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【株】外債投資について

我が家にはいざというときのために、嫁さんから株式投資に回すことを固く禁じられたキャッシュがあります。ただ、2%程度のインフレが今後も続くとなると、キャッシュは10年で2割弱、20年で約3分の1減価することになります。これは見過ごすわけにいかないと思い、キャッシュの一部を外債(米国債)に投資することにしました。私が取引しているM証券では特定口座で外債も購入可能ですが、オンライントレードは新発債のみ可能で既発債はNGとのことでした。既発債を買う場合は、証券会社に電話して発注することになります。

そこでまず、外債のリターンとリスクを見ていきます。今、私が検討しているのは、残存期間が7年~15年程度の米国長期債です。この年限の米国債の税引き前複利利回り(リターン)は足下で4%弱です。債券ですので償還まで持ち切れば、米国がデフォルトを起こさない限りリターンは保証されます。ただ、途中で売却する場合は、長期金利の水準によってリターンはブレます。債券の利回りが1%動いたときに価格が何%動くかを表すデュレーション(正確には修正デュレーション)という指標があります。例えば、MAXIS米国国債7ー10年上場投信では、12月末時点のデュレーションは7.4年です(月次レポーより)。この上場投信(ETF)には残存期間7-8年、8-9年、9-10年の米国債がそれぞれ3分の1ずつ入っていますが、金利が1%上がれば、このファンドの基準価格は1%×7.4年=7.4%下落します。金利が2%上がればファンド価格は14.8%下落しますが、4%の米国長期金利が1年で2%も上昇することはまずありません。株と比べ債券はかなりリスクが低いことが分かります。(個別株なら1日で10%下落することも珍しくありません。)

しかし、これはあくまでドルベースのお話です。外債は利金(クーポン)も元本も現地通貨で支払われますが、それを円で受取ると為替のリスクが絡んできます。今1ドル=145円のドル円が償還時にいくらになっているかで、円ベースのリターンは大きくブレます。例えば償還時のドル円が1ドル=120円だったとします。このとき、(1-120円/145円)×100=17.2%の為替差損が発生します。さらに、1ドル=100円まで円高が進むと31%の為替差損が発生します。このように、(高格付け)外債を償還まで持ち切れば現地通貨ベースではローリスクの商品となりますが、円ベースでは為替のリスクにさらされてハイリスクの商品となります。M証券では顧客の申し出がない限り、利金・元本は円での受取りとなりますが、事前に手続きをすれば外貨建てMMFでの受取りが可能です。我が家の資産は現在100%円資産なので、為替リスクを分散するため利金も元本もドル建てMMFで受取りたいと思います。

次に、外債取引にかかる手数料、税金を見ていきます。外債の売買手数料、口座管理手数料は無料です。ただし、債券購入時や利金・償還金支払時の為替取引において、通貨ごとにスプレッドが加算されます。(例、15時インターバンク仲値を基準にドル買い+25銭・売り-25銭、ユーロ買い+50銭・売り-50銭等。証券会社で異なる。) また、外債の売買価格にもスプレッドが加算されます。つまり、外債取引に係る売買手数料は無料とされているものの、投資家は債券と為替の取引でスプレッド分だけ割高に買い、割安に売ることで、間接的に手数料を負担していることになります。
2016年以降、特定口座で公社債を取り扱うことができるようになりましたが、源泉徴収ありの特定口座では、利金・償還差益(譲渡益)に対し20.315%が源泉徴収されます。また、償還差損(譲渡損)が発生した場合は、特定口座内で他の証券の利益と内部通算が可能となります。(残念ながらNISAでは現物の外債は買えません。)

現在、米国債市場では3月FOMCでの利下げ開始シナリオが修正を迫られており、3%台に低下していた10年債利回りは再度4%台に上昇しています。今後の利回り水準を見極めながら、米国債券の購入タイミングを探っていきたいと思います。世間では高利回りのエマージング国債やハイイールド債を薦める向きもありますが、個人的には現行の利回り水準なら先進国国債で十分だと考えます。どうせリスクを取るなら株で取る方がリ-ズナブルです。(それでも手を出される方は、エマージング国債の為替リスクやカントリーリスク、ハイイールド債の信用リスク、そして両債券の流動性リスクに十分注意して下さい。)