これまで私は一貫して長期投資をお勧めしてきましたが、投資手法は十人十色、人それぞれでいいと思います。長期投資が正しいというエビデンスもありません。
ただ、私は個人投資家が気楽に取り組むには、ほったらかし投資が向いているんじゃないかなと思っています。
私は金融機関で30年間、年金基金や機関投資家のお客様に、内外の債券や株式、不動産等のオルタナティブ商品を販売してきました。私が勤務していた会社は一応大手といわれる運用会社です。その運用会社が運用する商品や、海外の一流ファンドの運用商品を購入いただいたお客様に、3ヶ月ごとに運用結果の報告を行っていました。私が30年の経験で知ったことは、一流といわれる運用会社や最先端のヘッジファンドでも相場を当てることは至難の業で、良好な運用実績を何年も続けることはできないという厳しい現実です。優れた過去実績を掲げた商品が、お客様にご採用いただいたとたん運用が悪化しクレームとなることが何度もありました。
内外の一流プロでさえ勝つことが難しい運用の世界で、個人投資家がガチでぶつかって勝ち残る可能性がどれだけあるでしょうか。短期運用で巨額の利益を上げている個人投資家が存在することは知っていますが、正直、私には彼らが幸運なサバイバーにしか見えません。
私は、株式投資を個人がもっと手軽に取り組めるものになればいいと思います。しかし、株式は銀行預金とは異なります。価格下落、元本割れのリスクを受け入れることができない方は、株式に近寄るべきではありません。しかし、リスクを正しく理解し受け入れることのできる方には、もっと気軽に株式投資にアクセスしてほしいです。専門的な知識や継続的な相場のモニタリングなどなくても株式投資は可能です。そして、そのための方法のひとつが、買値にこだわったほったらかし投資です。
プロ投資家とは異なる土俵で戦い、長期の時間軸でゆっくりと投資先企業の成長を見守り、成果を享受する。私がお勧めするのは、そんな運用です。
私が長期投資をお勧めする際によくいただくお叱りは、バブル崩壊後30年たつのに、いまだ日経平均はバブル高値を回復していないではないか、というものです。おっしゃる通りで反論できません。ただ、私は今後日本でバブルが崩壊しても、平成バブルのようにはならないだろうとの希望的観測を持っています。なぜなら、平成バブルは特殊なケースであり、今やその特殊性は大幅に改善していると考えるからです。具体的には、①当時は企業間や銀行と株式持合いが盛んに行われていたこと、②東京市場での外国人シェアが極端に低く内外の価格裁定が働かなかったこと、③バブル崩壊後の政府日銀の政策対応が誤っていたこと、等です。
今後も資本主義の宿命として、5年から10年のサイクルでバブルの形成と崩壊が繰り返されるでしょう。そして、バブル崩壊の時期は誰にも分りません。ただ、今後はバブルが崩壊したら当局の適切な政策対応によって、他国と同様に5年程度で相場は回復するものと期待しています。