り返していましたが、損失を出した記憶しかありません。(当時の記録は残っていません。) 1998年の金融恐慌の際は、額面(50円)を割り込んだ長銀株をスケベ買いしました。私はまさか天下の長銀が潰れることはないだろうと高をくくっていましたが、残念ながら潰れてしまいました。おかげで私の長銀株は紙クズです。
2000年代に入り長銀ショックの傷も癒えたころ、私は短期の利ざや稼ぎから長期目線の株式投資に方向転換しました。2003年8月のマキタに始る個別株の投資遍歴は下表のとおりです。
まず目に付くのが、2007年8月から2020年10月まで、購入日にブランクがあることです。この時期、私が勤めていた某銀行で株式投資が許可制となったため、個別株の購入を自粛したためです。(私は2019年9月に銀行を退職しました) 2008年のリーマンショックから日経平均のザラ場7,000円割れを経て、2012年のアベノミクス相場の開始まで、日本株の千載一遇の買い場が続きますが、この間、私は相場に参加していません。まさに痛恨の極みです。個人投資家として失格です。個別株はだめでも投信は買うことができたので、日経平均のインデックス投信でも買っておけばよかったのです。
私が今まで購入した銘柄の中で、会社の業績やバリュエーションを分析して買った銘柄は1社もありません。(そもそも、私にそんな能力はありませんし) なんとなく新聞で目に付いたとか、地元の会社だから応援しようとか、そんな動機で買っています。もともとマキタは高配当の地味な会社でしたが、いつの間にか海外生産比率をアップして高成長企業に様変わりしていました。それから、HOYA、村田製作所と買い進めるにつれ、ポートフォリオのグロース色が濃くなり配当利回りが下がってきたので、2020年の投資再開時にはバリュー系の高配当株を買おうと考えていました。そこで購入したのが、オリックス、東京海上、三菱商事、JT、アイカ工業です。また、このとき、実験的にJREITを2銘柄購入しました。ヘルスケア&メディカル投資法人と大和ハウスリート投資法人です。(その後、国内金利の上昇による価格下落リスクが気になったので、大和ハウスリート投資法人は売却しました。) 他に、タカラレーベン・インフラ投資法人ほかインフラファンド3銘柄にも投資しましたが、2022年10月にタカラレーベン・インフラ投資法人が公開買い付けに伴い上場廃止となるのに合わせ、全銘柄を売却しました。(マーケットの縮小による流動性低下で、インフラファンドは長期保有に向かないと考えました。)
2022年2月以降は、FRBの利上げで大きく下落したナスダックの影響で低迷していたグロース銘柄の中から、信越化学とリクルートを買いました。住友金属鉱山、カネカを買ったのは単なる思いつきです。また、値動きの鈍かった帝人、岡谷電機産業、尾張精機、アイチコーポレーションの4銘柄を損切りし、別の銘柄に入れ替えました。(私は基本的に損切りはしませんが、より魅力的な銘柄を買う原資に充当するために売却することはあります。)
以上、ざっくり私の個別株の投資遍歴をご覧いただきましたが、上表で青く網掛けしている銘柄は、購入時から2024年3月21日までの騰落率が日経平均に負けているものです。勝敗の星取りでいくと9勝6敗となり、私が日経平均に勝ったように見えますが、この表に載っていない損切り銘柄があるので、個別株の配当を加えたトータル損益でも日経平均に勝てていないよう思います。(アバウトな話ですいません。正確な計算は勘弁して下さい。)
私の個別株の拙い投資遍歴から言えるのは、手間をかけて個別株に投資するよりも、インデックス投信に投資する方が楽に良好な結果を出せるということです。それから、個別株はインデックス投信よりもはるかにリスクが高く、心臓によくありません。一例として、マキタのチャートを付けておきます。(出処:yahooファイナンス) 2021年9月にコロナ禍による好業績への期待から、7,050円の最高値を付けましたが、コロナの落ち着きとともに株価は下げ足を早め、2022年11月に2,589円の安値を付けました。僅か1年余りで3分の2近くの下落です! 私は都合の悪いことは忘れてしまう性分なので平気でしたが、普通の人は短期間に株価が3分の1になったら精神的にきついと思います。でも、インデックス投信なら、何十年に1度のリーマンショック級の経済ショックでも来ない限り、株価が3分の1になることはまずありません。
【閑】謎はすべて解けた
少年マガジンに連載されていた「金田一少年の事件簿」の主人公:金田一ハジメが発する有名な決めセリフですが、最近、私は思わずこのセリフをつぶやいてしまいました。私は高血圧、高血糖、高コレステロール、高尿酸と、成人病のデパートと化しており、係り付けのドクターからダイエットするよう厳命されています。ジョギング・山登り等の運動や、ご飯やお肉の量を減らして魚を食べる等、今まで地道な努力を続けてきましたが、私の体重は減るどころか増える一方です。
「どうして俺の体重は減らないんだ? これ以上何をしろって言うんだ?」 体重が前月から2キロ増えたことを知った夜、私は絶望のあまり慟哭しました。そして、やけになってウイスキーをストレートで煽りました。蒸留酒であれば太らないと誰かに聞いていたので、日頃から私はよく焼酎やウイスキーを飲みます。
ある日、ネットで気になる記事を見つけました。「アルコールが中性脂肪を上げるメカニズム」と題したその記事には、こんな怖いことが書かれています。「アルコールが肝臓に入ると、中性脂肪の原料である脂肪酸を作る酵素(SREBP-1c)の働きが高まり、一方で脂肪酸の燃焼を促す酵素(AMPK)の働きが抑制されるので、中性脂肪が次々と合成されます。さらに、アルコールの分解の過程で出てくるアセトアルデヒドは、中性脂肪の分解や脂肪酸の燃焼に関係するPPAR-αの働きを抑えるので、中性脂肪は分解されず体内に残ります。このように、いくつもの酵素がアルコールの影響を受けて、肝臓内の中性脂肪を増やす方向に働くのです。肝臓で作られた中性脂肪の大半は、血液中に放出されます。」
あちゃー。私がダイエットのためにあらゆる努力をしながら一向に体重が減らなかった理由が、恐らくこれです。
【不】高配当資産としてのJREIT
高配当資産として人気のJREITですが、下表のとおり今年に入ってからのパフォーマンスは芳しくありません。コロナ後のインバウンドで盛り上がるホテル主体型や商業施設型を除き、どの用途のJREITも投資口価格は大きく下落しています。日経平均株価が+15.97%と絶好調なだけに、JREITの不調が余計に目立ちます。なぜここまで下がっているかですが、金利上昇を嫌気した海外ファンドや地銀が売りを出しているようです。
今のところ、JREITは分配金利回り5%の水準で、何とか踏みとどまっているように見えます。4月に入れば、海外ファンドの買い戻しも期待できるかもしれません。値頃感から買い推奨する市場関係者も増えてきました。しかし、今後、日銀のマイナス金利解除で我が国の長期金利に一段の上昇圧力が加わります。そうなると、さらなる下落の可能性を念頭に置かなければなりません。住居系リートはインフレに強いと聞いていましたが、アドバンス・レジデンス投資法人(3269)は、きっちりマイナスです。日本経済が脱デフレ、マイルドなインフレ下に置かれることを想定すると、私は高配当資産としてJREITを保有することに疑問を感じます。JREITの高配当の源泉は、利益の90%以上を分配することで法人税が非課税となる点にあります。でも、毎年毎年、利益の9割を分配していたら、利益⇒投資⇒利益⇒投資の循環による複利効果(=投資口価格の上昇)は期待できません。だったら、利益の内部留保が可能で複利効果が期待できる高配当株の方が、ずっと魅力的です。
複利効果はいらないので短期的な高配当がほしいという方には、インフラファンドをお薦めします。インフラファンドもJREIT同様に金利上昇の影響で騰落率はマイナスとなっていますが、7%前後の分配金利回りに対し下落率は▲2%程度と、十分おつりが来る水準です。確かにインフラファンドは、FIP制度、導管性、電力会社による出力制御等の懸念材料を抱えていますが(参照:インフラ投資、高配当で人気殺到「インフラファンド市場」が危ない)、5年程度の期間限定で配当を狙う作戦であれば十分勝算ありです。
【株】清原達郎さん著「わが投資術」を読んで
いい感じで日経平均が下がってきました。個人的希望を言わせていただくと、あと2,000円ほど下がってくれると嬉しいのですが。でも、今まで買えてない人が多いようですから、そこまで下がらないかもしれませんね。
今回は注目の清原達郎さん著「わが投資術」(講談社)を読んだ感想について、書いてみたいと思います。ただ、ネタバレになるので詳細は書けません。興味を持たれた方は、是非本書を手に取ってみて下さい。
清原さんの投資手法は、ご本人いわく「割安小型成長株投資」です。えっ? 割安株投資? 成長株投資? どっち? 思わず聞き返したくなりますが、まさしく割安成長株投資なのです。この投資法は小型株の中で低PERかつネットキャッシュ比率の高い銘柄を選んで、3年~5年間保有し株価が上昇したところで売却するというものです。小型株である理由は、マーケット関係者から注目されず割安な状態で放置されている可能性が高いから。業績が好調で増益が続くと、当社に注目するヘッジファンドや小型株を得意とする証券会社の関心を集めます。市場の注目を集めるに従ってPERが切り上がっていきます。清原さんの言葉を借りれば、「バリュエーションの梯子を上がっていく」感じです。このPERの上昇によって、当社株のパフォーマンスは驚異的なものとなります。(※)
割安小型成長株投資はスタンダード市場(旧、店頭登録市場)を舞台としていますが、グロース市場(旧、マザーズ市場)はどうか。気になるところです。清原さんは、「中身が冴えない割には高PER銘柄が多く、最悪の市場です。赤字のバイオ株など、見る価値のない株が多すぎます。」と辛口の評価をしています。
以上、ごくごく簡単に「わが投資術」をご紹介しました。最後に私の感想をお話します。本書には、実務家でないと書くことのできない(他書にはない)貴重な株式投資のノウハウが満載です。ひと通り投資を勉強した方で中期目線で株式投資に取り組まれる方にはピッタリの教科書でしょう。ただ、ほったらかし投資の長期個人投資家の目指す路線とは、ちょっと違うかなと思いました。
(※)清原さんのファンドが買いを入れることで、割安に放置されていた小型株の商いが急増し、それが市場関係者の関心を呼ぶケースも多いと思います。このあたりは個人投資家には真似できない領域です。
【株】究極のラーメン
先日、何気にテレビを見ていると(「激レアさんを連れてくる」の再放送だったと思います)、ラーメンを趣味で20年間作り続けているという人が出ていました。その人が作ったラーメンを口にしたオードリーの若林さんは、余りの美味しさに驚きの表情を浮かべていました。美味しさの秘密を聞かれたその人は、こんな感じで答えました。「私のラーメンが美味しいのは当たり前です。だって、私はラーメン店と違って原価を気にする必要はありませんし、納得がいくまで時間をかけてラーメンを作れますから。」 その人は高価な上質の食材を日本中から選りすぐって取り寄せ、じっくり時間をかけて出汁を取り麺を作っていたのです。
私は株式投資も同じだと思いました。プロ投資家と違って、私たち個人投資家は自己責任のもと、好きなだけリスクを取れます。また、決算等の時間的制約を受けることもなく、超長期の時間軸で投資を行うことができます。私たち個人投資家は「究極のラーメン」を作ることができるのです。
【閑】介護施設に母を訪ねる
現在、私の母は要介護2級の認知症で、特別養護老人ホーム(特養)に入っています。一時は母の顔から表情が消え、まるでデスマスクのようになっていました。会話は成立せず、徘徊も始ったので、自宅介護を諦め施設に入ってもらいました。当時は夫(私の父)の名前も言えない状態で、要介護4級に認定されました。しかし、不思議なもので薬を変えたところ、母の顔に表情が戻り、会話も普通にできるようになったのです。要介護認定も2級に改善しました。(直前の出来事や言動を直ぐに忘れてしまう認知症固有の症状は、残念ながら改善しません。)
母が入っている施設は私の自宅から車で30分ほどの距離で、月に1回の頻度で訪問しています。先日施設を訪問したときは、母はニコニコしながら食堂でトレーを拭いていました。この施設では体を動かせる入所者には、軽い作業をさせているようです。母は自分を施設の職員だと思い込んでおり、しきりに「忙しい、忙しい」と口にしていました。そして、実家にいる父のことを「おっとおは、働かんとテレビばっか見とるでかんわ。あんなもん、じきボケるで。」と名古屋弁でディスるのでした。
満足そうな母の様子を見ていると、認知症もそう悪いものでもないと思えてきます。少なくとも、死の恐怖からはおさらばです。