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株式

【株】インフレとデフレ

「インフレとは」とネットで検索すると、「商品の値段が上がること」と返ってきます。逆にデフレであれば、「商品の値段が下がること」となります。決して間違いではありませんが、もう少し正確に言うと、モノ(やサービス)の価値がお金(マネー)の価値よりも上がっていく状態をインフレ、モノの価値がお金の価値よりも下がっていく状態をデフレといいます。インフレもデフレも、モノとお金の相対関係において語る必要があります。

デフレの世界では、お金(マネー)は王様です。お金を抱えて待っていれば、時間の経過とともにモノの値段が下がっていくので、待てば待つほどモノを安く買うことができるからです。現在100円のチョコレートが1年後に90円で買えるとすれば、100円のお金を1年間保有することで10円儲かることと同じです。このとき、お金の収益率は10%です。ノーリスク・ノーリターンのはずのキャッシュが、ノーリスク・ハイリターンに化けます。デフレは努力も創意工夫も無用の世界です。お金を保有することだけが最適な戦略となります。平成バブル崩壊後デフレ下の日本において、企業は設備投資を圧縮、研究開発も疎かにして内部留保をひたすら蓄えました。家計も預金を積み上げました。実はこれらはとても合理的な行動だったのです。しかし、ミクロ的には正しい行動も、マクロ的には問題となるケースがあります。合成の誤謬というやつです。日本中の企業、家計が30年にわたって「寝太郎」を続けた結果、経営者からアニマルスピリットは失われ、日本の生産性は主要先進国で最低レベルに転落しました。社会は閉塞感に覆われ、若者は草食動物化しました。唯一元気なのは、一定の現金収入が保証された年金受給者たるお年寄りだけです。

でも、そんな灰色の季節も終わろうとしています。これから我が国はインフレの到来とともにトロピカルでアクティブな季節に向かいます。インフレ下では、お金(マネー)の価値は時間の経過とともに減価していきます。企業は一刻も早くお金をモノに転換する必要に迫られます。経営者はアニマルスピリットを発揮し、積極的な設備投資で生産性向上を図り、また優秀な人材を獲得しなければなりません。インフレは努力や創意工夫が報われる世界です。ぼーとしていたら、あっという間に競合に置いていかれます。
家計も今までのように思考停止状態で預金を積み上げることはやめ、投資の道を歩まなければなりません。確かに、平成バブル、リーマンショック、コロナバブルと、マーケットの下落を間近で見てきた日本の家計が、キャッシュ至上主義を脱却するのは困難なことです。しかし、時代の変化に合わせ、お金との付き合い方を見直すときに来ているのではないでしょうか。

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閑話休題

【閑】霊峰白山の屈辱

私にとって夏は登山とダイビングの季節です。ただ、7月下旬から1ヶ月半はほぼ毎週ダイビングで海に向かうので、7月中旬が夏山へ行くラストチャンスとなります。今年は早くからターゲットを白山に絞り、春先から体力作りをしてきました。GWに登った小秀山(1,982m)から恵那山(2,191m)、焼岳(2,455m)、経ヶ岳(2,296m)と2千メートル峰を順にクリアしてきました。そして、三連休の中日、7月16日に満を持して霊峰白山(2,702m)に挑んだのです。

岐阜県側の平瀬道登山口をスタートし、途中、大倉山避難小屋を経由して御前峰まで標高差1,500mを5時間で登るコースです。(往復のコースタイムは8時間半) 加賀の白山といえば、富士山、立山と並び、霊峰三山として登山者以外にもよく知られた山。観光地のイメージが強いですが、登山コースとしては結構タフな山です。しかし、私には十分な事前準備をしたとの自負とともに、コースタイムに余裕で下山できる確信がありました。直前に白山を登ったユーチューバーの中には、7時間で大丈夫との声もあったほどです。
でも、現実は厳しいです。登山口から3時間程の大倉山避難小屋に到着する頃に私は早くも体力を使い果たし、それからは10分進んでは休むの繰り返しで大幅なペースダウン。超特急のようなハイピッチの若者に抜かれ、60~70代と思しき超熟女の一団に抜かれ、ついには小学生のちびっ子にも抜かれる始末です。5時間で登る予定が御前峰に着いたのはスタートから7時間後の11時半でした。(結局、登り下りに10時間もかかってしまいました。)

山に登る目的や理由は人それぞれですが、山が好きという点では共通していると思います。でも、私は山が好きではありません。しんどいし、汗はいっぱい出るし、ヒルやマダニに血は吸われるし……。だったら、なんで山に登るんだ?、となりますが、「健康のため」が最大の理由です。私は高血圧、高血糖、高コレステロール、高尿酸、と成人病の総合商社です。そのため、かかり付け医から運動を欠かさないよう、強く指導を受けています。また、人に語れる趣味を一つ二つ持っておきたかったという事情もあります。そして、今回、山に登る目的がもうひとつできました。それは、自分を見つめ直すことです。霊峰白山に登り、私は自分の体力のなさを痛感しました。今の私は小学生にも敵いません。ちょっとばかりトレーニングをしたからと、いい気になっていました。高齢の先輩方が霊峰を軽々と登っていかれる傍らで私は疲れ果て、無様によだれを垂らしながらひっくり返っていたのです。
しかし、今回の山行で私は自分を見つめ直し、至らない点を発見することができました。ダメな点は改善すればいい話です。新たな目標に向かって元気がモリモリと湧いてきました。来年は私も霊峰を駆け上がりたいものです。

最後に、この3連休、北アルプスの剣、穂高をはじめ山岳事故で大勢の方がお亡くなりになりました。心よりお悔やみ申し上げます。

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株式

【株】金融政策変更の思惑

事前予想を下回る6月CPI・PPIの発表を受け、米国ではインフレの鎮静化がはっきりしてきました。市場関係者は、次回FOMC(7月25日26日)での利上げが最後となるとの見立てでほぼ一致しています。一方、日本では5月期の毎月勤労統計調査で、名目賃金の伸びが事前予想を上回りました。そんな中、7月7日に日経新聞と共同通信で報じられた内田日銀副総裁のインタビュー記事が、金融政策変更の思惑を呼んでいます。内田氏はインタビューで「(金融政策の変更は)金融仲介機能や市場機能に配慮しつつ、いかにうまく金融緩和を継続するかという観点からバランスをとって判断していきたい」と述べています。この「バランス」の一語が金融政策変更を示唆すると、市場関係者は受け止めたようです。

変更の思惑を呼んでいる金融政策とは、いうまでもなくYCC(イールドカーブ・コントロール)のことです。昨年12月20日に、日銀は長期金利の変動幅を従来の±0.25%から±0.5%に拡大するYCCの変更を発表しました。このとき市場関係者の多くは金融緩和縮小を予想していなかったため、日銀はだまし討ちをしたと批判されました。一足先に金融政策の変更を行っているFRBは、丁寧に市場と対話しながら金利の引き上げを行っており、市場関係者が重視する金融政策の透明性が担保されています。それに比べ日銀は配慮が足りないというわけです。
しかし、これはYCCの宿命です。事前にYCCの変更を市場に察知されたなら、投機筋に国債の空売りを仕掛けられ、YCCの変更は意味を失います。YCCの変更は市場のサプライズがなければ失敗に終わるのです。YCCの採用を一度は検討したFRBが採用を見送った理由が、この出口戦略の困難さです。

金融政策の変更を巡り、市場関係者が嫌う「霧」が今、日本のマーケットに立ちこめています。インフレの鎮静化による長期金利の低下から、米国ではグロース株を中心に株価の上昇が続いていますが、日経平均株価は一時の勢いを失っています。背景には、このマーケットの「霧」の存在があります。次回の日銀金融政策決定会合は7月27日28日です。それまで金融政策変更の思惑に振らされる日々が続くでしょう。
私は植田日銀総裁が日銀プロパーでなく、経済学者出身である点がポイントではないかと考えます。確かにCPIは日銀が目標に掲げる前年比2%を上回る状態が続いており、YCCを変更する環境は整いつつあります。しかし、早すぎる金融引締めは、バブル崩壊後長らく日本経済を苦しめてきたデフレを根絶する芽を摘んでしまう恐れがあります。日本と米国では、そもそも置かれた環境が異なります。植田総裁はインフレ抑制よりもデフレ退治を優先するのではないでしょうか。
いずれにしろ、長期金利が急騰するようなことがあれば、日銀は積極的な国債の買い入れで金利を抑え込みに入るはずで、過度な悲観は不要だと思います。

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閑話休題

【閑】日本語は難しい

先日、ある会議の後で、70代の先輩からふいに年齢を聞かれました。私は「59歳です。年が明けると60歳になります。」と答えました。先輩は驚いた様子で、「えっ、59歳? お前、若いな。」と言ったのです。私は先輩が私のことを年齢より若く見えるから驚いたのだと理解し、即座に「ありがとうございます」とお礼を言いました。
家に帰ってから私は、「ちょっと、待てよ」と思いました。ひょっとしたら先輩は、私の見た目より実年齢が若かったことに驚いたのではないか。つまり、私は先輩が驚くほど老け込んだジジイということではないか。その可能性もあることに気付いたのです。

真実は先輩に確認するほかありませんが、改めて日本語の難しさを実感した次第です。英語であれば、”You are younger than you look.”と”You look younger than you are. ” で明確に区別できますが、日本語では比較対照をブラインドにして、単に「君、若いな。」で済ましがちです。これでは最悪の場合、話し手と聞き手で解釈が180度異なり、意図しない誤解が生じてしまいます。

これと似たようなことって、気付かないところで色々起こってそうで怖いですね。



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保険

【保】共済と保険

最近ある方から共済と保険の違いは何かと、質問を受けました。どちらも掛金(保険料)を払って、将来のリスクに備える点では同じです。運営主体が農協や生協、全労済等の非営利団体か保険会社かといった点や、共済は保険に比べ給付に制限がつくことが多い反面、掛金が低額である点等に違いがあります。また、共済には運営主体の決算で剰余金が発生した場合、契約者に割戻金が支払われるという特有の制度もあります。
それでは、共済と保険の商品性を具体的に比較していきたいと思います。ここで全商品を取り上げる余裕はないので、共済を代表して全労済が契約引受団体となっている「こくみん共済」の「医療保障タイプ」にご登場いただきましょう。保障内容は下表の通りです。

まず目に付くのが、掛金が加入時の年齢・性別に関わらず2,300円と一定であることです。(医療保険では、保険料は加入年齢が低いほど、また男性より女性の方が安くなります。) それから、各種共済金の給付額が、60歳以降5歳ごとに引き下げられています。

次に、某生保の医療保険を見てみます。保障内容は「医療保障タイプ」に近いものにしています。

上記医療保険の場合、先進医療給付金の最高限度が2,000万円になっているほかは、概ね「医療保障タイプ」の保障内容を下回っています。死亡・重度障害保障はありませんし、通院給付金は入院や手術、放射線治療に伴う通院に限定されており、「医療保障タイプ」の通院共済金よりも給付要件が厳しくなっています。(ただし、通院共済金は病気による通院は給付対象外です。) 医療保険の入院給付金は日額5,000円・支給限度120日で、「医療保障タイプ」の日額10,000円・支給限度180日を下回ります。

このように、上表の医療保険は保障内容が一見「医療保障タイプ」よりも劣っているのに、保険料は「医療保障タイプ」よりも高くなっています。これはどういうことでしょうか? 保険の運営主体が保険会社という営利団体だということもありますが、医療保険が終身で保障を約束している影響が大きいです。つまり、「医療保障タイプ」は病気になる確率がアップする60歳以降の保障が大きく切り下がり、「掛捨て」となる可能性が高いのに対し、医療保険は終身保障のため「元を取れる」可能性があり、その分だけ保険料が高く設定されているわけです。

掛捨ての安い掛金を選ぶか、終身保障の高い保険料を選ぶか、個人の好みの問題です。ただ、「時間を買う」医療保険の原則からいうと、共済を選ぶ方が合理的です。つまり、貯蓄が十分な金額になるまでの期間は医療費の負担を低額の共済で凌ぎ、十分な貯蓄ができたら共済は解約する。高齢期の医療費は公的医療と貯蓄で対応する。これがスマートな共済/保険との付き合い方です。しかし、お守りとして、また、財布代わりに使いたい人には保険の方が向いているかもしれません。

最後に、共済の割戻金について触れます。県民共済愛知県生協のパンフレットによると、令和3年の割戻率の実績について、こども型で掛金の13.89%、総合保障型・入院保障型、医療特約で36.71%、熟年型・熟年入院型、塾年医療特約で28.46%とのことです。相当に魅力的な数字です。低額な共済の掛金の実質的な負担が、さらに低下するという話です。共済、恐るべし!

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株式

【株】投資を楽しむ

株式投資をやるからには、儲けを狙うだけでなくプロセスを楽しみたい、他人にアピールしたい。そんな人にとって、ほったらかし投資ほどつまらないものはないでしょう。大事なお金をつぎ込んでいるのに、投資をしたら後は見ているだけなんてもったいない。そんな声が聞こえてきます。

投資を楽しみ、投資をアピールするには、マーケットに参加して積極的にトレードを行うことが必要です。スリルを味わいたいなら、信用取引や先物・オプションといったデリバティブ取引が効果的です。

ただ、残念ながら投資の儲けと楽しみは両立しません。投資は、他人の嫌がるリスクを引き受ける代わりに報酬(儲け)をいただく行為です。本来、そこに「楽しむ」余地はありません。投資は辛いものです。ですから、投資を楽しもうと思ったら、儲けに係わらず「エンタメ料」を別途支払わなければいけません。「ええじゃないか」や「スチールドラゴン2000」なみのスリルが味わえる信用取引やデリバティブ取引は、かなり高額な料金となります。

ケチで小心者の私は、地味にほったらかし投資を続けています。

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株式

【株】2つのユーロ円

今回は、金融関係者にとっては常識かもしれませんが、一般には余り知られていない、そんなお話です。
6月13日の日経新聞朝刊に、「東急、CBで600億円調達」と題する記事が掲載されました。「東急は12日、ユーロ円建ての新株予約権付社債(転換社債=CB)を発行し、……」と記事は続きます。この記事、よく読むと何か変だと思いませんか? ユーロは言うまでもなく、EU加盟国の共通通貨のことです。東急が通貨ユーロを調達したのなら、冒頭の記事は「東急は……、ユーロ建ての……」となるはずですが、「東急は……、ユーロ円建ての……」となっています。「ユーロ円」って「1ユーロ=150円」みたいな、ユーロと円の交換比率のことじゃなかったっけ? ユーロ建て? 円建て? 東急はどっちで調達したの? 記事の内容が意味不明です。
ここで先にネタばらしをすると、「ユーロ円」には「ユーロと円の交換比率」の他に、もうひとつ別の意味があるんです。

話は1950年代に遡ります。当時、アメリカとソ連(今のロシア)は、資本主義V共産主義というイデオロギーのもと、世界を2分して激しく対立していました。そして、ソ連陣営に属する東欧諸国は、アメリカによる差し押えを回避するため、自国の中央銀行が保有する米ドルを西欧の銀行に預けていました。米国の主権が及ばない国外に預けられたドルは「ユーロドル」と呼ばれました。その後、「ユーロドル」に倣って自国市場外で取引されるドル以外の通貨も、ユーロなら「ユーロユーロ」、円なら「ユーロ円」と呼ばれるようになったのです。冒頭の記事を、東急が(日本国内にある円ではなく)海外にある円を調達する、という意味で読めばすっきり腹落ちします。

「ユーロ円」がどちらの意味で使われているのかは、その都度文脈から判断するしかありません。ややこしいですね。

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不動産

【不】再考、持家か賃貸か?

以前、持家と賃貸、どっちが得か議論しました。(持ち家と賃貸) そのときの結論は、同一グレードの物件での単純なコスト比較なら持家が得だけれども、定性面を含めた総合的な評価では持家が得か賃貸が得かは一概に言えない、というものでした。今回は、不動産投資家にとって持家と賃貸のどっちが得か、改めて考えてみたいと思います。一般の方の場合とはまた違った結論になるかもしれません。 

収益物件への投資を考える人が住宅ローンで持家を購入すると、その分アパートローンの与信枠を食われてしまい、以後の投資に支障が出ます。不動産投資家は自身の与信枠をアパートローンに集中する方が合理的です。たとえ、ハイパフォーマーであっても社宅等の借り住まいで我慢し、不動産投資による賃料収入の獲得に専念すべきです。また、リスクテイクに余力のある方には、併行して株式投資を行うことをお薦めします。不動産投資のレバレッジ効果と株式投資の複利効果の両輪で、資産は大きく成長することでしょう。知らんけど。

そこまでリスクを取りたくないという方には、ヤドカリ投資をお薦めします。これは、持家の住み替えを繰り返しながら、キャピタルゲインを積み上げていく投資手法です。ヤドカリ投資では、まず自己居住用の持家を住宅ローンで購入します。ここで大切なことは、将来高く売却できる可能性のある物件を選ぶことです。そして、値上がりのタイミングを捉えて物件を売却します。ヤドカリ投資の良い点は、意に反し物件が値下がりしても、そのまま住み続けていれば損失が顕在化しないことです。投資の失敗が致命傷となりにくいのです。
また、ヤドカリ投資で購入するのは自宅であるため、低利の住宅ローンを利用できます。さらには、持家を売却して利益が出た場合、所有していた期間に係わらず3,000万円までの特別控除を使えます。これは、収益物件にはない優遇措置で、ヤドカリ投資の大きなメリットです。なお、ヤドカリ投資では条件を満たせば住宅ローン控除も使えますが、3,000万円の特別控除との併用はできませんので注意が必要です。

不動産投資家にとって持家と賃貸のどっちが得か。アパートローンを利用して収益物件への投資を考えている方なら賃貸が得、ヤドカリ投資を考えている方なら持家が得、となります。

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株式

【株】初夏の大花火大会

なぜ、相場は上がるのか? 投資経験のない人に聞いたら、「買う人がいるから」という答えが返ってくるでしょう。でも、私たち投資家は知っています。相場が上がるのは、「売る人がいるから」ということを。

確かに、上げ相場は買う人がいなければ始りません。でも、買い方が中心の上げ相場は、上げ幅が限られ長続きしません。想定外の急激な上げ相場の裏には、必ず売り方の踏み上げ(損失覚悟の買い戻し)があります。相場が上がる⇒売り方が踏む&新たに売建てる⇒相場が上がる⇒売り方が踏む&新たに売建てる⇒……⇒……。この売り回転が効いている限り、上げ相場は続きます。因みに、足下の日経平均の売り方の状況(空売り比率)は下表の通りです。

(出所:日経平均リアルタイムチャート

日経平均が27,000円台に留まっていた3月下旬から空売り比率は40%台のまま、変わっていません。今回の上げ相場で売り回転が効いている証拠です。しかし、売り方は相場の上昇で損失を被りながら、なぜ性懲りも無く再び売りを入れるのでしょうか。それは、彼らが近い将来、相場が下げに転じると確信しているからです。
米国の債務上限問題や金融機関の破綻、日本でも物価上昇や日銀金融政策の変更観測等、売り材料を上げたらきりがありません。明日、相場が急落したとしても何の不思議もないです。でも、市場に弱気なムードが漂っているときほど、意外と上げ相場は続くものです。

では、この上昇相場はいつ終わるのでしょうか? 正確なところは、神様に聞いてみないと分かりませんが、予兆を探る手立てならあります。それは、空売り比率の変化に注目することです。売り方が相場の下落に賭けることを諦め、売りポジションをたたんで空売比率が低下したら要注意です。上げ相場継続の条件である売り回転が効かなくなるからです。
売り方の買い戻しは、最初は少しずつですが徐々にヒートアップし、最終局面ではパニック的な様相を呈します。もはや株価を意識する冷静さは失われ、われ先にと日経平均を買いまくります。そして、初夏の夜を彩る打ち上げ花火のように、株価は天空を目指します。
恐らくこの瞬間、日経平均株価は、当面の高値を付けることになるでしょう。

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不動産

【不】不動産投資そもそも論

不動産投資は最終目標(ゴール)をどこに置くかによって、大きく2つのタイプに分かれると思います。

一つ目は、保有する物件数の極大化を図るタイプです。30年~40年後、全ての借入れの返済を終えた時点でひとつでも多くの物件を保有し、豊富な賃料収入で悠々自適なシニアライフを目指す。そんな、ストック志向型のアプローチです。
このタイプでは、フルローン、オーバーローンを厭わず、可能な限りの借入れを行い、レバレッジをフルに効かせて物件を買い進めていきます。しかし、借入れの返済計画に狂いが生じた途端、自己破産に一直線となる危険性と隣り合わせであることを忘れてはいけません。

それだけのリスクを負って物件を買い進めた先にある到達点ですが、そこには厳しい現実が待っています。40年後、手元にある築古マンション達に、キャッシュフローを生み出す力がどれだけ残っているでしょうか。ほとんどが幽霊マンションと化し、空室が大量に発生したり、設備の老朽化で高額な修繕費が必要になったりと、毎年増加するキャッシュアウトに悩まされることでしょう。これらの負動産に年金の代わりは期待できません。「こんなはずじゃなかった」と嘆いてみても、あとの祭りです。
そもそも、大きくレバレッジを効かせたストック志向型のアプローチは、米国のようなインフレ傾向の国で、時間の経過とともに借入れの実質価値が減価していく環境でこそ有効な戦略です。デフレ傾向の我が国においては、借入れの実質価値が時間とともに増大するので、大きなレバレッジは不利です。(今後、日本でもインフレ傾向が定着すれば、ストック志向型アプローチが有効となるでしょう。)

二つ目は、各種リスクへ配慮しつつ物件の購入・売却を繰り返し、獲得するキャッシュの極大化を図るタイプで、フロー志向型のアプローチです。
このタイプは、十分な頭金と借入れで物件を購入し、物件の賃料で短期間での借入れ返済を目指します。完済したところで改めて借入れを行い、もう1物件を購入、以後2物件で借入れを返済していきます。当然、返済スピードは早くなります。その後も完済と同時に借入れを行い、物件を買い増していきます。そして、購入した物件は5年~10年単位で売却し、別の物件に入れ替えます。購入と売却のサイクルの中で、賃料利回りと借入れ金利のスプレッドを抜いていくイメージです。これはJREITや私募不動産ファンドが採用する戦略と同じで、日本のように低金利な環境で有効となります。
なお、このタイプは頭金の確保がネックとなりますが、ローンの破綻リスクは限定的です。また、継続的に物件の売却と購入を繰り返すので、流動性も確保できます。さらには、物件の購入と売却のタイミングを分散しており、金利や不動産市場等マクロ環境の変動リスクにも対応可能です。
不動産市場が低迷している場合、物件の売却には不利ですが、物件を購入するには最高の環境です。この戦略では売りと買いがセットとなるので、不動産市況の影響を中和することができます。

以上、不動産投資の2つのアプローチについてお話をしましたが、実際は両者の中間を行く投資家の方が多いと思います。また、今回は主に不動産投資のマクロ的な側面に触れましたが、優良物件の仕込み方や物件の管理手法等ミクロ的な側面も運用の成否を分ける重要なファクターとなります。