私はプロフィールにあるように幾つかの資格を保有しています。今まで資格に挑戦する中で、特徴のある資格、変な資格にも出会いました。今回は、そんな資格試験に関しての感想と、特に印象的だったある資格の謎についてお話したいと思います。
個人投資家さんの中には資格に挑戦される方も多いと思います。私はプロフィールに書いた資格以外に、挑戦したもののあえなく撤退した資格もあります。例えば、中小企業診断士。結構難易度の高い資格とされています。7科目(経済学、財務会計、企業経営論、運営管理、経営法務、経営情報システム、中小企業経営政策)の択一式1次試験に3年以内に合格し、さらに記述式2次試験4科目に2年以内に合格する必要があり、相当にハードルが高いです。ただ、会社員の経験がある方は時間をかければ、合格可能な試験だと思います。
私が撤退した理由は、2次試験合格後に待っている実務補修にあります。3年以内に15日の補修を受けなければ中小企業診断士として登録できません。この補修は、中小企業診断協会(なぜか診断士協会ではない)が実施するもので、5~6名でグループを作り企業を訪問、最終日にグループ別にコンサル結果をプレゼンします。企業訪問でヒアリングし分析した内容を、メンバーが協力して資料にまとめます。その作業はPCを駆使して行いますが、PCスキルが貧弱なジジイが足手まといになることは明らか。怖気づいた私は、1次試験を受ける前にしっぽを巻いて逃げ出したのです。
負け惜しみになりますが、この試験は暗記試験ではないため、私は楽しみながら試験勉強を続けることができました。現役の社会人の方(特に若い方)には、是非チャレンジしてほしいです。社会や経済の仕組みを理解することができ、これからのキャリアアップに大きなアドバンテージになると思います。
他に私が挑戦した資格に、マンション管理士があります。全50問で4択の択一式試験です。合格率は8%程度。この試験では、不動産の管理業務主任者試験(通称、管業)の合格者に、問46~問50の5問免除の特典が与えられます。同一業界の他試験の合格者に免除が与えられることはよくありますが、この試験に特徴的なのは、50問中8問ある個数当て問題(※)のうち4問が、免除対象の問46~問50に集中していることです。個数当て問題は通常の択一式問題よりも正答率が低いので、管理業務主任者の合格者でない一般の受験生は5問免除で差を付けられた上に、4問の難問を押し付けられるという2重のハンディを課されることになります。これは、管理業務主任者試験合格者の優遇措置です。
国交省が進めているマンション管理計画認定制度の導入に向け、マンション管理業界内での管理士育成を急いでいるための政策的判断でしょうか。
(※)5つの選択肢から正しい選択肢の個数を当てさせる問題
私が最も苦労した資格が、社会保険労務士です。5択の択一式と選択式の組み合わせ試験で、合格率は6%程度です。灼熱の8月に5時間にわたる長丁場を戦う、色々な意味で難易度の高い試験です。冒頭「資格試験の謎」といったのは、この資格のことです。
通常、試験は得点の上位者から順に合格になります。足切り点が設定されることはありますが、受験生の努力は概ね報われる仕組みになっています。ところが、そうじゃない試験があります。社労士試験です。社労士試験の選択式の科目の一つに「労働に関する一般常識」(通称、労一/ローイチ)があります。これが受験生の悩みの種で、一般常識どころか誰も知らない、聞いたこともない初見問題が5問出題されます。
労一5問中3問以上を正解できないと、他科目が全問正解でも足切りです。総得点で悠々合格圏に達しながら労一で不合格となった受験生は、「運ゲー」「ロシアンルーレット」と呪いを込めて労一を呼びます。受験生の1年1000時間の努力を一瞬で水泡に帰す、恐るべき試験です。
社労士試験は、得点順に合格者を決める1次試験(択一式と労一以外の選択式)と、クジ引きで合格者を決める2次試験(労一の選択式)の2部構成で実施される。これが実態です。
社労士試験実施者は、なぜこのような真似をするのか。なぜ、素直に得点順に合格者を決めないのか、いや決められないのか。大きな謎です。
このように謎の社労士試験ですが、最近私はある仮説に至りました。試験実施者は、最初から得点上位者を合格させる気がないのではないか。試験実施者が合格させたいのは、得点上位者と異なるゾーンにいる受験生なのではないか。
そのためには、合格者の選定を自由競争(得点上位者が合格する)に委ねてはダメで、何らかの方法で競争に介入する必要があります。
その介入手段が、労一だとしたら……。
では、試験実施者が合格させたい受験生とは誰なのか。これも憶測に過ぎませんが、開業を目指している受験生ではないか。彼らは退路を断ち、命がけで試験に臨んでいます。組織に属し、自己啓発や趣味が目的でヌクヌクと試験に臨んでいる人たち(私がそうです)とは状況が違います。試験実施者が開業を目指す受験生に配慮したとしても、社会正義的に許されると思います。しかし、そのあたりの事情を受験生に事前に告知することが条件でしょうが。
まあ、いずれにしろ、本当のところは分かりません。謎です。資格試験は大学受験とは違い、大人の世界だってことにしておきましょうか。
最後に。今年も大勢の受験生が労一に敗れ散っていきました。心よりお悔やみ申し上げます。