株式投資と不動産投資の比較は当ブログにおいて、過去に何度か行ってきましたが(不動産と株式を比較してみた/不動産とJREIT、そして株式/不動産VS株式、通説と現実のギャップ)、改めて株式投資家から見た不動産投資の特性を考えてみたいと思います。中堅サラリーマンが億円単位の借入れを起こして一棟マンションをバンバン買いまくる時代は過去のものとなり、今や不動産は企業オーナーや地主、高給サラリーマン等の富裕層限定の投資商品となっています。現在、彼らは都心のRCマンションを十億円ロットで買いまくっています。一般ピープルにはとても手の届かない価格帯ですが、島国日本で希少価値の高い都心の物件はインフレの後押しもあり、今後まだまだ上がると見ているのでしょう。
これらの物件を買う人には賃料収入(インカムゲイン)という発想はなく、値上がり益(キャピタルゲイン)だけを考えているはずです。株式投資家から見ると、この投資手法はグロース株(成長株)投資に相当します。グロース株投資では配当は考慮せず(高配当のグロース株など聞いたことがありません)、株価の値上がりをひたすら追求することになります。
では、資金力に乏しい一般ピープルは不動産投資に手を出すことはできないのでしょうか。不動産市場が高値圏にあり、かつ銀行が不動産融資に慎重スタンスな今、私は一般ピープルが無理をして不動産投資を始めるタイミングではないと考えます。不動産アナリストの幸田昌則氏は近著「不動産バブル静かな崩壊」(日本経済新聞出版)の序文で次のように述べ、不動産市場の今後に警鐘を鳴らしています。「足下の実態を見ると、すでに22年の夏頃から大都市圏では流通市場だけでなく、不動産業界内にも住宅・投資物件・土地などの在庫(売れ残り)が、月を追うごとに増加している。業界内の在庫水準は、2008年のリーマンショック時の水準を15年ぶりに超えてしまった。」 幸田氏の言うとおりバブル崩壊とまでは行かなくても、不動産市場に調整が入れば不動産価格が下がって賃料利回りが上がり、一般ピープルにももう少し買いやすい状態となるでしょう。(※)
不動産投資は都心の駅近物件に限ると主張する関係者もいますが、何もそんなピカピカ物件に拘る必要はありません。将来的に賃貸ニーズが期待できる地方都市もあるはずです。そういった地方都市の中古木造一棟もので、コスト控除後キャッシュフロー(ATCF)で採算の合う高利回り物件を購入すれば、物件が値上がりしなくても投資は成り立ちます。中古木造なら価格、コストともRC造・鉄骨造より抑えられるので、一般ピープルにもアクセスしやすいです。株式投資家から見ると、この手の投資手法は配当狙いのバリュー株(割安株)投資に相当します。私は一般ピープルが目指すべき不動産投資は、このバリュー株投資タイプだと思います。ただ問題なのは、今の市場環境では採算が合う価格帯の物件が見つからないこと。銀行から融資を引きにくいこと。そして、中古なだけに物件の保全状況の目利きが問われることです。
株の世界では「休むも相場」という格言があります。今は無理をせず、物件購入に向けた頭金の準備と、目利きの「目」を養うときです。
(※)飯田グループHD<3291> は4月8日大引け後に業績修正を発表しました。24年3月期の連結最終利益を従来予想の700億円→310億円(前の期は755億円)に55.7%下方修正し、減益率が7.4%減→59.0%減に拡大する見通しです。これは、同社が余剰在庫処分のため、販売価格の調整により早期販売を行ったためです。
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