カテゴリー
年金

【年】国民年金の保険料納付期間延長の裏側

政府は国民年金の保険料納付期間を現行の20歳以上60歳未満の40年間から延長し、65歳までの45年間とする検討に入ったようです。これは平成16年の年金改正で導入したマクロ経済スライドの影響で、大幅な減額が見込まれる国民年金の給付額底上げを図るものです。現在は40年間フルに保険料を払った人で満額の約78万円(年額)が支給されますが、これを45年間に延長すると、78万円×45年/40年=88万円と10万円ほど増加することになります。

保険料の負担に関して個人事業主やフリーランスの方では、納付期間の5年延長で16,590円×12ヶ月×5年=995,400円と100万円ほど増えます。もっとも、国民年金の保険料は全額所得控除の対象となるので、実質的な負担増は(所得税20%、地方税10%として)70万円ほどです。そして、保険料の増加分を国民年金の増加分で割ると、もとを取るのに何年かかるか計算できます。国民年金にも税金や国民健康保険料・介護保険料がかかってきますので、手取りベースで計算すると概算で70万円÷8万円≒9(年)となり、65歳で年金の受取りを開始して74歳以上に長生きすればほぼもとが取れる計算です。

会社員や公務員等で厚生年金に入っている方ではどうかといいますと、再雇用等で65歳まで厚生年金に加入している人の保険料負担は変わりません。年金が10万円増えるのに負担は増えない? 今どきそんなおいしい話があるでしょうか? でも本当のようです。ただこの話、喜んでばかりはいられないんです。

現在、厚生年金に加入している人は会社に勤めている限り、70歳まで保険料を払い続けなければいけません(会社も同額の保険料を負担)。厚生年金は、保険料納付期間と給料の額から計算される2階部分と、国民年金(基礎年金)の1階部分から構成されます。2階部分は60歳以降も保険料を払った期間に応じて年金額は増えていきます。しかし、1階部分は40年を越えて保険料を払っても、年金額は78万円以上には1円も増えません。つまり、20歳で会社に入り65歳で退職した人の場合、60歳以降の5年間は国民年金の保険料をドブに捨てたことと同じです。もう少し上品な言い方をすれば、国に寄付することと同じです。今回、国民年金の保険料納付期間を65歳まで延長することで、ようやく60歳以降に払う保険料を正しく年金額に反映できるようになるということです。本来であれば、年金額に反映されない60歳以降の国民年金保険料相当は、60歳以降に払う厚生年金保険料から控除されて然るべきです。

国によるこの”搾取”は関係者の間では周知の事実でしたが、多くの国民にとっては「聞いてないよ!」だと思います。60歳から65歳の5年間に国に搾取される国民年金の保険料は、16,590円×12×5=約100万円。厚生年金では保険料は労使折半なので、会社員の負担は半分の50万円ほどになります。「聞いてないよ」で済む金額ではありません。国は今回の国民年金の保険料納付期間延長に合わせ、このあたりの事情を国民にきっちり説明すべきでしょう。なぜなら、今後70歳定年時代になれば保険料納付期間を65歳まで延長しても、65歳から70歳の5年間の保険料を国民は搾取され続けるからです。

もうひとつ嫌な話をします。先程、会社員等の厚生年金加入者は国民年金の保険料納付期間延長に伴い、追加負担なしで年金が増額になるとお話しました。しかし、少子高齢化の下、公的年金財政の一層の悪化に繋がるような話を政府(厚労省)がすんなり認めるとは思えません。何か裏があるのではないか。そこで考えられるのが、国民年金(基礎年金)増額のバーターとして、こっそり厚生年金の一部を削減ないし廃止することです。全く根拠はありませんが、私は配偶者加給年金(※)が狙われるのではと危惧しています。そして、その先には国民年金の第三号被保険者制度の廃止があるかもしれません。いずれにしろ、国民年金の保険料納付期間延長の裏側で、厚生年金加入者にとってマイナスとなるトラップを政府(厚労省)に仕掛けられないよう、私たちは危機感を持って議論の行方をウォッチする必要があります。
(※)加入期間が20年以上ある厚生年金加入者が65歳になった時点で、生計維持する65歳未満の配偶者がいるとき、老齢厚生年金にプラスされる年金のこと。約40万円が支給される。

カテゴリー
不動産

【不】リースバックとリバースモゲージ

住み慣れた自宅に住み続けながら自宅を使って資金調達する方法として、リースバックとリバースモゲージがあります。リースバックは自宅を不動産業者に売却すると同時に不動産業者と賃貸借契約を結ぶことで、売却後も賃借人として家賃を払いながら(元)自宅に住み続けるという商品です。自宅の所有者は自宅の売却により売却資金を一括して手にします。売却資金には使途の制限がありませんので、所有者は自由に使うことができます。また、契約によっては一旦売却した自宅を後に買い戻すことも可能です。
リバースモゲージは、自宅を担保に銀行や自治体(社会福祉法人)から融資を受ける商品です。ただ通常の住宅ローンとは逆に、年数の経過とともに借入残高が増えていきます。自宅の所有者は年金式に分割して借入れを行い、生活費や自宅のリフォーム・建て替え等に充当します。そして、所有者の死亡後に相続人が自宅を売却し借入金を一括返済します。
リースバックは不動産業者と定期借家契約を結ぶことが多く、短期間での利用が中心となります。定期借家契約では賃貸借契約は期間満了で終了となり、貸主が再契約を拒否した場合は退去しなければいけません。(普通借家契約が可能なケースもあり) 一方、リバースモゲージは所有者が死亡するまでの期間、中長期での利用が想定されています。リースバックとリバースモゲージの主な違いを【表1】にまとめましたので、ご確認下さい。

ここで注意したいのは、リースバックは不動産業者が組成する自宅の売買契約と賃貸借契約のセット商品だということです。売買契約も賃貸借契約も同一の不動産業者と行わざるをえないので、自宅の売却も(元)自宅の賃借もこの不動産業者の言い値に従うことになります。リバースモゲージの場合、貸付限度額は担保評価額の50~60%と低く設定され、また数年毎に評価額の見直しがされますが、自宅の売却は相続人主導で行うことが可能です。但し、リバースモゲージでは相続発生時に自宅を売却するので、相続人は自宅の相続はできません。また、リコース型の契約の場合、売却代金で借入れ金を完済できなければ、相続人が残債の返済義務を負います。従って後々のトラブル回避のため、契約時に推定相続人全員に契約内容を丁寧に説明し同意を得ておくことが肝要です。尚、最近では相続人に請求が及ばないノンリコース型が増えています。ただノンリコース型は、リコース型よりも金利が高く設定されるデメリットがあります。
リースバックとリバースモゲージでは自宅に居住可能な期間やスキームの利用目的が異なるので、同じ土俵でメリット・デメリットを比較することはできないかもしれません。敢えてザックリ言いますと、リースバックは一定期間経過後に新居や介護施設に入居を予定している人が、それまでのつなぎとして(元)自宅に住み続けるためのもの。リバースモゲージはシニアが年金だけでは不足する生活費を補填し、定年退職後も自宅に住み続るためのもの。そんな風にご理解頂けばよろしいかと思います。

カテゴリー
株式

【株】やっぱり相場は分からない

米国のインフレもようやく鎮静化の兆しを見せ、12月のFOMCでは利上げペースの減速が見込まれています。米国10年債利回りは4%の大台を割り込み、3%台後半で落ち着きどころを探っているようです。長期金利の低下により、売り込まれていたグロース株も値を戻しつつあります。

これでほっと一息、と言いたいところですが、何ともお尻がムズ痒いのは私だけでしょうか。コロナ禍による空前の金融緩和の後、9ヶ月で400bpというこれまた空前の金融引締めによって、これまでNYダウは一時20%強、日経平均も15%程度下げましたが、足下ではいずれも安値から2/3戻しを達成しています。果たして、これで今回の調整局面は終わりと見て良いのか。基本ロングオンリーの私にとっては相場が回復してくれるに越したことはないのですが、残尿感と言いますか、何とも下げ切った感がないんですよね。やっぱり、相場は分かりません。このまま年末ラリーに突入し、2023年「卯は跳ねる」になれば万々歳ですが……。

そこで、今回はこれまでのコロナ相場から、来年に向けて教訓をまとめておきたいと思います。このまま相場が回復トレンドに入ったとすると、コロナ禍の株式市場の調整はことのほか軽く、回復は早かったことになります。その理由ですが、一つにはコロナ禍は人々の生命や日常生活にとって大きな脅威となったものの、金融システムにはほとんどダメージを与えなかったことが上げられると思います。また、コロナ禍に対する政策が、各国で早期に合意され発動されたことも大きかったです。
因みに、過去の経済ショック時の米国株(S&P500)の下落率を見ますと、1987年のブラックマンデーで34%、2000年のITバブルで49%、2008年のリーマンショックで57%となっています。

一国の金融システムが大きく毀損すると、信用不安の連鎖は瞬く間に世界中に広がります。金融システムの回復には公的資金の投入が不可欠ですが、そのための政策合意は容易でなく(高額所得者のウォール街関係者を税金で助けるのか?とか、国民の間で感情論が先行し理性的な議論が困難)、発動まで時間がかかります。結果、株式市場の下落率は大きくなり、相場回復に長期の時間を要することになります。

今後の懸念材料ですが、ズバリ、①が②に転じることだと思います。具体的には、ドル高、米金利高で新興国のドル建て債務が増大し財政が破綻、世界的な金融システム不安に繋がるシナリオです。2023年がそうならないことを祈ります。

カテゴリー
株式

【株】個人投資家がプロに勝てるわけ

内外の株式市場ではボラタイルな日々が続いています。11月10日発表の米CPIは想定外に弱い内容となり、これを見た米国10年債利回りは一気に30bpも低下、NYダウは1200ドルの急騰を演じ、ドル円は140円台に突入し6円の急落となりました。市場関係者の間では、これで株式相場のトレンドも転換するという声もちらほら出ていますが、正直、私はそこまで楽観的になれません。
ところで、そんな各市場のドタバタ劇を尻目に、冷めた眼差しで相場を見つめる方たちがいます。長期個人投資家の皆さんです。なぜ彼らはこの状況に冷静でいられるのか。それは、彼らには勝利の方程式が見えているからです。そこで、今回は長期個人投資家の勝利の方程式について考えたいと思います。

突然ですが、今競技場でAチームとBチームが試合をしようとしているとします。ただ、この試合はちょっと変わっていて、異種格闘技のようなものだと思って下さい。プロのサッカーチームであるAチームと、アマチュアのラグビー同好会Bチームが一つのボールを巡って試合をします。AチームはBチームのゴールにボールを蹴り込めば1点獲得。BチームはAチーム側のゴールラインを超えてトライすれば1点獲得です。さあ、この試合、一体どちらのチームが勝つでしょうか。

Aチームはプロのサッカーチームですから、選手個々の身体能力やテクニックは超一流です。チームとしての完成度もアマチュアとは比較になりません。Aチームの勝利は戦う前から決まったようなものです。でも、ちょっと待って下さい。この試合はサッカーとラグビーの異種格闘技でした。Bチームは確かに弱小のアマチュア同好会かもしれませんが、彼らはラグビーのルールに従って試合を進めます。足だけでなく手を使います。ドリブルで突進する相手選手をタックルで倒しても構いません。Aチームは2.44m×7.32mの相手ゴールにシュートを決める必要がありますが、Bチームは幅70mのAチームゴールラインを超えてトライすればOKです。こう考えると、Bチームの方が有利かもという気もしてきます。ここでアマチュアがプロに勝てるかもと思えるのは、ラグビーの方がサッカーよりもルールが緩やかだからです。

同じことが株式投資においても言えます。証券取引所は競技場に相当します。個々の株式銘柄はボールです。そしてボールを巡ってプロの投資家や証券会社、個人投資家が入り乱れて異種格闘技を繰り広げます。プロ投資家や証券会社は厳しい規制のもとで売買を行います。また、プロ投資家や証券会社の投資の時間軸は長くて1年。中には1日というケースもあります。それに比べ個人投資家を縛る規制は緩やかで、投資の時間軸も数年から数十年と余裕があります。このように、プロ投資家や証券会社と長期個人投資家では、適用されるルールが大きく異なっています。

プロ投資家が短期的な材料に振り回され、相場で投げ踏み(損失覚悟の投げ売りと買い戻し)を繰り返す様を長期個人投資家が呆れた表情で見つめる。これが冒頭のシーンです。
長期個人投資家の勝利の方程式。それは、長期個人投資家に許された「緩やかなルール」と「長期の時間軸」を最大限活用して相場に臨むことです。プロ投資家は高金利で株価が低迷するハイテク株を購入することは困難です。需給サイクルのボトムにある(と思われる)半導体株も然り。しかし、長期個人投資家はこれら安値圏にある優良株を「ごっつぁんです!」と有り難く購入することができます。これが長期個人投資家の勝利の方程式です。

カテゴリー
株式

【株】5年前と5年後

またまた今月も雇用統計やCPIといった米国のイベント・経済指標に一喜一憂する展開となっています。それに今月は中間選挙もありますしね。しかし、こんな時こそ目線を遠くにやって、長い時間軸で相場と向き合いたいものです。昨日(2022.11.8)の日経平均の引け値は27,872円でした。では、5年前、2017.11.8の日経平均の引け値はどのくらいか覚えていますか? 22,913円でした。この5年間に日経平均は4,959円上昇したことになります。利回り(複利)に直すと、年利4%です。2017年からの5年間にはいくつもの悪材料がありました。2018年には米中貿易摩擦、2020年はコロナショック、そして2022年はロシアのウクライナ侵攻と主要先進国でのインフレの発生。それでも、日経平均は長期期待リターン(5%)なみのパフォーマンスを実現したことになります。

では、次は5年後の日経平均の姿を想像してみましょう。平坦ではなかった過去5年と同等のリターンを想定することは決して楽観的ではないと思うので、2027.11.8までの5年間も年利4%で日経平均が上昇するとしましょう。すると、2022.11.8の引け値27,872円×(1+4%)^5=33,910円、となりますが、どうでしょうか。5年後の日経平均は、固めに見て34,000円。好材料が乗っかれば、35,000円超もあり。個人的にはこんな感じかなと思いますが、如何でしょう?

ちなみに10年前、2012.11.8の日経平均の引け値はというと、8,837円でした。アベノミクスが始る前、民主党政権下で日本国経済がもがき苦しんでいたときです。この10年間の日経平均のパフォーマンスは、実に年利12%! 株式のパワーの凄まじさが分かります。

カテゴリー
保険

【保】覚えておきたい医療保険の○○日ルール

通常、医療保険やがん保険には、その間は給付金の支給が免責される(給付金が支払われない)○○日ルールが設定されています。そのあたりの事情をよく理解しないで契約すると、いざというときに保険が使えず大変なことになります。そこで、今回は医療保険やがん保険の代表的な○○日ルールをご紹介し、保険事故に備えたいと思います。

1.90日ルール
がん保険には加入後90日は保障がきかない「待ち期間」という期間が設定されています。この待ち期間内にがんと診断されても給付金は支払われず、契約は無効になります。では、なぜがん保険には待ち期間が設定されているのでしょうか?それは、がんは自覚症状がなくても発病している可能性があるからです。(自覚症状がなければ告知義務違反になりません。)がん保険に加入した直後にがんが見つかっても保障されないことは、是非覚えておきましょう。そして、がん保険に加入後90日間は、がん検診や人間ドックを受診しないことです。(笑) なお、最近は入院給付金や手術給付金、通院給付金等に待ち期間が設定されていない商品もありますが、がん診断時の一時金(診断給付金)はありませんので注意が必要です。

2.60日ルール
60日ルールが適用されるのは、三大疾病保障のうち心筋梗塞と脳卒中です。医療保険(特約)では、給付金の支払い条件として以下のようなルールが設定されているケースがあります。(がんについては1.の90日ルールが適用されます。)
①保険開始以後に急性心筋梗塞を発病し、初めて医師の診断を受けた日からその日を含めて60日以上、労働の制限を必要とする常態が継続したと、医師によって診断されたとき。
②保険開始以後に脳卒中を発病し、初めて医師の診断を受けた日からその日を含めて60日以上、言語障害、運動失調、麻痺等の他覚的な神経学的後遺症が継続したと、医師によって診断されたとき。
つまり、心筋梗塞や脳卒中を発症しただけでは給付金は支給されないのです。心筋梗塞では60日以上の労働制限、脳卒中では60日以上の後遺症。これが給付金支給の条件となります。
もっとも、最近は「急性心筋梗塞または脳卒中の治療を直接の目的として、手術または入院したとき」のように、60日ルールを適用しない商品もあります。

3.180日ルール
一般に、同一の傷病を原因とする入院で退院から次の入院までの間が180日以内の場合は、1回の入院とみなされます。例えば、最初に40日間入院した後で退院し、20日間自宅療養、その後再び同じ病気で25日入院した場合は、2回の入院でも1回の入院とみなされ、1回・65日間の入院とカウントされます。しかし、保障される期間は1入院支払限度日数の60日分のみとなり、残りの5日分は給付対象外となります。(1入院支払限度日数が60日の場合) なお、商品によっては異なる傷病が原因の入院であっても180日ルールが適用され、1回の入院とみなされるケースがありますので、契約に際しては必ず確認が必要です。また、同一の手術を2回以上受けた場合、その手術が一連の手術(※1)であるときは、同一手術期間(※2)内に受けた一連の手術のうち最も高額の手術についてだけ給付金が支払われるというルールもありますので、重ねて注意が必要です。
(※1)医療診療報酬点数表または歯科診療報酬点数表で、一連の治療過程に連続して受けた場合でも、手術料は1回のみ算定される手術
(※2)一連の手術で最初に手術を受けた日からその日を含めて60日間。(商品によって60日以外の場合もあり)

カテゴリー
閑話休題

【閑】サムシングとレイラ

私は学生の頃から海外のポップスが好きで、60年代から80年代の曲をよく聴いていました。中でも、ビートルズのSomethingとLong and Winding Roadが大好きです。
Somethingといえばジョージ・ハリソンの名曲で、ビートルズの数多あるヒット曲の中でもYesterdayに次いでカバーされることの多い曲です。この曲は好きな女性に寄せる切ない恋心を歌った美しいバラードです。私はこの曲を聴くと、「人を好きになるのに理由はいらない。なんとなく(something)でいいんだよ。」と、ジョージに諭されているような気持ちになります。

もう1曲、皆さんにご紹介したい曲があります。イギリスの3大ギタリスト(※)の1人エリック・クラプトンの最高傑作Laylaです。この曲は恋人への熱き想いを印象的なギターのリフに乗せて聴くものにぶつける、激しいロックナンバーです。
(※)他の2人はジミー・ペイジとジェフ・ベックです。

ところで、SomethingとLayla、静と動。この対照的な2曲が同じ女性について書かれたものだと言ったら、皆さんは信じますか? その女性はパティ・ボイドといって、ジョージ・ハリソンの奥さんだった人です。Somethingはジョージとパティが幸せな時間を過ごしていた頃に書かれた作品です。一方、Laylaはクラプトンが親友ジョージの奥さんに抱いた、叶わぬ想いを歌った作品です。そりゃあ、激しい曲にもなりますよね。ただ、最終的にはクラプトンの執念が実り、パティはジョージと離婚しクラプトンと結婚することになります。

このような背景を知ったうえで2つの曲を聞き比べると、また違った光景が見えてくるかもしれません。
それにしても、パティ・ボイドはよほど魅力的な女性だったようで、ジョージとクラプトン以外にも彼女に想いを寄せる複数のミュージシャンがいました。ビートルズのジョン・レノンとローリング・ストーンズのミック・ジャガーです。先の2人を含め、いずれもロック史に名を残す偉大なレジェンド達です。本当にすごい女性がいたものです。

カテゴリー
株式

【株】拙者、リスク屋と申します

最近、私は人前で自己紹介をするとき、個人投資家とは言わずにリスク屋と名乗るようにしています。私がやっているのは他人のリスクを引き受ける代わりに報酬(リターン)をいただく単純作業であり、相場の予測や企業の分析などは一切しません(できません)。とても投資と呼べる代物ではないからです。

ところで、米国の雇用統計やCPI、そしてFOMCとイベントのたびに一喜一憂、上下に揺さぶられる日々が続いていますが、皆さん、いかがお過ごしでしょうか。一昨日の9月米CPIは事前予想をまたもや上回る結果となり、発表直後に株価は大幅下落。しかし直ぐに切り返し、終わってみればNYダウは前日比800ドル超の大幅高となりました。「なんじゃこりゃ?」って感じですね。

ここでちょっと気が早いですが2022年を振り返ってみましょう。今年は内外株とも年初に高値を付けた後、ずっと下げ基調を辿っています。1月初の高値から10月13日の安値までNYダウで▼22%、ナスダックに至っては▼36%の下落です。なぜか日経平均は▼13%の下落に留まっていますが、ベテラン勢の中にはリーマンショックを思い出すという方もいらっしゃるでしょう。

相場に悲観が満ちあふれたらリスク屋の出番です。今年は相場の下げに合わせ、段階的に買い下がってきました。買いの対象は、金利上昇下で売り込まれたグロース株です。日経平均でいうと29,000円近辺で少し、27,000円台前半でもう少し購入し、最後、予算の残金で26,000円割れの水準で買いたかったのですが、買えないまま相場が上がってしまいました。我ながら、ほんと下手クソだと思います。リスク屋の技量なんて、所詮こんなもんです。後は雨乞いの踊りでも踊って、相場が30,000円の大台を駆け上がるのを気長に待ちます。

カテゴリー
不動産

【不】インフラとJREITのパフォーマンス総括

早いもので今年も残すところあと3ヶ月足らず。会計年度でいうと半分が終わったところです。2022年度前半はロシアのウクライナ侵攻や欧米でのインフレ加速と金利の大幅引上げにより、株式相場に逆風が吹き荒れました。日経平均株価は3月末の27,821円から9月末は25,937円と、7%弱のマイナスです。金利上昇下の株安とあっては、資金を債券に移すこともできません。そんな中、相場を見渡すときっちりプラス収益を上げている商品もあります。例えば、インフラファンドです。将来的には不安材料もあるインフラファンドですが、インフレ・金利上昇下での短期的な資金逃避先としては有望かもしれません。
今回はインフラファンド及びJREITの代表ファンドの2022年度上半期のパフォーマンスを総括するとともに、日本株の投資資金の逃避先としての有効性を検証してみたいと思います。

まず、インフラファンドですが、東証に上場している6ファンド全てが5%~6%の高い分配金利回りを実現しています。(日本再生可能エネルギー・インフラ投資法人は8月22日に上場廃止になっているため、対象から除いています。)さらに、3月末~9月末の基準価格騰落率では、全6ファンドがプラスです。ただ、9月28日にタカラレーベンがタカラレーベン・インフラ投資法人のTOBを発表したことで他のインフラファンドも連れ高となり、9月末のパフォーマンスが底上げされた可能性があります。そこで念のため3月末~9月28日の基準価格騰落率で見ても、6ファンド中5ファンドがほぼプラスとなっています。このように、2022年度上半期において日経平均株価が下落する中、インフラファンドの一群は極めて安定したパフォーマンスを実現しました。

しかし、中長期的にはインフラファンドは幾つかの課題を抱えています。まず、固定価格買取制度(FIT制度)の終了です。2022年4月以降、段階的に市場価格連動制度(FIP制度)に移行することとなっており、今後は従来のような安定的なパフォーマンスを維持することは困難になるものと思われます。それから、市場規模の縮小です。2022年度上期中に2件のTOB(日本再生可能エネルギーインフラ投資法人、タカラレーベン・インフラ投資法人)が発表されましたが、この調子でTOBが続くと数年で上場インフラファンドはなくなってしまいます。インフラファンドが中長期的に存続するには、FIP制度の元でもある程度安定したパフォーマンスを実現するとともに、投資対象を太陽光から洋上風力等その他の再生可能エネルギーに拡大し、ファンド規模の拡大を図ることが必要です。

次に、JREITの代表的なファンドの2022年度上半期のパフォーマンスを見ていきましょう。6ファンド中ジャパンホテルリート投資法人を除く5ファンドが、3%~4%の分配金利回りを達成しています。インフラファンドほどではないものの、魅力的な水準のインカムを提供しています。しかし、3月末~9末の基準価格騰落率では、日本ビルファンド投資法人(オフィスビル)と日本プロロジスリート投資法人(物流施設)が▲10%前後の大きなマイナスとなる一方、ジャパンホテルリート投資法人は15%超のプラスと銘柄間格差が大きくなっています。
JREITの価格変動リスクは株式と同等かそれ以上のレベルです。したがって、JREITは投資資金の短期的な逃避先としてではなく、株式との分散によるリスク低減効果を狙って投資すべき対象と考えた方が良さそうです。


カテゴリー
株式

【株】実質金利と物価連動債

9月27日の日経新聞に「米実質金利上げ、余波拡大」と題した記事が掲載されました。米国国債の名目金利から期待インフレ率を引いた実質金利の上昇が、市場を大きく揺らしているとのこと。株式やREITだけでなく、安全資産とされる金やインフレ耐性の高い物価連動債からも資金流出を招いていると報じています。そこで、今回は名目金利と実質金利の違い、そして実質金利と物価連動債の関係について考えてみたいと思います。

まず名目金利ですが、名目金利とは私たちが普通に日常生活で目にする金利のことです。銀行預金の金利、住宅ローンの金利、国債の利回り、日銀の政策金利、いずれも名目金利です。これに対し、実質金利とは名目金利から期待インフレ率(※)を控除したものです。
ここで注意が必要なのは、名目金利は私たちの目で直接見ることができるのに対し、実質金利は私たちの目には直接は見えないことです。では、どうやって見えるようにするかですが、家計や企業にアンケートを取ったり、固定利付国債と物価連動国債の利回り差から期待インフレ率を算出し、名目金利から差し引くことで見える化を図ります。
(※)市場参加者が予想する将来の物価上昇率のこと

ところで、金利とはそもそも何でしょうか。お金は持っているだけでは何の役にも立ちません。お金は使って初めて役に立つものですし、モノやサービスを消費する満足感を味わうこともできます。しかし、お金を他人に貸した場合は、返済されるまでの間はお金を使うことはできません。お金を貸した人はモノやサービスの消費を我慢しなければいけません。そこでお金の借り手は、貸し手に消費の我慢をお願いする代わりに、貸し手に金利を払うわけです。そうです。お金の借り手から貸し手に払われる我慢料、これが金利の正体です(諸説ありますが……)。ところで、返済までの間にモノやサービスの値段(物価)が上がってしまったらどうでしょうか。例えば、借り手から貸し手に金利が5%払われたとして、お金の返済を待つ間に貸し手が買いたかった家電の値段が4%上がっていたら。貸し手にしたら、我慢料として5%の金利をもらっても納得できないのではないでしょうか。実際には我慢料の価値は、5%-4%=1%しかないからです。この1%の金利、これが実質金利と言われるものです。このように、金利が与える影響を考えるときは、表面上の金利(名目金利)だけを見ていては不十分で、物価上昇の影響を除いた実質金利で見る必要があります。

次に、実質金利と物価連動債の関係を考えたいと思います。以前、公式から見える株価変動のメカニズムで割引配当モデルをご紹介しました。
P=D÷(rーg) ここで、:株価、:配当、:株主資本コスト、:配当成長率、です。以下ではこの式の債券版を考えます。物価連動債はインフレの守り神でご紹介しましたが、クーポンが一定で元本が物価の変動に合わせ調整される債券です。つまり、利払い金額が物価変動率に合わせ増減します。そこで、割引配当モデルのをクーポン:を名目金利:iを物価変動率:、に置き換えると、
P⇔C÷(iーk) となり物価連動債の価格と名目金利、物価変動率の関係式ができます。ただし、これは物価連動債の価格算出式ではないので、両辺をイコールで結べません。
この式から見えてくるのは。①名目金利:iが上昇すれば価格Pは下落、②物価:が上昇すれば価格Pは上昇、③実質金利:iーkが上昇すれば価格Pは下落、という関係です。

冒頭の日経新聞の記事は、(iーk)↑⇒P↓の関係に言及したものです。このような現象が生じるのは、市場参加者がFRBの金融引締めが当面続く(i↑)一方、景気は後退局面に入り物価が下落に向かう(k↓)と見ているからです。つまり、市場参加者はFRBの金融引締めによる景気のオーバーキルを懸念しているわけです。
ただ、以上のお話は米国に関するもので、我が国では様相は大きく異なります。日銀がマイナス金利政策を転換する兆しは未だに見えてきませんが、各種商品価格は緩やかな上昇基調にあります。そのため、日本では物価連動国債ファンドは、下表の通り依然好調なパフォーマンスを続けています。