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不動産

【不】これからのマンション管理と資産価値の維持

昨今、マンションの高齢化と所有者の高齢化という二つの老いが問題になっています。築40年の高経年マンションは現在103万戸。これが10年後には2.2倍の232万戸、そして20年後には3.9倍の405万戸に急増すると予測されています。では、二つの老いの何が問題なのでしょうか。マンションが高齢化すると、修繕が必要な箇所が色々と出てきます。適切な時期に適切な修繕を行わないとマンションの劣化が進行し、気が付いたときにはスラム化していたなんてことになりかねません。また、所有者が高齢化することで、収入の減少→管理費・修繕積立金の負担力低下、となり適切な修繕を実施できないリスクが高まります。さらに、相続が発生した場合に子供が親のマンションを引き継がず、相続登記をしないまま空き家になってしまうケースも増えてきます。

このような状況に鑑み、マンションの老朽化を抑制し周辺への危害を防止するための維持管理の適正化と、老朽化が進み維持修繕が困難なマンションを再生するという二つの取り組みが国交省主導で始まりました。
一つ目の取り組みは、地方公共団体による管理計画認定制度と勧告制度です。これは、地方公共団体が適切な管理計画を有する優良なマンションを認定し、認定を取得したマンションは金利の引き下げ措置(フラット35、共有部分リフォーム融資)等のメリットが受けられるというものです。管理不全マンションに対しては、法律に基づき地方公共団体が助言や指導等を行います。近い将来、マンションの資産価値は認定の取得状況に左右されるようになると思われます。
二つ目の取り組みとして、マンションの再生の円滑化を推進するため、マンション敷地売却制度や容積率緩和制度の対象が、耐震性不足のマンション以外にも拡充されます。これにより、外壁の剥落危険性や配管設備の腐食、火災安全性不足等の問題を抱えるマンションも建替え等を行えるようになります。

前説が長くなりましたが、6月8日の日経新聞に「マンションの管理不全を防ぐ」と題した記事が掲載されました。そこでは、マンション管理組合の業務を効率化するスタートアップのサービスが広がってきたとして、大規模修繕工事を計画する管理組合と工事会社をマッチングする無料サービスや、マンションの管理計画と資産価値の相関性をリポートするサービスが紹介されています。マンションで二つの老いが進行する中、いかに低コストで効果的に大規模修繕工事を行えるかが管理組合に問われています。そして、それが資産価値の維持と周辺住宅への悪影響の回避に繋がります。
大規模修繕工事を低コストで行うためには、管理組合が工事会社の選定を管理会社に丸投げせず、管理会社が作成した設計書を使い管理組合が工事会社から直接見積もりを取ることが必要です。(これにより管理会社による工事会社へのバックマージン要求等の不正行為を抑制することができます。) ただ、従来は管理組合に工事会社の情報が乏しく、工事会社に直接見積もりを取ることは困難でした。しかし、管理組合と工事会社をマッチングするサービスが普及することで、管理組合が工事見積もりを作成することが容易になると思われます。
また、マンションの管理計画と資産価値の相関性が広く認知されれば、所有者のマンション管理への関心が高まり、管理組合への積極的な関与や管理費・修繕積立金の値上げへの理解が進むことが期待されます。

RCマンションの法定耐用年数は47年ですが、メンテナンス次第で150年まで延命できるとの研究結果もあります。超高齢化社会における住居の中心はマンションです。今後マンションは長期にわたり価値を維持できる現物資産として、現役世代だけでなく次世代にとっても重宝すべき対象となるでしょう。