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【株】身も蓋もない話

フーテンの寅さんではありませんが、「それを言っちゃあ、お終いよ」という話を、身も蓋もない話といいます。今回は、そんなお話をしたいと思います。

投資業界では色々な人たちが働いています。投信を組成する投信会社であれば、運用を担当するファンドマネージャーや証券会社にオーダーを発注する担当者。投信を販売する証券会社には、企業業績を分析するアナリストや経済動向を予測するエコノミスト、営業担当者や事務担当者。投信の資産を管理する信託銀行にも資金決済や運用報告書を作成するスタッフ等がいます。また、最近ではお薦めの個別株銘柄や投資戦略を語るユーチューバーのような人もいます。このように、実に大勢の方々が投資業界に従事されているわけです。
そこへ「どうせ10年先、20年先のことなんて分かりっこない。長期投資には企業業績の分析も景気予測も不要。低廉なインデックスファンドを機械的に定時定額で買っていけばいい。」などと言う輩(私のような者のことですが……)がいたら、投資業界にとって大迷惑です。そのため、「お金をかければきっと上手くいく。勉強すればきっと上手くいく。情報があればきっと……。」という幻想とともに、業界の存亡をかけて短期投資洗脳工作がテレビやインターネットを通じ日々行われることとなります。そう、まるでどこかの新興宗教のように。

住宅業界も似たようなものです。住宅業界にはハウスメーカー、建設会社をはじめ、建材会社、住宅設備会社、家具メーカー、電力会社、ガス会社、通信会社、家電メーカー等等、投資業界を遙かに上回る裾野の広さで多くの人々が関わっています。そのため、国は長らく雇用確保・産業育成のための国策として、「新築・持ち家」信仰を国民の間に流布し、国民を洗脳してきました。新築住宅は需要を顧みることなく過剰供給され続け、中古住宅の流通市場は整備されることはありませんでした。これこそ、昨今の空き家大量発生問題の元凶です。

情報過多時代の今こそ、他言に惑わされず、物事の本質を見極める冷めた目を持ちたいものです。

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【株】シン・株式投資論

最近、2021年12月に初版が発行されて以来ロングセラーを続ける「サイコロジー・オブ・マネー」(モーガン・ハウセル著、ダイヤモンド社)を読み返しました。実によくできた本だと、改めて感じました。長期投資家を目指す人は、この1冊を読み込めばそれで十分と思わせる内容です。ただ、この本は読みやすさを優先した結果、細かく章分けされ論旨の全体像が見えにくいきらいがあります。そこで、以下では私の独断となりますが、本書の俯瞰図の提示にトライしてみたいと思います。

1.株式投資の目的
株式投資の目的は、経済的自立を手に入れることです。経済的自立とは、あなたやあなたの家族が、好きなときに好きなことをできること、をいいます。ただ、そのためには、それなりの資産が必要です。そして、資産を築くための手段が株式投資となります。私たちは株式投資を通じ、複利のパワーを借りて大きなリターンを得ることが期待できます。リターンの源泉となるのは、①時間、②マネー、③リスク、の3つです。
株式投資をするうえで重要なこと。それは、あなたが市場から退場することなく、できる限り長い期間にわたってマネーを投資し続けること(①と②)と、リスクを毛嫌いせず受け入れることです(③)。リスクを取らずにリターンを得ようとするのは、代金を払わずに商品を手にする泥棒と同じです。

2.リスクへの対応
リスクにはミクロのリスクとマクロのリスクがあります。
(1)ミクロのリスク
ミクロのリスクとは、投資先の企業の業績が悪化したり、倒産したりすることです。ミクロのリスクは事前に予測することは困難で、避けることはできません。
JPモルガン・アセット・マネジメントが1980年から2014年までの「ラッセル3000インデックス」のリターンの分布を分析し公表しています。この期間中、ラッセル3000の全構成銘柄の4割が70%以上値下がりし、回復することはありませんでした。実質的に、このインデックス全体のリターンの全てはダントツに優れた業績を上げた、わずか7%の構成銘柄から得られていたのです。驚くべき結果ですが、これが事実であり、投資とは所詮そんなものだということです。
ミクロのリスクへの対応。それは「複数の銘柄への分散投資」です。

(2)マクロのリスク
マクロのリスクとは、不況、自然災害、パンデミック、戦争等による経済システムの毀損、そして株式市場の下落です。マクロのリスクも事前の予測は困難であり、避けることはできません。
過去170年間、米国にどれだけの不幸な出来事が訪れたか、ご存じですか。大きな戦争が9度あり、130万人の米国人が亡くなりました。創業された企業の99.9%が倒産しました。大統領が4人暗殺されました。スペインかぜの大流行で1年間に67.5万人の米国人が亡くなりました。株価が1/3に暴落したことが少なくとも12回ありました。インフレ率が7%を越えた年が通算20回ありました。しかし、この170年間で米国人の生活水準は20倍になっています。不幸な出来事があっても経済は、そして市場はやがて回復する。これが事実です。
マクロのリスクへの対応。それは、過度にリスクを恐れない、「賢明な楽観主義者たること」です。
しかしながら、不幸な出来事による市場のダメージは、長期間続くこともあります。1929年の大恐慌のあと、株価が暴落前の水準を回復したのは25年後のことです。1970年代にはインフレやオイルショック等による株価低迷が、10年以上にわたって続きました。こういった長期間に及ぶダメージに耐え株式投資を継続するには、バッファーとなる預金が必要です。マクロのリスクへの二つ目の対応として、「十分な預金の保有」を上げます。

ここまでの本書の内容をたたき台として、株式投資の流れをイメージ化したものが【図1】です。あくまで私流ですので、本書の趣旨に沿えていない可能性もあります。ご容赦下さい。

長期投資家は、月々の給料をまず生活費に充当します。次に、株式市場が下落した際のバッファーとなる預金に充当します。そして、最後に残った余裕資金を株式に投資する流れとなります。株式市場はミクロ、マクロ様々な要因で、短期間に上下動を繰り返します。投資を開始した当初は、市場の下落で投資資産の時価評価が元本を割り込むこともあるでしょう。 しかし、ここで注目して頂きたいのは、レバレッジをかけない限り(信用取引や先物・オプション取引をしない)、時価評価はマイナスとはならないことです。(A) 時間の経過とともに含み益が増えていき、市場が下落しても元本を割り込むことはなくなります。(B)  そして、投資を長期間継続することで複利のパワーが顕在化し、投資資産は当初の想定を大きく上回る水準に到達します。(C)

本書には著者の主張をサポートする幾つもの興味深いエピソードが盛り込まれています。詳細は是非、皆さんに本書を手に取ってご確認頂きたいのですが、最後に驚くべきエピソードをひとつご紹介させて頂きます。

投資会社のホライゾン・リサーチは、「技能」でも「運」でもない、美術商が成功するための三番目の要素について説明しています。私たち株式投資家にとっても参考になるものです。
「優れた美術商は、膨大な量の美術品を投資対象として購入する」と同社は書いています。「多くの美術品を長期間保有すると、その一部が優れた作品であることが判明する。その結果、ごく一部の高リターンな美術品によりコレクション全体が黒字になる。これが成功する美術商のビジネスモデルなのである。」
優れた美術商は、インデックスファンドのような仕組みでビジネスをしているのです。まず、めぼしい作品があれば根こそぎ買います。気に入ったアーティストの作品を集中的に購入するのではなく、様々なアーティストの作品をポートフォリオとしてまとめて購入します。そして、そのうちの数点が高く評価される日をじっと待ちます。それが全てです。
一生をかけて手に入れた作品の99%は、価値のないものかもしれません。しかし、残りの1%がピカソのような芸術家の作品であるなら、全ての失敗を帳消しにできます。ほとんどが間違いでも、トータルで見れば大正解だったことになるのです。実はビジネスや金融・投資など、世の中の多くのことがこの仕組みで動いているのです。

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閑話休題

【閑】日本人よ、いつになったらマスクを外すんだい

最近、街中でマスクを外している人の姿が、チラホラ目に付くようになりました。とはいえ、そういう人はまだ少数。そのため、私はどうしても彼ら彼女らの顔に目が行ってしまいます。そして、あることに気付きました。マスクを外している女性たちが皆、お綺麗なんです。

3月、世は卒業式シーズン。卒業式にマスクをして出席するか、外して出席するか。アナウンサーが学生さんにインタビューするシーンを、最近テレビでよく見かけます。マスクを外した顔を友達に見られるのが恥ずかしいからと、たいていの学生さんはマスクをして卒業式に出席すると回答します。私はテレビを見ながら、街中ですれ違ったマスクを外した女性たちを思いました。彼女らはマスクを外した顔を他人に見られるのが恥ずかしくはないのだろうか? 確かに、あのルックスにマスクは邪魔でしかないですよね。

そのとき、日本人がマスクを外す時期について、私の脳裏に一つのイメージが浮かんできました。政府が何と言おうと、日本では当面マスクを付けて日常生活を送る人がほとんどでしょう。しかし、ルックスに自信を持つ一部の女性たちは、既にマスクを外し始めているようです。今後、この動きはSNS等を通じて拡散し、「脱マスク=おしゃれ」といったプラスイメージが若者に定着するでしょう。そして、次に流行に敏感な女性たち。そして、それを見た男性たちが脱マスクに動く、というシナリオです。

見映えをことのほか気にする日本人は「マスク着用=ダサイ」となったとき、自らマスクを外すのではないでしょうか。

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【株】株主への手紙

日本経済新聞は2月27日の朝刊でウォーレン・バフェット氏が25日、恒例の「株主への手紙」を公表したと報じました。その内容に関しては既に関係者が色々なところで取上げており、今更私が下手くそな講釈を垂れるまでもないと思います。そこで、以下では日経の記事の中から、私たちが志向する長期投資の理念に通じるバフェットのコメントや考え方をご紹介したいと思います。

1.「恐怖が市場を支配する情勢は投資家の友」
金融市場が動揺した2022年、バフェット率いる投資会社バークシャー・ハザウェイはリーマンショックの2008年に匹敵する投資に動きました。2022年通期の株式投資額と事業投資額の合計は785億ドルに及びます。恐怖相場は優良企業を割安に買える「友」と、バフェットは言います。

2.「目先の経済や相場の予想は役に立たないに等しい」
バフェットは景気予測めいたことはしません。ただ、米国経済のしなやかさ、懐の深さには絶大な信頼を置いています。今回の手紙にも「私たちは米国の追い風を頼りにしており、時折その風が弱まることはあっても推進力は常に戻ってくる」と記しています。

3.「花が咲けば雑草は枯れ行く。長い目で見れば一握りの勝者が素晴らしい働きをするようになる」
悲観の雨で土がぬかるんだ今こそ、種まきの時期かもしれません。賢者は歴史に学び愚者は経験に学ぶといいますが、80年に及ぶバフェットの投資経験は彼にとっては経験でも私たち個人投資家にとっては歴史そのものです。