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株式

【株】労働者の武器

そごう・西武労働組合は31日、予定通りストライキを実施しました。大手百貨店のストは約60年ぶりとのことですが、昔は鉄道やバス、航空会社等が毎年のように行っていました。ちなみに、国内のストのピークは第1次オイルショック時の1974年で、件数にして51,975件、累計参加者は約362万人だったそうです。

日本国憲法28条では労使間の対等な交渉を促進するため、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他団体行動をする権利は、これを保障する。」と規定し、労働組合法等で具現化する立付けとなっています。ストライキは「団体行動をする権利」のひとつですが、他にもビラを配ったり集会や演説といった情宣行動を行うことも正当な争議行為として労働者に認められています。
私たち労働者は自身の労働力を労働市場で資本家に売り、対価として賃金を得ることで日々の生計費を賄っています。ただ、生産手段を持たない労働者一人一人の力は弱く、労働市場で資本家と対等に交渉することは難しいです。そのため、憲法では労働者が団結し(労働組合を結成し)、団体交渉や団体行動する権利を保障することで、労働者が資本家と対等に交渉できるよう基盤を整えています。
団結権・団体交渉権・団体行動権(労働3権)は、労働者が資本家に対して賃上げ等の要求を実現するために認められた強力な武器です。

他にも労働者の武器はあります。それは株主になって株主総会に出席し発言することです。たとえ1単位株しか保有しない泡沫株主であっても、株主総会では一人の株主として大株主と同じ土俵で発言することができます。大勢の株主の前で経営者に問題提起し、色々な要求をぶつけることが可能です。

この武器を使って経営者から奇跡的な勝利を勝ち取った事例があります。2018年に世間を騒がした「かぼちゃの馬車」事件です。この事件では女性用シェアハウスに投資した多くのサラリーマン大家さんが巨額の損失を被り、スルガ銀行からの借入れが返済不能となりました。大家さんたちには自己破産しか残された道はありませんでした。そんなとき、一人の弁護士が立ち上がります。彼は大家さんたちの被害者団体を組織し、皆でスルガ銀行東京支店の前でデモを行ったり、スルガ銀行の株を買って株主総会に乗り込みスルガ銀行の不当を訴えました。これらの活動で追い詰められたスルガ銀行は、ついに大家さんたちの債権全額放棄に応じたのでした。

株式投資には資産形成装置としての重要な機能がありますが、他にも株主として総会に出席し発言することでメッセージを直接経営者に伝えるという機能があります。この点は見過ごされがちですが、重要なポイントだと思います。中学・高校の先生方には、金融リテラシー教育で生徒さんたちに是非お伝えいただきたいです。

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株式

【株】金融リテラシー教育

2023年8月18日の日経新聞「大機小機」に「本来の金融リテラシーはどこに」と題したコラムが掲載されました。金融庁の肝いりで行われている金融リテラシー教育について、辛口のコメントが続いています。

「金融リテラシーという用語が好きでない。…… 単純に「金銭感覚を磨こう」でいいではないか。」「そもそも株式の短期投資と長期投資の差異がきちんと説明されていない。」「短期投資と長期投資の区別があいまいなのは、業者を含めた関係者が、本当の意味での長期投資の素人だからではないのか。」「本当の意味での金融リテラシーが必要なのは、個人ではなく、業者をはじめとする多くの関係者ではないだろか。」

よくぞ言ってくれた! 思わず私は膝をたたきました。業者や関係者が長期投資の素人だという指摘は、私も全く同感です。ただ、中には長期投資が何たるかを知りながら、短期投資を投資の本道かのように偽る業者も少なくないと思います。ほったらかしの長期投資は彼らの商売のネタになりにくいからです。

長期投資の本質はニック・マジューリ氏の著書にあるように3語で表現できます。”JUST KEEP BUYING” 運悪く投資したタイミングが史上最高値であっても、期間分散を行うことでタイミングのリスクを薄めることは可能です。長期投資で大切なことは相場に参加し続けること、それだけです。相場観を入れて売買を行うことはしません。相場が下がっても損切りは不要です。株式相場が長期的に右肩上がりに上がってゆくことは歴史が証明しています。(ここで、「バブル崩壊後の日経平均はそうなってないじゃないか」とツッコミを入れたい方には是非、”JUST KEEP BUYING”を手に取っていただきたいです。) あるべき金融リテラシー教育とは、”JUST KEEP BUYING”の意味を、学生さんたちに腹落ちしてもらうことだと思いますが、いかがでしょう。

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不動産

【不】不動産投資を始める前に

私は投資経験のない不動産についてブログを書くため、これまで不動産関連の本を読んだり、サラリーマン大家さんのブログやユーチューブを見たりと試行錯誤してきました。しかし、投資経験がないというのは致命的で、駄文をブログ上に垂れ流してきたと反省しています。経験不足をカバーできればとJREITに投資もしましたが、JREITと現物不動産は全くの別物です。JREITは不動産というより株式に近い投資商品です。
私がこの2年間の机上学習で知ったのは、不動産投資には株式投資をはるかに上回るスキル、ノウハウが要求されるということです。

不動産投資は投資金額が巨額になるため、失敗は許されません。一発目の案件から十分なキャッシュフローを生み出す必要があります。しかし、素人にそんなことが可能でしょうか。私の結論はNoです。不動産投資をやりたいと思ったら、遠回りでも一度不動産業界に身を置いて、不動産で利益を上げる仕組みを理解し、また業者間の人脈を作ってからにすべきだと思います。
株式投資なら失敗しながら経験値を高めていくこともできますが、不動産投資でそれをやったら自己破産です。業者の立場で他人のお金を使って不動産を経験したうえで、ローンを含む自分のお金で勝負に出ればいいのです。さもなくば、リーマンショックのような金融危機が来て不動産業者が物件を投げ売りするチャンスをひたすら待つことです。

くれぐれも、アベノミクス初期に運良く投資を開始したキラキラ大家さんの、今や再現不能なストーリーに乗っかることは避けたいものです。

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株式

【株】米国長期金利上昇について

大手格付け会社のフィッチ・レーティングスは8月1日、米国債の格付けを最上級のAAAからAA+に1段階引き下げると発表しました。この日を境に米国10年国債利回りは上昇のピッチを早め、4%台に突入しました。しかし、ここもとの米国10年国債利回りの急上昇について、国債格下げはあくまできっかけに過ぎず、本当の理由は別のところにあるように思われます。そのあたりの事情について、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントのレポートが参考になると思うので、サマリーをご紹介します。

1.米国債利回りに何が起きているのか?
・米国10年国債利回りは4.18%に達しており(8/15現在、4.219%)、昨年10月22日に付けた節目となる4.25%に近付いている。
・興味深いのは、前回米国10年国債利回りが4.25%を越えたのは、世界金融危機(2007年~2008年のサブプライム・リーマンショック)が始る2007年6月ということである。
・10年債利回りが4.25%を越える可能性について最も重要なことは、それが低利回り時代にとどめを刺す象徴になるということである。

2.利回りは現在、なぜ上昇しているのか?
・FRBは利上げサイクルの終了に近付いているため、債券利回りは通常、安定的に低下すると考えられるが、なぜそうなっていないのか。
・それは、利上げサイクルの終了後、直ぐにFRBが利下げを開始するわけではないからだ。
・債券市場は次の点を織り込み始めている。
①FRBが長期にわたって足下の高金利を維持する可能性
②米国経済のソフトランディング
③米国経済のハードランディングが起きる確率の大幅な低下
④低利回りの長期デュレーション債券は、今や米国の景気後退に対するヘッジ手段として割高なだけでなく、安全確実な投資対象でもなくなっている
・また、現在の長期債利回りは非常に低く、かつ極端な逆イールド(8/15現在、2年債4.959%、10年債4.219%)となっている。イールドカーブが逆転しているのは、今まで投資家が米国経済の景気後退やハードランディングに備え、ヘッジとして低利回りの長期債を買ってきたからだ。
・しかし、足下ではハードランディングのリスクが低下し、投資家がわざわざ低利回りの長期債を買う理由はなくなった。
・今後、米国債の逆イールドが解消しイールドカーブがフラットになった場合、10年債利回りは70bpも上昇する可能性がある。

以上、モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントのレポートから、米国長期金利上昇の事情についてご紹介しました。(尚、これは同社の見解ではなく、同社のグローバル・バランス・リスク・コントロール運用チームの市場に対する見方とのことです。) ここまでの内容を一言でいえば、「米国経済のハードランディングシナリオの修正に伴う逆イールドの巻き戻しによる長期金利の上昇」、となります。

株式に関してはレポートの中で、「利回りの上昇がグロース株セクターへの逆風……」、「バリューセクター志向の戦略を当運用チームは選好する」との記載がありますが、それはこのレポートが短期目線のマネースポンサーへ向けたものだからでしょう。
過去においてFRBが最終利上げから利下げに入るまでのインターバルは、平均で1年前後と言われています。私たち長期個人投資家にとって、FRBが利下げを開始するまでが勝負です。将来に向けて成長が期待できる優良銘柄を仕込む、絶好のチャンスです。レポートにあるように長期金利の上昇を受けグロース株が売られる局面では、臆することなく買い出動しましょう。

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閑話休題

【閑】ジビエ肉

私事で恐縮ですが、私はジビエ料理が好きです。といっても高級なフランス料理などではなく、山間の宿で食べる猪鍋や鹿刺しのことです。豚肉とはまた違った猪肉の脂身の旨みや、マグロの赤身のようにさっぱりとした鹿の刺身は、最高の山の幸です。

昔話の「かちかち山」におじいさんが狸汁を作る場面が出てきますが、実際は狸の肉は臭みが強く食用には向かないようです。狸に似た「あなぐま」という動物がいますが、あなぐまはジビエ肉の中でも最高に美味しいそうで、昔の人はあなぐまを狸と間違えて狸汁といっていたようです。

ジビエ肉の中でもとりわけ高価なのが熊肉です。そもそも流通量が少ないですし、猟師さんも命がけですから、価格が高いのも頷けます。肝心のお味の方ですが、美味しいという人もいますが、固いうえに独特の獣臭がして食べづらいという人もいます。残念ながら、私はまだ食したことがありません。

山へ行くとわりと頻繁にカモシカに出会います。カモシカは特別天然記念物に指定されており、獲って食べたりしたらお巡りさんに捕まります。が、カモシカは実は鹿ではなく牛の仲間です。きっと、牛肉のような美味しいお肉なんでしょうね。ちょっと食べてみたい気もします。

以前、西伊豆をドライブしたとき、とある干物屋さんに入りました。店先で魚の干物に混じって、真っ黒なビーフジャーキーのようなものが売られていました。お店の方に「それは何?」と聞いたところ、イルカの干物とのことでした。伊豆半島にシーシエパードの活動家たちが押しかけないか、危惧したことをおぼえています。

30年くらい前、某山岳県で山登りをするため、タクシーで登山口まで送ってもらったときの話しです。経緯は忘れましたが、タクシーの運転手さんに今まで食べた肉の中で何が一番美味しかったか聞いたのです。彼の答えは、「猿」でした。「えっ! お猿さん食べたの?」 私はたいへん驚きました。そして、「まさか、人間は食べてないですよね?」、と聞こうとして止めました。

美食の国日本には、実に様々な食材があります。

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年金

【年】配偶者加給年金の見直し

以前、当ブログの「国民年金の保険料納付期間延長の裏側」でふれた配偶者加給年金の見直しが現実のものとなろうとしています。

7月28日に開催された厚生労働省社会保障審議会の年金部会において、配偶者加給年金の見直しが取上げられたとのことです。(ニッセイ基礎研究所 年金ウォッチ2023年8月号) 加給年金とは、老齢厚生年金や障害厚生年金の受給権が発生した際に受給権者が扶養する配偶者や子がいる場合、老齢厚生年金や障害厚生年金に加算される年金のことです。その中で今回議論になっているのは、老齢厚生年金に加算される配偶者加給年金です。
厚生年金の被保険者が65歳になると老齢厚生年金の受給権者となります。そして、老齢厚生年金の受給権者が20年以上厚生年金に加入しており、かつ65歳未満の配偶者を扶養している場合に、配偶者が65歳になるまで配偶者加給年金として最大39万円(年額)が上乗せ支給されます。

年金部会では配偶者加給年金について、共働き世帯が増えている昨今の社会情勢からみて必要性が薄れているとか、女性の活躍や60代前半の就労の推進に逆行するという指摘がなされています。また、その仕組みに対する不公平感として、厚生年金の加入期間によって受給の可否が分かれることや、夫婦の年齢差によって受給額に違いが出ること、厚生年金の繰下げを選んだ場合に待機中は加給年金が受給できず待機終了後も年金額の割り増しの対象とならないこと等が問題視されています。

今後、日本でインフレが定着すると、マクロ経済スライドの影響で公的年金の実質的な金額は着実に減っていきます。その上で配偶者加給年金まで減らそうという話です。
厚生労働省のお役人と厚労族の政治家先生に言いたい。ただでさえ心許ない我々の老後の年金を、年金改革のどさくさに紛れ、国民の知らないところでこっそり減らすような真似は、いい加減やめにしてほしい。それでも減らすというなら、国民の前で正々堂々と議論してからにしていただきたい。

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保険

【保】日帰り入院と通院

知っているつもりでも、改めて聞かれると返答に詰まるなんてことありませんか? 「日帰り入院」と「通院」の違いも、分かっていそうで意外に分かっていないことの一つです。
入院か通院かは、医療機関が発行する領収書の「入院料等」の欄に、診療報酬の点数の記載があるかどうかで確認できます。(記載があれば入院、なければ通院) 入院施設のある医療機関で医師が入院の必要性を認め、病院に入院させて医療行為を行った場合に、医療機関は入院基本料等の診療報酬を算定することができ、患者が受取る領収書の「入院料等」の欄に点数が記載されます。患者を入院させる施設がある医療機関は、病院(20人以上の入院設備を備える施設)と、一部の診療所(クリニック、医院等)です。なお、これらの医療機関でも単なる覚醒や休養等は対象外です。また、入院施設のない診療所における外来用ベットでの治療も対象外で、入院とは認められません。

私が入院と通院の違いに拘るのには理由があります。それは、医療保険は入院(または手術)がトリガーとなって、給付が発生する仕組みになっているからです。医療保険に通院保障が付いている場合も、入院する前後の通院や、がんの治療目的など特定の通院に支払事由を限定した保障が多く、一般的な通院のみでは保障が受けられません。(一部の特約を除きます。)

また、最近では白内障や緑内障等の眼科手術、鼠径部ヘルニア根治手術、痔核根治手術、大腸や胃のポリープ手術など、日帰りで手術できるケースが増えています。ただ、日帰り手術には入院扱いとなるものと、外来(通院)扱いとなるものがあるので、領収書での確認が必須です。入院を伴う手術と、入院を伴わない手術では、医療保険の保障内容が変わってきます。例えば、入院を伴う手術では手術給付金を支払い、外来手術では手術給付金を支払わないタイプや、入院・通院とも手術給付金を支払うものの、外来手術では給付額が少ないタイプなどがあります。

入院が短期化している昨今、現在発売されている医療保険は日帰り入院から保障するものがほとんどです。しかし、一部の医療保険には免責期間が設けられているので注意が必要です。例えば、「継続して5日以上入院したとき、1日目から支払い対象」といった具合です。
いざ、入院するとなったときに慌てることのないよう、皆さんが加入している医療保険の支払事由と免責事由をパンフレットや約款で事前に確認されることをお薦めします。

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株式

【株】インフレとデフレ

「インフレとは」とネットで検索すると、「商品の値段が上がること」と返ってきます。逆にデフレであれば、「商品の値段が下がること」となります。決して間違いではありませんが、もう少し正確に言うと、モノ(やサービス)の価値がお金(マネー)の価値よりも上がっていく状態をインフレ、モノの価値がお金の価値よりも下がっていく状態をデフレといいます。インフレもデフレも、モノとお金の相対関係において語る必要があります。

デフレの世界では、お金(マネー)は王様です。お金を抱えて待っていれば、時間の経過とともにモノの値段が下がっていくので、待てば待つほどモノを安く買うことができるからです。現在100円のチョコレートが1年後に90円で買えるとすれば、100円のお金を1年間保有することで10円儲かることと同じです。このとき、お金の収益率は10%です。ノーリスク・ノーリターンのはずのキャッシュが、ノーリスク・ハイリターンに化けます。デフレは努力も創意工夫も無用の世界です。お金を保有することだけが最適な戦略となります。平成バブル崩壊後デフレ下の日本において、企業は設備投資を圧縮、研究開発も疎かにして内部留保をひたすら蓄えました。家計も預金を積み上げました。実はこれらはとても合理的な行動だったのです。しかし、ミクロ的には正しい行動も、マクロ的には問題となるケースがあります。合成の誤謬というやつです。日本中の企業、家計が30年にわたって「寝太郎」を続けた結果、経営者からアニマルスピリットは失われ、日本の生産性は主要先進国で最低レベルに転落しました。社会は閉塞感に覆われ、若者は草食動物化しました。唯一元気なのは、一定の現金収入が保証された年金受給者たるお年寄りだけです。

でも、そんな灰色の季節も終わろうとしています。これから我が国はインフレの到来とともにトロピカルでアクティブな季節に向かいます。インフレ下では、お金(マネー)の価値は時間の経過とともに減価していきます。企業は一刻も早くお金をモノに転換する必要に迫られます。経営者はアニマルスピリットを発揮し、積極的な設備投資で生産性向上を図り、また優秀な人材を獲得しなければなりません。インフレは努力や創意工夫が報われる世界です。ぼーとしていたら、あっという間に競合に置いていかれます。
家計も今までのように思考停止状態で預金を積み上げることはやめ、投資の道を歩まなければなりません。確かに、平成バブル、リーマンショック、コロナバブルと、マーケットの下落を間近で見てきた日本の家計が、キャッシュ至上主義を脱却するのは困難なことです。しかし、時代の変化に合わせ、お金との付き合い方を見直すときに来ているのではないでしょうか。

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閑話休題

【閑】霊峰白山の屈辱

私にとって夏は登山とダイビングの季節です。ただ、7月下旬から1ヶ月半はほぼ毎週ダイビングで海に向かうので、7月中旬が夏山へ行くラストチャンスとなります。今年は早くからターゲットを白山に絞り、春先から体力作りをしてきました。GWに登った小秀山(1,982m)から恵那山(2,191m)、焼岳(2,455m)、経ヶ岳(2,296m)と2千メートル峰を順にクリアしてきました。そして、三連休の中日、7月16日に満を持して霊峰白山(2,702m)に挑んだのです。

岐阜県側の平瀬道登山口をスタートし、途中、大倉山避難小屋を経由して御前峰まで標高差1,500mを5時間で登るコースです。(往復のコースタイムは8時間半) 加賀の白山といえば、富士山、立山と並び、霊峰三山として登山者以外にもよく知られた山。観光地のイメージが強いですが、登山コースとしては結構タフな山です。しかし、私には十分な事前準備をしたとの自負とともに、コースタイムに余裕で下山できる確信がありました。直前に白山を登ったユーチューバーの中には、7時間で大丈夫との声もあったほどです。
でも、現実は厳しいです。登山口から3時間程の大倉山避難小屋に到着する頃に私は早くも体力を使い果たし、それからは10分進んでは休むの繰り返しで大幅なペースダウン。超特急のようなハイピッチの若者に抜かれ、60~70代と思しき超熟女の一団に抜かれ、ついには小学生のちびっ子にも抜かれる始末です。5時間で登る予定が御前峰に着いたのはスタートから7時間後の11時半でした。(結局、登り下りに10時間もかかってしまいました。)

山に登る目的や理由は人それぞれですが、山が好きという点では共通していると思います。でも、私は山が好きではありません。しんどいし、汗はいっぱい出るし、ヒルやマダニに血は吸われるし……。だったら、なんで山に登るんだ?、となりますが、「健康のため」が最大の理由です。私は高血圧、高血糖、高コレステロール、高尿酸、と成人病の総合商社です。そのため、かかり付け医から運動を欠かさないよう、強く指導を受けています。また、人に語れる趣味を一つ二つ持っておきたかったという事情もあります。そして、今回、山に登る目的がもうひとつできました。それは、自分を見つめ直すことです。霊峰白山に登り、私は自分の体力のなさを痛感しました。今の私は小学生にも敵いません。ちょっとばかりトレーニングをしたからと、いい気になっていました。高齢の先輩方が霊峰を軽々と登っていかれる傍らで私は疲れ果て、無様によだれを垂らしながらひっくり返っていたのです。
しかし、今回の山行で私は自分を見つめ直し、至らない点を発見することができました。ダメな点は改善すればいい話です。新たな目標に向かって元気がモリモリと湧いてきました。来年は私も霊峰を駆け上がりたいものです。

最後に、この3連休、北アルプスの剣、穂高をはじめ山岳事故で大勢の方がお亡くなりになりました。心よりお悔やみ申し上げます。

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株式

【株】金融政策変更の思惑

事前予想を下回る6月CPI・PPIの発表を受け、米国ではインフレの鎮静化がはっきりしてきました。市場関係者は、次回FOMC(7月25日26日)での利上げが最後となるとの見立てでほぼ一致しています。一方、日本では5月期の毎月勤労統計調査で、名目賃金の伸びが事前予想を上回りました。そんな中、7月7日に日経新聞と共同通信で報じられた内田日銀副総裁のインタビュー記事が、金融政策変更の思惑を呼んでいます。内田氏はインタビューで「(金融政策の変更は)金融仲介機能や市場機能に配慮しつつ、いかにうまく金融緩和を継続するかという観点からバランスをとって判断していきたい」と述べています。この「バランス」の一語が金融政策変更を示唆すると、市場関係者は受け止めたようです。

変更の思惑を呼んでいる金融政策とは、いうまでもなくYCC(イールドカーブ・コントロール)のことです。昨年12月20日に、日銀は長期金利の変動幅を従来の±0.25%から±0.5%に拡大するYCCの変更を発表しました。このとき市場関係者の多くは金融緩和縮小を予想していなかったため、日銀はだまし討ちをしたと批判されました。一足先に金融政策の変更を行っているFRBは、丁寧に市場と対話しながら金利の引き上げを行っており、市場関係者が重視する金融政策の透明性が担保されています。それに比べ日銀は配慮が足りないというわけです。
しかし、これはYCCの宿命です。事前にYCCの変更を市場に察知されたなら、投機筋に国債の空売りを仕掛けられ、YCCの変更は意味を失います。YCCの変更は市場のサプライズがなければ失敗に終わるのです。YCCの採用を一度は検討したFRBが採用を見送った理由が、この出口戦略の困難さです。

金融政策の変更を巡り、市場関係者が嫌う「霧」が今、日本のマーケットに立ちこめています。インフレの鎮静化による長期金利の低下から、米国ではグロース株を中心に株価の上昇が続いていますが、日経平均株価は一時の勢いを失っています。背景には、このマーケットの「霧」の存在があります。次回の日銀金融政策決定会合は7月27日28日です。それまで金融政策変更の思惑に振らされる日々が続くでしょう。
私は植田日銀総裁が日銀プロパーでなく、経済学者出身である点がポイントではないかと考えます。確かにCPIは日銀が目標に掲げる前年比2%を上回る状態が続いており、YCCを変更する環境は整いつつあります。しかし、早すぎる金融引締めは、バブル崩壊後長らく日本経済を苦しめてきたデフレを根絶する芽を摘んでしまう恐れがあります。日本と米国では、そもそも置かれた環境が異なります。植田総裁はインフレ抑制よりもデフレ退治を優先するのではないでしょうか。
いずれにしろ、長期金利が急騰するようなことがあれば、日銀は積極的な国債の買い入れで金利を抑え込みに入るはずで、過度な悲観は不要だと思います。