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【株】やっぱり相場は分からない

米国のインフレもようやく鎮静化の兆しを見せ、12月のFOMCでは利上げペースの減速が見込まれています。米国10年債利回りは4%の大台を割り込み、3%台後半で落ち着きどころを探っているようです。長期金利の低下により、売り込まれていたグロース株も値を戻しつつあります。

これでほっと一息、と言いたいところですが、何ともお尻がムズ痒いのは私だけでしょうか。コロナ禍による空前の金融緩和の後、9ヶ月で400bpというこれまた空前の金融引締めによって、これまでNYダウは一時20%強、日経平均も15%程度下げましたが、足下ではいずれも安値から2/3戻しを達成しています。果たして、これで今回の調整局面は終わりと見て良いのか。基本ロングオンリーの私にとっては相場が回復してくれるに越したことはないのですが、残尿感と言いますか、何とも下げ切った感がないんですよね。やっぱり、相場は分かりません。このまま年末ラリーに突入し、2023年「卯は跳ねる」になれば万々歳ですが……。

そこで、今回はこれまでのコロナ相場から、来年に向けて教訓をまとめておきたいと思います。このまま相場が回復トレンドに入ったとすると、コロナ禍の株式市場の調整はことのほか軽く、回復は早かったことになります。その理由ですが、一つにはコロナ禍は人々の生命や日常生活にとって大きな脅威となったものの、金融システムにはほとんどダメージを与えなかったことが上げられると思います。また、コロナ禍に対する政策が、各国で早期に合意され発動されたことも大きかったです。
因みに、過去の経済ショック時の米国株(S&P500)の下落率を見ますと、1987年のブラックマンデーで34%、2000年のITバブルで49%、2008年のリーマンショックで57%となっています。

一国の金融システムが大きく毀損すると、信用不安の連鎖は瞬く間に世界中に広がります。金融システムの回復には公的資金の投入が不可欠ですが、そのための政策合意は容易でなく(高額所得者のウォール街関係者を税金で助けるのか?とか、国民の間で感情論が先行し理性的な議論が困難)、発動まで時間がかかります。結果、株式市場の下落率は大きくなり、相場回復に長期の時間を要することになります。

今後の懸念材料ですが、ズバリ、①が②に転じることだと思います。具体的には、ドル高、米金利高で新興国のドル建て債務が増大し財政が破綻、世界的な金融システム不安に繋がるシナリオです。2023年がそうならないことを祈ります。

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【株】個人投資家がプロに勝てるわけ

内外の株式市場ではボラタイルな日々が続いています。11月10日発表の米CPIは想定外に弱い内容となり、これを見た米国10年債利回りは一気に30bpも低下、NYダウは1200ドルの急騰を演じ、ドル円は140円台に突入し6円の急落となりました。市場関係者の間では、これで株式相場のトレンドも転換するという声もちらほら出ていますが、正直、私はそこまで楽観的になれません。
ところで、そんな各市場のドタバタ劇を尻目に、冷めた眼差しで相場を見つめる方たちがいます。長期個人投資家の皆さんです。なぜ彼らはこの状況に冷静でいられるのか。それは、彼らには勝利の方程式が見えているからです。そこで、今回は長期個人投資家の勝利の方程式について考えたいと思います。

突然ですが、今競技場でAチームとBチームが試合をしようとしているとします。ただ、この試合はちょっと変わっていて、異種格闘技のようなものだと思って下さい。プロのサッカーチームであるAチームと、アマチュアのラグビー同好会Bチームが一つのボールを巡って試合をします。AチームはBチームのゴールにボールを蹴り込めば1点獲得。BチームはAチーム側のゴールラインを超えてトライすれば1点獲得です。さあ、この試合、一体どちらのチームが勝つでしょうか。

Aチームはプロのサッカーチームですから、選手個々の身体能力やテクニックは超一流です。チームとしての完成度もアマチュアとは比較になりません。Aチームの勝利は戦う前から決まったようなものです。でも、ちょっと待って下さい。この試合はサッカーとラグビーの異種格闘技でした。Bチームは確かに弱小のアマチュア同好会かもしれませんが、彼らはラグビーのルールに従って試合を進めます。足だけでなく手を使います。ドリブルで突進する相手選手をタックルで倒しても構いません。Aチームは2.44m×7.32mの相手ゴールにシュートを決める必要がありますが、Bチームは幅70mのAチームゴールラインを超えてトライすればOKです。こう考えると、Bチームの方が有利かもという気もしてきます。ここでアマチュアがプロに勝てるかもと思えるのは、ラグビーの方がサッカーよりもルールが緩やかだからです。

同じことが株式投資においても言えます。証券取引所は競技場に相当します。個々の株式銘柄はボールです。そしてボールを巡ってプロの投資家や証券会社、個人投資家が入り乱れて異種格闘技を繰り広げます。プロ投資家や証券会社は厳しい規制のもとで売買を行います。また、プロ投資家や証券会社の投資の時間軸は長くて1年。中には1日というケースもあります。それに比べ個人投資家を縛る規制は緩やかで、投資の時間軸も数年から数十年と余裕があります。このように、プロ投資家や証券会社と長期個人投資家では、適用されるルールが大きく異なっています。

プロ投資家が短期的な材料に振り回され、相場で投げ踏み(損失覚悟の投げ売りと買い戻し)を繰り返す様を長期個人投資家が呆れた表情で見つめる。これが冒頭のシーンです。
長期個人投資家の勝利の方程式。それは、長期個人投資家に許された「緩やかなルール」と「長期の時間軸」を最大限活用して相場に臨むことです。プロ投資家は高金利で株価が低迷するハイテク株を購入することは困難です。需給サイクルのボトムにある(と思われる)半導体株も然り。しかし、長期個人投資家はこれら安値圏にある優良株を「ごっつぁんです!」と有り難く購入することができます。これが長期個人投資家の勝利の方程式です。

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【株】5年前と5年後

またまた今月も雇用統計やCPIといった米国のイベント・経済指標に一喜一憂する展開となっています。それに今月は中間選挙もありますしね。しかし、こんな時こそ目線を遠くにやって、長い時間軸で相場と向き合いたいものです。昨日(2022.11.8)の日経平均の引け値は27,872円でした。では、5年前、2017.11.8の日経平均の引け値はどのくらいか覚えていますか? 22,913円でした。この5年間に日経平均は4,959円上昇したことになります。利回り(複利)に直すと、年利4%です。2017年からの5年間にはいくつもの悪材料がありました。2018年には米中貿易摩擦、2020年はコロナショック、そして2022年はロシアのウクライナ侵攻と主要先進国でのインフレの発生。それでも、日経平均は長期期待リターン(5%)なみのパフォーマンスを実現したことになります。

では、次は5年後の日経平均の姿を想像してみましょう。平坦ではなかった過去5年と同等のリターンを想定することは決して楽観的ではないと思うので、2027.11.8までの5年間も年利4%で日経平均が上昇するとしましょう。すると、2022.11.8の引け値27,872円×(1+4%)^5=33,910円、となりますが、どうでしょうか。5年後の日経平均は、固めに見て34,000円。好材料が乗っかれば、35,000円超もあり。個人的にはこんな感じかなと思いますが、如何でしょう?

ちなみに10年前、2012.11.8の日経平均の引け値はというと、8,837円でした。アベノミクスが始る前、民主党政権下で日本国経済がもがき苦しんでいたときです。この10年間の日経平均のパフォーマンスは、実に年利12%! 株式のパワーの凄まじさが分かります。