今回は難しい理屈は抜きにして、日経平均オプションを使ってポジションを加工する方法について見ていきたいと思います。まず、右上の先物とオプションの損益曲線のパターンをご確認下さい。先物を買い持ちした場合、日経平均株価が上昇すると(横軸右方向)、損益はプラスに拡大します(縦軸上方向)。つまり、「先物の買い」の損益曲線は、右肩上がりの曲線となります。逆に、「先物の売り」の損益曲線は右肩下がりの曲線となります。
次に、「コールオプション(買う権利)の買い」の損益曲線です。基本的に「先物の買い」と同じですが、損失の下限(=オプションプレミアム)が予め決まっているので、下方で水平方向に折れ曲がっています。「コールオプションの売り」は、コールの買いの損益曲線を上下逆さま(プラスマイナスが逆)にした形となります。
「プットオプション(売る権利)の買い」の損益曲線は、やはり損失の下限が決まっているため、「先物の売り」の損益曲線の下方を水平方向に折り曲げた形となります。「プットオプションの売り」は、プットの買いの損益曲線を上下逆さまにした形となります。以上を抑えた上で、これらの損益曲線を組み合わせるとどうなるか、以下で見ていきましょう。
まず、「先物の買い」に「28500Cの売り」と「27500Pの買い」を組合せます。すると、「先物の買い」の損益曲線は、以下のように2ヶ所で折れ曲がった曲線に変形されます。
ここでは日経平均が28500円以上に上昇した領域と、27500円以下に下落した領域で損益曲線が水平になっています。つまり、このポジションは日経平均が28500円以上に上昇しても収益はそれ以上増加しない反面、27500円以下に下落しても損失はそれ以上拡大しません。そして、このポジションを作る過程で売買したオプション取引から、別途120円の収益を計上することができます。(28500Cの売りで+740円、27500Pの買いでー620円)
このポジションは日経平均に強気であるものの、28500円を超えて上昇するほど強気ではなく、むしろ相場下落に対し保険もかけておきたいという微妙な投資家ニーズに対応しています。
次に「28500Cの売り」と「27500Pの売り」を組み合わせてみます。その場合の損益曲線は以下の通りです。
ここでは日経平均が27500円~28500円のレンジに留まっている限り損失は発生しません。そして、28500Cと27500Pの売りから、740円+620円=1360円の収益を獲得することができます。このポジションは、相場が膠着状態となり低ボラティリティが続くという相場観を持った投資家のニーズにマッチします。先物の買いや売りだけでは、投資家のこのようなニーズに応えることはできません。尚、このオプション戦略は「ストラングルの売り」と言います。
最後に、最もシンプルなオプション戦略をご紹介しましょう。今貴方は日経平均先物の買いポジションを持っているものとします。目先、相場は強含むもののインフレ懸念もあり長続きはしないと考え、28500円で売却したいと考えています。この場合、日経平均先物を28500円で売り指し値してもいいのですが、28500Cを売るという手もあります。日経平均先物が28500円を超えてくるとコールオプションの買い手は権利行使をするので、コールオプションの売り手である貴方は日経平均先物を28500円で売らなければいけません。日経平均先物を28500円で売るという行為は、指し値もオプションも同じですが、オプションの場合、売り手はオプションプレミアム740円を受け取ることができます。そのため、経済効果としては28500+740=29240円で日経平均先物を売ったのと同じことになります。コールオプションを使ったこの戦略は、「カバードコール」と言います。
また、貴方は目先相場は弱いものの、インフレ終息観測から年末に向け相場は回復するとの見立てであり、相場が下がれば押し目を拾いたいと考えています。この場合、日経平均先物を27500円で買い指し値する代わりに、27500Pを売るという手もあります。日経平均先物が27500円を下回るとプットオプションは権利行使されるので、オプションの売り手である貴方は日経平均先物を27500円で買わなければいけません。また、貴方はオプションプレミアムとして、買い手から620円を受け取ることができます。そのため、経済効果としては27500ー620=26880円で日経平均先物を買ったのと同じことになります。プットオプションを使ったこの戦略は、「ターゲットバイイング」と言います。
このように、現物や先物だけでなくオプションを組み合わせることで、多様な投資家の相場観に沿ったポジションを柔軟に構築することが可能となります。オプションはポジションを加工する工具のようなもの。貴方もオプションを使って魅力的なポジションを作ってみませんか?