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【年】厚生年金のパフォーマンス

以前、投資家目線で考える公的年金で厚生年金と国民年金の投資利回りについて考えましたが、2024年の年金改正を見据え、改めて厚生年金(※1)のパフォーマンスについて考えてみたいと思います。2024年改正では国民年金(基礎年金)の加入期間が40年から45年に延長される見込みであり、また先々、国民年金の第3号被保険者や厚生年金の配偶者加給年金は廃止される可能性が高いです。そこで、今回はこのあたりの事情も織り込んでいきます。 
(※1)以下では老齢厚生年金に限定しています。障害/遺族厚生年金には言及しません。

まず、厚生年金の給付額(年額)ですが、ザックリ、「年収累計×0.55%」で計算できます。正確には「平均標準報酬額×5.481/1000×被保険者期間の月数」となりますが、興味のある方はご自身でネット等でご確認下さい。今、20歳から65歳までの45年間会社に勤務し、入社から退職までの平均年収が400万円(税金・社会保険料の控除前ベース)のA氏を想定します。そこで、A氏の厚生年金の額を計算してみると、400万円×45年×0.55%=99万円、となります。これとは別にA氏には国民年金(基礎年金)が支給されます。

基礎年金は、「81万円×加入年数/40年」で計算できます。国民年金の加入期間が45年に延長となると、81万円×45年/40年=91万円、の基礎年金を受け取れる計算です。したがって、A氏は厚生年金と基礎年金を合わせて年間190万円(=99万円+91万円)を、65歳から終身にわたって受取ることになります。ポイントは、厚生年金の金額を計算する際の年収累計が、税金・社会保険料控除前の金額である点です。憶えておいて下さい。

次に、厚生年金の保険料についてです。厚生年金の保険料率は18.3%ですが、これを社員と会社が折半して負担します。ですので、年収400万円のA氏が負担する保険料の金額は、400万円×18.3%÷2=36.6万円(年額)となります。尚、この金額は、全額社会保険料控除の対象です。そのため、税金の戻りを考慮した実質的な保険料負担は、36.6万円×(1-0.15)=31万円(※2)、となります。 
(※2)A氏の所得税を5%、住民税を10%と仮定。

では、毎年31万円ずつ資金を拠出して45年間運用し、その後、仮に65歳から85歳までの20年間にわたって毎年190万円(計3,800万円)を取り崩す場合、45年間の運用(複利)利回りは如何ほどか? 減債基金係数という数字を使って計算すると、約4%となります。当然、85歳より長生きすれば、利回りは上がっていきます。どうですか。4%という数字、私はかなりいけてると思います。なにせ、ほぼノーリスクですから。日本株の期待リターンが5%程度であることと比較しても、結構魅力的です。これだけのパフォーマンスが可能なのは、厚生年金の保険料の半分を会社が負担しているからです。

労働者にとって厚生年金に加入することの意味は、国家権力を援用して資本家に保険料の半額を強制的に負担させることにあります。会社員は是非この権利を行使したいもの。厚生年金は人生100年時代を乗り切るうえで、必須の資産形成ツールです。(平均年収や勤務年数によって厚生年金の利回りは変動します。平均年収400万円、45年勤務以外のケースでの利回りを知りたい方は、お手数ですが管理人までお問い合せ下さい。) 尚、投資家目線で考える公的年金では国民年金の加入期間を40年、扶養配偶者有り、運用利回りは単利、の前提で利回り計算しているため、今回の結果とは相違があることをお断りします。