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不動産

【不】10年で資産を倍にするには

10年で資産を倍にする。言うのは簡単ですが、いざ実行しようとしたら大変です。今回は株式や不動産を使って、はたして10年で資産を倍にできるかどうか、頭の体操をしてみたいと思います。

まず、株式です。一般に株式投資では複利効果を活用して資産を増やします。ご存じの方も多いと思いますが、「72の法則」というものがあります。これは資産が倍になる年数と利回りをかけると72になるという法則です。例えば、利回りが6%なら、だいたい12年で資産が倍になります。(6×12=72) 今回は10年で資産を倍にしたいので、必要な利回りは7.2%となります。皆さん、どうお感じでしょうか。私には7.2%の運用を10年も続ける自信はありません。また、過去の相場から考えると、10年の間に20%程度の相場下落を1回、10%程度の下落を1回は想定しておく必要があると思います。その場合、残りの8年間で必要な利回りは13.6%まで跳ね上がります。(※)
(※) 1×(1-0.2)×(1-0.1)×(1+0.136)^8=1.997
やはり、10年で資産を倍にするのは相当に難易度の高い宿題です。 
また、10年後に資産をキャッシュ化する場合、株式の売却に伴い(NISA等の非課税枠が使えない場合)20%の所得税を覚悟しなければいけません。

次に、不動産です。一般に不動産投資では借り入れによるレバレッジ効果を活用して資産を増やします。今、手元に5,000万円あるとします。これを頭金に銀行から5,000万円を借入れ(金利:0.5%変動、借入れ期間:10年)、1億円の中古一棟賃貸マンションを購入するとします。この場合、毎年の返済額(元利均等返済)は515万円です。(ご参照:高精度計算サイト) したがって、515万円÷1億円=5.15%以上の(実質ベース)賃貸利回りがあれば、10年後にローンを完済し資産倍増を達成することができます。ただ、賃貸経営には固都税を始め、FR・AD等の客付け費用、修繕費・火災保険やリフォーム代等の運用経費等、諸々のコストがかかってきます。そのため、実質ベースで5%となると、都心でも表面利回りベースで8%は必要と思われます。しかし、今どき地方の築古物件やワケあり物件を除いて、そんな高利回り物件にお目にかかることはまずありません。また、賃料の下落や空室・滞納の発生、借入れ金利の上昇(変動金利ローンの場合)等のリスクも考慮する必要があります。やはり不動産の場合も、10年で資産を倍にするのは至難の技のようです。
なお、賃料収入には不動産所得として所得税がかかってきます。また、10年後にキャッシュ化のため投資物件を売却する場合、市場環境によっては売却損が発生する可能性もあります。

今回、株式投資と不動産投資に、「10年後の資産倍増」という同じ目標を掲げてみました。両者を同じ目標の下で比較すると、投資手法の違いや特徴が良く見えてきます。株式投資は、いかに資産を増やしていくかという、足し算的な方法論。一方、不動産投資は、いかに諸々のコストを抑えローンの返済計画を無難に回していくかという、ある意味引き算的な方法論と言えます。そして、両者に共通しているのが、出口のリスクです。株式投資も不動産投資も、投資対象のキャッシュ化が終わって初めて投資の総括と結果の判断が可能となります。


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ライフプラン

【ラ】相続は難しい

相続は難しい、といつも思います。そこで、何でこんなに難しいのか考えてみました。たどりついた答えは、「相続は文脈によって意味合いが変わるから」です。相続関連の同一のワードであっても、それが遺言や遺産分割のような法律に係わる文脈で使われるのか、相続税の節税対策のような税金に係わる文脈で使われるのかによって、意味合いが異なってきます。そして、文脈が不明なまま相続の話をすると、聞き手は話し手の意図を理解できず混乱することになります。弁護士や司法書士を訪問する相談者は法律の問題で悩んでいるでしょうし、税理士を訪問する相談者は税金の問題で悩んでいるものと推測できます。しかし、FPの場合は相談者が抱える問題が何なのか様々なケースが想定され、予断は禁物です。相談者の意図を当初の段階で確認しておかないと、誤った情報を相談者に提供することになりかねません。十分に注意したいものです。
それでは、相続に関連するワードの解釈が文脈によっていかに変わるか、実例をいくつか見ていただきたいと思います。

まずは、「相続財産」です。遺産分割の対象となる財産のことですが、例えば、被相続人が被保険者となっている「死亡保険金」は、民法上は「相続財産」に該当せず、遺産分割の対象にもなりません。保険金受取人の固有の財産とされるからです。また、原則、遺留分(※1-a)の対象にもなりません。(※2) しかし、税法上は「死亡保険金」を「みなし相続財産」として「相続財産」に含め、相続税の計算をします。被相続人の死亡に伴い支給される「死亡退職金」も同様で、民法上は「相続財産」に該当しませんが、税法上は「みなし相続残産」として相続税が課税されます。
さらにややこしいのが、「遺族年金」です。厚生年金や国民年金等公的年金の「遺族年金」は、受給権者の固有の財産として民法上も税法上も「相続財産」に該当しません。しかし、企業年金のうち確定給付企業年金(DB)と確定拠出年金(DC)の「遺族年金」は、死亡退職金に準じて相続税の対象となります。同じ企業年金でも厚生年金基金の「遺族年金」は、公的年金に準じ相続税は課税されません。

次は、「遺産分割の期限」です。民法上はいつまでに遺産分割を終えなければいけないか、特に「期限」は設けられていません。しかし、民法の改正で2023年4月より特別受益(※1-b)や寄与分(※1-c)の主張をする場合に限り、相続開始後10年以内に遺産分割を終える必要が生じました。また、不動産登記法の改正で2024年4月より、相続が発生し不動産の所有権を取得したことを知ったときから3年以内に、不動産の登記を名義変更することが義務付けられました。
税法上は、相続が発生したことを知った日から10ヶ月以内に申告し、相続税を納税しなければいけません。10ヶ月以内に遺産分割協議がまとまらない場合、配偶者控除や小規模宅地の特例等の相続税軽減措置は使えません。ただ、相続税申告時に「3年以内の分割見込書」を提出すれば、遺産分割が成立した時点で更正請求を行うことで、遡って特例の適用を受けて納め過ぎた税金の還付を受けることができます。

最後は、「持ち戻し」についてです。民法での「持ち戻し」とは、生前に被相続人から特別受益を受けた人がいる場合、その特別受益を相続財産に加えて遺産分割を行うことをいいます。これにより相続人間の公平を図ることができます。特別受益に時効という概念はありませんので、どれだけ古い贈与であっても、特別受益として「持ち戻し」の対象とすることができます。ただし、遺留分を計算する際の特別受益については、10年以内と期限が設定されています。
また、税法での「持ち戻し」とは、相続発生の直前に行われた生前贈与はその効果が否認され、贈与された財産を相続財産に加えて相続税を計算する制度をいいます。2023年度税制大綱では、「持ち戻し」の対象が従来の相続開始前3年分から7年分に延長されることとされました。(2024年度の贈与から適用。経過措置あり。)

(※1)ここで、用語を整理しておきます。
(a)遺留分:遺贈や生前贈与などに対抗して主張できる、自己の最低限の相続分のこと。
(b)特別受益:遺贈や生前贈与で被相続人から特別な利益を得た人が相続人の中にいた場合の、その相続人が得た利益のこと。被相続人から贈与された住宅取得資金や結婚資金等が該当。遺産分割の際、その相続人の持ち分から控除します。
(c)寄与分:介護等によって被相続人の財産の維持や増加に貢献した人が相続人の中にいた場合の、その相続人が与えた利益相当のこと。遺産分割の際、貢献に応じてその相続人の持ち分に加算にします。
(※2)最高裁の判決では生命保険金について、「保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、特別受益に準じて持戻しの対象となると解する」とされています。つまり、保険金受取人の受取る死亡保険金が他の相続人とのバランスを大きく崩すほど多額な場合には、保険金受取人が遺留分侵害額請求の対象となりうるということです。

【おまけ】
もうひとつ悩ましいのが、民事信託(家族信託)と相続の関係です。信託財産は民法上「相続財産」ではないとされており、税法上も信託受益権を「みなし相続財産」として取り扱う旨、規定されています。(「みなし相続財産」として課税されるということです。)そのため、第一受益者に続く第二受益者が信託契約に設定されていれば、第一受益者に相続が発生しても信託受益権は遺産分割の対象とならず、信託契約に従って第二受益者に直接承継されます。ただし、第二受益者が設定されていない場合は、他の相続資産と一緒に遺産分割の対象となります。

次に、信託受益権が遺留分侵害額請求の対象になるかです。かつては死亡保険金と同様、「みなし相続財産」であるから遺留分の請求対象とはならない、とする説が有力でした。しかし、現在では受益者の死亡で移転した信託受益権は遺留分の請求対象となるとする説が有力です。民事信託の信託受益権は、原則、遺産分割の対象とならない点では死亡保険金と同様ですが、遺留分の対象となる点で死亡保険金と異なる点に注意が必要です。

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株式

【株】平成バブルと停滞の30年

まずは、下のチャートをご覧下さい。「Trading view」から拝借してきた1950年以降の日経平均のチャートです。まず目につくのが、平成バブルの際だった山の高さと谷の深さです。ITバブル、リーマンショック、コロナショックでの相場下落が可愛く見えます。それから1980年代半ばを境に、まるで別の商品になったかのように日経平均の値動きが活発になっています。これはどういうことでしょうか。

平成バブルというと決まってジュリアナ東京でお立ち台に立って踊る、超ミニスカートのお姉様方が連想されますが、当時を生きた人間の一人として、日々の生活が豊かになったとか、給料がものすごく上がったという実感は乏しかったように記憶しています。確かに、証券会社の若手社員がボーナスで200万円もらったとか、噂には聞いていましたが、一部業種を除く大方の日本人にとってバブルの恩恵は縁遠かったということでしょう。景気の高揚感ない中での資産価格の上昇。これが平成バブルの特徴かもしれません。従来であれば、景気変動にシンクロする形で株式相場も変動していたものが、2度のオイルショック以降の本邦経済の低成長化により実体経済から乖離した株式市場が、糸の切れた凧みたく独自の力学で動くようになったのが1980年代半ばではないかと考えます。そんな地合のところへ、当局により内需拡大・円高回避を企図した大量のマネーが供給されました。低成長化した本邦経済はもはやマネーを需要せず、行き場を失ったマネーは株式・不動産市場に流れ込んで、閉じた空間の中を高速回転しながら資産価格を非合理的な水準へと押し上げたのです。

平成バブルが形成される過程では景気の高揚感はなく、目立った物価の上昇もありませんでした。実体経済と資産市場の乖離。これが平成バブル形成期の特徴だったわけです。しかし、バブル崩壊後、停滞の30年で起こったことは、皮肉にも資産市場と実体経済の連鎖です。資産市場の暴落による金融機関・事業会社のバランスシートの悪化が実体経済の信用収縮に繋がり、デフレスパイラルに巻き込まれた本邦経済は悪化の一途を辿りました。1997年~98年の金融危機から2003年のりそな銀行公的資金投入までの数年間、我が国はまさに亡国の危機に瀕していたと言っても過言ではありません。ひとつ間違えば、隣国のようにIMFの管理下に置かれていた可能性すらあったのです。

足下の株高をバブルという意見もありますが、上のチャートでリーマンショックによる暴落以降の株価の足取りと、平成バブル形成期の株価の足取りを比較してみて下さい。今回の株高が、何度も立ち止まり、地べたを踏み固めながら慎重に上昇してきている様子が分かると思います。当然短期的な調整はあるでしょう。しかし、それをいたずらにバブル、バブルと煽る姿勢には疑問を感じます。そういう方々には、バブル崩壊が日本国民に如何に甚大な犠牲を強いてきたか、今一度、思い起こして頂きたいものです。

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閑話休題

【閑】オレ流シニアライフの過ごし方

3月31日、会社の先輩が65歳で定年退職されました。当面仕事はせず、ソロキャンプでもしながらゆっくりするそうで、羨ましい限りです。私が働いている会社は某M社の関係会社ですが、私はM社を役職定年の55歳で退職し、今の会社に転籍しました。給料はM社時代の4掛けにダウンです。4割引きではありません。4掛け、6割引きです。これが60歳になると嘱託として再雇用され、給料はさらに半分になります。M社の実に2割です。ここまでくると、高校生のバイトと大差ありません。正直、痺れます。
私は今のところ体に異常はなく、仕事に対する熱意もそれなりにあります。しかし、60歳以降もバイト並の給料で目標に追われるハードな日々を過ごすとなると、いつまでモチベーションを維持できるか自信はありません。私はあと1年で60歳ですが、何とか緊張感と熱意を持って65歳までの5年間を過ごしたいと考えています。(※)

私が60歳になるとM社の企業年金と、細々と積み立ててきた個人年金の支給が始ります。これに株式の配当を足せば、どうにか我が家の家計は回りそうです。なので、私が稼ぐ「バイト代」は私が自由に使っても問題はありません。(まだ配偶者の了解はもらっていませんが……) といっても、貧乏家庭に育ち、贅沢=悪との教育を受けてきた私には、生活費以上の浪費はできそうにありません。そうなると、残るお金の使い道は、投資くらいなものです。
タイミングよく2024年には新NISAが始まり、成長投資枠で累計1,200万円まで個別株の投資が可能となります。時給1,200円でも5年間働けば、それなりの投資原資を貯めることができます。株券が紙くずになるのは覚悟のうえで、ハイリスク・ハイリターンな成長株投資で思いっきりキャピタルゲインを狙う。そんな緊張感に満ちたシニアライフも悪くはないでしょう。ただ、これは到底投資とは呼べないものです。決して皆さんにお薦めはしません。

(※)会社員の社会保険メリット
つべこべ言わず、とっとと会社を辞めてバイトしろとのご意見もあるでしょう。私がそうしないのは、会社員には以下のような社会保険のメリットがあるからです。
1.私はM社の健康保険に加入していますが、被扶養者の妻も自己負担なしでM社の健保に加入しています。私がバイトになると、国民健康保険に夫婦で個別に加入することになり、保険料の支払いが倍増します。
2.M社健保には高額療養費の付加給付制度があり、医療費の自己負担(月額)の上限を2万円に抑えることができます。国保には付加給付制度はなく自己負担が8~9万円以上となることもあります。
3.健保には休業時に給料の2/3を補填してくれる傷病手当金制度がありますが、国保にはありません。
4.バイト並の年収200万円でも会社で5年間働けば、65歳からの厚生年金を5.5万円(年額)増額できます。
5.私が60歳で会社を退職すると勤続期間は37年(私は23歳でM社に入社しました)となり、満額の国民年金(78万円)は受給できません。ですが、63歳まで継続雇用となれば3年分増額でき(5.9万円)、満額の国民年金を受給できます。
6.私が65歳まで継続雇用となった場合、5歳年下の妻は国民年金の第三号被保険者として保険料の自己負担なしに満額の国民年金を受給できます。しかし、私が60歳でバイト生活となると、妻は第一号被保険者として16,500円(月額)の保険料を5年間支払わなければなりません。
7.私が60歳以降の給料を60歳時の61%以下に引き下げられた場合、雇用保険から給料の15%相当を給付金として受取ることができます。