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不動産

【不】不動産投資のリスク管理①

不動産投資の本にはメリットとして、ローンを借りやすい、他人が借金を払ってくれる、時間を買うことができる、などが上げられることが多いです。しかし、レバレッジをきかせやすいというのは、両刃の剣だと思います。
私は不動産投資のメリットは、インフレヘッジと賃料収入による安定的な運用が期待できることだと考えます。不動産投資は衣食住のうち住を供給するものであり、食料、衣料を供給する仕事とともに、人がいる限り需要がなくなることはありません。景気の波に大きな影響を受ける株式投資に比べ、安定した収益を得られる点が魅力です。

ただ、不動産投資には株式投資にはない固有のリスクがあります。それは、不動産が食品や衣料品と同様に、現物=生モノであることです。現物である以上、時間とともに品質が劣化することは避けられません。不動産投資は時間との勝負です。
株式投資が時間を味方にした長期投資であることと対照的です。不動産投資の本質は、運用の開示時点から出口を意識し、中期的な目線でアクティブに物件の入替えを行っていくもの、と私は理解しています。

私はメールで某業者さんから物件情報を送ってもらっています。メールには賃貸物件の損益シミュレーションが添付されており、参考にさせて頂きます。賃料の下落、空室の発生、出口戦略(10年後に売却)が保守的に織り込まれた上質なシミュレーションだと思います。ただ、1点気になる箇所があります。それは売却価格です。

このシミュレーションでは、収益還元法(=純収益NOI/投資利回り)で売却価格が算出されており、投資利回りは物件購入時(つまり今現在)のものが適用されています。足元の不動産投資利回りは、マイナス金利やデフレ経済の影響で史上最低水準にあります。その利回りが今後10年も続くと見るのは、いささか楽観的に過ぎる気がします。

不動産投資の本では物件の長期保有・持ち切りが前提となっているせいか、投資利回りについて言及されることは少ないです。しかし、中期での物件入替えを前提とした場合、対応が困難という点で最大のリスクは投資利回りの上昇ではないでしょうか。以下の例で、出口(売却)時における投資利回りの上昇インパクトを見ていきましょう。なお、以下では便宜上、投資利回りをネット等で簡単に検索できる表面利回りで代用しています。

東京23区の築浅RCマンションの表面利回りは概ね4%前後でしょうか。仮に純収益が1000万円の物件があるとすると、この物件の価格は1000万円÷4%=2億5000万円、となります。10年後も純収益は不変であったとして、利回りが①6%、②8%、③10%に上昇した場合、売却価格は次のようになります。①1億6700万円、②1億2500万円、③1億円。10年間で稼いだ純収益1億円は、一瞬で消失してしまいます。因みに、リーマンショック後の2009年当時、23区内の新築RCの表面利回りは7~9%の水準でした。10年後に利回りがそこまで上昇しない保証はありません。

不動産業者は知ってか知らずか出口に言及することは少なく、物件の持ち切りを前提とした生命保険の代替効果や年金の代替効果を強調します。しかし、築後数十年の築古マンションに、保険や年金の代わりになるキャッシュフローを期待するのは厳しいです。むしろ経年劣化による修繕費の増加、賃料の下落、空室の増加、賃借人の属性悪化による滞納・トラブルの増加と、手残りの減少・手出しの増加が予想されます。
そんな負動産を押し付けられる家族こそ、いい迷惑だと思いませんか。



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株式

【株】最高値

証券の世界では「最高値」と書いて、「さいたかね」と読みます。国語的には「さいこうち」が正しいのかもしれません。テレビ東京のモーサテで著名なエコノミストがいつも「さいこうね」と言うので、ひょっとしたら「さいこうね」もありなのかもしれません。

最高値を「さいこうね」と読むのが正しいとすると、その反対のケースは「最低値」「さいていね」となりますが、マーケット関係者は「最安値」を使い「さいやすね」と読みます。だとすると、やっぱり「さいたかね」が正しいのではないでしょうか。

この話題に触れるたび、昔、女友達に「あんたって、サイテーね!」と罵られたことを思い出します。

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株式

【株】B/Sを使って稼げ

いつだったが、誰からだったか。「本当の金持ちはバランスシートを使ってリッチになる」という話を聞いて、雷に打たれたようなショックを受けました。
私が「ほったらかし教」の信者になった瞬間です。

本当の金持ちは、売買を繰り返し収益を積み上げて資産を増やす(P/Lアプローチ)のではなく、一定の残高をキープしてマーケットの上昇による評価額の増加で資産を増やす(B/Sアプローチ)、という話です。

例えていうなら、ショベルカーで土砂を1m、2mと積み上げるのがP/Lアプローチ。地殻変動による大地の隆起で3,000m級の山脈を形成するのがB/Sアプローチ。

不器用で面倒くさがりな私は、今日もぼんやりと地殻変動を待っています。
(※)P/L:損益計算書、B/S:貸借対照表

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年金

【年】トンチン年金と国民年金基金

人生100年時代を前に終身年金のニーズが高まっています。今回は国内の生命保険会社から発売されている終身年金(トンチン年金)と厚生年金、及び国民年金基金を比較してみたいと思います。

トンチン年金とは、イタリアの銀行家ロレンツォ・トンティが考案した終身年金の一種です。日本では一般的な個人年金保険よりも解約時や年金受給前死亡時の返戻金の返戻率を低く設定した、低解約返戻金型の個人終身年金保険のことをいいます。
日本でも生命保険会社から販売されていますが、国内の超低金利を受けて、保険料対比での給付額(年金額)はかなり寂しいものになっています。【表1】に国内生保が発売しているトンチン年金の事例を載せてあります。

A生保は55歳から70歳までの15年間に月額54,000円の保険料を払い込み、70歳から終身、年額511,100円の年金を受け取ることができます。そして元が取れるのは19年後です。89歳より長生きすれば、その年数分だけ得になります。B生保の場合は、20.3年になります。なんだかなあ、て感じですか。ただ、100歳まで生きるかもしれない長寿リスクのヘッジにはなると思います。

次に厚生年金を使い、同じように終身年金の増額を図ったらどうなるでしょうか。
厚生年金の保険料は給料の9.15%(従業員負担分)であり、年金額は年収累計の約0.55%です。今、A生保のトンチン年金と同じ54,000円を厚生年金の保険料として払うとします。その場合の給料は、54,000円÷9.15%=590,164円です。この給料を55歳から70歳まで15年間受け取ると、その間の年収累計は、590,164円×12月×15年=106,229,520円となります。そして、15年間の労働に伴う厚生年金の増加分は、106,229,520円×0.55%=584,262円、となります。

これはA生保のトンチン年金511,100円よりも7万円以上多い額です。ただ、厚生年金には保証期間はありません。同様に、B生保のトンチン年金600,000円に対し、厚生年金は732,708円となり13万円以上多くなります。厚生年金は国の制度で融通が利きにくいというデメリットはありますが、60歳以降も会社勤めをすることが可能であれば、厚生年金を使って終身年金の増額を図った方が、民間の個人年金を使うよりも有利なことがお分かりいただけると思います。

個人事業主の方やフリーランスの方は厚生年金に加入することはできませんが、国民年金基金で終身年金の増額を図ることができます。【表1】では50歳1ヶ月の男性が60歳まで毎月保険料16,510円を払い、65歳から終身、年額118,940円の年金を受け取る事例を載せています。(保証期間はなし) この場合、元を取るのは16.5年後となり、トンチン年金より有利な結果になっています。

また、トンチン年金の保険料は生命保険料控除の対象となり、4万円まで所得控除が可能です。一方、国民年金基金の保険料は社会保険料控除の対象で、控除額に上限はなく税制面で大変優遇されています。なお、国民年金基金の保険料は月額68,000円が上限です。また、iDeCoをやっている方は、iDeCo掛金と合算して月額68,000円が上限となりますので、ご注意ください。

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株式

【株】インフレが春を呼ぶ

インフレとは何か。日本語に直訳しますと「通貨膨張」となります。お金が風船みたいに膨らむことです。今、大根が1本100円でスーパーの店頭で売られているとしましょう。ところが、その後天候不順で1本200円に値上がりしたとします。

大根1本=100円 ⇒ 大根1本=200円 ………①

①式は大根1本の価値をお金(円)で表現しており、大根の価値が上がった様子が分かります。ここで①式の両辺を100円・200円でそれぞれ割ってみます。そうすると、

1円=大根0.01本 ⇒ 1円=大根0.005本 ………②

となります。②式では、お金(円)の価値を大根の本数で表現しています。この式より、天候不順によってお金の価値が、大根0.01本から大根0.005本に低下した様子が分かります。
お金とモノの関係性において、モノの価値が上がり、お金の価値が下がる現象。それがインフレ(インフレーション)です。

インフレが発生するメカニズムは2つあります。中学校の公民の教科書に載っていた需要と供給のグラフを思い出してください。1つ目は、景気が良くなって需要曲線が右にシフトし、それに伴って価格が上昇する【グラフ1】のケースです。これは「良いインフレ」と言われます。2つ目は、モノの生産に係るコストが上昇し供給曲線が左にシフトし価格が上昇する【グラフ2】のケースです。これは「悪いインフレ」と言われます。

コロナ禍で凍り付いた人々の購買意欲がアフターコロナに溶け出し、消費が急拡大すれば「良いインフレ」となります。しかし今、足元で起こりつつあるのは、エネルギー価格や人件費、物流費といったコスト上昇型の「悪いインフレ」です。
では、「悪いインフレ」の何が悪いのでしょう。【グラフ2】をご覧ください。価格上昇(青矢印)に伴って生産量が減少(赤矢印)しています。生産量の減少は、景気悪化につながります。そして、価格上昇に歯止めがかからない場合、ハイパーインフレという恐ろしい状態になります。天文学的な水準までモノの値段が上がり、お金は価値がほとんどない、ただの紙切れになります。こうなると、人々は誰もお金を持ちたいと思わず、物々交換を始めます。21世紀から3000年前に逆戻りです。
通常はそこまでインフレが悪化する前に、中央銀行の金融引き締めで物価上昇にストップがかかるものですが、政治圧力で妨害されたりするとハイパーインフレになるリスクがあります。(最近のトルコの例をご参照ください)

また、インフレは私たち投資家にも影響を与えます。お金の価値が下がりモノの価値が上がるので、キャッシュに近い運用商品は価格が下落します。預貯金、国債、社債などが真っ先に影響を受けます。株式は「良いインフレ」の状態であれば、企業収益の増加とともに価格上昇しますが、「悪いインフレ」となり景気が悪化すると下落するリスクがあります。マンション等の不動産は「良いインフレ」「悪いインフレ」とも物価上昇に連動した賃料の上昇により、価格の上昇が期待できます。
また、穀物・原油等の商品ETFや、高級時計・美術品・骨董品等もインフレ下での投資対象として有効です。そして、お金が人々の信頼を失う中、インフレ下での究極の投資商品は金(ゴールド)となります。
これらの商品は株式や債券と異なり、キャッシュフローを生みません。インフレ下ではインカムゲインより稀少性が重視されます。

もっとも、モノの値段(物価)の上昇が、景気に悪影響を与えない程度のマイルドなインフレであれば、経済にとって好ましいと考えられています。実際、日銀は物価上昇率2%を政策目標に置いています。
私は個人的には、ポストコロナにおいてインフレが日本で進行した場合(石油以外にも食料品やティッシュペーパーなどで値上がりが生じています)、マイルドな水準に留まる可能性は高いと思います。
その場合マイルドとはいえ、お金の価値は下がるので、キャッシュ→モノのシフトが起こるはずです。それは、バブル以降、長くこの国を苦しめてきたデフレからの脱却を意味します。デフレの主因である人々の過剰なキャッシュ信仰が崩れ、積み上がった家計の預貯金や企業の内部留保が投資に向かうことが期待されます。
そのとき日本経済に、ようやく春がやってきます。

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年金

【年】マクロ経済スライドと公的年金の将来

公的年金(国民年金、厚生年金)を巡る議論は最近落ち着いてきた感がありますが、今でも厚生年金破綻説が雑誌やテレビで取り上げられることがあります。はっきり申し上げておきますが、日本政府が潰れるようなことにならない限り、公的年金が破綻することはありません。なぜなら、公的年金が破綻する前に、年金の減額や保険料の引き上げ等によって、破綻を回避する方法はいくらでもあるからです。
ですから、私たちがライフプランやリタイアメントプランを考える際は、公的年金を土台に据えることから始めればいいです。ただし、現状の公的年金の水準(例えばモデル年金額では月額22万円)が将来的に保証されるとは考えず、2割減とか3割減とかに割り引いて設定しておく方が無難です。割り引いた後の公的年金の収入をベースに、必要となる生活費との足らずまいをどう埋めるか。それを次に考えましょう。

公的年金の世界では、2004年に大幅な改革が行われました。それは、保険料水準固定方式とマクロ経済スライドの導入です。保険料水準固定方式というのは、保険料の水準が厚生年金では18.3%、国民年金では16,900円(平成16年価格)に固定されたことをいいます。それまで年金の給付水準を維持するため、ずっと保険料の引き上げが行われており、今後も保険料の引き上げが続くと国民の負担が限界に達する恐れがありました。そこで保険料の固定化を図ったわけです。
しかし、本来なら引き上げが必要な保険料を固定すると、逆に年金の給付水準が維持できなくなります。そこで、年金の給付水準を調整(減額)する仕組みとして導入されたのがマクロ経済スライドです。

公的年金は通常、賃金や物価が上昇すると年金額も平行して増加する仕組みになっていますが、一定期間、年金額の伸びを調整する(賃金や物価が上昇するほどには年金額を増やさない)ことで年金の実質額を減額する仕組み、それがマクロ経済スライドです。
公的年金全体の被保険者数の減少と平均余命の伸びから計算される年金額の調整率(スライド調整率といいます)は、0.1%(2021年度値)とされています。例えば、物価上昇率が1.5%であったとき、実際の年金額の改定率は1.5%-0.1%=1.4%となります。このように、本来上昇するはずだった水準まで年金額を引き上げないことで、保険料を固定したこととのバランスを図っているのです。

マクロ経済スライドの問題点は、「調整は名目額を下回らない範囲で行う」とされていることです。どういうことかと言いますと、物価上昇率がー0.4%であったときに調整率をフルに適用するとー0.4%-0.1%=-0.5%となりますが、このケースではスライドは実施せず、年金額の改定は物価上昇率のー0.4%に留めます。つまり、物価上昇率がマイナスになったら、マクロ経済スライドは停止されるのです。
しかし、バブル以降日本はデフレにはまっており、物価上昇率がマイナスの状況が続いています。名目下限を維持する限り、デフレ下ではマクロ経済スライドは絵に描いた餅です。一方、その間にも年金財政の悪化は着実に進行していきます。
今後インフレが到来すれば事態は改善しますが、やはり、名目下限維持ルールは撤廃し、マクロ経済スライドをフルに適用する方向に政策転換することが望まれます。
(平成30年以降、年金額の改定に反映しきれなかったマクロ経済スライドの調整率を翌年度以降に繰り越すキャリーオーバー制度が導入されています。)

最後に、所得代替率のお話をします。保険料水準固定方式の導入により従前の年金水準を維持することが難しくなり、マクロ経済スライドで年金の水準を調整することになったとご説明しましたが、その年金額の水準を示すものが所得代替率です。
「現役男子の平均手取り収入額(ボーナス込み)」に対する「モデル世帯の年金額」の比率のことです。現役時代の収入の何割を年金でもらえるかをザックリ表す数字として用いられたりしますが、誤解されている部分もありますので正確な内容をご理解いただきたいと思います。
厚労省の試算では、現在60%の所得代替率が、2050年度には50%程度に低下することが示されています。(試算のケースにより減少幅は異なります)

モデル世帯年金額(22万円)÷現役男子の平均手取り収入額(35.7万円)=61.7%(2019年度数値、月額)

所得代替率を見る場合は、いくつか注意点があります。まず、分母の「現役男子の平均手取り収入」は手取りベースなのに、分子の「モデル世帯の年金額」は税金・社会保険料込みの数値です。公的年金からは税金以外にも、介護保険料や国民健康保険料が天引きされるので、手取りベースでは所得代替率は低下します。
それから「モデル世帯年金額」ですが、夫が40年間厚生年金に加入し、同い年で専業主婦の妻が40年間国民年金に加入、さらに夫婦同時に年金受給を開始するという、かなりレアなケースが前提になっています。単身世帯の所得代替率はもっと低くなることに注意が必要です。
このように、所得代替率50%ということで、現役時代の収入の50%を年金でもらえると安易に期待すると、裏切られる可能性が大です。
そうならないためにも、年金定期便等を使い、実際にご自身の年金の受取額をシミュレーションされることをお勧めします。

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閑話休題

【閑】言い間違い、聞き間違い

人はよく間違えるものです。
私が初めて大阪勤務になったとき、地下鉄御堂筋線で会社へ通っていました。御堂筋線の駅では「大阪フケイからのお願いです」というアナウンスが頻繁に流れていました。私はそれまで地元愛知県と東京での勤務経験しかなかったので、(県警や警視庁でなく)府警というワードに馴染みがありませんでした。私のポンコツ頭はフケイ→府警の変換ができず、フケイ→婦警と変換しました。私は愚かにも「さすが芸どころ大阪。婦人警官がAKBのようなグループを作って広報活動をしてるんだ!」と勝手に思い込んだのです。
体が火照るのを覚えながら「府警からのお願い」を聞いたあの頃を、今も懐かしく思い出します。


私の学生時代の友人の話です。ある日、彼は彼女とドライブに行こうと高速道路のインターチェンジへ向かいました。途中でカーラジオから「○○から△△間が交通事故のため現在フツウになっています」というニュースが流れてきたそうです。それを聞いた友人は○○~△△間がフツウ電車並みの低速に速度制限されていると解釈し、そのままインターチェンジへ向かいました。
不通が解除されたのは、5時間後のことです。

まだあります。私はカレーが大好物で、ココイチには大変お世話になりました。ある日、会社近くのココイチに行き、私の定番:イカカレー・チーズミックス・7辛・300g(普通盛り)をオーダーしました。店員さんは新人さんだったのか、落ち着きなくオーダーを取る様子に一抹の不安を感じました。
数分後、店員さんの明るい声とともに、巨大な皿に山と盛られたカレーが出てきました。「イカカレー・チーズミックス・3辛・700g。お待たせしました!」

最後は昔、私があるクイズ番組を見ていた時の出来事です。有名なモデル出身の女性タレントが回答者でした。クイズの問題は、語尾が○○シャンで終わる言葉を言いなさいというものです。マジシャンとかミュージシャン、エステティシャンなどです。
制限時間が迫る中、その女性タレントは回答に詰まりながら思わず、「金シャン、銀シャン」(※)と叫んだのでした。
(※)金さん銀さん~今は亡き名古屋市在住の100歳超のご長寿姉妹

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ライフプラン

【ラ】二世代連結ライフプラン

遺産相続のトラブルは、その多くが遺産総額5,000万円以下の中流家庭で起こっています。法定相続人3人の相続税非課税枠は、3,000万円+600万円×3人=4,800万円となりますから、配偶者+子2人が相続人のケースでは5,000万円はほぼ非課税で相続可能です。にもかかわらずトラブルが発生するということは、遺産分割で揉めるということでしょう。
このように、相続対策は不要な中流家庭においても遺産分割に係るトラブル防止の観点から、相続対策は必須のアイテムとなっています。

また、高齢者の多くが認知症に至ります。80歳後半では男性の35%・女性の44%が、95歳では男性の51%・女性の85%が認知症になるといわれています。万全の相続対策を講じたとしても、それ以前に到来する介護・認知症ステージにおける対策が不十分では、安心できる高齢期を送ることはままなりません。私は、介護・認知症対策(プラン)を子世代と共有しておくことをお勧めします。
いざ自分が介護・認知症の状態になったとき、どのようなサポート態勢を望むのか、金銭的負担はどうするのか、年金、預貯金、保険等の資産状況を事前に子世代に開示するとともに、意見交換しておくのです。

子世代にとっても、介護・認知症の対応に係る親世代の希望や経済状況の情報に触れることはウェルカムだと思います。親世代の介護に係るコストは巨額になりますから、予め親世代から情報入手した上で、子世代のライフプランに織り込むことが望ましいです。
また、相続・遺言対策(プラン)の一環で親世代の資産の一部を子世代に前広に贈与することで、子世代のライフプランを充実したものにできます。

今後の人生100年時代を念頭におくと、上図にあるように親世代のライフプラン~リタイアメントプラン~介護・認知症プラン~相続・遺言プランを、子世代のライフプランと連結することで、2世代のプランをより満足度の高いものにできると思います。
自分の認知症発症後の世話について子供に相談したい親や、親の資産の生前贈与について相談したい子供は多いでしょう。親子がざっくばらんに意見を交わす場を設定し、話し合いの結果を二世代連結ライフプランにまとめるのはFPの仕事です。
必要に応じ、司法書士、税理士、社労士等の士族をコーディネートするのはFPにしかできません。

年金や医療等の保険料負担で高齢者世代に仕送りを強いられる若年世代の貧困が、社会問題化しています。経済的に余裕のある高齢者世代は、若年世代にお返しをする必要があります。そのためのスキームの一つが、今回お話した二世代連結ライフプランです。


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ライフプラン

【ラ】人生100年時代を生きる

1月7日付けの日経新聞朝刊に「今世紀中に人類の最終寿命が130歳まで延びる可能性は13%」とした論文が発表されたとの記事が掲載されました。人生100年時代というワードは最近色々なところで目にしますが、実際すぐそこまで来ているようです。でも、「人生100年時代とは」と問われて、即答できる人は少ないでしょう。別に正解があるわけではありませんが、私は次のように理解しています。
健康寿命を全うした後のステージを、高度な医療・介護のサポートを受けながら、尊厳を維持し自身の意思に従ってゴールに向けて進むこと。

人生100年時代=健康寿命100年時代、であればいうことはないのですが、残念ながらそうはいきません。がんや認知症の早期発見が可能となり、健康寿命もそれなりに延びるとは思います。しかし、現在であれば命を諦めざるを得ない病気も、医療の進歩により治療を続けながら生き長らえることができる。これが近未来の人生100年時代の姿ではないでしょうか。
このことは、そのまま高齢期の生活費、医療費、介護費の増大につながります。そして、超高齢化は少子化と同時に進行するので、公的医療・介護の財政は逼迫し、私たちの自己負担増大は避けられないでしょう。
一方、高齢期の収入の中心である公的年金(国民年金、厚生年金)は、今後マクロ経済スライドの影響で年金額が徐々に減額される予定になっています。さらに、海外で高まっているインフレ圧力が国内に伝播した場合は、年金額の実質価値が減少することになります。

このように、人生100年時代を展望した場合、高齢期のコストは上昇し収入は低下するとの憂鬱な未来が待っています。では、私たちは人生100年時代を前に、何をすればいいのでしょうか?先にもお話しましたが、これからは国が所管する公的制度(医療・介護)をあてにすることは危険です。自分自身の身は、自分で守らなければいけません。現在であれば、最後は生活保護というセーフティネットに頼れますが、今後は無理かもしれません。

では、自助努力といって具体的に何をすればいいのか。私はまず可能な範囲で、「終身もの」で超高齢期の様々なリスクをヘッジすることだと考えます。「終身もの」とは「終身」と名の付く金融商品を称して私が名付けたものです。終身年金、終身医療保険や終身がん保険などです。長寿リスクをヘッジする終身年金としては、現下のマイナス金利下で役に立つのは公的年金しかありません。民間でもトンチン年金という終身年金が売られていますが、割高な保険料に対し年金額が小さく有効ではないです。できるだけ長く働き公的年金の年金額を積み増すとともに、繰下げを行うことが効果的です。
医療保険やがん保険では、終身保障のタイプに加入することで今後の公的医療の給付減や自己負担の増加リスクをヘッジします。ただ、民間の医療保険やがん保険には給付日数や給付額に上限が設定されており、完全なリスクヘッジにはなりませんので、ご注意ください。尚、単に「終身保険」と言われる生命保険は死亡保険の類ですから、ここでの検討対象にはなりません。

次に、本業を定年退職した後も副業と資産運用を継続することで、年金収入の減少リスクをヘッジすることが考えられます。定年退職後も続けるのですから、好きな仕事、楽しい仕事を副業にできれば理想的です。また、本業退職後は資産を取り崩すのみではなく、一部で運用を継続し配当を得ることができれば、さらに年金の補完になります。
今後のインフレリスクに対抗するには、実質価値が減価する預貯金等キャッシュ運用は避けた方がよく、現物投資が効果的です。株式投資もいいですが、不動産投資はさら効果的です。今から現物投資のノウハウ習得に努めるといいでしょう。また、通貨の分散も必要になるかもしれません。

最近、FIREがブームとなっていますが、私を含めシニア世代こそFIREのエッセンスを学ぶ必要があるように思います。


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株式

【株】リスク抑制型ファンド

最近、iDeCoをはじめ個人向け投信のラインナップに、リスク抑制型ファンドが加えられるケースが増えてきました。リスクを抑制するスキームも様々です。代表的なものは、リスク量が増加した資産の比率を下げ(売り)、リスク量の低い資産の比率を上げる(買う)ことで、ファンド全体のリスク量を一定に保つような商品です。例えば、株式市場が下落すると株式のリスク量が増加するので、株式を売って債券を買うような感じです。逆に、株式市場が上昇すると株式のリスク量は減少するので、株式を買って債券を売ります。尚、リスク量は、各資産のボラティリティ(標準偏差)やVIX指数を目安にするものが多いようです。

ここで注目していただきたいのは、このスキームが相場の順張りになっている点です。株式市場が下落すれば株を売り、相場が上がれば株を買います。これに対し、伝統的なバランスファンドのスキームは全く逆で、相場の逆張りとなります。株式市場が下落し株式の時価構成比が計画値を下回ったら、株式を買い比率を上げます。株式市場が上昇し時価構成比が計画値を上回ったら、株式を売って比率を下げます。このように、リスク抑制型ファンドのオペレーションは、伝統的バランスファンドの真逆となります。

リスク抑制型ファンドは相場の順張り、伝統的バランスファンドは相場の逆張りです。自ずと得意な相場環境は異なります。リスク抑制型ファンドは、相場が一方向にトレンドを持って動くとき、一方向の下落相場や上昇相場において強みを発揮します。しかし、ボックス相場は苦手です。下値で売り上値で買いを繰り返し、コストがかさみ収益を食いつぶします。一方、伝統的バランスファンドはボックス相場で強みを発揮します。下値で買い上値で売りを繰り返し、収益を積み上げます。

リスク抑制型ファンドを購入する際は、抑制されるのはその名の通りリスクであることに留意ください。相場が急落し株式のリスクが急騰するようなケースでは、この手のファンドは一気に株式を売却するので、確かにそれ以上のリスク上昇は抑制できます。しかし、急落であく抜けした相場が一転上昇に転じるような展開になると、このファンドは相場について行くことができません。結果、他ファンドのパフォーマンスに大きく劣後することになります。繰り返しますが、リスク抑制型ファンドはリスクを抑制することでリスク量の上限をキープするものであって、リターンの下限を保証するものではありません。利回り保証の幻想に惑わされることなく、商品性をきっちり理解したうえで購入しましょう。

今やリスク抑制型の運用スキームは、個人投資家だけでなく、金融機関や年金基金等の機関投資家にも普及しています。世界的にもリスク抑制型の基本スキームである順張り運用は、伝統的な逆張り運用のシェアを侵食しています。これは私見ですが、昨今の株式市場、特に日経平均株価のボラティリティ高騰の要因の一つに、リスク抑制型運用の普及があるのではないでしょうか。