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株式

【株】外債投資について

我が家にはいざというときのために、嫁さんから株式投資に回すことを固く禁じられたキャッシュがあります。ただ、2%程度のインフレが今後も続くとなると、キャッシュは10年で2割弱、20年で約3分の1減価することになります。これは見過ごすわけにいかないと思い、キャッシュの一部を外債(米国債)に投資することにしました。私が取引しているM証券では特定口座で外債も購入可能ですが、オンライントレードは新発債のみ可能で既発債はNGとのことでした。既発債を買う場合は、証券会社に電話して発注することになります。

そこでまず、外債のリターンとリスクを見ていきます。今、私が検討しているのは、残存期間が7年~15年程度の米国長期債です。この年限の米国債の税引き前複利利回り(リターン)は足下で4%弱です。債券ですので償還まで持ち切れば、米国がデフォルトを起こさない限りリターンは保証されます。ただ、途中で売却する場合は、長期金利の水準によってリターンはブレます。債券の利回りが1%動いたときに価格が何%動くかを表すデュレーション(正確には修正デュレーション)という指標があります。例えば、MAXIS米国国債7ー10年上場投信では、12月末時点のデュレーションは7.4年です(月次レポーより)。この上場投信(ETF)には残存期間7-8年、8-9年、9-10年の米国債がそれぞれ3分の1ずつ入っていますが、金利が1%上がれば、このファンドの基準価格は1%×7.4年=7.4%下落します。金利が2%上がればファンド価格は14.8%下落しますが、4%の米国長期金利が1年で2%も上昇することはまずありません。株と比べ債券はかなりリスクが低いことが分かります。(個別株なら1日で10%下落することも珍しくありません。)

しかし、これはあくまでドルベースのお話です。外債は利金(クーポン)も元本も現地通貨で支払われますが、それを円で受取ると為替のリスクが絡んできます。今1ドル=145円のドル円が償還時にいくらになっているかで、円ベースのリターンは大きくブレます。例えば償還時のドル円が1ドル=120円だったとします。このとき、(1-120円/145円)×100=17.2%の為替差損が発生します。さらに、1ドル=100円まで円高が進むと31%の為替差損が発生します。このように、(高格付け)外債を償還まで持ち切れば現地通貨ベースではローリスクの商品となりますが、円ベースでは為替のリスクにさらされてハイリスクの商品となります。M証券では顧客の申し出がない限り、利金・元本は円での受取りとなりますが、事前に手続きをすれば外貨建てMMFでの受取りが可能です。我が家の資産は現在100%円資産なので、為替リスクを分散するため利金も元本もドル建てMMFで受取りたいと思います。

次に、外債取引にかかる手数料、税金を見ていきます。外債の売買手数料、口座管理手数料は無料です。ただし、債券購入時や利金・償還金支払時の為替取引において、通貨ごとにスプレッドが加算されます。(例、15時インターバンク仲値を基準にドル買い+25銭・売り-25銭、ユーロ買い+50銭・売り-50銭等。証券会社で異なる。) また、外債の売買価格にもスプレッドが加算されます。つまり、外債取引に係る売買手数料は無料とされているものの、投資家は債券と為替の取引でスプレッド分だけ割高に買い、割安に売ることで、間接的に手数料を負担していることになります。
2016年以降、特定口座で公社債を取り扱うことができるようになりましたが、源泉徴収ありの特定口座では、利金・償還差益(譲渡益)に対し20.315%が源泉徴収されます。また、償還差損(譲渡損)が発生した場合は、特定口座内で他の証券の利益と内部通算が可能となります。(残念ながらNISAでは現物の外債は買えません。)

現在、米国債市場では3月FOMCでの利下げ開始シナリオが修正を迫られており、3%台に低下していた10年債利回りは再度4%台に上昇しています。今後の利回り水準を見極めながら、米国債券の購入タイミングを探っていきたいと思います。世間では高利回りのエマージング国債やハイイールド債を薦める向きもありますが、個人的には現行の利回り水準なら先進国国債で十分だと考えます。どうせリスクを取るなら株で取る方がリ-ズナブルです。(それでも手を出される方は、エマージング国債の為替リスクやカントリーリスク、ハイイールド債の信用リスク、そして両債券の流動性リスクに十分注意して下さい。)

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閑話休題

【閑】タンス預金の行方

第一生命経済研究所のEconomic Trends 2024年1月15日号によると、足下では銀行券発行残高が前年比マイナスになっており、2023年11月に前年比▲0.03%とマイナスに転じた後、12月も▲0.3%とマイナス幅が拡大したとのこと。理由は2024年7月に予定される新札発行を前に、タンス預金をしていた人たちが現行の紙幣で持つことを敬遠する人が多いからだとしています。タンス預金をしている人は、できれば新札で持ちたいと思うからでしょう。

当レポートの筆者(熊野英夫 首席エコノミスト)の試算では、タンス預金の残高は2023年12月に59.4兆円であり、ピークであった2023年1月の60.4兆円から▲1兆円減少したことになるそうです。同じ現象は20年前の新札発行時(2004年11月)にも起こっていました。このときは、前年比▲7.5%まで減少したとのことです。もし、今回も▲7.5%まで減少するとしたら、▲4.5兆円程度の資金シフトがタンス預金から見込まれることになります。いったい、この4.5兆円はどこへ行くのでしょうか。

一部では20年ぶりの新札発行は、積み上がったタンス預金をいぶり出すのが目的ではないか、との声もあるようです。ホントかウソか知りませんが、政府が進める資産運用立国政策の一環との見立てです。筆者は、目的や意図は別として、2024年夏にかけてタンス預金からのシフトが活発化することは間違いないとみています。大きな要因の一つが、2024年6月に所得減税が行われることです。過去、こうした一時的な所得増は、貯蓄やタンス預金に回ることが多かったです。2020年夏から秋に支給された国民1人10万円の特別定額給付金の際は、銀行券発行残高が前年比+5~6%まで大きく押し上げられました。今回は、新札発行が2024年7月のタイミングのため、所得減税で得たお金=総額5.4兆円の中からタンス預金に回る割合は相当少なくなると思われます。所得減税分を含めた数兆円の資金の行方が気になります。

筆者はタンス預金の行き先として、現金によく似た性格であり、インフレ抵抗力もある金(ゴールド)や暗号資産を候補に挙げています。私は金や暗号資産は一般の人にとって、かなり特殊な投資先だと考えます。やはり第1候補は単純に銀行預金でしょう。また、株式や投資信託にも一部のお金が流れるのではないでしょうか。

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株式

【株】運転手さん、制限速度オーバーですよ

年始早々、株式相場がえらいことになっています。2024年は堅調な相場を予測する市場関係者や会社経営者が多かったのは事実ですが、年初いきなりのこの展開を予想した人は少なかったのではないでしょうか。

後付けの講釈になってしまいますが、1月4日大発会に出現した日経平均チャートの長い下ヒゲ。この日の引け味の良さに相場の強さを実感した人は多かったと思いますが、CTA等の海外ファンドもこれを見て一気に買いポジションに走った可能性があります。それから、能登半島地震の影響で、マイナス金利解除の1月実施の可能性が低下したことも大きかった。また、昨年6月以来再々に亘って上値抵抗線となっていた34,000円をあっさり超えたことでショート筋が大踏み上げ大会を演じ、相場の上げを加速させた面もありました。でも、1週間で3,000円の上げですよ。さすがにスピード違反でしょう。さらに、1月12日には幻のSQ値36,000円のおまけまで付きました。

週明けの1月15日、私は日経平均が大幅に下落するものと確信していましたが、またもや300円を超える上げとなり、改めて36,000円トライの様相です。私は確定拠出年金の日経平均インデックス投信を、34,500円を超えた1月11日の引け値で売却しました。しかし、このまま上昇相場が続くとNISAで個別株を買うことができません。どうしたものか? 相場下落の材料は、CTAの買いポジションの手仕舞いと、日銀のマイナス金利解除の思惑ですかね。

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株式

【株】Z世代と長期投資

「今どきの若者」のリアル(山田昌弘編、PHP新書)を読みました。第1章を世代・トレンド評論家でお馴染みの牛窪恵さんが書かれています。牛窪さんは、時間の浪費、ストレス、不確実性を嫌うのがZ世代の特徴だと言います。そして、カラオケボックスでサビの部分だけを歌う「サビカラ」(JOYSOUND)など、短時間でかつ、”余分なストレスを与えない”コンテンツが、Z世代を中心に人気を集めていると具体例を紹介しています。(私など「サビカラ」と聞いて、ワサビとカラシのことかと思いましたが……)

私は長期投資をZ世代の若者に理解してもらうことの困難さを痛感しました。長期投資は時間がかかり、大きなストレスに耐え、不確実性を伴うもので、まさにZ世代の特徴の真逆をいっているからです。
株式に馴染んでもらうことを優先して、ゲーム感覚の短期投資から入ってもらうことも検討する必要があるかも。本当に悩ましい問題です。

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保険

【保】がん保険不要論

楽天証券経済研究所客員研究員で経済評論家の山崎元さんが1月1日お亡くなりになりました。山崎さんは「”やってはいけない”資産運用」などの書籍やユーチューブを通じ、個人投資家向けに分かりやすい言葉で資産運用の基本の啓蒙に努められました。65歳という早すぎる死に、心よりお悔やみ申し上げます。
山崎さんはがんに罹患後、がんの治療費の大半を公的医療(健康保険)からの給付で賄うことができたご自身の経験から、がん保険不要論を強く主張されていました。健康保険の高額療養費と、山崎さんが加入されていた健康保険組合の任意給付で、実質的な自己負担は月額2万円程度であったとのことです。

こういう話を聞くと、日本には立派な公的医療制度があるので、わざわざ個人で民間のがん保険に入る必要はないと思ってしまいます。しかし、実際には日本人の約4割の人ががん保険(がん特約を含む)に加入しています。(生命保険文化センター「生活保障に関する調査」/2022年度)これはなぜでしょうか。理由のひとつは、今現在十分な公的医療が受けられても、先々今の水準の給付を受けられる保証はないことです。つまり、公的医療制度の将来不安です。ふたつめは、がん保険はがんの治療費をカバ-するだけのものではないことです。がんに罹患すると、長期に亘って抗がん剤や放射線の治療が必要となるケースがあります。治療のダメージでフルタイムの就業が困難になったり、休業せざるをえなくなったりと、収入の減少は避けられません。その際、がん保険に入っていれば、収入の減少をカバーすることができます。そして、もうひとつ。日本人にはリスクを過大に評価するリスク過敏症(あるいは心配症)とも言うべき性癖があります。がんに罹っても治療費は健康保険で賄えるから大丈夫と言っても、本当にそうか?想定以上に治療費がかかったらどうしてくれるんだ!と多くの日本人は尽きることのない不安に悩まされます。そして、不安を和らげる精神安定剤として、がん保険が必要とされるわけです。

さて、ここからは頭の体操です。目下、政府は新NISAやiDeCoといった税制優遇措置により、国民の2,000兆円に及ぶ金融資産を株式や投資信託に誘導しようと躍起になっていますが、足元でNISA口座を開設したのは国民の20%程度です。業を煮やした政府が法改正して、国民に年収の一定額(例えば年収の2割)の株式を保有するよう義務付けたと仮定します。このとき、何が起こるでしょうか。長期で保有していれば株式は利益を生むはずと政府がいくら説明しても、その言葉を信用する国民はきっと少数です。そして、株式が下落したときの損失を補償する”株式保険”(実態はただの円株プットオプション)を保険会社が発売したならば、多くの国民が購入することでしょう。このとき、株式の下落による損失を”株式保険”でカバーできても、トータル損益は保険料相当だけ確実にマイナスとなります。株式は長期的には上昇していくという政府の説明は正しいのです。それでも確率的には小さな株式下落リスクを過大に評価して、日本人は”株式保険”の購入という非合理的な行動に出るのです。これはがんのリスクに過剰に反応し、本来は不要であるはずのがん保険を購入する日本人の行動パターンと相似形です。

山崎元さんが主張された「がん保険不要論」は、ほぼ正しいと思います。しかし、人間は必ずしも理屈通りに動くものではありません。人間の行動原理の非合理性によって、がん保険は今後も支持され続けるでしょう。

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ライフプラン

【ラ】年の瀬に死について考える

お正月を1週間後に控えた年末に、縁起でもないテーマですいません。
私は来年60歳となります。そろそろ死というものが視野に入ってくるお年頃です。なので、ここらで一度整理しておこうと思った次第です。

私事で恐縮ですが、私の亡くなった祖父は、明治生まれの大変タフな人でした。虫歯になると歯にたこ糸を巻き、もう片方の糸の端を木の幹に巻き付けてから頭を後ろにそらす。そうやって自分で虫歯を抜いていたそうです。(これは私の父から聞いた話です。麻酔なしで歯を抜くなんて、それって拷問だと思うのですが……。我が祖父ながら恐るべし。) そんな祖父が老衰で死ぬ間際、死ぬのが怖いと泣いていたそうです。
死の恐怖は一体どこから来るのでしょう。宗教的な要素を除けば、死に至る過程で感じる精神的肉体的痛みと、人が「生き物」から「モノ」と化すいまわの際の漠とした恐怖感からではないでしょうか。

がんを始めとした疾病に伴う痛みに関しては、昨今緩和治療の進歩でかなり軽減してきているようです。(骨のガンなど相変わらず厳しい痛みを伴うものも一部あります) また、放射線や抗がん剤といった治療の結果生じる痛みもありますが、痛みを伴う治療は敢えて行わないというQOL優先の選択肢を取ることで、その類いの痛みからは解放されます。

さて、いまわの際の恐怖ですが、実は私はあまり心配していません。なぜなら、高齢者となり認知症になってしまえば、恐怖も何も感じないだろうからです。認知症バンザイ! また、運悪く認知症とはならず、クリアな意識の中で死を迎えるはめになっても、いまわの際の正にその瞬間、意識は眠りにつくかのようにフェードアウトし、安らかにくたばることができるだろうからです。私は生き物には安らかに最期を迎えるためのソフトが予めインストールされているはずと、勝手に思っています。
もっとも、健康のため適度に体を動かし(海と山)、お酒の飲み過ぎに気をつけ、楽しく仕事と投資を続けることができれば、当面死を気にする必要はなさそうです。

皆さん、良いお年をお迎え下さい。

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不動産

【不】不遇男さんの本を読んで

「逆転の狼煙」の不遇男さんといえば、不動産系ユーチューバーとして有名な方です。今回は、不遇男さんが最近出された書籍「人生が逆転する不動産投資入門」(ビジネス社)を読んだ感想をお話したいと思います。

巷の不動産投資本の多くが、再現性の怪しいキラキラ大家さんの体験談や、不動産物件の購入や物件購入後の管理のノウハウを書いたものであるのに対し、本書は投資家が不動産物件を購入する前にやるべきことや心構えを中心に書かれています。背景には、業者に煽られて事前準備不十分なまま物件購入に突き進み、致命傷を負う投資初心者が後をたたない現実があります。

不動産投資は割高な物件を買わないことに尽きます。割高な物件を購入してしまうとリカバーが困難となり、詰む可能性が高まります。(空室が発生したり、修繕が必要になったりという事象なら、大家の汗かきで何とかリカバー可能です。)本書は不遇男さんが不動産投資家として身につけた実践的なノウハウが満載です。不動産投資家を志す人は、割高な物件をつかまないためにも本書を手にすべきです。最後に、本書に書かれた不遇男さんのノウハウの中で、私が一番すごいと思ったものを一つご紹介します。

不動産投資を始める前にでお話したように、私は不動産投資で成功する秘訣は人脈と情報だと思います。一見さんの投資家には有利な情報は回ってきません。そのためには、いったん不動産業界に身を置いて、人脈を構築する必要があると考えています。しかし、言うのは簡単ですが、実際に不動産業界に就職してから不動産投資を始めるなんて、余りに遠回りです。この問題点に対し、不遇男さんは解決策を提示してくれました。それは、事前に金融機関を回り、担当者に融資可能な物件の条件についてヒアリングすることです。そして、「こういう条件の物件なら銀行から融資を受けられそうなので、物件の紹介をお願いします」と、投資家の方から不動産業者に営業をかけるのです。不動産業者から降ってくる情報に美味しいものはありません。だったら、投資家の方から不動産業者に情報を取りに行けばいいのです。まさに「逆転」の発想です。もちろん、直ぐに条件通りの情報が提供されることはないでしょう。でも、何社かの営業マンと情報のキャッチボールを続けているうちに人脈ができ、やがて有利な情報が入るようになると思います。
私があと20歳若ければ、不遇男さんスキームで不動産投資に挑戦していたかもしれません。

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株式

【株】株式相場の希望的観測と個別株の購入

これは全くの希望的観測です。こうなってくれたらラッキー!程度のものです。ですから、何の根拠もありません。実は私は年明け1月末までに日経平均が34,500円くらいまで上がってくれたらいいな、と思っています。そこまでいったら、会社の確定拠出年金(DC)で運用している日経平均インデックス投信を売却して一時金で受け取り、その資産をNISAへ移換して個別株を買いたいのです。ただ、マーケットでは日銀がマイナス金利を解除するとの思惑が急浮上しており、年内、日経平均は下値模索の展開が続くかもしれません。

思い通りに日経平均インデックス投信が売れたとして、次の問題は何を買うかです。高配当株を中心として、一部は成長株と地元(東海3県+静岡県)企業の株に投資したいです。私は、NISAの成長投資枠では配当だけでなく、値上がり益の非課税メリットも狙うべきと考えています。
いま私の頭にあるのは、以下の8銘柄です。セイノーHD(9076)、ホシザキ(6465)、AGC(5201)、コマツ(6301)、朝日インテック(7747)、メイテック(9744)、三菱HCキャピタル(8593)、大塚HD(4578)。この中で2~3銘柄をNISAで購入し、1~2銘柄を特定口座で購入することになりそうです。(私はイメージとしてこれらの銘柄を上げたまでです。皆さんに推奨する意図は全くありませんので、ご了承ください。)

私はこれらの企業の業績を知りません。知るつもりもありません。業績の善し悪しは既に株価に織り込まれていると考えているからです。私のような素人が生半可な知識で企業を分析するよりも、証券会社や機関投資家の一流アナリストの分析結果を反映した市場価格の方が、はるかに信頼に足ります。あとは個別企業のチャートをちょろっと見て、高値圏にないことが確認できたら買いの候補入りです。(私は概ね、個別株の市場価格=フェアバリュー、だろうと考えています。ただ、短期的な需給によって上ぶれたり下ぶれたりするので、チャートで確認するイメージです。)

当初はNISAのつみたて投資枠で投信を買うつもりでしたが、今のところ税金を払ってでも特定口座で個別株を買おうかと思っています。私は子供の頃から中日ドラゴンズのファンですが、今一番好きな選手はタイガースの佐藤輝明選手です。投信よりも個別株の運用に惹かれてしまう私の気持ちが分かって頂けますでしょうか?




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閑話休題

【閑】東京2021

早いもので、今年も残すところ1ヶ月余り。来年はオリンピックイヤーですが、ちょっと違和感があるのは私だけでしょうか。何でだろうと考えたら、前回の東京オリンピックがコロナの関係で1年延期されたため、それからまだ3年しかたっていないからだと思い至りました。
ところで、国民の非難の嵐の中、菅(前)総理はよくオリンピックの開催を強行したものだと、改めて思います。もし、あのとき日本がオリンピックの開催を断念していたら、今ごろ世界の笑いものになっていたかもしれません。

でも、国民の不評をかってまで、なぜ菅(前)総理は東京オリンピックの開催を強行したのでしょうか。真相はご本人に聞いてみないと分かりませんが、足下の世論に逆行してでもオリンピックを開催することが、将来日本のためになると確信していたからではないでしょうか。世論は気まぐれです。マスコミやSNSに煽られ、右に左に動きます。そして、国民の支持を得るにはそんな世論に迎合する方が近道です。しかし、真に国益を考えた場合、政治家はときに世論に背を向け、悪役を演じなければならない場面もあります。

目先のノイズに惑わされず、長期的視点に立って信じる道を行く。それは私たち長期投資家にも通じるものです。来る2024年。例によって、私は相場の予想はしません。どうせ当たりませんから。ただ、日本でインフレが定着するかどうか、この1点を見極めていきたいと考えています。デフレからの脱却が実現すれば、本邦経済は次のステージに進むことになるでしょう。

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年金

【年】資産運用立国と予定利率の誤解

日本経済新聞は2023年11月4日付朝刊の社説「企業年金の運用効率化へ改革を進めよ」で、「年金基金は……加入者や受給者の利益を考え、リスクを管理しながら常に運用の果実を引き出す努力が欠かせない。」「金利の低下が続いてきた運用環境は変化しつつある。低い利回りを前提にした運用のままでいいのか。予定利率の引き上げを含めて検討を始めるべきだろう。」と論じています。これは、10月2日に開催された日経サステナブルフォーラムにおける岸田総理大臣のスピーチに対応したものと思われます。岸田総理大臣は同フォーラムで資産運用立国に関連して、「年金や保険等の形で家計から運用を委託されている、アセットオーナーシップの改革にも取り組んでまいります。受益者に適切な運用の成果をもたらすよう、アセットオーナーに求められる役割を明確化したアセットオーナー・プリンシプルを来年夏を目途に策定いたします。その中で、最善の利益をもたらす資産運用会社の選択や、ステークホルダー等への運用内容の見える化などを求めてまいります。」、と述べました。「最善の利益をもたらす資産運用会社」なんて予め分かれば誰も苦労しないんだよ!という突っ込みはひとまず措くとして、予定利率を巡る議論から何とも香ばしい香りが漂ってくるものですから、以下簡単にコメントしたいと思います。

まず、確定給付企業年金(DB)の目的と、予定利率について確認しておきます。厚生労働省が提示するDB規約雛形の第1条にDBの目的が規定されています。そこでは「本制度は、確定給付企業年金法に基づき、本制度の加入者及び加入者であった者(=加入者等)の老齢、脱退についてこの規約の内容に基づく給付を行い、もって公的年金の給付と相まって加入者等の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。」と定めています。簡単に言えば、DBの目的は規約通りに加入者等に安定した給付を行うことにある、ということです。
次に、予定利率です。日経新聞の論調からは、「日本企業は予定利率(=運用の目標利回り?)をわざと低めに設定し、運用努力を怠って加入者等の利益を損なっている」的な印象を受けますが、実際はちょっと違います。【図1】をご覧ください。

DBの原資は通常、退職金です。退職金の金額が最初にありきで(図1では1千万円)、そのうち会社が掛金として負担する部分がいくら、運用収益で賄う部分がいくらといった具合に、1千万円を切り分けます。つまり、予定利率は会社が負担する掛金と運用収益の予定額を按分する際の目安となります。予定利率が低ければ、運用収益の見込み額は少なく会社が負担する掛金は多くなりますし、予定利率が高ければ、運用収益の見込み額は多く会社負担の掛金は少なくなります。ここで重要なのは、予定利率の水準に関係なく、加入者等が最終的に受取る金額は1千万円で変わらないことです。1千万円を会社が掛金として拠出するのか、運用で稼ぐのかの違いです。そして、安定した給付を旨とするDBの目的に鑑みれば、不安定な運用収益に多くを依存しない低い予定利率の方が加入者等にとっては好ましいのです。
予定利率の引き上げ⇒加入者の利益とする日経新聞社説の表現が妥当でないことが分かります。予定利率を引き上げて得をするのは、掛金負担が減少する事業主の方です。

運用利回りの高い状態が続けば、会社が給付増額(年金や一時金の増額)をしてくれるので加入者等の利益に繋がる、という意見もあると思います。ただ、この場合、給付増額の原資となる剰余金(別途積立金)は、【図2】のように実際の運用利回りと予定利率の差額です。ですから、予定利率が低いほど剰余金は発生しやすく、やはり予定利率は低い方が加入者等にはウエルカムとなります。会社がリスクをとって高い運用利回りをあげても、同じだけ予定利率を引き上げていたら剰余金は発生しません。
そもそも、給付増額をするなら、年金資産の運用益を充当するといった回りくどいまねをしなくても、賃上げと同じように本業の利益を充当すればいいだけの単純な話です。

このように、予定利率の引き上げは加入者や受給者にとってメリットはありません。また、アセット・オーナーたる事業主が予定利率の引き上げに合わせ運用資産のリスク量を増やした場合、運用利回りのボラティリティの増加に伴って経営上のリスクが高まるので、予定利率の引き上げは会社にとっても必ずしも好ましいものではありません。
このあたりの事情を賢明な金融庁・厚生労働省の方々がご存じないはずはなく、予定利率引き上げ論の裏側に何か別の狙いが隠されているのではないかと、ゲスな管理人は勘ぐってしまいます。

<おまけ>
以上、確定給付企業年金(DB)の予定利率についてお話してきましたが、資産運用立国に関連した議論では確定拠出年金(DC)についても触れられています。DBの予定利率に相当するものがDCの想定利率です。DCでは最終的に加入者等が受け取る退職金(年金、一時金)の金額は運用実績に応じて増減するわけですが、当初、会社が負担する掛金を決める際は、DBの場合と同じく退職金の金額と、掛金と運用収益の予定額を按分する目安が必要となります。ただ、DBと違うのは、ここでの退職金の金額は確定したものではなく、あくまで仮置きの数字だということです。掛金と運用収益の予定額の按分目安を、DCでは想定利率といいます。仮に想定利率を2%に設定して掛金を算出した場合、加入者は退職までの全期間平均で2%の運用ができなければ、見込み通りの退職金は受け取れないことになります。2%を上回る運用ができれば、見込み以上の金額を手にすることができます。
つまり、DCにおいて想定利率は、まさに運用の目標利回りとなります。したがって、想定利率は低い方が加入者にとって有利です。そこで懸念されるのが、DBの予定利率引き上げ論と一緒にDCの想定利率引き上げ論が起こることです。DBでは予定利率を引き上げ高リスク運用で損失が発生しても、損失の補填責任は事業主にあり加入者等の負担は生じません。しかし、DCでは想定利率が引き上げられ、やむなく加入者が高リスク運用を行い損失が発生した場合、加入者は全ての損失を負担することになります。一方、会社は掛金負担減少のメリットのみを享受します。
このように、DCの想定利率引き上げは、従業員サイドとして譲れない一線となります。