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【株】リスク抑制型ファンド

最近、iDeCoをはじめ個人向け投信のラインナップに、リスク抑制型ファンドが加えられるケースが増えてきました。リスクを抑制するスキームも様々です。代表的なものは、リスク量が増加した資産の比率を下げ(売り)、リスク量の低い資産の比率を上げる(買う)ことで、ファンド全体のリスク量を一定に保つような商品です。例えば、株式市場が下落すると株式のリスク量が増加するので、株式を売って債券を買うような感じです。逆に、株式市場が上昇すると株式のリスク量は減少するので、株式を買って債券を売ります。尚、リスク量は、各資産のボラティリティ(標準偏差)やVIX指数を目安にするものが多いようです。

ここで注目していただきたいのは、このスキームが相場の順張りになっている点です。株式市場が下落すれば株を売り、相場が上がれば株を買います。これに対し、伝統的なバランスファンドのスキームは全く逆で、相場の逆張りとなります。株式市場が下落し株式の時価構成比が計画値を下回ったら、株式を買い比率を上げます。株式市場が上昇し時価構成比が計画値を上回ったら、株式を売って比率を下げます。このように、リスク抑制型ファンドのオペレーションは、伝統的バランスファンドの真逆となります。

リスク抑制型ファンドは相場の順張り、伝統的バランスファンドは相場の逆張りです。自ずと得意な相場環境は異なります。リスク抑制型ファンドは、相場が一方向にトレンドを持って動くとき、一方向の下落相場や上昇相場において強みを発揮します。しかし、ボックス相場は苦手です。下値で売り上値で買いを繰り返し、コストがかさみ収益を食いつぶします。一方、伝統的バランスファンドはボックス相場で強みを発揮します。下値で買い上値で売りを繰り返し、収益を積み上げます。

リスク抑制型ファンドを購入する際は、抑制されるのはその名の通りリスクであることに留意ください。相場が急落し株式のリスクが急騰するようなケースでは、この手のファンドは一気に株式を売却するので、確かにそれ以上のリスク上昇は抑制できます。しかし、急落であく抜けした相場が一転上昇に転じるような展開になると、このファンドは相場について行くことができません。結果、他ファンドのパフォーマンスに大きく劣後することになります。繰り返しますが、リスク抑制型ファンドはリスクを抑制することでリスク量の上限をキープするものであって、リターンの下限を保証するものではありません。利回り保証の幻想に惑わされることなく、商品性をきっちり理解したうえで購入しましょう。

今やリスク抑制型の運用スキームは、個人投資家だけでなく、金融機関や年金基金等の機関投資家にも普及しています。世界的にもリスク抑制型の基本スキームである順張り運用は、伝統的な逆張り運用のシェアを侵食しています。これは私見ですが、昨今の株式市場、特に日経平均株価のボラティリティ高騰の要因の一つに、リスク抑制型運用の普及があるのではないでしょうか。