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【株】私が株式投資を薦める理由②

資産運用における複利のパワーは皆さんご存知のことと思います。複利のパワーは利回りがプラスのケースで説明されることが多いですが、実は利回りがマイナスのケースでも大きな効果を発揮します。【表1】はスタート時点で評価額100であったものが上段は毎年10%ずつ増加、下段は毎年10%ずつ減少した場合の10年後、20年後、30年後の評価額を表しています。【表1】をグラフ化したものが【グラフ1】です。+10%の場合、評価額は100→110→121→133→146→161…と変化し、増加幅は10→11→12→13→15…と拡大していきます。そして、29年~30年の1年間には159も増加しています。このように評価額の増加幅は、時間の経過とともに加速度的に拡大していきます。次に、-10%の場合を見ます。評価額は100→90→81→73→66→59…と変化し、減少幅は10→9→8→7→7…と縮小していきます。29年~30年の1年間では1しか減少していません。評価額の減少幅は、時間の経過とともにどんどん縮小していきます。このプラス利回りとマイナス利回りでの評価額の非対称的な動きは、複利の効果によるものです。

【グラフ1】では+10%の場合、評価額の曲線は右肩上がりにそそり立つ一方、-10%の場合は下限0に限りなく接近していきます。評価額のアップサイドは無限、ダウンサイドは有限です。この上昇時と下落時の「損益の非対称性」、つまり相場が上がるほどに収益の拡大スピードは加速し、相場が下がるほど損失の拡大スピードは減速する。私たちは株式のこの性質を上手く利用することで、高い確率で勝利を手にすることができるのです。そして勝利の確率は、投資の時間軸が長いほど高くなります。

では、この「損益の非対称性」の効果を具体例で見ていきましょう。今100円ずつA社~J社の10社の株式に投資するものとします。5年後、A社株は5倍(500円)、B社株は2倍(200円)になったとします。C社株、D社株、E社株は変わらず100円だとすると、A社株~E社株の合計は、500+200+100×3=1000円です。F社株~J社株がすべて紙屑(0円)になっても当初資産額(1000円)を割らないことになります。もっとも、10社中5社が倒産する可能性はまずないですから、今度はF社株は0円、G社株とH社株は50円、I社株とJ社株は70円だったすると、10社の評価額の合計は、1000+50×2+70×2=1240円です。5年間の運用結果は年率4.4%(1000円→1240円)となります。2勝5敗3分でも、トータル損益は十分なプラスです。このように個々の勝負では負け越しでも、トータルで勝利できるのが株式投資の強みであり、強みの源泉が「損益の非対称性」となります。複数の銘柄に投資した場合、一部の銘柄が大きく上昇すれば他の多数の銘柄が下落しても、ポートフォリオ全体ではプラスを確保できるということです。実際、長期投資ではプラスの複利効果によって、株価が5倍、10倍…となることは珍しくありません。

ウォーレン・バフェットは自身の投資会社バークシャー・ハサウェイの2013年の株主総会でこう言ったそうです。「私は生涯で400~500の銘柄を所有しましたが、そのうちの10銘柄でほぼ全ての利益を得てきたんです。」

長期の株式投資は勝率を競うゲームではなく、トータルスコアを競うゲームであることがご理解いただけると思います。1対0、2対1の僅差の勝ちを積み上げるのではなく、1勝5敗でいいからその1勝を15対3で大勝するイメージ、これが長期投資の戦い方です。そして、長期の時間軸で損益の非対称性を最大限活かし切ることで、株式投資の勝利の確率を高めることが可能です。これが、私が株式投資をお薦めする第2の理由です。

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【株】私が株式投資を薦める理由①

資産運用をする手段としては、株式の他にも債券や不動産、FXや暗号資産、商品(コモディティ)等があります。ただ、ギャンブルの才能や高度な数学の知識がある一部の方を除き、一般の個人投資家にとって取り組みやすく、且つ高収益を上げやすいのは株式であると私は考えます。そこで、これから3回にわたり、私が個人投資家の皆さんに、まずは株式投資をお薦めする理由をお話したいと思います。

そこで突然ですが、【図1】をご覧ください。これは、私たちの生活する社会をモデル化したものです。ここではT自動車工場で働くAさんに登場してもらいます。ただ、Aさんは自動車工場の労働者でなくても構いません。農場で働くAさん、レストランで働くAさん、学校の先生Aさん。労働者として働き、給料をもらって生活している人なら、職業は何でもOKです。


Aさんは毎日工場で車を作っています。そして、オーナーである資本家Tから給料をもらっています。ここで、最初の質問です。Aさんが受け取る給料は、Aさんが作った車の価値と同じ金額でしょうか? 答えは、Noです。なぜなら、Aさんが受け取る給料は、Aさんが作った車の価値から原材料等のコストや資本家Tの利益を差し引いた後の金額だからです。つまり、給料=車の価値ー資本家の利益等、です。

次に、消費者のBさんに登場してもらいましょう。Bさんは毎日会社へ車で通勤しています。ところが最近車の調子が悪いので、買い換えようと思っています。そこでT工場で作っている車を購入することにしました。さて、ここで二番目の質問です。BさんがT自動車会社に払う車の代金は、車の価値と同じ金額でしょうか? 答えは、またしてもNoです。なぜなら、Bさんが払う車の代金は、車の価値に資本家Tの利益等を上乗せした金額だからです。つまり、代金=車の価値+資本家の利益等、です。
さて、三番目の質問です。ところで、労働者Aさんって誰のことでしょう? そして、消費者Bさんって? 答えは、どちらも私たち自身のことです。つまり、労働者Aさん=消費者Bさん=私たち、です。つまり、労働者は自分が作った自動車を、消費者として買い戻していることになります。そうなると、【図1】は【図2】のようなサークルに書き換えることができます。ここでは、お金と車が、「資本家」と「労働者=消費者」の間をグルグル逆方向に回転しています。そして、労働者が給料を受け取るタイミングと、消費者が代金を支払うタイミングで、資本家に利益が落ちる仕掛けになっています。一粒で二度おいしい、資本家の「搾取のシステム」です。

私たち労働者は、会社に入ってからハムスターさながらに延々とこのサークルの中を走り続けます。そして、疲れ果て、もう走る元気がなくなったところで定年退職です。あなたはこんな人生、納得できますか。それでもいいという人もいるでしょう。サークルの中にいる限り最低限の給料は確保できるので、安定した生活が保障されます。しかし、資本家の下僕として家畜として、一生をサークルの中で終えるのはご免という人もいると思います。では、そういう人はどうしたらいいのでしょうか?3つの方法が考えられます。

1つ目は、労働者が団結して資本家を追い出し、労働者の管理のもとでサークルを運営することです。つまり、社会主義革命です。でも、この方法が上手くいかないことは、歴史が証明しています。

2つ目は、労働者自ら資本家になることです。しかし、これも問題があります。資本家として成功するには、努力と才能、そして何より運が必要です。資本家は誰でもなれるわけでなく、また失敗したときのリスクがとても大きいのです。 

そこで、3つ目の方法ですが、それは労働者が資本家のスポンサーになって、資本家が獲得した利益の配分を受けることです。つまり株主になることです。株式投資を通して資本家に資金を出資すれば、出資比率に応じて資本家から配当を受け取ることができます。株主となった労働者は間接的に資本家となることで、サークルを運営する側に回ることができます。そして「搾取のシステム」からの上がりを資本家とシェアすることになるのです。


今後、ますます資本家への富の集中は進行し、私たち労働者の処遇は悪化するでしょう。自分の身は自分で守るしかありません。株主となって「取られた分は取り返す」。これが私が株式投資をお薦めする第1の理由です。