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年金

【年】確定拠出年金の優位性

2001年10月の確定拠出年金法施行以降、確定拠出年金(DC)の加入者は着実に増加し、2021年3月末時点では企業型と個人型(iDeCo)を合わせたDCの加入者数は941万人と、確定給付企業年金(DB)の加入者数933万人を初めて上回りました。
DCと聞くと、「会社は運用のリスクを従業員に押しつけるのか。けしからん!」という怒りの声が聞こえてきそうですが、実はDCにはDBにはない優れた点がいくつかあります。今回は、そんなDCの優位性についてお話したいと思います。

皆さん、確定給付ってどんな意味だと思いますか?給付が確定しているのだから、会社から受取る年金や一時金の額が予め決まっている制度だと思っていませんか。その理解が100%正解かというと、怪しいです。本来、DB(Defined Benefit)は「確定給付」というより「給付建て」という方が正しいです。日本語の訳がちょっと変なんです。因みに、DC(Defined Contribution)も「確定拠出」より「掛金建て」が正しいです。
そこでDBですが、給付の額が約束されるとの理解は、ときに裏切られます。会社は要件(※)を満たせば、現役の社員の給付を比較的容易に引き下げる(給付減額)ことができるからです。(OB、年金受給権者に関しては、給付減額のハードルは非常に高いです。参照:生保予定利率引き下げと給付減額)
(※)DB給付減額の要件(現役社員の将来給付額の引き下げ)
①会社の経営状況の悪化により給付の減額がやむを得ないなどの一定の場合。
②加入者の1/3以上で組織する労働組合があるときは当該労働組合の同意、及び加入者の2/3以上の同意を得ていること。

私は、経営状況が悪化したからといって給付を減額できる制度を「確定給付」と呼ぶのはミスリードのもとだと思います。またDBに関しては、懲戒処分等で退職した社員について、本来受け取れる年金・一時金を減額して払うことも一般に行われています。
これに対しDCの場合、会社から従業員の口座に振り込まれた掛金は、その時点で従業員のものとなります。会社の経営が悪化しようが倒産しようが、従業員の給付を減額することは許されません。従業員が懲戒解雇となっても、満額の給付を受取ることができます。(これはメリットとは言えないかもしれませんが。)

次に運用の観点から見ていきましょう。年金は長期の制度ですから、年金資産の運用も長期の視点で考えるべきです。しかし実際にはDBの運用は、1年という短期の時間軸で、また多くの会社では目標リターン2.0%~2.5%という低水準で行われています。なぜかというと、会社は年度ごとにDBの運用実績を決算に反映させる必要があるからです。目標リターン(予定利率)が2%の会社でDBの運用実績が-3%の場合、年金資産の5%に相当する金額を損失として決算に計上することになります。(会社によっては複数年で分割計上します)いくら本業が黒字でもDBの運用がマイナスだと、会社決算は赤字に転落する可能性があるのです。それを回避するため、DBを採用する会社は1年という短期で、目標リターンが2%程度の保守的な運用を行うわけです。しかし、このような短期目線でリスク抑制的な運用では、十分なリターンは期待できません。せっかくの長期運用のメリットが死んでしまいます。

これに対し、DCには会社の決算は関係ありません。掛金が従業員の口座に入金された瞬間に会社との縁は切れ、後は従業員のものです。1年という時間に縛られることなく、リスク資産への投資により年金本来の長期運用のメリットを享受することができます。運用結果次第ですが、DBから受け取るよりも多額の年金・一時金を手にすることも可能です。少なくとも、年金のあるべき運用を実現できるという点で、DCはDBよりも優れています。

今後、2022年10月には企業型DC加入者のiDeCo加入要件が緩和され、企業型DC加入者は原則としてiDeCoにも加入できるようになります。(マッチング拠出選択者は除きます) また、2024年12月からは、多くのDB加入者の企業型DC/iDeCoの拠出限度額が引き上げられます。
リスクを愛する個人投資家の皆さん。この機会にDC掛金の増額を検討されてはいかがでしょう。