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【株】インフレと株高の関係

3月19日に日銀は賃金の上昇を伴う2%の物価安定目標の実現が見通せる状況になったとして、マイナス金利政策を解除しました。事前にはマイナス金利解除により為替が円高に転じるとの観測もありましたが、3月27日には一時1ドル=152円近辺まで円安が進行しました。慌てた財務省は日銀・金融庁と3者会合を開いて介入をちらつかせながら、必死で市場を牽制しました。一方、円安を見た株式市場は、再度41,000円トライの様相です。ここもとの株高の根底には、日本経済のデフレ脱却→インフレ転換期待があると言われています。でも、インフレになればモノの値段が上がって国民の生活は苦しくなるはずなのに、なぜ株は上がるのでしょう? 今回は、この点について考えてみたいと思います。

今、黒字企業A社と赤字企業B社があるとします。直近決算ではA社が売上100・売上原価80で粗利が20、B社は売上60・売上原価80で粗利が▲20とします。A社、B社とも、今期は原材料費が10%上がったので、製品価格を10%値上げしました。(尚、両社とも製品価格の値上げに伴う売上数量の減少はないものとします。) この場合、A社、B社の今期決算はどうなるでしょうか。
A社の売上は100×1.1=110、売上原価は80×1.1=88、で粗利は110-88=22となり前期比+2の増益です。B社の売上は60×1.1=66、売上原価は80×1.1=88、で粗利は66ー88=▲22で前期比▲2の減益です。このように同じ10%の原材料費の上昇でも、黒字企業には増益要因として、赤字企業には減益要因として効いてくることが分かります。また、原材料費の上昇を製品価格に転嫁できない黒字企業や、製品価格に転嫁できても売上数量の減少を招いてしまう黒字企業にとっても、原材料費の上昇は減益要因となります。

このように、インフレは競争力のある黒字企業にとっては利益を伸ばすチャンスとなる反面、競争力のない企業、赤字企業にとっては業績が悪化するきっかけとなります。マクロ的な視点で見ると、インフレは企業の優勝劣敗を明確化し、ゾンビ企業を淘汰することで、経済の効率性・生産性をアップします。
海外投資家は、東証が主導する企業経営改革に加え、インフレによる日本企業のパフォーマンス向上に期待し、日本株を買っているものと思われます。
逆に、デフレはぬるま湯の中で競争力のない企業や赤字企業を温存し、経済のパフォーマンスを低下させます。デフレ下の日本で、海外投資家が日本株を売り続けたのは当然のことです。