私は株式投資を始めて以来、投資信託にはほとんど投資をしたことがありません。ただ、誤解のないように申し上げておきますが、私は決して投信否定派ではありません。個別株にも投信にも、それぞれ良い点と良くない点があると考えています。不動産に例えて言うなら、個別株は戸建て住宅、投信は区分マンションのようなものです。戸建てなら間取りや内装を自由にリクエストできますが、マンションだとそうもいきません。しかし、マンションであれば共用部分や外構の管理を管理会社に任せることができますが、戸建てではオーナー自ら庭の掃除や設備の補修を手配しなければいけません。株式投資も同じで、個別株であれば自分の思い通りに好きな銘柄に投資できますが、銘柄選択に際しては会社の業績等の入念な下調べが必要です。また、金利や為替等の外部環境にも目を配らなければいけません。しかし、投信であれば銘柄の選択や投資タイミングは専門家に丸投げできます。しかし、自分の好みを運用に反映することは困難です。
実際に、ネットで個別株と投信のメリデメを検索してみました。個別株へ投資する理由としては、株主優待が得られるから、ピンポイントで投資したい企業があるから、投信は運用手数料がかかるから、株主総会への参加等を通じて株主として活動したいから、自分で銘柄を選ぶのが楽しいから、といった意見が出ていました。一方、投信へ投資する理由としては、専門家に運用してもらえるから、自分で銘柄を選ぶことが難しいから、分散投資を実現しやすいから、少額から投資できるから、投資方針を基準にして選択できるから、といった意見が出ていました。ほぼ、予想通りの内容かと思います……。と、ここで今回の記事を終わりにしてもいいのですが、それでは本テーマを当ブログで取り上げた意味がありません。そこで、以下では、あまり語られることのない投信の特徴を、ひとつ指摘したいと思います。それは、私が個別株にこだわる理由でもあります。
実は以前、投資信託を考えるで一度触れています。一般に投資信託には、ベンチマークと言われるものが設定されます。投資におけるベンチマークとは、投信等の運用実績を評価する際に用いられる基準となる指標のことです。具体的には、日本株であれば東証株価指数(TOPIX)や日経平均株価を指します。そして、多くのアクティブ型日本株式投信はTOPIXをベンチマークとして、TOPIXに勝つことを目標に運用されています。ここ、ものすごく大事なところですので、覚えておいて下さい。もう一度言います。TOPIXに勝つこと、が目標です。日本株式投信は+5%とか+10%といった絶対水準の利回りを実現することは目標じゃない、と言っています。あくまでTOPIXという指標に勝てば良い。相対利回りが運用の目標だということです。ですから、TOPIXが▲10%のときに投信が▲8%なら、+2%の勝ちで目標達成という妙な話になります。そんなこと、私たち個人投資家は頼んでいません。
このような運営は、TOPIXをベンチマークに設定している投信だけでなく、TOPIXを参考指数に指定している投信でも広く一般に行われています。ところで、そもそもTOPIXって、何者でしょうか? TOPIXは東京証券取引所に上場する銘柄を対象として算出・公表されている株価指数のことです。(2022年4月4日の新市場区分施行を契機に、流通株式時価総額100億円未満の銘柄については、段階的にウェイトが低減される見込み。)東京証券取引所に上場する銘柄を対象として算出するということは乱暴にいうと、「TOPIXに投資する」イコール「日本経済に投資する」と言っていいと思います。ご承知の通り、日本経済は少子高齢化の影響で今後も減速が見込まれます。そんな日本経済にTOPIXは、そしてTOPIXをベンチマークとした日本株式投信は、引っ張られる可能性が高いわけです。パフォーマンスの劣化が分かっていながら日本株に投資するのも、何だかなあ~って思います。しかし、日本企業の中には、成長が見込まれる海外市場を舞台に活躍しているところもたくさんあります。そういった海外志向の企業の株式を個別に選んで投資していけば、日本経済が低迷しても堅調なパフォーマンスを期待できます。これが私が投信ではなく、個別株にこだわる理由です。
もっとも、国内でも敢えてベンチマークを設定せず、30程度に厳選した銘柄に集中投資するコモンズ投信のようなファンドも出てきています。今後、さらにノンベンチマークの投信が増えてくれば、早晩、私も投信への投資を開始するかも知れません。