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【ラ】相続放棄の積極的活用術

日本FP協会の「FPジャーナル10月号」の誌上講座/相続・事業承継設計に、「債務免除だけでない相続の放棄の活用」と題した記事が掲載されています。大変興味深い内容であり、また恥ずかしながら個人的に全く認識のなかった内容でしたので、ここでFP以外の皆さんとも共有したいと思います。
相続の放棄は、被相続人のプラスの財産とマイナスの財産を一切承継しないための方法です。ですから、通常はプラスの財産よりもマイナスの財産(つまり借金=債務)の方が大きい場合に、選択されることが多いと思われます。しかし、それ以外の目的にも、相続の放棄が役に立つ場合があるという話です。

①次順位の人へ相続させたい場合
相続順位を進めたい場合、相続の放棄が効果的です。例えば、父(既に死亡)、母、長男(独身)、次男の4人家族を想定します。父の財産を相続した長男が死亡した場合、子のない長男の相続人は母になります。財産は親(父)→子(長男)→親(母)と世代を行ったり来たりし、母の死後再び子(次男)に戻ってきます。世代往復のたびに税金が発生します。そこで、母が相続放棄をすれば次順位の次男が相続人となり、長男から直に次男に財産を承継することができます。ただし、次男が相続すると相続税の2割加算の対象となることに注意が必要です。

②生前贈与を受けた人が争続を避けたい場合
相続人が特別受益にあたる生前贈与を受けた場合、相続財産に特別受益を加えて(持ち戻して)遺産分割協議を行います。協議の際、生前贈与が他の相続人にバレて、争続に発展する恐れがあります。この場合、相続の発生と同時に相続を放棄すれば遺産分割協議の当事者でなくなるので、生前贈与の事実を他の相続人に知られることなく、争続を回避できる可能性があります。また、相続の放棄をした者が被相続人から遺贈によって財産を取得しなければ、相続直前の贈与であっても持戻しによる課税対象とならない利点もあります。

③遺留分侵害額請求をされたくない場合
遺留分を算定するための財産は、相続人に対する相続開始前10年以内の特別受益にあたる贈与と、相続人以外の者に対する相続開始前1年以内の贈与が含まれます。相続の放棄をした者は相続人以外の者となるので、相続開始の1年以上前に贈与を受けた分については遺留分の算定対象からはずれるので、遺留分侵害額請求を受ける恐れがなくなります。

④その他の注意点
被相続人が保険料負担者=被保険者である保険契約において、死亡保険金は相続財産とならない(保険金受取人固有の財産となる)ので、相続を放棄した者でも受取ることができます。なお、死亡保険金の相続税非課税枠(500万円×法定相続人数)を算出する際の相続人数には相続を放棄した者も含めますが、相続を放棄した者が受取った死亡保険金には非課税の適用はありません。
また、被相続人が被保険者=保険金受取人である入院給付金や手術給付金で未払いのものは本来の相続財産となるので、相続の放棄をする者は決して受取ってはいけません。誤って受取ってしまうと、単純承認したものと見做され相続の放棄ができなくなってしまいます。
ほかに、厚生年金や国民年金の遺族年金や未支給年金についても相続財産に該当しないため、相続を放棄した者も普通に受給することができます。