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【年】国民年金の保険料納付期間延長の裏側

政府は国民年金の保険料納付期間を現行の20歳以上60歳未満の40年間から延長し、65歳までの45年間とする検討に入ったようです。これは平成16年の年金改正で導入したマクロ経済スライドの影響で、大幅な減額が見込まれる国民年金の給付額底上げを図るものです。現在は40年間フルに保険料を払った人で満額の約78万円(年額)が支給されますが、これを45年間に延長すると、78万円×45年/40年=88万円と10万円ほど増加することになります。

保険料の負担に関して個人事業主やフリーランスの方では、納付期間の5年延長で16,590円×12ヶ月×5年=995,400円と100万円ほど増えます。もっとも、国民年金の保険料は全額所得控除の対象となるので、実質的な負担増は(所得税20%、地方税10%として)70万円ほどです。そして、保険料の増加分を国民年金の増加分で割ると、もとを取るのに何年かかるか計算できます。国民年金にも税金や国民健康保険料・介護保険料がかかってきますので、手取りベースで計算すると概算で70万円÷8万円≒9(年)となり、65歳で年金の受取りを開始して74歳以上に長生きすればほぼもとが取れる計算です。

会社員や公務員等で厚生年金に入っている方ではどうかといいますと、再雇用等で65歳まで厚生年金に加入している人の保険料負担は変わりません。年金が10万円増えるのに負担は増えない? 今どきそんなおいしい話があるでしょうか? でも本当のようです。ただこの話、喜んでばかりはいられないんです。

現在、厚生年金に加入している人は会社に勤めている限り、70歳まで保険料を払い続けなければいけません(会社も同額の保険料を負担)。厚生年金は、保険料納付期間と給料の額から計算される2階部分と、国民年金(基礎年金)の1階部分から構成されます。2階部分は60歳以降も保険料を払った期間に応じて年金額は増えていきます。しかし、1階部分は40年を越えて保険料を払っても、年金額は78万円以上には1円も増えません。つまり、20歳で会社に入り65歳で退職した人の場合、60歳以降の5年間は国民年金の保険料をドブに捨てたことと同じです。もう少し上品な言い方をすれば、国に寄付することと同じです。今回、国民年金の保険料納付期間を65歳まで延長することで、ようやく60歳以降に払う保険料を正しく年金額に反映できるようになるということです。本来であれば、年金額に反映されない60歳以降の国民年金保険料相当は、60歳以降に払う厚生年金保険料から控除されて然るべきです。

国によるこの”搾取”は関係者の間では周知の事実でしたが、多くの国民にとっては「聞いてないよ!」だと思います。60歳から65歳の5年間に国に搾取される国民年金の保険料は、16,590円×12×5=約100万円。厚生年金では保険料は労使折半なので、会社員の負担は半分の50万円ほどになります。「聞いてないよ」で済む金額ではありません。国は今回の国民年金の保険料納付期間延長に合わせ、このあたりの事情を国民にきっちり説明すべきでしょう。なぜなら、今後70歳定年時代になれば保険料納付期間を65歳まで延長しても、65歳から70歳の5年間の保険料を国民は搾取され続けるからです。

もうひとつ嫌な話をします。先程、会社員等の厚生年金加入者は国民年金の保険料納付期間延長に伴い、追加負担なしで年金が増額になるとお話しました。しかし、少子高齢化の下、公的年金財政の一層の悪化に繋がるような話を政府(厚労省)がすんなり認めるとは思えません。何か裏があるのではないか。そこで考えられるのが、国民年金(基礎年金)増額のバーターとして、こっそり厚生年金の一部を削減ないし廃止することです。全く根拠はありませんが、私は配偶者加給年金(※)が狙われるのではと危惧しています。そして、その先には国民年金の第三号被保険者制度の廃止があるかもしれません。いずれにしろ、国民年金の保険料納付期間延長の裏側で、厚生年金加入者にとってマイナスとなるトラップを政府(厚労省)に仕掛けられないよう、私たちは危機感を持って議論の行方をウォッチする必要があります。
(※)加入期間が20年以上ある厚生年金加入者が65歳になった時点で、生計維持する65歳未満の配偶者がいるとき、老齢厚生年金にプラスされる年金のこと。約40万円が支給される。