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【保】保険に加入する前に考えたいこと

保険は他の金融商品に比べコストの高い商品です。そのため、保険に加入するに当たっては、加入する目的は何か、その目的は保険以外では達成できないのか、についてよく自問したいものです。では、保険以外では達成できないこととは、一体何でしょうか。今回はその点について考えてみたいと思います。

1.万一のリスクに備える~自動車保険、火災保険、定期(死亡)保険~
万一、自動車事故で人を死亡させてしまったら、遺族からいくらくらいの損賠賠償を請求されるでしょうか。ケースバイケースでしょうけど、少なくとも3億円は覚悟しておいた方がいいと思います。そんな金額、急に払えと言われても直ぐ払える人はまずいません。そういう万一のリスク発生時の巨額の支払いに備えるため、私たちは保険に入ります。
3億円なんてお金を運用で用意しようとしたら、20%の高利回りで毎年1000万円ずつ10年間積み立てても足りません。それを自動車保険を使えば、誰もが負担できる保険料で無制限の支払いに備えることができるんです。こんな芸当、保険でないと絶対に無理です。同様のことは、火災保険や定期(死亡)保険でも言えます。
なぜ保険ではこんな魔法みたいなことができるのか。それは、死亡事故や火災、世帯主の死亡といった保険事故の発生確率が極めて低いからです。これらの保険契約者の支払う保険料は、ほとんどが掛け捨てになります。そして、自動車保険なら掛け捨てとなった保険料が、10万人に4人か5人の確率で事故の加害者となった人にまとめて支払われます。仮に、3億円の保険金が10万人あたり5人の割合で支払われるとすると、10万人の保険契約者一人あたりの保険料は、僅か15,000円です。(※)
(※)300,000,000円×5人÷100,000人=15,000円(保険会社の利益、コストは考慮せず)
保険は宝くじのようなものと言う人がいますが、私はこんな宝くじに当たるのはご免です。

2.身近なリスクに備える~医療保険、傷害保険、がん保険、就業不能保険~
病気やケガ、あるいは療養中の収入の減少に備える保険が、医療保険、傷害保険、がん保険、就業不能保険などです。これらの保険事故は身近なリスクであり発生確率が高いため、支払われる保険金に対し保険料は割高になります。(1.の自動車保険等と真逆な関係とお考えください。) では、これらの保険は入る意味はないのでしょうか。
皆さんは、「預金は三角、保険は四角」という言葉を聞かれたことはありますか。預金や投資信託で資産を積み立てる場合、一定の金額になるにはある程度の時間が必要です。横軸に時間、縦軸に積立額(保険金額)を取ると、右肩上がりの直線が描けます。この直線と横軸で囲まれた部分が三角形になることから、「預金は三角」と言われます。これに対し保険の場合、初回の保険料を支払い契約が成立したら即、保険金全額の支払いが可能です(がん保険等は待ち期間の経過後)。 預金と異なり、時間の経過と関係なく一定額の保険金が支払われることから、横軸に水平な直線が描けます。「保険は四角」と言われる所以です。
病気やケガで入院しても公的な健康保険に加入していれば、自己負担は3割で済みます。また、医療費が高額になっても高額療養費制度から補填があるため、医療保険は不要との意見をよく耳にします。ただ、健康保険に入っていても、自己負担がゼロになるわけではありません。入社して間もない方や、十分な収入のない方にとっては、医療費の自己負担が厳しい場合もあります。将来的には給料が上がり十分な貯蓄ができるとしても、当面の支払いを何とか凌ぎたいというケースはあります。そんなときは、時間を買う意味で医療保険に入ることも一手です。「保険は四角」のメリットを生かす作戦です。そして、預金等の蓄えが十分な時期になったら、医療保険を解約すればいいのです。

3.相続に備える~終身(死亡)保険~
相続税における死亡保険金の非課税枠(法定相続人数×500万円)は、皆さんよくご存じだと思います。しかし、生命保険の遺言代替機能については、意外に知られていないのではないでしょうか。どういうことか言いますと、民法では相続発生時に被相続人に係る死亡保険金は相続財産とならず、受取人固有の財産となります。つまり、遺産分割を経由せず、直接受取人に渡すことができるのです。そもそも相続財産ではないので、基本的に遺留分侵害額請求の対象にもなりません。(ご参照 生命保険の歩き方
終身(死亡)保険を利用することで、ターゲットとなる受取人あてに確実に資産を承継することが可能となります。これは相続対策として、非常に強力なツールであると私は考えます。尚、相続税法上は死亡保険金は、みなし相続財産として相続税の課税対象となりますので、注意が必要です。