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閑話休題

【閑】ぞうさん

皆さんは、童謡「ぞうさん」を聞いて違和感を感じたことはありませんか。
私は子供の頃から「そうよ母さんも長いのよ」の部分に強い違和感を感じ、たびたび悪夢にうなされました。

私の夢の中では、仲の良い親子(ママと坊や)が動物園で柵の外から像を見ており、坊やはママの背中におんぶされています。そして、坊やがママに問いかけます。「ぞーさん、ぞーさん、お鼻が長いのね?」

ママはその問いかけに、「そうよ、母さんも長いのよ」と答え、肩越しに坊やを振り返ります。さっきまで普通だったママの鼻が、恐ろしいことに蛇のように長く伸びているではありませんか。

恐怖に震える坊やの青ざめた顔。甲高い声で笑い続けるママ。
これほどシュールな童謡が他にあるでしょうか。


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株式

【株】長期投資への思い

これまで私は一貫して長期投資をお勧めしてきましたが、投資手法は十人十色、人それぞれでいいと思います。長期投資が正しいというエビデンスもありません。
ただ、私は個人投資家が気楽に取り組むには、ほったらかし投資が向いているんじゃないかなと思っています。

私は金融機関で30年間、年金基金や機関投資家のお客様に、内外の債券や株式、不動産等のオルタナティブ商品を販売してきました。私が勤務していた会社は一応大手といわれる運用会社です。その運用会社が運用する商品や、海外の一流ファンドの運用商品を購入いただいたお客様に、3ヶ月ごとに運用結果の報告を行っていました。私が30年の経験で知ったことは、一流といわれる運用会社や最先端のヘッジファンドでも相場を当てることは至難の業で、良好な運用実績を何年も続けることはできないという厳しい現実です。優れた過去実績を掲げた商品が、お客様にご採用いただいたとたん運用が悪化しクレームとなることが何度もありました。
内外の一流プロでさえ勝つことが難しい運用の世界で、個人投資家がガチでぶつかって勝ち残る可能性がどれだけあるでしょうか。短期運用で巨額の利益を上げている個人投資家が存在することは知っていますが、正直、私には彼らが幸運なサバイバーにしか見えません。

私は、株式投資を個人がもっと手軽に取り組めるものになればいいと思います。しかし、株式は銀行預金とは異なります。価格下落、元本割れのリスクを受け入れることができない方は、株式に近寄るべきではありません。しかし、リスクを正しく理解し受け入れることのできる方には、もっと気軽に株式投資にアクセスしてほしいです。専門的な知識や継続的な相場のモニタリングなどなくても株式投資は可能です。そして、そのための方法のひとつが、買値にこだわったほったらかし投資です。
プロ投資家とは異なる土俵で戦い、長期の時間軸でゆっくりと投資先企業の成長を見守り、成果を享受する。私がお勧めするのは、そんな運用です。

私が長期投資をお勧めする際によくいただくお叱りは、バブル崩壊後30年たつのに、いまだ日経平均はバブル高値を回復していないではないか、というものです。おっしゃる通りで反論できません。ただ、私は今後日本でバブルが崩壊しても、平成バブルのようにはならないだろうとの希望的観測を持っています。なぜなら、平成バブルは特殊なケースであり、今やその特殊性は大幅に改善していると考えるからです。具体的には、①当時は企業間や銀行と株式持合いが盛んに行われていたこと、②東京市場での外国人シェアが極端に低く内外の価格裁定が働かなかったこと、③バブル崩壊後の政府日銀の政策対応が誤っていたこと、等です。

今後も資本主義の宿命として、5年から10年のサイクルでバブルの形成と崩壊が繰り返されるでしょう。そして、バブル崩壊の時期は誰にも分りません。ただ、今後はバブルが崩壊したら当局の適切な政策対応によって、他国と同様に5年程度で相場は回復するものと期待しています。

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株式

【株】ビッグウェンズデー

ビッグウェンズデーという映画をご存知でしょうか。
1970年代に公開されたアメリカ映画です。カリフォルニアの海で、水曜日にやってくるという伝説の大波に挑む若きサーファーたちの物語です。詳しい内容は忘れてしまいましたが、映画を見たあとの爽快感は鮮明に覚えています。
何でそんな話をするのかといいますと……。感じるんです、ビッグウェーブの胎動を。

私が会社に入ったのはバブル前夜の1987年です。当時担当していた某取引先が社員食堂ならぬ社員ディスコ(今ならクラブですか)を作ったり、同社の関係者が時価2億円の超高級外車(確かフェラーリF40)をデート中に炎上(SNS上ではなく文字通り)させるなど、とにかく浮かれたエピソードには欠かない時代でした。
金余りの中、銀行が不動産を担保に会社や個人にお金を貸しまくり、会社や個人は株や土地を買い漁りました。日本中がヘッジファンドと化していたのです。

当時は銀行と事業会社、あるいは事業会社同士が株を持ち合っていたため、市場に流通する株式は数が限られており、その限られた株式を会社と個人が奪い合いました。そして、気が付いたときには、日経平均株価は39,000円目前に迫っていたのです。また当時、東証の外国人の売買シェアは8%程度と低かったため、日本市場と海外市場の裁定は働かず、日本株の割高さが修正されることはありませんでした。1989年の日本株のPERはなんと60倍。今にして思えば、極東のガラパゴスで起きた珍現象でした。

しかし、さすがに日経平均40,000円の大台を前に、酔っ払いたちの目も覚めたのでしょうか。1989年の大納会で付けた38,915円を最後に、日本株は下げに転じます。下がり始めるとレバレッジが逆回転し、一気に相場は崩れました。バブル崩壊です。このころはバブルというワードがまだ一般化しておらず、私の上司など取引先を訪問しては、「バブルが弾けた」と言うつもりで「バルブが飛んだ」とよく言ってました。

バブルかどうかは、事前にはわかりません。グリーンスパン元FRB議長が言ったように、バブルは弾けて初めてバブルであったと分かるものです。ですから、金融当局が取るべき行動は、事前のバブル潰しではなく、バブル崩壊後の相場の下支えです。ここのところを当時の日銀は理解せず、セオリーと真逆のことをやらかしました。日銀はバブル崩壊後速やかに金利を引き下げるべきところ、金利を引き上げたのです。それも、15ヶ月の短期間に3.5%もの利上げです。この危篤患者に冷や水を浴びせるような行為により、日本株は瀕死状態となります。「平成の鬼平」と言われた当時の日銀総裁は、国民の支持もあり「バブル退治」と言いながら、掟破りの魔手をうち続けます。日本経済はその後「失われた30年」といわれる長期停滞に陥りましたが、私はこれは日銀の不作為による人災だと思います。
ちなみに、リーマンショック後の米国株は、当局の迅速かつ適切な政策対応により5年ほどで回復しています。

瀕死状態となった日本株ですが、死んではいませんでした。失われた30年の間に、あれほど割高であったPERは国際標準の15倍程度に修正され、EPSも着実に改善しました。東証の外国人シェアも、今では60%を超えています。仮に、足元の日経平均のEPS2,100円を米国並みのPER20倍で評価すると、2,100×20=42,000円となります。余裕で最高値の38,915円を更新する勢いです。また、東証1部の足元の時価総額は730兆円と、バブル期の606兆円をはるかに凌いでいます。冒頭、私がビッグウェーブの胎動を感じるといった理由がお分かりでしょうか。

振り返ればこの30年、もう二度と日経平均最高値38,957の更新はないという絶望と閉塞感が、日本社会を覆ってきたように思います。しかし、前回のピークから35年、ようやく、そのくびきから解放されるときが来ました。今まさにFRBは金融政策の転換に入ったところです。コロナ禍による過剰流動性で底上げされた現下の株価水準は到底維持困難であり、調整は必至でしょう。しかし、私は調整を終えた次の上昇波動において、日経平均株価は最高値を更新するとみています。そして、その瞬間、日本人は再び前を向いて歩き始めるのです。

来るべき「ビッグウェンズデー」に向けて、仕込みは抜かりなく。

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株式

【株】公式から見える株価変動のメカニズム

証券分析で使用する公式はいくつかありますが、今回はシンプルで利用価値の高い2つの公式に焦点を当て、そこから見えてくる株価変動のメカニズムについて考えたいと思います。

最初にご紹介する公式は、P=EPS×PER……① です。Pは株価、EPSは1株利益、PERは株価収益率です。株価は1株利益に株価収益率をかけたものに等しい、という意味になります。ここでPERについてご説明します。①式の両辺をEPSで割ると、PER=P÷EPSとなります。つまり株価が1株利益の何倍か、その倍率がPERです。ですから、PERが大きい株は1株利益に対し割高、PERが小さい株は割安と見ることができます。また、別の見方もできます。PERが大きい株は割高でも買われるほど人気のある株、PERの小さい株は割安でも買われない人気のない株、という見方です。特に、この人気という観点でPERを評価する場合、PERは理屈の世界を離れ、好き嫌いという市場参加者のセンチメントの世界に入ってしまい、投資家にとって扱いにくいものになります。

もう1度①式を見てください。決算が好調な企業は1株利益EPSが上昇しますので、通常であれば株価Pも上昇するはずです。しかし、好調な決算を発表した企業の株価が、決算発表後に急落する場面を私たちは頻繁に目にします。これはどういうことでしょうか。可能性の一つが、決算に対する投資家の期待が高く、決算発表前のPERが高過ぎたケースです。決算発表の前後でEPSが100→120に2割増加したとします。PERに変化がなければ、株価も2割上昇するはずです。しかし、PERが20→10に減少したらどうでしょう。株価は100×20=2000から120×10=1200に下落します。
企業の決算をチェックすることでEPSの動きはそれなりの確度で予測できますが、市場参加者の心理状態を映す鏡であるPERはその時々で自在に変化し、短期的な動きを予測することは困難です。短期的な株価がランダム・ウォークする所以です。
PERが極端に上昇した状態をバブルといいます。そして上昇しきったPERが通常の水準に回帰する過程がバブル崩壊です。株価PはEPSの上昇に合わせて中長期的には上昇トレンドを描きながら、PERの上下動に伴い短期的にはトレンドを離れ上昇、下落を繰り返します。

次にご紹介するのは、割引配当モデルと言われるものです。P=D÷(rーg)……②
Pは株価、Dは配当、rは株主資本コスト、gは配当成長率です。株価は配当を株主資本コストから配当成長率を引いた率で割ったものに等しい、という意味になります。株主資本コストとは耳慣れない言葉ですが、ここでは「株主資本コスト(r)=国債利回り+α」、とザックリご理解ください。金利の上昇によって株価が下落することはよくありますが、②式から、金利↑⇒r↑⇒P↓の因果関係が見えてきます。
最近の米国市場では金利の上昇を受け、ナスダックのグロース株がバリュー株に比べ大きく売られるケースを目にします。この点を②式で確認します「´」をグロース株、「”」をバリュー株とします。配当成長率はグロース株の方がバリュー株より高いですから、g´=3%、g”=1%、と仮定し、金利上昇に伴いrが4%⇒5%に上昇したとします。この場合グロース株は、P´=D´÷(4%-3%)=100D´が、P´=D´÷(5%-3%)=50´、に50%下落します。
バリュー株は、P”=D”÷(4%-1%)=33D”、がP”=D”÷(5%-1%)=25D”、と24%のの下落に留まります。

このように、②式から金利上昇の影響は、配当成長率の高いグロース株の方が強く受けることが分かります。しかし、過去のデータから、中長期的には金利上昇局面でグロース株が上昇することが分かっています。これはどう理解したらいいのでしょうか。もう一度②式をご覧ください。先程の例では配当成長率gは不変としましたが、通常、金利が上昇するときは景気が良好なときです。企業の業績も好調でしょうから配当も増加するはずです。rが上昇しても、それ以上にgが上昇すれば、例えば、rが4%⇒5%のときにg´が3%⇒4.5%となったら、P´は100D´⇒200D´と2倍になります。つまり、金利の上昇は、配当成長率gが変化しない短期においてはグロース株の下落要因となりますが、配当成長率gが上昇する中長期においては、グロース株の上昇要因になるということです。


また、別の見方もできます。配当Dを不変とすると金利の低下に伴う株主資本コストrの低下により、株価Pは上昇します。これが金融相場です。一方、配当成長率gの上昇による株価Pの上昇が業績相場です。
景気が悪化すると、中央銀行は金融緩和策を取ります。これにより金利は低下、金融相場が始まり株価は上昇に転じます。景気は徐々に回復し、金利も上昇していきます。中央銀行のスタンスも金融緩和から引締めモードに変わります。金融相場の終了です。このままでは株式相場は下落します。しかし、景気回復に伴い企業業績が改善すれば、配当成長率は上昇。業績相場が始まり、株価は更なる上昇を演じます。

P=EPS×PER、とP=D÷(r-g)というシンプルな2つの公式ですが、以上のように株価変動のメカニズムを簡潔に説明してくれます。ときどきこれらの公式を思い出して、現状の把握に役立てていただきたいと思います、

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株式

【株】コンセンサスを知る

私たち個人投資家が株式投資をするうえで知っておくべきこととして、コンセンサス(市場参加者の予想の平均値)があります。私は主に新聞の記事や、テレビの情報番組の出演者のコメントからコンセンサスを探ります。新聞の記事が一様に相場に強気なときは、市場参加者の大半が強気であると判断します。そんなときに好材料が出ても、株価の上昇につながらないことが多いです。逆に、大した悪材料でなくても、相場急落の材料とされることもあります。つまり、短期的な相場の動きは、材料(実績値)の絶対的な水準ではなく、コンセンサスと実績値の乖離幅という相対値に依存しているわけです。乖離幅が大きいほど市場参加者にとってサプライズとなり、相場が大きく動くことになります。個人投資家にとって新聞やテレビは、投資方法を教えてくれる先生ではなく、あくまでコンセンサスを知るためのツールと割り切ることが大切です。

それから、長期投資家の皆さんにお勧めしたいのが、SNSを通じて投稿者のコメントの動きを見ることです。私はこれを海釣りをするときの鳥山のように感じます。SNSが投稿者のポジティブなコメントに溢れている状態を、海鳥が魚を目指して殺到する様になぞらえているわけです。ただ、海釣りと違うのは、投稿者が殺到している最中は静観し、投稿者のコメントが落ち着いてから買いに動くところです。

また、日経平均VI(ボラティリティ・インデックス)も参考になります。これは、市場参加者の警戒感を表すものです。VIが20以下で低位安定しているときは、市場参加者がガードを下げ安心しきっていることを意味します。そんなときに好材料が出ても買いにはつながりにくいですが、ちょっとした悪材料が思わぬ急落を呼ぶことがあります。

「人の行く裏に道あり花の山」。敢えて人と反対の行動をとる。長期投資家は、天邪鬼でひねくれ者のほうが向いてるかもしれませんね。

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ライフプラン

【ラ】FIREの問題点とFP的対応②

FP的対応①では、会社からの独立は想定していません。独立を前提としたFIREを目指す場合は、公的年金の終身年金機能をフルに活用して人生終盤の収入を固めた上で、FIREから年金支給開始年齢までに必要となる収入の原資をFIREするまでに確保することが必要です。そして、FIREから年金支給開始までの間は、その原資を取り崩して生活費を賄うことになります。公的年金を最大限活用すれば、過度に資産運用にベットしない生活設計が可能です。以下ではFIREを想定した修正MLPを検討しましょう。

【修正MLPの前提条件】
・45歳で本業をFIREするものとします。各年齢での収入は以下の通り。
・同じ年齢の妻(専業主婦)と28歳で結婚するものとします。
(1)22歳~45歳まで:本業に年収500万円で従事。300万円を生活費に充当し、残額の200万円を運用資産として積み立てます。運用利回りは2%とします。
(2)45歳~70歳まで:(1)の期間で積み立てた金額は45歳時点で5,769万円となります。この資産を引き続き2%で運用しながら25年間で取り崩すことで、年間294万円を生活費に充当できます。
(3)70歳~    :(1)の期間の会社勤務の結果、厚生年金と国民年金を65歳時に年間209万円受給することができます。それを70歳まで繰り下げて297万円の年金を終身受給することができます。

上記の修正MLPではFIRE前に会社員時代の平均年収を500万円とし、うち200万円を毎年積み立てて2%で運用する計算です。決して無理な運用利回りではありませんが、FIREの45歳時には積立額は5,769万円まで拡大することになります。この資産を引き続き2%で運用しながら70歳時までの25年間で取り崩すことにすると、年間294万円を得ることができますので最低限の生活費は賄える計算になりますにす。(月間生活費25万円の前提)
そして、70歳以降は会社員時代の厚生年金と国民年金をまとめて繰り下げることで、年間297万円の年金を終身受給できます。

このように、修正MLPでは公的年金を最大限活用することで、過度な運用利回りと過大な運用資産額を前提としなくても45歳時にFIREするための絵を描くことができます。(ただし、お話を簡潔にするため税金、社会保険料等は考慮していませんのでご容赦ください)
また、上表ではFIREの年齢を45歳と40歳、運用利回りを0%~4%、年収を500万円~800万円、でパターン分けして記載しています。理屈の上では、FIRE前の平均年収や運用利回りをもっと大きな数字に置けば、早期のFIREも可能になります。しかし、長期にわたって4%以上の利回りを条件とするプランは、個人的には破綻する可能性が高いと感じます。

老後を含む生涯にわたり最低限の生活費を確保する目途がたてば、後は「本業」(=修正MLP)に「副業」と「投資」を乗っけることで、ゆとりある収入の確保を図ることになります。従来の会社員生活の問題点は、(ⅰ)「最低限」の収入の獲得、と(ⅱ)「働きがい」の獲得、そして(ⅲ)「最低限+α」の収入の獲得、の全てを本業に求める点にあると思います。SCaPでは(ⅰ)~(ⅲ)を一旦バラバラにして、それぞれの役割を本業、副業、投資に割り振った上でポートフォリオを再構築します。

これにより過度に会社=本業に依存した不安定な1本足打法から、安定した3輪走行に移行し、社会人生活を無理なく効率的に送ることが期待できます。
最後に改めてSCaPのメリットを言いますと、
1.セーフティネットを失わない。
2.資産運用の目線を下げることができる。(4%→2%)
3.仕事の役割を分解することで会社に隷属せず、自立した社会人生活を送れる
4.社会との関係性を維持できる

(注)SCaPは本来Supreme Commander for the Allied Powers(連合軍最高司令官)の意味ですが、ここでは「効率的職業ポートフォリオ」を意味するFP花草の造語として使用しています。

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ライフプラン

【ラ】FIREの問題点とFP的対策①

若年期に会社員生活を終えるFIREの最大の問題点は、老後の生活費の原資となる年金への悪影響です。FIRE後は国民年金に加入することになりますが、厚生年金と比較すると65歳以降受給できる年金額が大きく減少しますし、障害者になった場合や死亡した場合の保障も大幅に劣化します。他にも、健康保険を脱退し国民健康保険に加入することで、保険料は全額自己負担(健康保険は労使折半)となりますし、休職時の傷病手当金も支給されません。また、失業時の雇用保険の給付(基本手当)もなくなります。
このようにFIREすることは、会社からの自由と引き換えに、セーフティネットを失うことを意味します。

以下では敢えてFIREせず、人生100年時代を細く長く安心に送るためのモデルプランを検討してみます。まず手始めに、公的年金を活用した終身年金を設計していきます。この年金により生涯を通じた月収25万円(税込み)生活が可能となります。これを、必要最低限の生活設計の意味で、ミニマムライフプラン(MLP)と呼ぶことにします。

【MLPの前提条件】
・生涯を通じ税込み25万円を必要最低限の生活費(月額)とします。(年間300万円)
・本業となる会社に22歳で入社、60歳で定年退職。その後、70歳まで嘱託として継
 続雇用。
・同じ年の妻(専業主婦)と28歳で結婚。
・各年齢での収入は以下の通り。
(1)22歳~60歳:月収25万円、年収300万円で本業に従事。60歳で本業は定年退職。
(2)60歳~65歳:年収200万円で嘱託として継続雇用。
(3)65歳~70歳:年収100万円で嘱託として継続雇用。

65歳時に受給できる老齢厚生年金(老厚)、及び老齢基礎年金(老基)は、
・老厚=(300万円×38年+200万円×5年)×0.55%=68万円。老基=78万円(※)
これを70歳まで繰り下げると、(68万円+78万円)×1.42=207万円、となります。
また、65歳から70歳の再雇用による年金増加分が、100万円×5年×0.55%=3万円
よって、207万円+3万円=210万円。妻の老基(32年間加入)を70歳まで繰り下げると、78万円×32年/40年×1.42=89万円となります。
結果、世帯合算では210万円+89万円=299万円。ほぼ300万円の年金(年額)を70歳から終身(世帯主が生きてる限り)受給することができます。
(※)老厚の一部として支給される経過的加算を老基にカウントしています。

ここで強調したいのは、22歳から70歳の間に前提条件(1)~(3)の年収300万円~100万円で会社勤めをすれば、老後資金は国の方で準備のうえ年間300万円の年金として70歳から終身支給してくれることです。無理して運用で老後資金を作る必要はありません。例えば、70歳から100歳までの30年間に受け取る年金は300万円×30年=9000万円です。これを運用で準備しようと思ったら大変です。ちなみに、厚生年金の保険料は給料の約9.2%ですが、MLPの例でいくと22歳から70歳までに国に支払う保険料は、(300万円×38年+200万円×5年+100万円×5年)×9.2%=1180万円です。
1180万円が9000万円になるとしたら、結構なパフォーマンスです。

尚、60歳~70歳の生活費が合計で1500万円不足するので、この足らずについてはiDeCo等で別途補う必要があります。例えば、毎月1.5万円を年利3%で38年間運用すると、1240万円になります。差額は退職金等で補えば、1500万円を確保できる計算です。

上記MLPは70歳までの継続雇用でモデルを設計してみました。嘱託期間を含め70歳まで会社員生活を続ければ、高額な年収や無理な運用利回りを前提としなくても、公的年金をフル活用することで最低限の生活設計が可能です。
セーフティネットで守られ、細く長く安定した生活を送ることができます。

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株式

【株】私の株式投資法~買値にこだわったほったらかし投資~

私は老後の生活費や医療・介護の費用に充当するため、細々とヘタレな投資を続けています。ロングポジションのみで、基本的に売りはしません。唯一のこだわりは”高値をつかまないこと”です。私には特別なノウハウやテクニックはありません。情報分析力もありません。そんなヘタレで面倒くさがりな私でもできるラクチン投資法が、ほったらかし投資です。

【銘柄選択】個別企業の分析は不要。誰でも知っている業種別代表企業を買うだけ。
効率的市場仮説というものがあります。賛否両論ありますが、私はセミストロング型の効率的市場仮説を支持しています。これは「公開された情報は、瞬時にその企業の株価に反映される」という説です。私はこの説を「素人が投資する分には個別企業の分析は不要で、プロのアナリストの分析結果が織り込まれた株価を見て判断すれば十分」と、勝手に解釈しています。
私は銘柄選択に関しては個別企業の分析はせず(そもそも分析する能力がありません)、誰でも知っている業種別の代表企業に狙いを定め、以下の①か②のタイミングで機械的に買うだけです。

【タイミング①】FRBの金融緩和で買い
私は以下の基準で、長期の買いのタイミングを計っています。ポイントは、FRBの金融政策です。米国の景気が悪化し、FRBが金融政策の舵を緩和の方向に切り始めるタイミングが、買いのチャンスです。世界経済は米ドルを通じてつながっており、そのマネーをコントロールするのがFRBです。FRBは世界の中央銀行といえます。FRBが金融を緩和しマネーを市場に供給することで、流動性相場がスタートします。景気の悪化はしばらく続き、株価の低迷も長引くのが一般的ですが、そんな不透明な空気に紛れ、そろりと買い出動するのです。
米国は2022年中の利上げが予想されていますので、金融緩和はまだまだ先になりそうです。

【タイミング②】日経平均株価が20%下落したら買い
私は中期の買いのタイミングを、以下の基準で図ります。日経平均が高値から20%下落したら、狙いを付けていた銘柄を機械的に買います。相場観は入れません。ただ、下落途中の相場には手を出さないようにしています。いわゆる「落ちるナイフには手を出すな」です。相場が底値をコツンと確認してから動いても、十分間に合います。二番底に向けもう一段下がるリスクはありますが、それでも30%下落したあたりで下げ止まるでしょう。
20%の下落は数年に1度の大バーゲンです。もっと頻度を上げて買いたい場合は、10%~15%下落のタイミングで買っていきます。

相場急落の恐怖は投資を何年経験しても克服できませんが、相場急落に備えてキャッシュをプールし買い向かう準備があれば、多少は落ち着いて相場に対峙できるかもしれません。(「上がって良し、下がって良しの株価かな」)
しかし相場の達人の目には、それも無駄な悪あがきに映るようです。彼らは鋼の意思でもって、フルインベストメントで相場に臨めとおっしゃいます。例えば、フィデリティ投信マゼランファンドの伝説のファンドマネージャー、ピーター・リンチはこんな言葉を残しています。
「投資家が暴落に備えることで失われる資金は、暴落で失われる資金よりもはるかに大きい」

厳しいー!

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【株】胆力

株式投資は山登りのようなもの。山登りに知識や技術は必要ですが、それ以前に、ザックを背負って1000mの標高差を上り下りする体力が必要です。体力のない人は容易に遭難します。

株式投資も同様に、知識や技術以前に、相場の上げ下げにひるまない胆力が必要です。

株で失敗する人は、相場の上げ下げに狼狽し、感情に流され高値をつかみ、安値を叩きます。

株で成功する人は、相場の上げ下げに一喜一憂せず、己を殺して下値を拾い、相場の回復を待ちます。

下値を拾ったあとも、相場は下がるでしょう。そんなときは、下っ腹に力を入れ、奥歯をぐっと噛んで、じっと耐えます。

やがて、相場は大底をつけ、上げに転じます。

まず身に付けるべきは、胆力です。

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株式

【株】私の株式投資法~長期・分散~

「搾取のシステム」、「損益の非対称性」、「時間」。この3つの武器を活用することが、長期の株式投資で勝ち切るための鉄則だと思います。私が株式投資をする際に気を付けていることは、以下の3点です。

(1)当たり前ですが、実際に株式に投資すること。机上でいくら投資したつもりになっても、道は開けません。短期的には上下にブレる株価も、長期的には「搾取のシステム」により上昇していくはずです。

(2)長期投資。長期の時間軸で株式に投資することで、「損益の非対称性」を生かし資産の拡大を図ります。

(3)分散投資。搾取のシステムが上手く機能せず業績が低迷する会社も、中にはあります。不芳企業に投資してしまうリスクを低減し、大勝ちする企業に遭遇する確率を高めるため、複数銘柄によるポートフォリオ運用が効果的です。

ルールを理解したうえでゲームに参加することが大事です。しつこいようですが、長期の株式投資は勝率ではなく、トータルスコアを競うゲームです。下値で買ったら後は死んだふり。ほったらかしでいいと思います。短期の時間軸での株式投資は、プロ投資家と同じ土俵でゼロサムゲームを戦うものです。勝者の数だけ敗者が生まれます。一方、長期の時間軸での株式投資は、仲間と一緒にプラスサムゲームを楽しむものです。みんなが勝者になれる可能性があります。